日産リーフ日産車の雪上・氷上試乗が行われたのは、長野県中部にある女神湖。標高1,500mという場所にあり、冬は湖も凍結。そうしたことを生かし、多くの自動車メーカーがイベントで氷上ドライブを企画する。

今回、日産はこの女神湖に、ほぼフルラインアップに近い多くのモデルを持ち込んだ。基本的には4WD車が中心となるが、FF(前輪駆動)車やFR(後輪駆動)車も用意されていた。その中でも、注目したいモデルをピックアップしてレポートする。

  1. 雪上・氷上に強いのはどんな車?
  2. 1 リーフ/ノートe-Power
  3. 2 GT-R
  4. 3 ジュークNISMO RS
  5. 4 意外なほどに楽しいクルマがある日産!


緻密なモーター制御で、雪道の発進&加速も苦にしないリーフとノートe-POWER

多くの日産車を氷上で試乗した中で、意外なほどの実力をもっていたのがリーフとノートe-POWERの2台。両車とも254Nmという大トルクをもつモーターで前輪を駆動する。これだけ大トルクをもつクルマだと、雪上や氷上などの低ミュー路では、うかつにアクセルを開けるとホイールスピンが激しくなり、進まないばかりかスタック、もしくは登りの坂道ではずり落ちてしまうこともある。ところが、リーフとノートe-POWERの横滑り防止装置であるVDC (ビークルダイナミクスコントロール)とモーター制御が絶妙で、低ミュー路でも難なく発進が可能だ。

日産ノートさらに、走行中もこうした制御がいたるところで発揮されており、雪上でもパワーを上手くコントロ―ルして、シッカリとタイヤをグリップさせ、ドライバーの操作に限りなく忠実に動くようになっている。もちろん、こうした制御は明らかなオーバースピードなど、タイヤの限界を超えてコントロールできるものではない。 こうした制御の緻密さは、ノートの場合、ガソリン車を上回ると感じた。

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雪道でも圧倒的な速さを見せるGT-R


日産GT-RGT-Rは、マルチパフォーマンス・スーパーカーと自ら呼ぶ。どんな路面環境下でも、実力を発揮できるということでもある。GT-Rは、4WDなのでウェット路などパフォーマンスを発揮できるのは十分理解できるが、今回は氷上。さすがに、氷上ではさすがのGT-Rも・・・、と思われた。

しかし、GT-Rにはトランスミッションに「SAVE」モードがあり、これを選択するとエンジンの出力が抑制され、レスポンスがゆるやかになる。本来、ドライバーのアクセルコントロールで行うことがベストなのだろうが、こうした制御を使うことで、より運転が楽になり、GT-Rのあり余るパワーで無駄にホイールスピンを起こすことが減る。

さらに、横滑り防止装置であるVDC-Rのセットアップスイッチを「R」モードにすると、4WDの前後トルク配分を積極的に活かした協調制御となる。氷上では、すぐにホイールスピンを起こしやすくなるので、積極的に前輪にトルクを配分してくれた方が安定した走りになりやすい。この制御の恩恵で、氷上でも直線路ならある程度アクセルを踏み込んでも安定して走ってくれた。

カーブでも控えめに走っていれば、なんの問題も無く、それもかなりいいペースで安定して走れる。とはいえ、GT-Rなのだから、より積極的なドライブをということで、カーブで積極的にアクセルを開いていくと、大パワーがさく裂すると同時に景色が回転し始め、クルマがどこに向かうのか不明状態に・・・。GT-Rの場合、安定して走ってくれる速度域も高いので、コントロールを失うと、とても痛い目になる。繊細なアクセルコントロールができれば、かなりのハイスピードで氷上を駆け抜けていくことも可能。GT-Rは、まさにマルチパフォーマンス・スーパーカーだと実感した瞬間だった。

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最も曲がりやすく、乗りやすいと感じたジュークNISMO RS


日産ジュークNISMO RS今回は多くの日産車で雪上・氷上を試乗したが、最も曲がりやすく、運転がしやすいと感じたのがジュークNISMO RSだった。ジュークNISMO RSは、NISMOによる専用チューニングが施されており、1.6Lターボは214ps&250Nmにパワーアップ。専用サスペンションにボディ補強など、かなり徹底してチューニングされている。さらに、4WDシステムであるALL MODE 4×4-iまで、NISMOチューニングが施されている。ALL MODE 4×4-iは、従来のALL MODE 4x4-iで行っていた前後輪のトルク配分に加えて、後輪左右へのトルク配分を可能としている。 路面・走行状態に応じて、トルク配分比を前後間で100:0~50:50、後輪左右間で100:0~0:100まで最適にコントロールするというもの。コーナリング時は、外輪側に大きなトルクを配分することで、より曲がりやすくする。

これが、なかなか楽しい。ALL MODE 4×4-iを積むエクストレイルは、安定志向で後輪とそれほど大きなトルクをかけない。ところが、ジュークNISMO RSは、アクセルONで積極的に後輪にトルクを配分。さらに、外側にトルクを振るものだから、氷上とはいえグイグイノーズが入る。この制御が非常に気持ちよいもので、リヤタイヤの軽い滑りは許容するのだ。アクセルONでトルクが後輪に移り、リヤタイヤが軽く滑り出しても、ステアリングを上手く操作して上げるとアクセルを踏んだままグリグリと曲がる。滑り出しも穏やかになるようにコントロールされているので、とても扱いやすい。GT-Rは、かなり腕自慢じゃなければ扱いきれないが、ジュークNISMO RSは、そこそこのドライビングスキルがあれば十分に扱える懐の深さがあった。

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ノートとセレナとデイズしか売れていない日産だが、意外なほどに楽しいクルマがある


日産の国内販売は、コンパクトカーのノートに軽自動車のデイズ、そしてミニバンのセレナが基幹車種だ。かなり実用的なモデルばかりで、クルマ好きには面白みに欠ける感もある。ところが、こうした雪上・氷上試乗では、車種毎の資質が明確に出た。モーターで走るリーフとノートe-POWERは、雪道にも強いという実力を見せ、GT-Rは圧倒的な速さを氷上でもアピール。そして、モデル末期になったとはいえ、ジュークNISMO RSのALL MODE 4x4-i(トルクベクトル付き)は、走りの楽しい4WDの在り方を再確認させてくれた。実用車ばかり売れている日産車だが、走りの楽しいモデルもあり、ぜひこうしたモデルにも注目してほしい。

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。