国産SUV編
安全なSUV選びのポイント
SUVは車体が大きく死角も多い上に、車重も重い。こうした車両が歩行者と衝突すれば、重大な事故になりやすい。それだけに、予防安全装備をより重視して選ぶべきだ。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は標準装備が義務化されている。国内で販売される国産新型乗用車には2021年11月から、継続生産車は2025年12月以降から実施された。
そのため、現在販売されているほとんどの車種が自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を標準装備している。保安基準が定めた自動ブレーキ検知対象の最低限レベルは、車両と歩行者だ。
自動ブレーキなどの予防安全装備は、先進技術の塊といえる。その技術の進化は日進月歩だ。2025年現在、車両や歩行者だけでなく、自転車や自動二輪まで検知できるモデルも増えてきた。基本的にはデビュー時期が新しいモデルほど、より高性能な予防安全装備を持つケースが多いが、マイナーチェンジで予防安全装備が進化していることもある。それだけに、新車選びの際は予防安全装備の性能をじっくりチェックする必要がある。
今回の「安全な車ランキング SUV編」では、人気が高い全長4.5m前後以下のコンパクトSUVからピックアップした。
というのも、SUVは車種が多く価格帯も幅が広い。高価格帯になれば、予防安全装備も充実するのは当然だからだ。
安全なSUV TOP5
TOP.1
レクサスLBX

レクサスLBXは、2023年11月に登場した新型車で、レクサスブランド最小のSUVだ。基本的なプラットフォームや1.5Lハイブリッドシステムなどは、トヨタブランドのヤリスクロスと同じ。しかし、レクサス車らしい大幅な改良やチューニングが加えられ、まったく違うモデルに仕上がっている。
レクサスの予防安全装備パッケージ「レクサスセーフティシステム+」も基本的に「トヨタセーフティセンス」と同じ機能を持つ。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、車両と歩行者、そして自転車に自動二輪と豊富。この検知対象の豊富さは、クラストップレベルだ。
事故の多い交差点内では、右折時の対向車と右左折時の対向方向車と自転車を検知して、衝突回避もしくは衝突被害軽減ができる。
ブラインドスポットモニター[BSM](車線変更時など、隣接する車線に衝突しそうな車両がいる場合、警報を発する機能)や、パーキングサポートブレーキ(バックでの出庫時に後方左右から接近する車両と接触するリスクがある場合に警報とブレーキが作動する機能)も標準装備化されている。
さらに、安心降車アシスト(ドアオープン制御付)も標準装備している。停車中に後方から接近する自転車や歩行者がいる場合で、ドアを開けると接触するリスクが高い場合、ドアオープンをキャンセルしてくれる。ブラインドスポットモニターを活かした機能だ。
また、コネクティッド機能を使ったヘルプネットも標準装備。エアバッグが開くような衝撃を受けた場合、自動で専門のオペレーターに通報する。ドライバーの意識がなくても、状況に合わせ救急車や警察への手配も行ってくれる機能だ。もしもの時に安心だ。
お勧めは運転支援機能の「Advanced Drive(渋滞時支援)」だ。一部グレードを除きオプションで装備できる。この機能は、高速道路などで約40km/h以下の渋滞時に、全車速追従式クルーズコントロールを使用中であれば、一定の条件を満たすとハンズオフが可能となる。ドライバーの疲労軽減に繋がり、注意力が散漫になることも防げる。
LBXは、ボディサイズのヒエラルキーを超えた小さな高級車を目指したモデル。それに相応しい過不足ない予防安全装備を標準装備化していることを高く評価してナンバー1とした。
TOP.2
スバルクロストレック

スバル クロストレックは、2022年9月に登場した新型コンパクトSUVだ。クロストレックは、従来「XV」という名のインプレッサベースのSUVだった。このモデルから、グローバルで使われていたクロストレックに統一されている。
クロストレックに搭載されているのは、スバル独自の予防安全装備パッケージ「アイサイト」。従来型から大きく進化している。
従来のアイサイトのセンサーにはステレオカメラが用いられていたが、進化したアイサイトには単眼広角カメラが加わった。計3つのカメラで前方を監視し、交差点内での右左折時には歩行者や自転車などを検知できるようになった。
見通しの悪い交差点進入時には左右から接近する車両を検知できるようになり、出合い頭衝突事故リスクの軽減も可能となった。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は車両・歩行者・自転車・自動二輪と、クラストップレベルの豊富な検知対象を誇る。
後側方車両接近警報や後退時車両接近警報も標準装備と、十分なレベルの予防安全装備が揃った
運転支援機能では、先進技術としてアイサイトXがPremium S:HEV EXグレードのみ搭載された。アイサイトXは、高速道路などで約50km/h以下になった渋滞時、一定の条件を満たすと、ハンズオフが可能になる。肩や腕周辺の緊張がなくなり、大幅な疲労軽減が可能だ。疲れによる注意力不足から起きる衝突事故リスクを軽減してくれる。
コネクティッドサービスである「SUBARU STARLINK」は、全車標準装備。しかしヘルプネットは、オプション設定だ。エアバッグが展開するなどの大きな衝撃を受けた場合、ドライバーの意識がなくても専門オペレーターに自動通報し、救急車の手配や警察への通報を行ってくれる。
クロストレックは、レクサスLBXのように高額なモデルではない。それでも、360°でリスクを軽減できる予防安全装備をほぼ標準装備化していることを評価し、2位とした。
TOP.3
トヨタヤリスクロス

