日産デイズ vs スズキ ワゴンR徹底比較

日産 デイズとスズキ ワゴンRが属するハイト系ワゴンクラスは、各社看板車種を投入し、競合が多いマーケットだ。
非常にハイレベルなモデルが多く、価格や走行性能、燃費、居住性、使い勝手など、総合力が重視される。
2代目となり大幅に進化した新型デイズとクラストップレベルの実力派ワゴンRを比較した。

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この記事の目次 CONTENTS
日産デイズの特徴
スズキ ワゴンRの特徴
1.価格比較
2.燃費比較
3.デザイン比較
4.内装と使い勝手
5.走行性能の比較
6.安全装備の比較
7.リセールバリュー比較
8.購入時の値引き術
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

日産デイズの特徴

初代日産デイズは2013年に投入された。
日産と三菱の軽自動車に関する合弁会社NMKVから生まれた初のモデルだ。

初代デイズは、主に日産が企画し三菱が開発と生産を担当。
しかし2代目は、日産が企画・開発を行い、三菱が生産する形態に変更された。
三菱のeKワゴンとは姉妹車関係にある。

2代目日産デイズは、日産の技術が色濃く反映された。
注目は、日産の先進技術でもある「プロパイロット」が軽自動車に初採用されたこと。

「プロパイロット」は、同一車線内を維持しながら先行車に追従走行。
さらに、停止から再発進も簡単な操作で繰り返すことができる。
ホンダのN-BOXにも似た機能が装備されているものの、停止&再発進機能はない。
今のところ、軽自動車唯一の技術が採用された。

また、エンジンも全く異なるものとなり、燃費も向上。
燃費だけでなく、トルクも最大15%もアップされ、街中でより運転しやすくなった。

スズキ ワゴンRの特徴

スズキ ワゴンRは、まさにスズキの看板車といえるモデル。
スズキの持つ最新技術が投入されている。

2017年に登場したモデルはこれで6代目。マイルドハイブリッドシステムを搭載しており、クラストップの燃費値を叩き出している。

先代ワゴンRは、スティングレーデザインがやや大人し過ぎたこともあり、販売不振に陥った。
その反省もあり、6代目ワゴンRでは基準車と押し出し感の強いデザインのスティングレーの他に、新たに3つ目のデザインを用意。
選択肢を増やし、顧客ニーズに応えるのと同時に、デザインによる販売不振リスクを回避する作戦に出た。

また、燃費へのこだわりも強い。
さらにスズキの軽量化技術もプラスされ、クラストップの燃費値となった。
マイルドハイブリッドシステムはモーターの出力をアップしたことにより、クリープ時のみだがEV走行も可能としている。

1.価格比較

日産 デイズの評価は3.5点、スズキ ワゴンRの評価は2.5点

ややデイズにお買い得感あり

日産デイズの価格は、1,273,320円から、ワゴンRの価格は1,078,920円からだ。

エントリーグレードの価格を比較すると、デイズの価格はかなり高価な印象になる。
だが、デイズには歩行者検知式自動ブレーキなどが標準装備化されており、装備差が大きい。

デイズの売れ筋グレードになると思われるハイウェイスターXの価格は1,469,880円。
同等に近いグレード、装備になるワゴンRスティングレーXは1,488,240円だ。

微妙な価格差だが、わずかにスティングレーXが高い程度でほぼ互角に見える。
しかし、ハイウェイスターXの装備の方がやや充実している。
デイズには、サイド&カーテンエアバッグが全車に標準装備化されているのに対して、スティングレーXは装備されていない。
その他、細かい装備に若干の差があるものの、総じてデイズの方が安価な設定といえるだろう。

2.燃費比較

燃費性能では、クラストップの実力をもつワゴンRが勝る。

日産 デイズの評価は4.5点

日産デイズの基準車には、660㏄の自然吸気エンジンのみ。
他社のカスタムに相当するハイウェイスターにマイルドハイブリッドとターボのマイルドハイブリッド、計3つをプラスした3タイプのエンジンが用意された。

最も燃費が良いマイルドハイブリッド車は、JC08モードで29.8㎞/Lとなった。
ターボ車が25.2㎞/L、基準車が29.4㎞/Lとなっている。
マイルドハイブリッドと通常エンジンの差があまり無い点がポイントだ。

