ミニバン編
安全なミニバン選びのポイント
Mクラス/Lクラスのミニバンはボディサイズが大きいため、死角が多い。この死角に小さな子どもがいることに気が付かないままバックして衝突するなど、悲惨な事故が少なからず起きているのが現状だ。そのため、ミニバン選びの際は死角衝突リスクを軽減する機能を持つ安全なクルマを選択したい。
各メーカーは衝突リスクを下げる技術の開発に邁進している。トヨタの場合はパノラミックビューモニター、日産はアラウンドビューモニターだ。車体に取り付けられているカメラの映像を加工し、車体を俯瞰から見たような映像に変換。車両周囲に何があるかひと目で分かる。ひと目で車両周辺の障害物に気が付くので、うっかり衝突リスクは大幅に減らすことが可能だ。
日産のアラウンドビューモニターの場合、カメラ映像の範囲外から近付く人や車両も検知し警報を発してくれる。運転が苦手な人でも、安心して運転できる。
また、走行中に死角で起こる衝突リスクを減らしてくれる機能も重要だ。メーカーによって呼び名は異なるが、以下の装備を持つクルマを選択したい。
- 後側方車両接近警報:車線変更時、隣接する車線に車両が接近していて、衝突する危険がある場合に警報を発する
- 後退時車両接近警報:バックで出庫するときなど、後方左右から接近する車両を検知し、衝突するリスクが高い場合、警報を発する
車線変更やバック出庫などは、日常の運転で頻繁に行う操作だ。それだけに、上記機能は事故リスクの低減に大きく役立つと言える。
自動ブレーキの検知対象/シーンは要チェック
歩行者と車両を検知する自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、標準装備が義務化されている。国産新型乗用車は2021年11月から、継続生産車は2025年12月から標準装備として実装されている。
つまり、現在新車販売されているほとんどのモデルに自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が標準装備されているということだ。
自動ブレーキなどの予防安全装備は先進技術。その進化はまさに日進月歩だ。同じメーカーの同じ安全装備名であっても、開発時期によって検知対象や検知シーンなどに違いがある。予防安全装備を重視するのであれば、検知対象や検知シーンなどをしっかりチェックしたい。
安全なミニバン トップ5
TOP.1
トヨタアルファード&ヴェルファイア

アルファード&ヴェルファイアは、2023年6月にフルモデルチェンジし4代目となった。先代の3代目にあたる30系アルファード&ヴェルファイアの予防安全装備は、Lクラスミニバンとしてはやや物足りなかった。しかし4代目の40系アルファード&ヴェルファイアの予防安全性能は飛躍的に向上している。最新の予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」は全グレードに標準装備した。
特に重要な自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、車両に歩行者と自転車に加え自動二輪車も検知できるようになった。
さらに、検知シーンでは交差点内右折時の対向車、右左折時の歩行者や自転車も検知可能となっている。さらに、交差点進入時の出会い頭時も車両と自動二輪車を検知可能だ。ミニバンではトップレベルの検知対象、検知シーンを誇る。
衝突が避けられないシーンでの緊急時操舵支援機能(自車線内に回避スペースがある場合、操舵支援を行う機能)は一部グレードに標準装備した。
ヘルプネットは全車標準装備となった。エアバッグが展開するような衝突事故が起きた時など、自動で専門オペレーターへ通報。状況により専門オペレーターが警察や救急への手配が可能な機能だ。コネクティッド機能を全グレードで標準装備とする車両はまだ数少ない。
こうした先進装備に加え、以下の機能も全車標準装備されている。
- ブライドスポットモニター(車線変更時など、隣接する車線にいる車両を検知し衝突リスクが高い場合、警報を発する)
- パーキングサポートブレーキ(バックで出庫時に後方から接近する車両や歩行者を検知し、衝突するリスクが高い場合、自動ブレーキが作動する)
安心降車アシストは、ブラインドスポットモニターのセンサーを使ったユニークな機能だ。駐車中に後側方から接近する人や車両・自転車と衝突の可能性のあると判断した場合、パワースライドドアを開く動きを停止。後方を確認せずに飛び出し、超突するリスクを軽減してくれる。小さな子どもが後席から出る場合などに安心できる機能だ。
運転支援機能も充実しており、ドライバーの疲労軽減による事故リスクを減らすことが期待できる。高速道路の渋滞時に一定条件が揃えばハンズオフが可能となるアドバンストドライブ(渋滞時支援)は一部グレードに標準装備された。