トヨタ ヤリスクロスは、2022年8月にデビューした新型コンパクトSUVだ。1.5Lハイブリッドの超低燃費性能や、優れた使い勝手、広い室内などの優れた総合力を持ち、発売直後から大ヒットした。
予防安全装備パッケージ「トヨタセーフティセンス」も高いレベルにある。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、車両と歩行者の他に自転車や自動二輪車だ。交差点内では、右左折時の歩行者や自転車も検知し衝突回避、もしくは被害軽減できる。クラストップレベルの検知能力だ。
ブラインドスポットモニターは上級グレードに標準装備された。トヨタのコンパクト系ではオプション設定となっていることが多い機能だ。他のグレードではオプション設定、エントリーグレードは装備不可となっている。
ブラインドスポットモニターの機能を使った安心降車アシストも装備されている。停車時に後側方から接近する自転車などがいて、ドアを開けると接触するリスクが高い場合に警報を発する。ちょっとした不注意による衝突リスクを軽減してくれる便利な機能だ。
また、パノラミックビューモニターも上級グレードには標準装備されている。車両に取り付けられているカメラの映像を合成し、車両周辺を真上から見た映像に変換。車両周囲の障害物がひと目で分かるようにしてくれるものだ。
そして、ヘルプネットもコンパクトSUVながら標準装備している。コネクティッド技術を使い、エアバッグが展開するような衝撃を検知すると、自動で専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急や警察に通報するなどの手配を行ってくれる機能だ。
さらにドライバー異常時対応システムも標準装備されている。レーントレーシングアシスト(LTA)制御中にドライバーの無操作状態が継続している場合、自車線内に減速停車。ヘルプネットに自動接続して、早期のドライバー救命・救護をすると共に、暴走による2次被害拡大リスクを軽減する。
他のモデルではオプションになりがちなブラインドスポットモニターやパノラミックビューモニターなどが、ヤリスクロスの上級グレードでは標準装備されている。コンパクトSUVというカテゴリーながら、予防安全装備の標準装備化が比較的進んでいることも評価して3位とした。
TOP.4
トヨタカローラクロス

トヨタ カローラクロスは、2021年9月に登場したカローラベースのコンパクトSUVだ。ヤリスクロスよりも1クラス上のボディサイズをもつ。
このカローラクロスも1.8Lハイブリッドシステムによる超低燃費性能や使い勝手に優れ広い室内など、トータルバランスに長けたモデル。売れ過ぎて納期が超長期化し、何度か受注停止になったほどの人気モデルだ。ヤリスクロスより、1クラス上のボディサイズとなっている。
デビュー時の予防安全性能は、それほど高いレベルではなかった。しかし、2023年10月の改良で最新の「トヨタセーフティセンス」を装備したことで、一気ににクラストップレベルの予防安全性能を手に入れた。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)は、車両と歩行者に加え、自転車と自動二輪が検知可能。交差点内では、右左折時の歩行者や自転車、右折時の対向車なども検知でき、クラストップレベルの実力を誇る。
ヘルプネットも標準装備されている。エアバッグが展開するような大きな衝撃を検知すると、自動で専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急や警察に通報するなどの手配を行ってくれる機能だ。
さらに、ドライバー異常時対応システムも標準装備している。レーントレーシングアシスト(LTA)を使って走行中、病気などによりドライバーが運転できない状態が続いていると、自車線内に減速させ自動停車。ヘルプネットに自動接続する機能だ。早期のドライバー救命・救護を行うと同時に、暴走による2次被害リスクを下げてくれる。
車両周辺の予防安全装備をチェックしてみよう。ブラインドスポットモニターはオプションで一部グレードは装備不可。車線変更時などに隣接する車線に衝突する可能性がある車両がいる場合に警報を発してくれるブラインドスポットモニターには、安心降車アシストがセットで装備されるのでより安心だ。
パーキングサポートブレーキは、一部グレードを除きオプション設定となっている。バック出庫時などで後方左右から接近する車両などを検知し、衝突の危険があると自動ブレーキが作動するものだ。
パノラミックビューモニターは一部グレードにオプション、または装備不可。車両に取り付けられたカメラ映像を車両を俯瞰から見た映像に変換し、周囲の障害物をひと目で確認できる。
カローラクロスの予防安全装備は、全般的に高いレベルにある。しかし、多くがオプションなのが惜しい点だ。そのため4位とした。
TOP.5
スズキフロンクス