スズキ ワゴンRの評価は3.5点

スズキ ワゴンRは、マイルドハイブリッド車が33.4㎞/Lとデイズを圧倒。
ターボ車も28.4㎞/Lと、こちらもデイズを大きく超えた。
しかし、通常の自然吸気エンジンは26.8㎞/Lとなった。
このエンジンのみ、大幅にデイズに負けている。

マイルドハイブリッド車同士の比較では、燃費にこだわるワゴンRが圧倒している。
これはマイルドハイブリッドの性能差だ
でなく、スズキの軽量化技術による車重の差が大きい。
ワゴンRはデイズに比べて50㎏程度車重が軽い。
ただ、デイズの非ハイブリッドとなる基準車の燃費は、ワゴンRの非ハイブリッドモデルよりもかなり燃費性能が良く仕上がっている。

燃費XXkm/L※JC08モード 燃料消費率(国土交通省審査値)記載している燃料消費率は、新車時のカタログ燃費で、グレード・駆動方式・車両重量などにより異なります。燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象・渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)に応じて燃料消費率は異なります。

3.デザイン比較

デイズとワゴンRのデザイン性は、かなり方向性が異なる。
デイズは、ややスポーティやスタイリッシュといった方向を目指し、新たな軽自動車のデザインを提案。

対してワゴンRは、従来通りの迫力重視といった方向にある。迫力重視系デザインは、もはや見飽きた感もあるので、デイズのデザインに新鮮さを感じる。

日産 デイズの評価は4点

日産デイズのデザインは、基準車とハイウェイスターの2つが用意されている。

他モデルの基準車はどちらかというと女性を意識したデザインが多いが、デイズの基準車はシャープなツリ目タイプのヘッドライトデザインで可愛さというよりスポーティさをアピール。

ハイウェイスターは、ライバル車とやや異なるアプローチのデザインになった。
このクラスのトレンドは、押し出し感重視の迫力系。
いわゆるオラオラ系デザインで、LEDライトなども組み合わされギラギラ感もプラスされている。

しかし、デイズは意外なほどにスッキリシャープなフェイスにまとめられている。
オラオラ系好きにとっては物足りないが、品のあるデザインとなった。
このデザインが市場でどう評価されるのかにも注目だ。

スズキ ワゴンRの評価は3点

スズキ ワゴンRのデザインは、基準車とスティングレーの間にもうひとつのデザインをプラスし、計3つの顔を持つモデルになった。

基準車は、いわゆる女性向けといったデザイン。
柔らかく可愛らしいフェイスが特徴だ。

スティングレーは、大きく重厚なフェイスで迫力を重視。
その中間にあるFZグレードは、上下2分割されたヘッドライトをもち、精悍な顔にまとめられた。

3つのフェイスを持つことで、顧客はより自分好みのワゴンRを選ぶことができるようになった。

4.内装と使い勝手

高価だが9インチモニターは視認性抜群なデイズ。

日産 デイズの評価は3点

日産デイズには、新プラットフォーム(車台)が採用された。
これにより、ホイールベースは先代比+65mmとなり、後席のニールームは+70mmへと拡大されている。

この後席の広さは、クラストップレベルの実力。
後席の広さは十分といえる。

使い勝手面では、9インチモニターがセンターコンソール上部に設置された。
設置場所が高くなり、視線移動の少ない見やすい位置になったことは高評価ポイント。

しかも、9インチとモニターが大型なのでとても見やすい。

スズキ ワゴンRの評価は3.5点

スズキ ワゴンRの後席スペースも広大。

こちらもクラストップレベルの広さで、デイズとはほぼ同等。

使い勝手面でデイズより優れているのは機動性だ。
ワゴンRの最小回転半径は多くのグレードが4.4m。
15インチホイール装着車でも4.6mとなっており、軽自動車らしい小回りで狭い道でも苦労しない。

デイズに関しては、多くのグレードが最小回転半径4.5m。
15インチホイール装着車は4.8mになる。
特に、15インチホイール装着車を比較すると、ワゴンRの機動性が優れていることが分かる。

5.走行性能の比較

乗り心地はデイズが勝る。
ワゴンRはやや硬めな乗り心地で、全体的にタイヤのゴツゴツ感を感じる。

両車共にマイルドハイブリッド車なので、アイドリングストップからの再始動がとても静かで振動が無い。
一般的なガソリン車だと、セルモーターの音が大きく響き、エンジン始動時の振動が大きい。
市街地では何度も繰り返されるアイドリングストップからのエンジンの再始動。
何度も繰り返されるとだんだん不快に感じるが、デイズとワゴンRのマイルドハイブリッド車にはそれがないのでとても快適だ。

