
車のエアコンガス補充を考えているということは、エアコン(冷房・クーラー)の効きが悪いときのはずです。「エアコンガスが減っているから、補充すれば直るんじゃないの?」そう考える方も多いですが、エアコンの不具合原因にはさまざまパターンがあるので、必ずしもエアコンガスを補充すれば改善されるわけではありません。
エアコンガスの補充について現役整備士が解説します。
- 車のエアコンガスとは?
- 車のエアコンガスが少ないとどんな症状が出る?
- 【事前チェック】車のエアコンガスの補充が本当に必要か注意しよう
- 店でエアコンガスの補充を相談する際の注意点
- 車のエアコンガスの補充にかかる費用の目安
- 車のエアコンガスの補充を自分でやる方法
- 整備士のまとめ
車のエアコンガスとは?
エアコンガスは車のエアコンシステムに充填されている専用の冷媒ガスのことです。エアコンガスの気化熱を利用することで冷房が機能しています。
エアコンガスの種類
エアコンガスは環境問題への影響等により、時代の変化に応じて使用されるガスが変化しています。
2020年前後がまさにそのガスが切り替わりつつあるタイミングで、市場では以下の2種類のガスが混在している状況です。
- HFC-134aまたはR-134a(従来のエアコンガス)
- HFO-1234yfまたはR-1234yf(ノンフロンの新しいガス)
それぞれ互換性はなく、134a以前は「R12」と呼ばれるガスが使用されていました。R12はオゾン層を破壊する成分が含まれていることから1996年に全廃されました。今後販売される新車はすべて1234yfへと切り替わっていきます。
エンジンルームまたはボンネット裏側に「充填されているエアコンガスの種類と量」が記載されたステッカーが貼り付けてあります。また、車両取扱説明書等にも同じ内容が記載されているので、これらを参考に使用している車のエアコンガスの種類を判断することができます。
エアコンガスの役割とエアコンが冷える仕組み
エアコンガスは冷房を効かせるために必要不可欠です。 エアコンシステム内でのエアコンガスの流れは以下のとおりです。
- コンプレッサーで圧縮される(高温高圧の気体)
- コンデンサで冷やされる(低温高圧の液体)
- エキスパションバルブで霧化される(低温低圧の気体)
- エバポレータをエアコンガスが通過する
- 再びコンプレッサーに戻ってくる
エアコンガスがエキスパンションバルブで霧化されるときの気化熱により、エバポレータを通過するエアコンガスは冷やされます。
エバポレータは熱伝導性の高い素材が使われており、エバポレータ自体も全体が冷やされます。そのエバポレータに風を送ることで通過する風が冷やされ、冷房の風となって吹き出し口より出てくるのが、自動車のエアコンシステムの仕組みです。
車のエアコンガスが少ないとどんな症状が出る?
エアコンガスが規定量より少ないと、冷房の効きが弱くなり出てくる風がぬるくなります。さらにエアコンガスの量が少なくなると、エアコンがまったく効かなくなることもあります。
また、エアコンガス量の低下は冷房の効きに影響があるだけではなく、冬場の暖房使用時にも支障をきたします。これは、A/CボタンをONにすることで除湿機能も働いているためです。
エアコンガスが少なくなると除湿機能の低下によって、窓の曇りが取れにくい症状が発生します。
また、エアコンガスが少なくなるとエアコン使用時に「シュ〜」という音が車内で聞こえたり、独特の臭いがエアコンの吹き出し口から出てきたりするといった不具合が生じる場合があります。
【事前チェック】車のエアコンガスの補充が本当に必要か注意しよう
エアコンが効かないからと安易にエアコンガスを補充してはいけません。エアコンが効かなくなる理由は様々ですから、本当に補充が必要か事前にチェックしましょう。
実際にわたしも仕事をしていて「エアコンが効かないからエアコンガスを補充して欲しい」というご要望をいただくことがあります。
しかし、エアコンガスの量は正常で、ほかの原因でエアコンが効かなくなっていることも少なくありません。
基本的にエアコンガスの補充は、ガス漏れしていない限りは不要です。
一般的な車の使い方をしていれば、定期的にエアコンガス補充をしなければエアコンが効かなくなるというようなことはありません。
エアコンシステムは完全密閉ではないため、エアコンガスが少しずつ抜けていくからガスの補充が必要という意見も見られます。 しかし、ガスが漏れていない限り補充しなければエアコンが効かないほどになるのは、かなり年式が古くなった車です。
(例:わたしの家族の車で新車から20年/20万km以上経過してますが、エアコンのガス補充やリフレッシュは未実施ながら効きは良好)
店でエアコンガスの補充を相談する際の注意点
エアコン修理の依頼をしたり、メンテナンスの相談をする場合、安易にガスの補充をお願いしないようにしてください。対応するスタッフが必ずしも整備に精通しているとは限らないからです。
エアコンのメンテナンスや修理ができるのは、整備工場やディーラーだけではなく、ガソリンスタンドやカー用品店などの身近な場所でも可能です。中には対応するスタッフが必ずしも経験豊富な整備士とは限りません。
たとえば、経験の浅いアルバイトさんなどの場合、お客さまからの依頼をそのまま鵜呑みにして、作業の必要性の有無に関わらず実行することも考えられます。
実際にあった経験談
わたしが業務中に実際に経験したことです。エアコンが効かないから診てほしいと言われた車を診断した結果、エアコンガスが入りすぎていることがありました。減ることはあってもなにもせずに増えることは絶対にないので、他で何かしらの作業をしていないかお客さまに伺ったところ
「エアコンガスの補充をガソリンスタンドでお勧めされたのでお願いした。その作業をしてからエアコンが効かなくなった」「スタッフさんは学生さんのような若い人だった」とのことでした。