周辺車両接近時サポートも全車標準装備された。「あおり運転」に対応した機能で、至近距離の後方車両がいる場合、録画機能・通報提案機能が起動。SOSコールを使い、警察への通報なども可能だ。
40系アルファード&ヴェルファイアは、多種多様な予防安全装備をほぼ標準装備化した。これほど多くの予防安全装備を用意しているミニバンは、40系アルファード&ヴェルファイアのみと言えるので、ナンバー1とした。
TOP.2
トヨタヴォクシー&ノア

90系ヴォクシー&ノアの予防安全装備のレベルは非常に高い。機能的には1クラス上のアルファード&ヴェルファイア近い。ただし、オプション設定も多い。今回はオプションをすべて選択した前提として2位とした。
4代目にあたる90系ヴォクシー&ノアは2022年4月にデビューした。先代である3代目80系ヴォクシー&ノアの予防安全装備は、ライバル車に対してやや見劣りしていた。しかし、90系ヴォクシー&ノアへフルモデルチェンジした際にその弱点を克服するだけでなく、Mクラスミニバンでトップレベルの実力を誇るモデルへと進化した。
90系ヴォクシー&ノアは、2022年デビュー当時の最新世代である予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」を全車に標準装備した。
重要な自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、従来の車両・歩行者・自転車に加え、自動二輪も検知できるようになった。交差点内では右折時の対向車、右左折時の対向方向や自転車も検知する。また、交差点への進入時に起きる出会い頭の衝突でも、車両と自動二輪車の検知が可能だ。アルファード&ヴェルファイア同様に、ミニバンでは、クラストップレベルの検知対象、検知シーンを誇る。
緊急時操舵支援もオプション設定された。ステアリング操作で衝突を回避できるとシステムが判断した場合、自車線内に収まるようにステアリング操作を支援する機能だ。
Mクラスミニバンも車体が大きく死角が多い。こうした死角に起因する衝突リスク軽減ができる装備も豊富だ。
ブラインドスポットモニターは、車線変更時などで、隣接する車線の車両と衝突するリスクが高い場合に警報を発する機能だ。安心降車アシストはブラインドスポットモニターとセットで設定されている。ブラインドスポットモニターのセンサーを使い、停止時に後側方から接近する人や車両・自転車と衝突の可能性のあると判断した場合、パワースライドドアの開放作動を停止させ、事故リスクを軽減してくれる。小さな子どもなどの急な飛び出し衝突リスクを軽減してくれる安心機能だ。ローテク装備だがオプション設定というのが惜しい。
パーキングサポートブレーキもオプション設定となっている。バックで出庫する際に、後方から接近する車両や歩行者を検知。衝突するリスクが高い場合、自動ブレーキが作動する機能だ。
エアバッグが展開するような衝撃を検知すると、自動で専門オペレーターへ通報してくれるヘルプネットは標準装備されているので安心だ。ドライバーの意識がなくても専門オペレーターが状況により、警察や消防に通報してくれる。
このヘルプネット機能を使ったドライバー異常時対応システムも標準装備されている。レーントレーシングアシスト(LTA)制御中にドライバーの無操作状態が継続している場合、自車線内に減速停車する機能だ。ドライバーの早期救護や、車両の暴走による二次被害リスクを低減してくれる。
TOP.3
トヨタシエンタ

コンパクトミニバンの10系シエンタ(3代目)は2022年8月にデビューしたモデル。全長わずか4,260mmという小さなボディサイズながら、3列シートで7人乗りを可能とした高効率パッケージが特徴だ。
デビュー時には、2022年当時最新世代の予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」を標準装備した。
重要な自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は車両、歩行者、自転車、自動二輪の検知が可能だ。交差点内では右折時の対向車、右左折時に対向方向や自転車、交差点での出会い頭時も車両と自動二輪車を検知することが可能。より多くの検知対象と検知シーンに対応し、衝突リスクを大幅に軽減してくれる。
基本的な検知機能は、Lクラスミニバンのアルファード&ヴェルファイアと同等だ。コンパクトミニバンであっても、自動ブレーキの性能に差がない点は高く評価できる。10系シエンタの予防安全性能はクラストップレベルの実力だ。
