軽自動車で今や最も売れているカテゴリーがスーパーハイト系。その中で、ホンダN-BOXは発売から約5年で4度の年度軽4輪車新車販売台数第1位を獲得した人気モデルだ。そのN-BOXが2017年9月にフルモデルチェンジし2代目となった。

そんなN-BOXのライバル関係にあるモデルが、ダイハツ タントだ。ミラクルオープンドアと呼ばれるユニークな大開口のスライドドアが人気。軽自動車新車販売台数ナンバー1の座を争うN-BOXとタントを徹底比較した。

目次・評価項目見出しをクリックすると各項目にジャンプします

ホンダ N-BOXの特徴

2代目N-BOXは、国産車の中でもトップクラスの安全性能を得ている。歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダセンシング」を全車に標準装備。前後の誤発進抑制や、高速道路などで疲労軽減に役立つ前走車追従式のクルーズコントロールなども用意されているので、どのグレードを買っても安心できる

ダイハツ タントの特徴

タントの特徴は、センターピラーレスのミラクルオープンドア。センターピラーレスなので、非常に開口スペースが大きいのが特徴。お年寄りなどの乗り降りも便利だ。タントも歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「スマートアシストⅢ」が用意されるが、未だ一部のグレードはオプション設定。

1燃費の比較

両車の燃費は以下の通り。

ホンダ N-BOX
最も燃費の良いグレードが27.0㎞/L。
ターボモデルが25.6㎞/L。
ダイハツ タント
最も燃費が良いグレードは28.0㎞/L。
ターボモデルが26.0㎞/L。

タントのエンジン出力は52ps&60Nm。N-BOXは、58ps&65Nmとなっていてタントよりパワフルなエンジンを積む。

N-BOXは、パワフルで実燃費重視なので燃費が悪いという言い訳をしているが、最新のN-BOXとモデル末期のタントでは開発時期が異なる。いくらパワフルだからとはいえ、最新モデルが燃費で負けるというのはホンダらしくない。パワフルでありながら、低燃費という二律背反するような条件を満たすことが技術の進歩でもある。

タントは重い車重をカバーするために、樹脂製のパーツなどを使い軽量化し燃費を少しでも良くしている。同じクラスに属するスズキ スペーシアは、マイルドハイブリッドを使い32.0㎞/Lという低燃費を実現。

N-BOX:評価3、タント:評価3
N-BOX:評価3、タント:評価3

2価格の比較

両車のお勧めグレードの価格は以下の通り

ホンダ N-BOX G・EX Honda SENSING FF
1,596,240円
ダイハツ タント G “SA Ⅲ” FF
1,533,600円

スーパーハイト系は、軽自動車とはいえ価格は1.3Lクラスのコンパクトカーを超える価格帯。もはや、生活の足というレベルではなく多くの機能が求められるだけに、なるべく上級グレードを選んだ方が満足度も高い。

また、リセールバリューも上級グレードほど高価になるケースが多いので、短期で売る場合にメリットがある。

お勧めグレードのN-BOXとタントでは、6万円ほどN-BOXが高価な価格設定になっている。細かな装備差はあるが、安全装備面の機能差によるものが大きい。まず、タントにはサイド&カーテンエアバッグは装備されていないのに対して、N-BOXは標準装備化されている。また、先進予防安全装備ホンダセンシングの機能である先行車追従式のクルーズコントロールも標準装備となっている。

この差を考えると、ややN-BOXの方が、買い得感があるように見える。しかし、N-BOXは右側パワースライドドアがオプションなのに対して、タントは標準装備だ。また、タントは14インチアルミホイールが標準だが、N-BOXはスチールホイール。微妙に装備差があるものの、装備面からみるとほぼ同等レベルの価格といえる。

ただし、クルマの動的性能差を含むと、N-BOXが圧倒しているので、クルマ全体のコストパフォーマンスという視点ではN-BOXが優れる。

購入時の値引き額は?

