ダイハツ タント 走りの新型vsコスパの旧型新旧比較レビュー

ダイハツ タントの新旧比較レビュー。新型となる4代目タントが2019年7月に登場した。
ダイハツの新世代のクルマづくり「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」による第1弾のモデルであり、クラストップレベルの安全性・走行性能を誇る。
内装・外装・安全装備などを旧型モデルと比較評価している。

この記事の目次 CONTENTS
1.ダイハツ タントの歴史・概要
2.コンセプト&エクステリアデザイン
3.インテリア&装備
3.走り、メカニズム
4.おすすめは新型タント?3代目タント?
5.新車値引き交渉のポイント
7.新型ダイハツ タント価格とスペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

1.ダイハツ タントの歴史・概要

初代ダイハツ タントは2003年に登場した。
「しあわせ家族空間」をコンセプトとし、全高1,725mmと軽自動車としては広い室内空間をウリにしヒットした。
近年、特に人気の高いN-BOXなどに代表されるスーパーハイトワゴンの先駆けといえるのがこの初代タントだ。

そして、スーパーハイト系の人気を一気に引き上げたのが2007年に登場した2代目タントだ。
後部座席がスライドドアになっており、さらに助手席側の前ドアと後ろドアの間にある柱(センターピラー)をなくしたミラクルオープンドアを軽自動車で初搭載した。
この2代目が大ヒットモデルとなり、2010年度にはワゴンRに次ぐ軽自動車販売台数ランキング2位となった。

2013年に登場した3代目タントも、広大なスペース&ミラクルオープンドアというキーコンセプトは変わっていない。

3代目タント(標準モデル)

加えて、軽自動車初となる自動ブレーキをモデル途中で装備するなど、安全性も向上し高い人気を得た。
しかし、ホンダN-BOXの牙城を崩すことはできず、軽自動車販売台数ランキングでは、常にN-BOXを追う状況が続いていた。

すべてを一新した新型4代目タント

打倒N-BOXを掲げ、2019年7月に登場したのが新型の4代目タントになる。

シリーズ4代目となる新型タントの外観

クラスナンバー1を目指したダイハツは、プラットフォームをゼロベースから開発。
ダイハツの新世代のクルマづくり「DNGA(ダイハツ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ)」による第1弾のモデルとなったのがこの新型タントだ。
また、新開発のエンジンやCVTも搭載。すべてが新しくなったタントの完成度は非常に高いレベルになっている。

2.コンセプト&エクステリアデザイン

たくましくなった新型タントとかわいらしさの3代目タント

新型タントの標準モデルは、気取らない頼もしさと楽しさを表現した「素を磨いた」スタイルとされている。
横長のグリルとヘッドライトを組み合わせ、ワイド感も強調され、たくましいフロントフェイスになった。

リア側も新型タントは少しスッキリした印象

3代目タントの標準モデルは、大きくクリっとした大型のヘッドライトを組み合わせ、全体的に優しいフェイスになっている。
愛着がわくような可愛らしさもあり、主に女性をターゲットにしていたことがわかる。

3代目タントのリア側

上品になった新型タントカスタム。元祖迫力系3代目タントカスタム

カスタム系は、新型と3代目の方向性がやや分かれている。
3代目カスタムは、LEDを使った元祖ギラギラやんちゃ系だ。
とにかく、迫力と目立つキャラクターで人気を誇った。

ヤンチャ感が人気の3代目タントカスタム

対して、新型カスタムは、ややギラギラやんちゃ感が薄まっている。
かわりに迫力あるスポーティーさが際立っており、3代目に比べ上品になった印象だ。

 

新型タントではスポーティーになっている

外見にかんしては、標準モデル、カスタム共にどちらが良いとか悪いというよりも好みの問題といえるだろう。
また、3代目タントのデザインは、発売から6年以上経った現在でも古臭く見えないのもポイントだ。