日産 デイズの評価は4点

660㏄の自然吸気マイルドハイブリッド仕様の出力は52ps&60Nm。
ターボのマイルドハイブリッド仕様は64ps&100Nmとなった。

先代デイズは、燃費性能優先といったエンジンで、トルクが細く、動力不足感を感じた。
2代目デイズは最大で15%ものトルクアップが施され、街中では十分なトルクがあり走りやすく感じる。
ターボは1.0Lクラスのトルクがあり、高速道路などでも余裕あるクルージングが楽しめる。

デイズは乗り心地重視といった印象が強い。
乗り心地面では14インチタイヤ装着車が最も快適だった。
静粛性も1クラス上といったレベルになっている。

ただ、15インチタイヤを装着したターボモデルは、専用のサスペンションチューングにするなどし、より走りの質を上げてほしかった。

スズキ ワゴンRの評価は4.5点

スズキ ワゴンRの660㏄自然吸気マイルドハイブリッドエンジンは、52ps&60Nmの出力をもち、ターボのマイルドハイブリッド仕様は64ps&98psをアウトプットする。

加速感は、デイズと比べるとややワゴンRが上回る印象。
これは、ワゴンRの車重がやや軽いことが影響している。

さらに、ワゴンRはマイルドハイブリッドのモーター出力が大きい。
そのため、アクセルを踏んだ瞬間のモーターアシストにより、レスポンスの良い加速が可能。
クリープ状態ではEV走行が可能なので、ハイブリッド車に乗っているという満足感がある。
このあたりの性能は、ワゴンRが優れている。

6.安全装備の比較

自動ブレーキを標準装備化したデイズ。標準装備化が進まないワゴンR

日産 デイズの評価は4.5点

日産デイズの安全装備は充実している。
歩行者検知式自動ブレーキ、車線逸脱防止支援、踏み間違い衝突防止アシスト、サイド&カーテンエアバッグなどは全車に標準装備しているので、どのグレードを買っても安心だ。
また、同一車線内を維持、前走車に追従しストップ&ゴーにも対応するプロパイロットも用意されている。

さらに、軽自動車初となるSOSコールがオプション設定された。
SOSコールは、専用ボタンを押すとオペレーターに自動でつながり、救急車手配などをしてくれる。
また、エアバッグなどが展開するような事故でドライバーの意識が無い場合なども、自動で救急車の手配なども行ってくれる。もしもの時に頼りになる装備だ。
もはや軽自動車の枠を超えた安全装備を得た。

スズキ ワゴンRの評価は3点

スズキ ワゴンRの安全装備は、少々物足りない。
未だ歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化されていない。

そのため、自ら積極的にスズキの予防安全装備パッケージ「スズキ セーフティサポート」を装備したモデルを選ぶが必要ある。

また、サイド&カーテンエアバッグも、ほとんどのグレードに用意さていない状態だ。
スズキはまだ、安全装備の標準装備化に及び腰といった印象だ。

7.リセールバリュー比較

日産 デイズの評価は3.5点、スズキ ワゴンRの評価は3点。
このクラスの軽自動車は、リセールバリューが高い傾向にあり、デイズとワゴンR共に高値で売却できる。

共通してより高値で売却できるのは、マイルドハイブリッド車であること、歩行者検知式自動ブレーキなどの安全装備が装着されていることが前提になる。
また、デイズならハイウェイスター、ワゴンRならスティングレー、もしくはFZグレードの人気が高いため、こうしたグレードも高値傾向だ。

装備面では、ナビやLEDヘッドライト、キーレスエントリーなどが装備されているとよい。
また、ボディカラーでは、やはり黒・白・シルバー系の人気が高い。
赤やブルーなどのボディカラーの場合、ルーフを異なる色に塗った2トーンカラーも高値での売却が期待できる仕様だ。

少々心配なのが、ワゴンRのリセールバリューだ。
ワゴンRは、ディーラーの都合で自社登録(届出)した未使用車が大量に流通している。
こうした未使用車の増加は、中古車価格を下げる傾向になる。

特に高年式系の価格が下落傾向になる。
安く未使用車を買ったのであればそれほど問題ないが、新車を購入してから3年以内に売却する場合、ワゴンRだと少々リセールバリューが低くなるケースが出てくるかもしれない。

