消費税10%を前提とした政権が誕生した。増税により、特に金額の大きな買い物が影響を受ける。例えばクルマ。消費税10%で200万円のクルマを購入すると、約20万円の消費税が一気に徴収される。納税は国民の義務とはいえ、できれば払いたくないというのが庶民の本音だろう。

そこで、最近活発になっているのが、クルマの個人間売買。個人間売買だと、こうした消費税がかからないのでより安くクルマを買うことができる。また、売る側も買取り店などに売却するよりも高値で売れるなど、売り手と買い手相互にメリットがある。そうした個人間売買は、消費税率が上がるごとに利用者は増えていくだろう。

ただ、こうしたクルマの個人間売買はトラブルが多い。事故車や走行距離を改ざんした悪意のあるクルマが紛れ込んでいるケースも少なくない。今回は走行距離の改ざんに関してレポートする。

この記事の目次 CONTENTS
これまでの走行距離メーター改ざん対策
過去の最大走行距離を義務付ける新制度が発足したが・・・
メーター改ざん車を買わないために気をつけること
個人間売買でのリスクはどう避ける?

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

これまでの走行距離メーター改ざん対策

中古車の走行距離改ざんは、かなり昔から問題視され続けている。ただ、行政側や中古車店、オークション会場などがこうした問題を解決するために色々な手段で対策してきた。例えば、車検証には過去2回分の走行距離が記載されるようになった。

数回の車検を受け、走行距離記録を上書きする手口

これで十分な対策となると思えたのが、この網をくぐり抜ける犯罪者が出現する。 なんと、メーター改ざん後の車検で2回前の車検証の走行距離を1度消す。そして、立て続けに再度車検を受け、1回前の走行距離も消すという手法だ。これは、車検回数に法令の定めがないため、手数料や税金を納めれば何度でも受けられるしくみを悪用したものだ。

改ざん車は主にネットオークションで販売

こうした車両はネットオークションなどで販売されていた。驚くことに、こうして販売された車両は約2,000台にものぼるという。

過去の最大走行距離を義務付ける新制度が発足したが・・・

この問題を解決するために、2017年1月からは車検証に過去の最大走行距離が記載されるようになり、走行メーターの改ざん行われたとしてもひと目で分かるようになった。

ただ、この新制度も車検を受けないと記載されない。つまり、2017年1月から現在までの間に車検を受けたクルマは問題ないものの、それ以外のクルマは未だ大きなリスクを抱えていることになる。また、この制度でも次回車検が来る2年の間に走った分を改ざんされる可能性も残る。例えば最大走行距離が3万キロで、次回車検までの2年間で計6万キロ走ったとしよう。車検直前にメーターを3.5万キロに改ざんされれば、見破ることができない。

さらに、新車で購入後3年後の1回目までの車検までに10万キロ走ったクルマが、1回目の車検時直前に2万キロに改ざんされても見破ることはできない。かなりリスクが減ったとはいえ、走行距離の改ざん方法の抜け道はあるままだ。

メーター改ざん車を買わないために気をつけること

こうした問題について、中古車大手のガリバーで在庫のコントロールを行うMDチームリーダーの阿部直揮氏に聞いた。
「中古車業界そのものは、かなりクリーンな状態になっています。走行距離の改ざんは、リスクが高く手間もかかるため、犯罪者心理からすれば割に合わない犯罪といえるでしょう。」

買取店での査定を受けると業界のオークションデータと照合

「初回車検や2年車検の間で改ざんが行われることは可能ですが、この改ざんも非常に難しいでしょう。1度でもガリバーのお店など買取店で査定していたり、オークション会場を経由していれば、日本オートオークション協議会のデータベースに登録されるしくみになっているからです。」

個人でも走行距離データの照合依頼は可能

走行メーター管理システムと呼ばれるこのシステムを使った日本自動車査定協会では、消費者窓口(詳細はこちら)を設置。現車を持ち込み、手数料を支払えば走行距離照合結果シートを発行してくれます。

過去の整備記録簿がない車は要注意!

「ただ、こうしたデータベースに無いクルマもあるのは事実です。こうしたリスクを避けるためには、整備記録簿がしっかりと残っているクルマを選ぶことがポイントです。整備記録簿には、クルマを整備するごとに走行距離が記録されるからです。現状のメーターと比べてみれば、改ざんしていることがすぐにわかります。」


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「悪意を持って改ざんしているクルマは、過去の整備記録簿が無いことが多いです。年式が新しいクルマなのに整備記録簿が無いクルマなどは、改ざんのリスクが高いと言っていいでしょう。」

多くの中古車店は、走行距離が改ざんされたクルマを誤って仕入れることがないように仕組み化されている。つまり、こうしたシステムを導入している中古車店での購入は安心ということになる。

個人間売買でのリスクはどう避ける?

一方で、個人間売買ではこのようなしくみが存在しないのが現状である。
では、クルマの個人間売買を行う場合にこうしたトラブルを回避する方法はないのだろうか?

中古車販売大手が運営する個人間売買サービスも登場

ここで重要なのは、どこのサービスを利用するかということだ。 つまり、個人間売買のリスクを避けられる、信頼できるサービスかどうかを見分ける必要がある。

中古車大手のガリバーでは、店舗での中古車販売だけでなく、 「ガリバーフリマ」と呼ばれる個人間売買サービスを運営している。ガリバーが運営しているとはいえ、あくまで個人間売買を支援するためのものなので、ガリバーフリマに出品されているクルマを購入する場合にかかる消費税はゼロである。また、出品されているクルマの多くがガリバー店舗での査定を行っているため、走行距離の改ざんをはじめとした様々なトラブルを回避できるしくみになっている。

査定済みの車を選べば安心

ガリバーフリマの「ガリバー査定済み」マークのある車両なら、前述した通り、日本オートオークション協議会のデータベースに登録されているクルマかどうか確認し、走行距離改ざん車かチェックされている。

当然ながら、整備記録簿などの基本的な確認も行うため、あらゆるリスクを回避できる可能性が高いだろう。メーター交換がされていたり、その恐れがある車両に関しては、サイト内に表示。もちろん、修復歴の有無もチェックされているので安心だ。

その他、金銭や書類の受け渡しをサポートしてくれるサービスや、通常の個人間売買では難しいローン、整備や保証なども用意されているので便利。クルマの個人間売買もユーザーがサービスを選べる時代になってきている。