実際にこのような経験が何度かあるので、エアコン修理の依頼は信頼のできる整備工場に依頼するようにしましょう。
また、その場合はガスの補充を安易にお願いするのではなく、エアコンの効かない確実な原因が分からないのであれば、その原因を調べてもらうように依頼するようにしましょう。
車のエアコンガスの補充にかかる費用の目安
エアコンガスの補充にかかる費用の目安は、4,000円~10,000円程度です。ただし、使用するガスの量や種類、施工方法によって大きく変わります。
エアコンガスの種類ごとの費用の目安
ガス缶1本(200〜250g程度)の補充目安の費用は以下のとおりです。
(※一般的な乗用車で使用する全ガス量は1台につき2〜4本で、350〜700g程度です)
| エアコンガスの種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| 134a | 4,000円〜 |
| 1234yf | 9,000円〜 |
| R12 | 7,000円〜 |
| R12対応代替ガス | 4,500円〜 |
1234yfのエアコンガスはまだ市場に出回っている数が少ないことから価格が高額です。今後、1234yfが主流になると費用が安くなる可能性があります。
R12はすでに生産されておらず、エアコンガスは当時販売されていたデッドストック品となるので費用が高くなる傾向にあります。
また、R12のエアコンガスが使われている車両には、環境に配慮された代替ガスの使用も可能です。その場合は本来のR12を使うよりも安く作業できます。
エアコンガスクリーニングで対応する場合もある
最近では、エアコンガスクリーニング/リフレッシュを謳った全自動でガスを入れ替える機械を導入している整備工場が増えています。この機械を使うメリットとして、抜けたガス量と充填したガス量を正確に計測することができる点にあります。
また、ガス中の水分や不純物を除去し、エアコンシステム内を真空引きした上で規定のガス量を充填するので、工程としてはエアコンガスを補充するだけよりも充実した内容です。
エアコンガスを補充する場合、こうした機械を使った作業を提案されることもあるでしょう。費用の目安は134aガスの場合で7,000円〜20,000円です。
エアコンガスの補充ができる場所と時間
エアコンガスの補充にかかる作業時間は30分〜1時間程度が目安です。エアコンの診断が必要になる場合には、追加で時間がかかります。エアコンガスの補充は、整備工場のみならずガソリンスタンドやカー用品店等でも実施できます。
車のエアコンガスの補充を自分でやる方法
車のエアコンガス補充は、専用の器具とガス缶さえ用意すれば自分ですることも可能です。整備士の目線で、エアコンガスの補充を自分でやる手順と注意点を解説します。
手順1.専用の器具とガス缶の準備と注意点
エアコンガスの補充には、内部の圧力を確認できるゲージ付きの専用器具が必須です。
また、専用の器具は対象の車で使われているエアコンガスに合ったものでなければいけないので注意が必要です。
たとえば、1234yfの車両に134a用の器具は接続部分の形状が異なるので、そもそも使用ができません。
手順2.ガスの補充は低圧側からおこなう
エアコンの配管にある低圧側のチャックに器具を接続します。
エアコンシステムには低圧側と高圧側の2箇所にチャックがありますが、チャック部の形状が異なるので装着間違いはないはずです。
また、配管は低圧側が太く高圧側が細いです。
(整備工場が使用するゲージマニホールドという器具は、高圧側にも接続して圧力を確認することができます)
手順3.エアコンガスを補充するときの車の条件
車のエンジンを掛けて、エアコンを以下のように操作します。
- A/CボタンをON
- 最強冷(MAX COLD)
- 最大風量
- 内気循環
この条件で指定のエンジン回転数にした時の圧力を読み取り、ガス量の補充が必要か確認します。 (エアコンガス圧が低い=ガスが減っている訳ではないので、注意が必要)
手順4.実際にガスを補充するときの注意点
指定のエアコンガス缶を器具に接続して、過充填にならないようにゲージの圧力を確認しながら補充します。
缶を逆さにするとエアコンガスが気体ではなく液体で入っていってしまい、エアコンコンプレッサーの故障につながる恐れがあるので注意しましょう。なかなかガスが入っていかないときは、湯せんして缶を温めてみましょう。
【前提】自分でエアコンガスの補充をするのはおすすめしない
「エアコンの効きが悪い=ガスが減っている」と判断してガスの補充を求める人がいますが、すでにお伝えしているようにエアコンの効きが悪くなる不具合要因は様々です。
もし、ほかに原因があるのにエアコンガス補充して規定量以上のガスが充填されてしまうと、エアコンシステム内部の圧力が異常上昇することでエアコンコンプレッサをOFFにしてしまい、エアコンが効かなくなくなります。
エアコン不具合の正確な診断はプロの整備士でも苦手としてる人が一定数います。
自分でガスの補充となると作業そのものも簡単ではなくて、ガスチャージ用の専用器具の使用方法にはコツや十分な知識が必要です。
よって、基本的には自分でエアコンガス補充をおこなうことはおすすめしません。
整備士のまとめ
確実にガス漏れしている場合を除いて、エアコンガスの補充は安易にしないことが重要です。
エアコンの効きが悪く悩まれている場合、まずはその原因を突き止めるために整備工場で車の状態を診てもらうことをおすすめします。
エアコンガスが漏れていたとしても、補充して騙し騙し乗ることは、エアコンコンプレッサーへ負担をかけたりすることにもなり、結果的に高い修理費用が発生することもあります。
不調の原因がわかった場合には、早めに修理をするよう心掛けましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。