初代N-BOXがモデル末期でも売れていた理由のひとつに、大幅値引きがあった。しかし、新型になり販売台数も好調ということもあり、初代N-BOXのような大幅値引きはしばらくの間期待できない。

ただし、ライバル車であるタントやスペーシアがそろそろフルモデルチェンジの時期に入っている。こうしたライバル車がフルモデルチェンジした後が、N-BOXの値引きがアップする時期となる。よほど焦って買わなければならない理由が無い限り、N-BOXの購入はライバル車がフルモデルチェンジするまで待つといいだろう。

逆に、タントはモデル末期ということもあり、大幅値引きが期待できる。N-BOXの見積もりを持って商談すれば、最初から値引き勝負に出てくるだろう。ただ、ちょっと安くなったからと言って買ってはいけない。モデル末期ということは、すぐに新型が出て旧型になり、リセールバリューが下がることを意味している。その分に見合う金額がでない限り購入は見送るといいだろう。

また、タントの場合、多くの登録済み未使用車が流通している。未使用は、メーカーやディーラーの都合で登録だけしたクルマなので、基本は新車と変わりない。中古車扱いになるため、価格的にはかなり安くなっているので、こうしたモデルを探し、さらに値引きして購入すれば、かなりリーズナブルに買えるだろう。

N-BOX:評価4、タント:評価3
N-BOX:評価4、タント:評価3

3内装デザイン比較

N-BOXとタント共に、水平基調のインパネデザインが採用されている。これは、室内を広く感じさせることや視界を良くする効果がある。ただし、各部のデザインは大きく異なる。

  • N-BOX 運転席
  • タント 運転席

内装デザイン特徴

ホンダ N-BOX
N-BOXのメーターは、ドライバーの正面に位置するデザインが採用された。メーターやナビ画面は、高い位置に設置されているので、視線移動量が少なく安全で見やすい。メーターそのものもなかなか高級感がある。デザインは、ホンダらしくややコッテリとしたものになっている。
ダイハツ タント
タントのインパネは、センタメーター方式を採用したデザインだ。メーターのデザインは、非常にシンプル。少し味気なく感じる。ナビ画面の位置はやや低い位置に設置されている。タントは、センターコンソール付近にシフトノブやエアコンスイッチなどを集中配置した結果、スッキリとした印象がある。
N-BOX:評価4、タント:評価3
N-BOX:評価4、タント:評価3

4室内空間と使い勝手

このクラスのミニバンで求められるのは、室内スペースの広さだ。

  • N-BOX 後席
  • タント 後席

初代N-BOXは、圧倒的な室内スペースの広さで人気モデルになった。ただ、軽自動車は、全長3,395㎜という制限内で各社工夫しなくてはならい。2代目N-BOXは、その広さを継承。室内長は2,240㎜とクラストップレベルとなる。

  • N-BOX スライドドア
  • タント ミラクルオープンドア

やや設計の古いタントだが、室内長は2,200㎜。その差は僅かだ。タントの場合、ピラーレスのミラクルオープンドアをもち、運転席のドアを開くと広大な開口スペースを誇る。高齢者でも乗り降りもしやすいのが特徴だ。

シートアレンジなどの使い勝手では、N-BOXの上級グレードにスライド量57cmという助手席スーパースライドが設定されている。前方にスライドさせれば、大きな荷室や広大な後席スペースになる。後方にスライドさせれば、後席右側シートに近くなり、チャイルドシートに座った子供の世話もしやすくなる。

  • N-BOX 荷室
  • タント 荷室

また、N-BOXの後席座面は上方にはね上げることが可能。背の高い鉢植えなど倒せないような背の高い荷物も積載できる。タントの助手席は、背もたれが前方に90度倒れる。テーブルとして使ったり、長尺物を積載することも可能だ。

N-BOX:評価5、タント:評価4
N-BOX:評価5、タント:評価4

5外装デザイン

  • N-BOX 外装
  • タント 外装
  • N-BOX 外装
  • タント 外装

軽自動車なので、両車とも全長3,395㎜、全幅1,475㎜と共通。異なるのは全高でN-BOXが、クラストップレベルの1,790㎜でタントが1,750㎜となっている。

全高は40㎜もN-BOXが高いのだが、並べて見ないかぎりタントが小さく見えることはない。逆にタントはウインドウ部分が多く背が高く見えるくらいだ。N-BOXはウインドウ部分がタントに比べて少なく、全体的にギュッと凝縮された塊感があり小さく見える。

また、N-BOXは、車名通り四角いボックス型。シンプルな面構成ながら、なかなか張りのあるデザインで力強く見える。逆にタントは、滑らかな面構成で優しさを表現。女性的に見せているのが特徴。残念ながら、タントはモデル末期になってきたこともあり、やや古く見えかもしれない。