3.インテリア&装備

好みが分かれるインパネデザイン

新型タントと3代目タントは、センターメーターであることは同じでも、まったく異なるインパネデザインになった。
新型タントは、前後の凹凸が非常にあり、複雑な造形でかなりコッテリとしたデザインになっている。

新型タントのインパネまわり

3代目タントは、真逆のデザインでセンターコンソールに操作系を集め、シンプルでスッキリとしたデザインにまとめられている。

3代目タントのインパネまわり

外観デザインと同様に、こちらも好みが分かれる。

ルームミラーの視認性は3代目、前方視界は新型タントが優れる

新型タントの9インチナビは、モニターが大きく視認性に優れる。
ただ、ルームミラーの位置が悪く、後方を確認しようとすると、真上を見るよう頭を動かさなくてはならずやや視認性が悪い。
ルームミラーに関しては3代目の方が視認性がよい。
ただ、前方視界は新型タントが圧倒的によい。
より細く見えるピラーの効果もあり、運転もしやすい。

室内スペースはほぼ互角だが、使い勝手は新型タントか

室内スペースは、ほぼ互角といったところ。
ただし、新型タントは世界初の運転席ロングスライドシートを備えており、最大540mmもスライドする。

新型タントの運転席

使用するシチュエーションは限られるものの、運転席と後席間の移動が容易となっており後部座席に子供を乗せる親御さんたちにはうれしい仕様となっている。

クラストップレベルの安全装備を得た新型タント。3代目は年式・グレードにより安全性能に差がアリ

そして、重要なのは安全装備。これは、さすがに3代目は新型タントにはかなわない。
新型タントには、「スマートアシスト」が搭載されている。
従来型はスマートアシストⅢと呼ばれていたが、「スマートアシスト」に統一された。

この「スマートアシスト」は、歩行者検知式自動ブレーキを含む全15の機能をもつ。
この機能の1つである前走車追従式クルーズコントロールは、車線を維持しながら全車速で追従することができる。
停車から再発進まで可能で、高速道路などでは疲労軽減に役立つ。
また、軽自動車初となる駐車支援システム「スマートパノラマパーキングアシスト」も用意されている。

新型タントでは前走車追従式クルーズコントロールを搭載

もちろん、3代目タントに用意されたスマートアシストⅢも、新型タントほどではないものの十分な機能はもっていた。
ただし、気をつけなければいけないのはスマートアシストⅢが搭載されたのは2016年11月以降のモデルということ。
2015年4月にスマートアシストⅡが導入されているのだが、このシステムは歩行者検知しかしないタイプで自動ブレーキは作動しない。
予防安全装備を重視するのであれば、3代目タントのスマートアシストⅢ以降のモデルか新型タントがお勧めになる。

3.走り、メカニズム

走行性能、乗り心地、静粛性、すべてが3代目を大幅に上回る新型タント

すべてをゼロベースから開発されたという新型タントだが、それだけに3代目との差は歴然となった。
エンジンの出力そのものは、大きく変わらないが、3代目に比べるとやや加速がよくなっている。

エンジンを高回転まで回すと、やや賑やかになってくるものの、通常域での静粛性は非常に高くなっている。
3代目タントユーザーなら、すぐに実感できるレベルだろう。

乗り心地も大きな差になっている。
新型タントも、やや硬めの乗り心地であることに変化はないが、しなやかさが全く異なる。
3代目タントでは、やや大きな路面の凸凹ではガツンとくる衝撃があったが、新型ではサスペンションとボディでしっかりと衝撃や振動を吸収し、何事もなかったように通過することができる。
この乗り心地性能は、クラスを超えた実力だ。

新型タントの操縦安定性も大幅によくなっている。
カーブでは、クルマの傾き(ロール)がしっかりと抑えられている。
そのため、ドライバーの視線位置が大きく変化しないので安心感がある。

