この記事の目次 CONTENTS
BMW5シリーズとレクサスGS
レクサスブランドに不可欠なGS
インテリアの華やかさではレクサスGS
しっかりとパワーを生み出すBMWのエンジン
操作性という点ではレクサスGSに軍配
先進機能ではBMW5シリーズに軍配が上がる
中古車も視野に入れるとお得な買い物が

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMW5シリーズとレクサスGS

ドイツを代表する高級車メーカーBMWの5シリーズと、日本を代表する高級車レクサスのGS。どちらもEセグメントに属する上位モデルという位置づけである。BMWとレクサスという、出自が全く異なりながらも、実は迷っている人も多いこの2つのブランド。そこで今回は、この2台にスポットライトを当てて、比較の形を取りながらご紹介したい。

BMWブランドを支えてきた5シリーズ

BMW 5シリーズ 外観

累計で800万台ともいわれる、世界販売台数を記録する5シリーズ。誕生は45年前の1972年で、伝統のある1台といえる。現行モデルは2017年にモデルチェンジをむかえたばかりの7代目に当たる。

ボディタイプはセダンとステーションワゴンで、ガソリン以外にディーゼルやハイブリッドも選択可能。豪華な仕様のラグジュアリーや、スポーティな仕様のMスポーツといったグレードを用意している。

レクサスブランドに不可欠なGS

レクサスにとって初となる本格プレミアムセダンであったGS。海外向けであった初代GSの誕生は1993年と意外に古く、現行モデルは2012年から発売されている4代目。日本だけではなく世界的にも競合揃いのEセグメントに挑戦する日本のダークホース的存在である。

ボディタイプはセダンのみ、ガソリン以外にはハイブリッドであるGSハイブリッドがある。グレードには、スタンダードなバージョンL、スポーティ仕様のFスポーツ、豪華仕様のIパッケージがラインナップ。

レクサス GS 外観

インテリアの華やかさではレクサスGS

5シリーズに乗り込むと、そのインテリアの高級感に目を見張る。昔のBMWのイメージが強い人が見れば、驚くほどだろう。高級車にふさわしい質感を備え、シートの座り心地はまるでオーダーメイドしたようなフィット感。人間工学に基づいたドライバー重視の設計なので、実用性の高さはライバルの比ではない。

ただ高級感という点では、レクサスのGSが一歩上を行く。見せつけるような煌びやかさはないが、控えめな中にもしっかりと豪華さが感じられる。独自の加工が施された金属の加飾や天然木やアルミを使ったオーナメントパネルのほか、GS450hの一部グレードでは高知県産の天然竹を使ったステアリングなどは見事としか言いようがない。

それぞれのコンセプトで表現した「スポーティさ」

BMW 5シリーズ 内装

最近は上位クラスのセダンであっても、堂々とした中にもスポーティさを備えたデザインが増えてきている。それをどんな形で表現をするのかが、ブランドとしての腕の見せ所だ。

BMWの5シリーズは、水平基調のデザインで、それを表現している。BMWのシンボルである強調されたキドニーグリルと、それにつながるシャープなヘッドライトによって、ワイドさを強調。堂々としながらも重たくならない顔つきに仕上がっている。

対するレクサスGSは、デザインラインを上手く使うことで躍動感と品格を演出。レクサスの新しい象徴であるスピンドルグリル、L字型のLEDヘッドライトによって、力強く押し出し感のあるフロントマスクで仕上げている。

レクサス GS 内装

しっかりとパワーを生み出すBMWのエンジン

様々な技術が生まれている自動車業界だが、その要は今も昔もエンジンとそこから生み出されるパワー。それだけにエンジンのラインナップ、とりわけ排気量が小さくなっていく中で生み出されるパワーには注目したい。

BMWの5シリーズのエンジンラインナップは、以下の3種類。
・2.0リッター直列4気筒DOHCガソリンターボ
・2.0リッター直列4気筒DOHCディーゼルターボ
・3.0リッター直列6気筒DOHCガソリンターボ
※プラグインハイブリッドの直列4気筒DOHCターボ+モーターのバリエーションが加わる。

レクサスGSのエンジンラインナッは4種類で、ハイブリッド用である2.0Lレギュラーと2.5Lハイオクには、モーターが組み合わされている。
・2.0リッター直列4気筒DOHCガソリン(レギュラー)
・2.0リッター直列4気筒DOHCガソリンターボ(ハイオク)
・2.5リッター直列4気筒DOHCガソリン(ハイオク)
・3.5リッターV型6気筒DOHC(ハイオク)

3.5リッターV6エンジンを用意しているレクサスGSの方がパワフルなのではないかと思いがちだが、実は、最も排気量の大きい3.0Lモデルの5シリーズ「540i」で340ps。対するレクサスGSの最高出力は、3.5LのGS350で318psと、5シリーズの方が上を行っている。