そして、両車ともより迫力を重視したカスタムモデルが用意。両車ともLEDを駆使し、夜間でもひと目で分かるような目立つデザインが採用されている。N-BOXは、さらにクラスを超えた装備で、流れるように光るシーケンシャルタイプのウインカーが用意されており、より存在感をアピールしている。

  • N-BOX カスタムモデル
  • タント カスタムモデル
N-BOX:評価5、タント:評価3
N-BOX:評価5、タント:評価3

6安全装備の比較

安全装備面では、安全に対するホンダとダイハツの企業姿勢は明確になった。

ホンダは歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「ホンダセンシング」を全車に標準装備化した。全車標準装備化は、軽自動車としては初の試みだ。また、軽自動車以外でも高級車を除くと初となる快挙でもある。他の車種では、まだ標準装備化は遅れているものの、交通死亡事故ゼロを目指すことは、自動車メーカーの責任でもある。こうした理想を目指したホンダの姿勢は高く評価できるものだ。

また、乗員を守るサイド&カーテンエアバッグを標準装備したグレードも多いのがN-BOXの特徴。カスタム系を含めた9グレード中、7グレードで標準装備化されている。サイド&カーテンエアバッグを標準装備化しているモデルは、高級車以外ではかなり少ないのが現実。こうした装備を積極採用しているN-BOXの安全性能は非常に高い。

それに対して、ダイハツの歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「スマートアシストⅢ」は、残念ながら標準装備化されていない。また、サイド&カーテンエアバッグに関しては、最上級グレードのG SAⅢにだけオプション設定という非常に物足りない状況だ。

こうした装備差は、企業の安全に対する姿勢が明確に表れる部分だ。歩行者検知式自動ブレーキなどは、先進予防安全装備などと呼んではいるが、今や10万円を切るようなベーシックな安全装備。標準装備化してもおかしくないレベルになっている。

標準装備化しないメーカーの言い分は「価格が高くなると、顧客が買ってくれない」、「安全装備など付いていなくていいから、価格は安い方がいい」という顧客もいるからという。こうした顧客が運転する歩行者検知式自動ブレーキが付かないクルマに衝突された歩行者は、とんでもない災難だ。

クルマは扱い方を誤れば、人を殺める凶器になる。また、すべてのドライバーが、その加害者になる可能性がある。こうしたリスクを低くする機能があるならば、積極的に標準装備化することが、交通死亡事故ゼロを目指すと宣言している自動車メーカーの責任でもある。我々顧客は、こうした自動車メーカーの本音の姿勢を装備体系で知ることができる。安全に対する本音はどこにあるのかという企業の姿勢を見て、自動車メーカーを選択するといい。

安全なクルマランキング2017 
軽自動車編

N-BOX:評価4.5、タント:評価2.5
N-BOX:評価4.5、タント:評価2.5

7走行性能比較

  • N-BOX エンジン
  • タント エンジン

タントはモデル末期ということもあり、走行性能面では、ほぼすべての面でN-BOXが上回る。N-BOXのエンジン出力は58ps&65Nm。タントは52ps&60Nmとなっており、N-BOXの方が数字上でもパワフル。

さらに、車重はN-BOXが930㎏なのに対して、タントは940㎏とやや重いこともあり、N-BOXの方が若干元気よく走る印象だ。ターボ車は、N-BOXのトルクが104Nmに対して、タントは92Nmとなっていて、力強さの差はより明確になっている。

ただ、どちらも市街地で必要十分といったところだが、高速道路などではやや非力感がある。ロングドライブや高速道路を走りことが多い人は、ターボモデルがお勧めだ。

乗り心地面でも、N-BOXが上回る。N-BOXは、柔らかめの乗り味になった。カーブではそれなりにクルマが傾くが、不安感がある傾き方ではないので好印象。タントは、カーブでの不安定感を無くしたいという意思を感じるやや硬めの乗り味。速度が高めだとタントの方が安心できると感じる人も多いかもしれない。ただ、街乗りではややゴツゴツとした乗り心地になる。

出来の良いのは、N-BOXカスタムのターボ車。車内の静粛性を高める素材がより多く使われていて、コンパクトカーを超える静粛性を手に入れている。その分、価格もグッと高めで約195万円。コンパクトカーのハイブリッド車が十分に買える価格帯だ。