トヨタセーフティセンスの機能を使ったPDA(プロアクティブ・ドライビング・アシスト)は、安全面やドライバーの疲労軽減に役立つ機能だ。他のモデルにも標準装備されている。この装備は、一般道などでアクセルとブレーキ操作をアシストしてくれる。例えば、前方の信号が赤でアクセルオフの場合、先行車との車間距離を維持しながら自動で減速。停止時には自らブレーキを踏む必要があるが、アクセルとブレーキ操作の回数が激減する。ストップ&ゴーの多い市街地では、疲労軽減に繋がる。
さらに予防安全機能として、停止中の車両や路肩の歩行者や自転車などにも近付き過ぎないようにステアリング操作などをアシストしてくれる。ドライバーの注意力低下による接触リスクが軽減できる安心機能だ。最初は少々違和感があるが、慣れると便利で安心できる。
ヘルプネットはオプション設定だ。エアバッグが展開するような大きな衝撃が車体に伝わると、自動で専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、状況により緊急車両の手配を行ってくれる。
このヘルプネットの機能を使ったドライバー異常時対応システムは、最上級グレード「ハイブリッドZ」に標準装備されたが、その他のグレードに用意されていないのが惜しい。この機能は、レーントレーシングアシスト(LTA)制御中にドライバーの意識がないような無操作状態が継続している場合、自車線内に減速停車。ヘルプネットを使いドライバーの早期救命や、暴走による二次被害のリスクを軽減してくれる機能だ。
全車速追従式クルーズコントロールに停止保持機能が付いているのは、最上級グレード「Z」系のみとなる。停止保持機能が無いと、渋滞時にやや不便だ。
10系シエンタの予防安全装備は、クラスが上のヴォクシー&ノアにも近いレベル。だが、多くのオプションを装備しないと物足りない仕様となる。そのため、オプション設定となっているすべての予防安全装備や運転支援機能を装備したことを前提に3位とした。
TOP.4
日産セレナ

6代目にあたるC28型セレナは、2022年12月に登場した。日産の予防安全装備は「360°セーフティアシスト」だ。この装備を支える重要な自動ブレーキは、車両と歩行者、そして自転車を検知と、平均的なレベルとなっている。
だが予防安全装備を360°セーフティアシストと呼ぶだけあり、BSW(後側方車両検知警報)やRCTA(後退時車両検知警報)といったローテク装備は全車に標準装備されている。車体が大きく死角が多いミニバンでは、こうした装備が必須だ。標準装備されている点は、高く評価できる。
しかし、プロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)や、SOSコールといったコネクティッド系装備は、最上級グレード「ルキシオン」にのみ標準装備だ。一部グレードでオプション、装備不可のグレードもある。もしもの時に頼りになる装備なので、積極的に選択したい。
C28型セレナでは、このクラス唯一の先進運転支援装備である「プロパイロット2.0」が標準装備されたグレード「ルキシオン」が設定されている。運転支援機能によるドライバーの疲労軽減は、注意力散漫を防ぎうっかり衝突リスクを下げるメリットもある。
プロパイロット2.0は、自動運転に近い先進技術だ。ナビに目的地設定し、高速道路を走行。一定条件を満たすと、高速走行時でもハンズオフが可能となる。車線変更やカーブなどでの走行は、運転スキルの高いドライバーのように正確で安定した走行が可能だ。一般的なドライバーの運転より安心できる。ハンズオフ状態で走行すると、肩や腕まわりの緊張がほぐれる。運転ストレスや疲労が低減されるメリットはかなり大きい。
プロパイロット2.0のような先進運転支援機能が装備されているミニバンはC28型セレナのみ、という点を評価して4位とした。
TOP.5
ホンダフリードe:HEV

3代目にあたるGT系フリードは、2024年6月に登場した。GT系フリードは、全長4,310mmというコンパクトなボディサイズながら、3列シート7人乗りを可能とした優れたパッケージングをもつ。
GT系フリードの予防安全装備は、多彩な機能をもつ「ホンダセンシング」を全車標準装備している。
重要な自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、車両と歩行者、自転車と平均的なレベルだ。交差点では右左折時の車両や歩行者、自転車を検知する。衝突リスクが高い場合、自動ブレーキが作動し衝突回避・被害軽減が可能だ。
ミニバンは死角が多い。頻繁に使うブラインドスポットインフォメーション(後側方車両接近警報)は衝突リスクを減らす便利な機能だ。車線変更時などに隣接する車線に衝突する可能性がある車両がいる場合に警報を発してくれる。AIRというグレード以外に標準装備されている。
後退出庫サポートは、e:HEV(ハイブリッド)車の一部にオプション設定されている。バックでの出庫時後方左右から接近する車両を検知し、衝突リスクが高い場合、警報を発する機能だ。ガソリン車は装備不可なのが惜しい。