もちろん、5シリーズのエンジンの魅力はそれだけではない。シルキーシックスと呼ばれるBMWの3リッター直列6気筒は、気持ちのよい吹け上がり、「完全」と表現する人もいるバランスなど、非の打ち所がない仕上がり。だが燃費が良い2リッター直列4気筒モデルでも十分なパワーがあり、どれを選んでも外れがないのは嬉しい。

ハイブリッドはトヨタの技術が光る

レクサス GS 外観

ただし、燃費という点に目を向けると、レクサスGSも捨てがたい。

ガソリンエンジンの場合は、例えば5シリーズの523iがリッター13.9km、レクサスのGS300がリッター13.4kmと大差はない。しかしハイブリッドで比べてみると、5シリーズの530eがリッター17.4km、レクサスのGS300hがリッター23.2kmと大きく水をあけられている。ハイブリッドカーのパイオニアとして、トヨタが長年蓄積してきた技術がしっかりと表れている。

ただしヨーロッパでは低燃費なクルマと言えばディーゼルが主流。BMWもディーゼルモデルでは21.5kmという、レクサスのハイブリッドに負けない数字をたたき出している。走りの好みがあるので単純比較はできないが、選択肢の一つとして覚えておきたい。

操作性という点ではレクサスGSに軍配

5シリーズやレクサスGSなどやや大きめのクルマを購入する時に気になるのが、その操作性。道幅が狭い日本においては、かなり重要な要素だ。

5シリーズの最小回転半径は5.7m。大きなサイズのセダンでありながら、小回りが利く。FR車の恩恵であり、この車輪の切れ角はFF車では得られない。しかし、同じEセグメントの中では最も長いホイールベースをもつため、安定性には優れるが操作性は劣ってしまう。

その点、GSの最小回転半径は5.3m。同じくFR車(4WDモデルもあり)であるが、ホイールベースは2,850mmと、5シリーズの2,975mmと比べると125mmも短い。これにより、GSの方が最小回転半径は小さくなっている。

このクラスのセダンではごく普通の数値なので、決して5シリーズの操作性が悪いわけではない。また走行安定性など、高速を走るという意味では5シリーズの方が使いやすいだろう。ただ日本の狭い道を走るとなると、レクサスGSの使いやすさはポイントが高い。

先進機能ではBMW5シリーズに軍配が上がる

2017年のモデルチェンジで、BMWの5シリーズが大きく変わったのが安全装備。日進月歩の技術だけに、モデルチェンジ直後のクルマに軍配が上がりやすい側面はあるが、今のところ、BMWの5シリーズの方が充実している。

車線逸脱警告機能や歩行者検知式の自動ブレーキは、このクラスでは今や当たり前。この5シリーズで注目したい機能は、半自動運転機能である「ドライビング・アシスト・プラス」。ドライバーが設定した速度で、先行車との車間距離を保ちながら、自動で加速や減速を行ってくれるBMWの先進テクノロジーだ。

それと比べてしまうと、レクサスGSは「目玉がない」という印象は否めない。車両の接近を歩行者に知らせる車両接近通報装置、坂道を察知して車両のずれ落ちを緩和するヒルスタートアシストコントロールなど、上級モデルならではなの機能が充実しているが、最近ではかなりメジャーになってきているものが中心。

モデル末期のレクサスGSはこの点では不利だが、モデルチェンジでは半自動運転が搭載されるという噂もあり、モデルチェンジ後の機能に期待したい。

コストパフォーマンスはレクサスGS

上記のような機能を備えた2台だが、BMWの5シリーズの価格帯は617~1036万円。対するレクサスGSの価格帯は577~843.5万円。

最廉価モデルで比較すると、523iが617万円。レクサスGSのGS300は577万円だから、レクサスGSの方が40万円ほど安い。また、ハイパフォーマンスモデル同士で比較すると、540i xDriveMスポーツが1036万円、レクサス450hが843.5万円で、レクサスGSのほうが200万円近く安い。

性能はもちろんのこと、レクサスというブランドも国内外で高く評価されている今日この頃。それを考えると、レクサスGSはかなりお手頃な値段だといっていいだろう。

BMW 5シリーズ 外観

中古車も視野に入れるとお得な買い物が

BMWの5シリーズはモデルチェンジをしたばかり。しばらくは、大幅な値下げは期待できないだろう。新車で買うなら、レクサスGSの方が価格交渉しやすい。

しかしモデルチェンジをしたばかりということは、先代モデルの中古車相場がぐっと下がり、低年式のクルマがお得に買える絶好のタイミングでもある。中古なら3シリーズの予算で5シリーズに手が届くし、5シリーズの中でも上級グレードに格上げして「シルキーシックス」を堪能するのも夢ではない。

新車で価格交渉をするにしても「中古車の価格もチェックしている」ということを伝えるだけで、交渉しやすくなる。せっかくなので、自分が満足できるものを購入してほしい。