N-BOX:評価4、タント:評価4
N-BOX:評価4、タント:評価4

8リセールバリュー

リセールバリューとは、新車で購入した車が3年後にどの位の価値が残っているかを指標化したもので、リセール(再び売る)時の価値(バリュー)を残価率で示す。中古車大手のガリバーが算出したリセールバリューは、下記の通りとなった。

ホンダ N-BOX
62%〜68%
ダイハツ タント
60%~63%
N-BOX:評価4.5、タント:評価4
N-BOX:評価4.5、タント:評価4

新車商談前に必ず買取店で査定を

下取り車を売却するうえで重要なのは、正しい価格を知ること。そのためには、必ず買取り店で査定することだ。買取り店は、中古車相場のプロ。買取ったクルマがいくらで売れるのかを熟知している。そのため、買取り店での査定価格がひとつの目安になる。

ディーラー系での下取りの問題点は、例えばホンダならホンダ車、ダイハツならダイハツ車の下取りには比較的強いが、他社のモデルの下取りには弱い。これは、自社銘柄の下取り車なら、自社の中古車店で売れるので、多少高値で買取っても利益が出る。しかし、他社銘柄の下取り車は結局、買取り店と同じくオークションに出すしかないのだ。

また、ディーラー系下取りの場合、値引きを大きくして下取り車の価格を下げるという技を使うこともある。こうなると、下取り車の価格を知っておかないと、ディーラー側の思うつぼにはまってしまうことになる。

正しい価格を知っていれば、こうしたリスクは回避できる。理屈をどうであれ、顧客側からすれば、とにかく高値で売れればいいだけだ。最後は、一番高値で買取ってくれるお店に売ればいい。

見積もりをとる前に!
まずは今のクルマの相場を確認してみる

まとめ・総合評価

スーパーハイト系の軽自動車は、自転車まで積める積載性や両側スライドドアによる乗り降りのしやすさなど、子育て層だけでなく高齢者のいる家庭での使い勝手もよい。こうした使い方をするのであれば、非常に魅力的な1台となる。

しかし、高さが必要な荷物を載せることが無く、それほど乗り降りのしやすさが必要ではないという人は、注意が必要だ。スーパーハイト系は、利便性が高い分、価格がかなり高価になっているからだ。上級グレードでオプションを選択すると、もはや1クラス上のコンパクトカーでハイブリッド車が選べるくらいになる。

その上、背が高いことは、クルマとしての性能が出しにくいという面もある。車重が重くなるので、力強さに欠け燃費も悪化傾向になる。全幅が狭いのに背が高いので、横風に弱く、風が強いとフラフラする。

使い勝手が良い反面、こうしたデメリットを理解したうえで購入したい。また、軽自動車はメーカーやディーラーの都合で登録済み未使用車が多数発生する。登録済み未使用車とは、登録されただけなのでほぼ新車コンディションを保っているクルマ。制度上では、中古車扱いになるので、多くの中古車店で売られている。価格は新車に比べ、かなり安く設定されているので、こうしたモデルも選択肢に入れてみるのもいいだろう。

N-BOX:30/40点、タント:22.5/40点
N-BOX:30/40点、タント:22.5/40点

関連ページ

ホンダ N-BOX

中古車情報
中古車買取相場
ホンダ N-BOX

101.7万円

※過去約6ヶ月間の弊社査定実績の中での最高額。
平成28年式 ホンダN BOX G・ターボLパッケージ(パール 走行距離1万km走行) 2017年9月査定。

新車値引き術
カタログ情報
■新車時価格(税込):
119.8万円〜201.5万円
■中古車相場:
94万円〜113.4万円
■1000km走行時ガソリン代:
5,273円

ダイハツ タント

中古車情報
中古車買取相場
ダイハツ タント

122.7万円

※過去約6ヶ月間の弊社査定実績の中での最高額。
平成29年式 ダイハツタント カスタムRS トップエディションSAⅢ(パール 走行距離1万km走行) 2017年10月査定。

新車値引き術
カタログ情報
■新車時価格(税込):
117万円〜188万円
■中古車相場:
10万円〜99.9万円
■1000km走行時ガソリン代:
4,821円
※ 燃費は国土交通省発表平成26年3月発表自動車燃費一覧よりJC08モードの数値から掲載しています。
※ ガソリン価格は一律120円で算出しています。