スズキ フロンクスは、2024年10月にデビュー。インドで生産され日本に輸入されているコンパクトSUVだ。
フロンクスは、全長3,995mmという小さなボディで、最小回転半径も4.8mと小さいことから、狭い道が多い日本で扱いやすいモデルだ。スタイリッシュなデザインと、小さなボディながら十分な居住性を持つ点が魅力。大ヒットしたため、2025年3月現在は長納期となっている。
フロンクスは、コンパクトSUVながら優れた予防安全性能を誇る。
スズキの予防安全装備パッケージは「スズキ セーフティ サポート」だ。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)を司るのは、単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」。検知対象は、車両と歩行者、自転車に自動二輪とクラストップレベル。交差点内では、右左折時の歩行者や自転車、右折時の車両も検知し、衝突回避もしくは衝突被害軽減が可能だ。
標準装備化されている機能には以下などが挙げられる。
- ブラインドスポットモニター(車線変更時に衝突リスクの高い車両がいる場合に警報を発する)
- リヤクロストラフィックアラート(バック出庫時などに後方左右から来る車両などと衝突するリスクが高い場合に警報を発する)
- 全方位モニター(車両周辺の死角を映像にしてひと目で分かる機能)
- ヘルプネット
(エアバッグが展開するような衝撃を受けると、自動で専門オペレーターに通報。ドライバーの意識がなくても、救急車の手配や警察への通報を行う)
自動ブレーキや車両周辺の予防安全装備など、多くの機能が標準装備されていて充実している。コンパクトカーで、ここまで標準装備化が進んでいるコンパクトSUVは非常に稀だ。こうしたことを評価して5位とした。
まとめ
コンパクトSUVは、人気カテゴリーとはいえ、やはり車両価格が重要視される。特にトヨタ車は、ブラインドスポットモニター、パーキングサポートブレーキ(後方接近車両)などを全車標準とせずにオプション設定とする傾向が強い。
こうした機能は、車両の横や後方からの衝突リスクを軽減してくれる。主に前方の事故リスクを軽減する自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)とセットにすることで車両の360°をカバーできる。より高い予防安全性能を重視するのであれば、必須といえる装備だ。
そういう視点で各車を見ると、多少機能が異なることもあるものの、標準装備化しているクロストレックやフロンクスは安全装備への志が高く評価できる。
予防安全装備は、自分が事故の当事者にならないため、もしくは事故の被害を軽減するための装備だ。安全性はクルマにとって、とても重要な要素。予防安全装備は、ケチってはいけない部分といえる。
安全装備比較表
- ◯…全車標準装備
- △…一部標準装備または一部オプション
- ×…標準装備なし
レクサスLBX | スバルクロストレック | トヨタヤリスクロス | トヨタカローラクロス | スズキフロンクス |
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)検知対象 | ||||
---|---|---|---|---|
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
踏み間違い衝突防止アシスト | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
サイドエアバック | ||||
◯ *運転席ニーエアバッグ |
◯ *運転席ニーエアバッグ、助手席シートクッションエアバッグ |
◯ |
◯ *運転席ニーエアバッグ |
◯ |
カーテンエアバッグ | ||||
◯ |
◯ 歩行者エアバッグもあり |
◯ |
◯ |
◯ |
車線逸脱警報 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
車線維持支援 | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
後側方車両検知警報 | ||||
◯ *一部グレードを除き降車時警告機能付き |
◯ |
◯ *一部グレードオプション、または装備不可 |
△ *一部グレード装備不可 |
◯ |
後退時後方車両接近警報 | ||||
◯ *ブレーキ制御付き |
◯ |
◯ *一部グレードオプション、または装備不可 |
△ *ブレーキ制御付き。一部グレード装備不可。 |
◯ |
オートマチックハイビーム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
ドライバー異常時警報システム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
✕ |
SOSコール(ヘルプネットなど) | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
JNCAP | ||||
★★★★☆ (2023年) |
★★★★★ (2023年) |
★★★★★ (2020年) |
★★★★★ (2022年) |
- |
※安全装備の詳細は各車メーカー公式サイトをご確認ください。