8.購入時の値引き術

しばらく期待できないデイズの値引き。
ワゴンRは新車値引きより、未使用車がお買い得だ。

日産 デイズの評価は2.5点

日産デイズは、2019年にデビューしたばかりの新型車なので、しばらくの間値引きは限りなく「ゼロ」ベースとなるだろう。

ただ、国内の日産ディーラーは売れるクルマが少ない。
デイズは国内日産の販売台数を支える重要な車種。
2019年10月に予定されている増税後に、販売台数が大きく落ちることが予想されるため、10月以降を機に値引き額が拡大する可能性が高い。

しかも、ホンダN-WGNもフルモデルチェンジする予定。
こうなると、値引きを引き出す条件が整ってくる。
モデルチェンジしたN-WGNやスズキワゴンR、姉妹車関係にある三菱eKワゴンなどと競合させれば、新型車とはいえ一定の値引きが期待できる。

スズキ ワゴンRの評価は4.5点

スズキ ワゴンRは、デイズやeKワゴン、ダイハツ ムーヴなどと競合させれば、すぐに一定の値引きは提示される。

ただワゴンRの場合、新車値引き以外の購入術がある。
それは未使用車の購入だ。

未使用車とはディーラーの都合で買い手がいないのに、自社名で登録(届出)してしまった車両だ。

スズキは、こうした未使用車を多く生み出す傾向が強い。
未使用車は、一度登録してしまうと中古車扱いになるため、多くの中古車店で販売されている。
当然、新車価格より大幅に安くなる。
それでいて、登録しただけなので、ほぼ新車コンディションなのだからお買い得感がある。

ワゴンRの未使用車は多く流通しているので、未使用車同士を競合させ、さらに値引きを引き出せればお買い得だ。
好みのグレードやカラーの車両があれば、新車を買う理由が見つからない。

9.まとめ・総合評価

日産デイズとワゴンRの比較はなかなか難しい。

日産 デイズの総合点

29.5点/40点

スズキ ワゴンRの総合点

27.5点/40点

安全装備は積極的に装備したい

やはりデイズは、充実した安全性能と先進技術に魅力がある。
予防安全性能はどのグレードを買っても安心できる。
また、先進技術であるプロパイロットを装備すれば、高速道路の渋滞などでも大幅な疲労軽減が可能で、ロングドライブも十分に楽しめる。より多くの人に勧められるモデルだ。

対してワゴンRは、安全装備が物足りないので、どのグレードを選んでも安心とは言えない。
積極的にセーフティパッケージを装備したモデルを選ぶことが条件になる。
「クルマは凶器」などと呼ばれるような時代なのだから、メーカーは自らの責任で予防安全装備を充実させる責任がある。
また、サイド&カーテンエアバッグは、ほとんどのグレードに装備することさえできない。これも、残念なポイントだ。

ただし、燃費性能とマイルドハイブリッドシステムへのこだわりは高く評価できる。
このクラスで唯一、ハイブリッド車であることが実感できるモデルだからだ。
クリープ時だけだが、モーターのみで走行できるのはワゴンRのみ。
しかも、モーターがアシストしている感覚もしっかりと伝わってくる。
マイルドハイブリッド機能の造り込みは、さすがワゴンRだと感心させられる。

こうした部分ではデイズを凌駕しているワゴンRだが、営業面からくる安全装備の標準装備化が遅れていることがワゴンRのブランド力を下げている。

今のクルマを高く売るには下取りより買取

より高価に売却するコツは、まず愛車の正しい価値を知ることが重要。
正しい価値を知る手段が買取店での査定だ。
2~3店舗も回れば似たような金額が提示される。
この金額を目安に下取り価格と比べてみるといい。

ディーラーの場合、下取車と購入値引きを上手く調整して、買取店に下取り車を取られない工夫をするお店もある。
新車値引きを抑えた分、下取り価格を上乗せする。
こうなると下取車の適正な価格が分からなくなる。

そのため、新車見積り時には、必ず下取りありと無しの2つを出してもらうといい。
もちろん、値引き額は同じようにしてもらうことが前提。
下取り車のありと無しで新車値引きが変わるのであれば、なんらかの細工が裏で行われていると思っていい。

その上で、買取店での価格を比べてみて、一番メリットがあるところに売却すればいい。