この記事の目次 CONTENTS
打倒ホンダN-BOXの最右翼、4代目タント登場!
DNGAの採用で、ゼロベースから鍛え直した4代目タント
オラオラ系から卒業? タントカスタムの顔がマイルドになった!
使い勝手にこだわった室内。運転席はなんと540mmもスライド
高齢者に優しい装備を用意。しかし、スマートアシストは全車標準ではない
新型ダイハツ タントの選び方
ダイハツ タント価格、スペックなど

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

打倒ホンダN-BOXの最右翼、4代目タント登場!

ダイハツは、スーパーハイト系の軽自動車に属するタントをフルモデルチェンジし発売を開始した。
今回のフルモデルチェンジで4世代目となる。

タントが属するカテゴリーは、スーパーハイト系と呼ばれる。
全高が1,700mmを大きく超えるような背高の軽自動車だ。
従来の軽自動車マーケットは、ムーヴやワゴンRと呼ばれるハイト系ワゴンが人気の中心だった。
しかし、2012年頃から急速にスーパーハイト系へとシフトしていく。

その大きな理由が、2011年末に発売されたホンダ N-BOXの大ヒットだ。
N-BOXは発売直後から軽自動車販売台数ナンバー1に輝くなど、圧倒的な人気を誇った。

ダイハツは、早くからスーパーハイト系に着目し、2003年に初代タントを投入した。
2013年に満を持して3代目をデビューさせた際には、助手席側のピラーが無いミラクルオープンドアを装備するなど、広さと使いやすさをアピールした。

こうしたユニークな装備が高く評価され、2014年度の軽自動車新車販売台数では、N-BOXを抜き新車販売台数ナンバー1の座に輝いた。
だが、それ以降は再びN-BOXにナンバー1の座を奪われてしまう。

その後タントがナンバー1の座に就くことなく、4代目が投入されることになった。
3代目の販売台数は、N-BOXに続く2位であったものの、立派な数字を残した。それとともに、N-BOXに負け続けた悲運なモデルでもあった。

DNGAの採用で、ゼロベースから鍛え直した4代目タント

「打倒N-BOX」「新車販売台数ナンバー1奪取」を使命とするタントには、ダイハツの新世代クルマづくりである「DNGA(ダイハツ ニュー グローバル アーキテクチャ)」を採用している。
4代目はその第1弾のモデルで、当然クルマの土台となるプラットフォームもゼロベースから開発されている。

また、サスペンションや骨格もゼロベースで開発した。
操縦安定性・乗り心地の性能を最大限引き出すため、サスペンションを最優先で設計し、走りの質にこだわった。

さらに、ボディ強度を上げるため、曲げ剛性を従来比約30%向上している。
ボディ素材に、より強度の高いハイテン材の活用や構造合理化により、プラットフォームを含むボディ骨格全体で約40㎏の軽量化に成功している。
軽量化は、とても重要な要素である。
スーパーハイト系は背が高い分、車重が重くなりエンジンの負担が大きい。
そのため、軽量化は燃費向上に直結するし、走りの質も高められる。

エンジン、CVTも新しくなった

新型タントには、KF型と呼ばれる直3DOHCで660㏄の自然吸気エンジンとターボエンジンの2タイプが用意された。
ダイハツは、良品廉価が重要として、販価が高くなるマイルドハイブリッドシステムなどの技術は投入しない考えだ。
先代N-BOXもクラストップの燃費値ではないのに売れていたこともあり、マーケットは燃費性能だけを重視しているわけではないとも考えている。

今回投入された自然吸気エンジンの出力は、52Nm&60Nm、ターボは64ps&100Nmとなった。
出力自体は、先代タントとそれほど大きな差はない。

このエンジンには、世界初のスプリットギヤを用いた新開発のCVT「D-CVT」が組み合わされた。
D-CVTは、一般的な「ベルト駆動」に加え「ギヤ駆動を」を加えたもの。伝達効率の良い「ベルト+ギヤ駆動」を可能としたことで、伝達効率を約8%向上している。

同時に変速比幅もワイド化。低速域では力強くスムースに、そして高速域ではエンジンの回転を下げ低燃費化している。
高速走行中にエンジンの回転が低く抑えられれば、静粛性もよくなる。

この新エンジンと新CVTにより、先代に比べ加速度が約15%向上している。
先代の自然吸気エンジンはやや非力な印象があったので、こうした弱点も克服されている。

新型タントの燃費性能は、自然吸気エンジンで27.2㎞/L(JC08モード)。ターボ車の燃費は、25.2㎞/Lになった。

オラオラ系から卒業? タントカスタムの顔がマイルドになった!

新型ダイハツ タントのデザインは、基準車とカスタムの2タイプが用意されている。基準車は、一般的に女性を意識したデザインになる傾向が強いが、新型タントは、やや丸みのあるデザインながら塊感が強く、意外なほど力強いデザインとなっている。

驚きだったのがタントカスタムのデザイン。先代タントは、まさにギラギラ&オラオラ系の典型ともいえるデザインだった。このデザインが人気でタントカスタムは売れていた。

ところが、新型タントカスタムのデザインは随分マイルドになった。
オラオラ系からスタイリッシュ系になった印象が強い。
このデザインが、どう評価されるかも注目ポイントのひとつだ。

インテリアのインパネデザインは、かなりコッテリ系だ。
水平基調のデザインが採用されており、左右の広さ感をアピール。さまざまな要素が複雑に絡み合っていて、ややゴチャゴチャした印象が強い。
一方で、センターコンソール付近に操作系スイッチを集中させて、操作性を高めている。