同様に、マルチビューカメラシステムもe:HEV(ハイブリッド)車の一部にオプション設定。車体に取り付けられたカメラ映像を加工し、真上から見たような映像にして死角を無くしてくれる。こちらもガソリン車では選べないのは残念だ。
オプションで、コネクティッド技術を使ったホンダコネクトの「ホンダトータルケアプレミアム」を選択すると、エアバッグなどが展開するような事故が起きた時、緊急サポートセンターへ自動通報。その後、ドライバーの意識がない場合でも、状況に応じて警察や消防へ手配してくれる。他社のSOSコールやヘルプネットと同様の機能だ。
ガソリン車は後退出庫サポートやマルチビューカメラシステムなどのオプションが選べないというのは、安全性面でマイナス要因だ。今回のランキングでは、フリードe:HEV(ハイブリッド)でオプションをすべて選択したことを前提として5位とした。
まとめ
2025年現在、ミニバンの予防安全装備は、トヨタが完全に他社を一歩リードしている。大きな差になっているのが、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象と検知シーンだ。トヨタセーフティセンスは、車両と歩行者、自転車に加えて自動二輪も検知可能。他社は、自動二輪は検知対象外だ。検知シーンでは交差点内の右折時対向車、右左折時の対向歩行者と自転車まで検知する。
フリードのホンダセンシングも追随してきた。交差点内は事故が多い場所なので、より安全な自動ブレーキといえる。
アルファード&ヴェルファイアや、ヴォクシー&ノアには、ヘルプネットが全グレードで標準装備されているため、どのグレードを選んでも安心できる。
こうした装備の他に、以下のような日常使いで頼りになる機能も積極的に選択したい。
- 後側方車両接近警報、後退時車両接近警報(死角を減らし衝突リスクを下げる)
- アラウンドビューモニター、パノラミックビューモニター(カメラ映像を加工し車両を真上から見た映像に変換)
ミニバンは、家族や多くの人を乗せて移動するのに便利なクルマだ。それだけに、乗員の安全は重要。予防安全装備を軽視せず、機能をしっかりと理解して安全性の高いクルマを選びたい。
安全装備比較表
- ◯…全車標準装備
- △…一部標準装備または一部オプション
- ×…標準装備なし
トヨタアルファード/ヴェルファイア | トヨタヴォクシー/ノア | トヨタシエンタ | 日産セレナ | ホンダフリード |
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)検知対象 | ||||
---|---|---|---|---|
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車 |
車両、歩行者、自転車 |
踏み間違い衝突防止アシスト | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
サイドエアバック | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
カーテンエアバッグ | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
車線逸脱警報 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
車線維持支援 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
後側方車両検知警報 | ||||
◯ *安心降車アシスト付き |
△ *安心降車アシスト付き |
◯ *一部グレードオプション |
◯ |
◯ *一部グレード装備不可 |
後退時後方車両接近警報 | ||||
◯ |
△ *ブレーキ制御付き |
◯ *一部グレードオプション |
◯ |
× *一部グレードオプション |
オートマチックハイビーム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
ドライバー異常時警報システム | ||||
◯ |
◯ |
× *最上級グレードのみ標準装備。その他、装備不可 |
△ *最上級グレード標準装備。一部グレードオプション。一部グレード装着不可。 |
× |
SOSコール(ヘルプネットなど) | ||||
◯ |
◯ |
△ *一部グレード標準装備 |
△ *最上級グレード標準装備。一部グレードオプション。一部グレード装着不可。 |
△ |
JNCAP | ||||
★★★★☆ (2023年) |
★★★★★ (2022年) |
★★★★★ (2022年) |
★★★★★ (2023年) |
★★★★★ (2022年) |
※安全装備の詳細は各車メーカー公式サイトをご確認ください。