しかもステアリングを切った瞬間にクルマがゆっくりと傾くので、背の高いクルマ特有のすぐにグラグラする感覚も少ないので安心だ。

タントシリーズで群を抜いているカスタムRSの走り

好感度が高かったのが、カスタムRSの走りだ。
専用サスペンションに15インチタイヤが装着され、しっかりとした操舵感と他のグレードとは全く異なる機敏な反応をもつ。

タントシリーズの中で、最も走りが楽しいと感じる1台だ。

高速道路などでも、抜群の安定性をみせる。

3代目タントの走行性能が劣っているわけではない

走行性能面で比較すると、新型タントが圧倒的によい。
しかし、新型タントは同クラスで比較してもトップといえる実力だ。
3代目タントも、他のモデルと比べれば極端にわるいというわけではない。

4.おすすめは新型タント?3代目タント?

室内スペースはほぼ互角

室内スペースそのものは、それほど大きな進化がなく、ほぼ同等といえる。もちろん、使い勝手面では新型タントが上回るが、広さという視点だけなら3代目タントもまだまだいけている。

新型タント
3代目タント

デザインは好みでわかれる

デザインも同様。3代目タントのデザインは、基準車とカスタム共に意外と古臭く見えない。とくに、新型タントの基準車は、ややスッキリとし過ぎた感じもある。
また、重要なカスタムだが、ギラギラオラオラ感が随分薄まっている。
こうしたテイストが好きなのであれば、3代目タントという選択も悪くない。

新型タントカスタム
3代目タントカスタム

コスパ重視なら3代目がおすすめ

コストパフォーマンスという視点になれば、やはり3代目タントが上回る。
ダイハツのクルマは登録済み未使用車が多く出回っている。
登録済み未使用車とは、メーカーやディーラーの都合で買い手がいないのに自社名義で登録(届出)した車両のこと。
つまり、登録しただけで、ほとんど新車コンディションの車両なのだ。
一度登録すると、中古車扱いになるため、多くの中古車店の店頭に並んでいる。中古車扱いになるため、価格は新車よりかなり安く設定されている。
こうしたモデルを買えば、かなりお得だ。
とくに、3代目タントの未使用車は、新型タントが登場しており旧型になったので、価格は安めの設定になっているのでおすすめだ。

 

新型タントカスタムの荷室
3代目タントカスタムの荷室

5.新車値引き交渉のポイント

4代目ダイハツ タントは、フルモデルチェンジしたばかりの新型車なので、しばらくの間、値引きはゼロベースになるだろう。

ただ、新型タントは最強のライバルといえるN-BOXをかなり意識している。
そのため、N-BOXとスペーシアといったライバル車と競合させれば、多少の値引きには対応してくれるだろう。
商談時には、先にN-BOXなど、競合車の見積りをもって商談したい。
あくまで本命はN-BOXだとダイハツの営業マンに印象付けることが大切だ。
しばらくの間は、既納客への営業が中心になるため、それほど相手にしてくれないケースが多いので、数か月かけてじっくりと商談すると良い。

7.新型ダイハツ タント価格とスペック

新型ダイハツタントの価格は以下の通り

グレード 価格
L(スマートアシスト非装着車) 2WD 1,220,400円/4WD 1,344,600円
2WD 1,306,800円/4WD 1,431,000円
2WD 1,463,400円/4WD 1,587,600円
X ターボ 2WD 1,560,600円/4WD 1,684,800円
カスタム L 2WD 1,549,800円/4WD 1,674,000円
カスタム X 2WD 1,668,600円/4WD 1,792,800円
カスタム RS 2WD 1,749,600円/4WD 1,873,800円

新型タントのスペック

代表グレード:タントカスタムRSのスペックは以下の通り

ボディサイズ 全長3,395×全幅1,475×全高1,755mm
ホイールベース 2,460mm
最小回転半径 4.7m
車両重量 920kg
乗車定員 4名
エンジン種類 直列3気筒12バルブDOHCインタークラーターボ
総排気量 658cc
エンジン最高出力 47kW(64PS)/6,400rpm
エンジン最大トルク 100Nm(10.2kg・m)/3,600rpm
JC08モード燃費 25.2km/L
WLTCモード燃費 20.0km/L