使い勝手にこだわった室内。運転席はなんと540mmもスライド

新型タントは、使い勝手にもこだわっている。まず、エアコンなどの操作部分をあえてタッチパネルを使っていないのも好感がもてる。
タッチパネルは、揺れる車内で確実な操作が難しい。そのため、指先を注視してしまい、前方監視がおろそかになる傾向が強い。
使用頻度の高い操作系では、とくに安全運転面では疑問が残る。
ダイヤル式などであれば、慣れればブラインド操作が可能になる。
ただ、9インチのナビは、視認性がよいがタッチパネル式なので、扱いにくい。

また、Aピラーがさらに細くなったことで斜め前方の死角が減り、前方の視認性も向上した。
死角が減り、視認性が良くなれば、運転しやくなるのはもちろん、安全運転にも貢献する。

さらに、運転席は最大540mmものスライドを可能としたことで、運転席と後席間の移動が容易になった。
停車時など運転席に座ったまま後席の子供の世話をしたり、後席の荷物を取ったりすることも簡単だ。
このロングスライドは、安全性を重視し、シフトポジションがPレンジ以外では使えない設定になっている。
新しく装備された、左側のBピラーを無くしたミラクルオープンドアもユニークだ。

また、軽自動車初の助手席イージークローザーも用意されている。
助手席イージークローザーは、半ドア状態でも自動でドアが閉まる。

その他、軽自動車初の機能として、ウェルカムオープン機能も用意。
この機能は、降車する際、インパネに設置したスイッチを押しておく。
すると、買い物などを終えクルマに戻ったとき両手が荷物でふさがっていても、車両に近づくだけでパワースライドドアが自動で開くのだ。
高級車並みの便利機能である。

高齢者に優しい装備を用意。しかし、スマートアシストは全車標準ではない

新型タントは、使い勝手に優れた軽自動車だ。
子育て層がメインターゲットだが、高齢者の使い勝手の良さにもこだわっている。

高齢者の乗り降りをサポートする装備として、ラクスマグリップとミラクルオートステップを用意した。
ラクスマグリップは、助手席側フロントピラーに取り付けるタイプと、運転席/助手席のシートバックに取り付けるタイプのグリップを新開発。これにつかまって乗り降りできるので、足腰に不安のある人でも安心だ。

そして、ミラクルオートステップは、1,170mmのロングステップを助手席側に設定。新型タントは、低床フロアで乗り降りが楽だ。

しかし、足が不自由な高齢者だと、それでも不安に感じるという。
そうした乗降時の不安を減らす役割をもった装備がミラクルオートステップやラクスマグリップということになる。

ただ、こうした気配りがありながら、歩行者検知式自動ブレーキを含んだ予防安全装備「スマートアシスト」は全車標準装備ではない。
そのため、購入時は必ずスマートアシストが装備されているかを確認する必要がある。

スマートアシストの機能は、大幅に進化した。
歩行者検知式自動ブレーキなどの他に「車線逸脱抑制制御機能」や軽自動車初「ADB(アダプティブドライビングビーム)」、「標識認識機能(進入禁止)」、「ブレーキ制御付誤発進抑制機能(前方・後方)」などが用意された。

運転支援機能は「スマートアシストプラス」として、「全車速追従機能付ACC(アダプティブクルーズコントロール)」、「LKC(レーンキープコントロール)」、軽自動車初駐車支援システム「スマートパノラマパーキングアシスト、「サイドビューランプ」などが設定された。

安全装備においても、高級車と同等レベルに進化している。

新型ダイハツ タントの選び方

新型タントの選び方は、まず基準車かカスタムかという選択になる。
デザインの好き嫌いがあるが、高級装備を重視するのであればカスタムという選択になる。

また、走行性能重視である場合もカスタムがよい。
最上級グレードのカスタムRSは1,749,600円と高価だが、走行性能は基準車とはかなり異なり、高速道路などでもしっかりと走ってくれる。
セカンドカーというより、ファーストカーとしての価値も高い。
リセールバリューもカスタムの方が高め傾向だ。

エンジンは、ターボがおすすめだ。
大幅な軽量化が行われた新型タントだが、車重は900㎏を超えており軽くはない。
先代同様に自然吸気エンジンでは、急な登り坂や高速道路などで、やや力不足な印象を感じることが多くなる。
とくに、多くの乗員を乗せたときは、さらに力不足な印象が強くなる。
その点、ターボなら余裕たっぷりな走りが可能。エンジンの回転数も上がらないので、静粛性も高い。

全車速追従機能付ACCが基準車のXターボとカスタムRSにしかオプション設定されていない点が残念だ。
渋滞時に便利で疲労軽減にもなる機能なので、ぜひとも装着したい装備である。

こうした装備差もあり、やはりおすすめはターボモデルになる。

ダイハツ タント価格、スペックなど

  • L(スマートアシスト非装着車)2WD:1,220,400円/4WD:1,344,600円
  • L 2WD:1,306,800円/4WD:1,431,000円
  • X 2WD:1,463,400/4WD:1,587,600円
  • X ターボ 2WD:1,560,600円/4WD:1,684,800円
  • カスタム L 2WD:1,549,800円/4WD:1,674,000円
  • カスタム X 2WD:1,668,600円/4WD:1,792,800円
  • カスタム RS  2WD: 1,749,600円/4WD:1,873,800円
代表グレード タント カスタム
ボディサイズ 全長 3,395×全幅 1,475×全高 1,755(mm)
ホイールベース 2,460mm
最小回転半径 4.7m
車両重量 920kg
乗車定員 4名
エンジン種類 直列3気筒12バルブDOHCインタークラーターボ
総排気量 658cc
エンジン最高出力 47kW(64PS)/6,400rpm
エンジン最大トルク 100Nm(10.2kg・m)/3,600rpm
トランスミッション CVT
JC08モード燃費 25.2km/L
WLTCモード燃費 20.0km/L