BMWが7人乗りグランツアラーを発表し、国内メーカーの牙城だったミニバン市場に参入。ちょっとばかり贅沢をして他の人とは違うミニバンを乗りたいという人もいるのではないだろうか。一方で、海外発のミニバンの性能が不安という人もいるかもしれない。
今回はBMWの3列シート7人乗りミニバンのグランツアラーと、日本で人気のあるトヨタのヴェルファイアを比較してみたい。

この記事の目次 CONTENTS
傾向の異なるベースモデル300万円台ミニバン
より情熱的になった、トヨタのヴェルファイア
スポーティな小型か、たくましい大型か
大人数で乗車するならヴェルファイア
パワーユニットはどちらも選択肢豊富
グランツアラーの安全性はオプションで確保
両者とも、まずは中古でも検討を

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

傾向の異なるベースモデル300万円台ミニバン

グランツアラーはBMW初のミニバンであるアクティブツアラー(5人乗り)に続いて登場したミニバンである。BMWにおいては初の3列シート7人乗りであり、日本で販売開始となった2015年にも大きな注目を集めた。

ファミリー層に寄り添った、BMWのグランツアラー

BMW 外観

販売価格はベースモデルで300万円台とBMWの中では比較的低価格であり、ファミリー層にも優しい価格設定となっている。

●サイズ:全長4,565mm×全幅1,800mm×全高1,645mm
●燃費:16.9km/L(ベースモデル218i Gran Tourerの場合)
●新車価格:393万円~

より情熱的になった、トヨタのヴェルファイア

ヴェルファイアは2008年にアルファードGの後継モデルとして開発された大型ミニバンで、現在は2代目である。名前には「静けさの中に潜む情熱」の意が込められている。2015年には「高級サルーン」としての位置づけを意識してフルモデルチェンジされた。

2018年1月よりマイナーチェンジした新型ヴェルファイアが販売されるが、このマイナーチェンジでフロントグリルやフロントバンパーも変更され、より情熱的な一台となっている。

●サイズ:全長4,935mm×全幅1,850mm×全高1,935-1,950mm
 ※全高はモデルによって異なる。
●燃費:11.6-12.8km/L(ベースモデルZの場合)
      18.4-19.4km/L(ハイブリッドモデルの場合)
●新車価格:369万2,520円~(ガソリンエンジン)
461万円0,520円~(ハイブリッドモデル)

ヴェルファイア 外観

スポーティな小型か、たくましい大型か

グランツアラーは3列シート7人乗りと思えない、小ぶりなボディに仕上がっている。スポーティで無駄のないエクステリアは走っている姿も爽やかさであり、BMWならではの余裕ぶりもある。低めのボディなので車両の上に自転車なども積載しやすい。

ヴェルファイアは長さも高さもある大型ミニバンなだけあって、グランツアラーと打って変わって堂々とした外観だ。モデルチェンジをするたびにフロントフェイスの存在感が増しており、前から見ても実にたくましい顔つきをしている。

インテリアの質感も対照的

BMW 内装

グランツアラーのインテリアはエクステリアと同様にシンプルなものとなっている。素材にも統一感があり、すっきりとした見た目は好印象を覚える。グランツアラーは12種類のモデル展開があるが、モデルごとの違いもあまり大きくない。

ヴェルファイアはインパネ部分に注目するとかなり細々としており、グランツアラーとは随分異なっている。2015年のマイナーチェンジで高級感を増したが、実はグレードによっても素材が異なるので、事前によく確認してもらいたい。

大人数で乗車するならヴェルファイア

ヴェルファイアベースモデル及びハイブリッドのベースモデルのみ3列シート8人乗りだが、他のモデルは全て7人乗りである。

ヴェルファイアの長所は大人数であってもゆとりを持って座れる点だろう。3列目のシートもラゲッジスペースを削ってギリギリまでスライドすれば大人でも十分くつろぐことができる。

一方、グランツアラーはボディを小ぶりにしている分だけ窮屈だ。フロントシートはゆとりを持って座れるが、背の高い大人が2列目に座る場合は若干の狭さを感じる。3列目に至っては子どもしかくつろげそうにない。

グランツアラーは贅沢な5人乗りとして楽しめる

BMW 外観

そんなグランツアラーも、3列目はエマージェンシー用として考えておき、基本的には荷物スペースと割り切れる人にはむしろ便利だろう。はじめから5人乗りとしてクルマを使うと思っていれば、3列目を無くすことで560Lもの広いラゲッジスペースを確保できる。

小ぶりな分だけ日本においては使い勝手も良いクルマなので、大人数で使うことが多いというユーザーでない限りはこれでも十分楽しめるだろう。

パワーユニットはどちらも選択肢豊富

ヴェルファイアは3種類のガソリンエンジンとモデルと1種類のハイブリッドエンジンモデルが存在する。ガソリンエンジンでも3.5Lエンジンを搭載しているものは力強い走りをするが、他については見た目ほどの力強さを感じられず、少々残念な気持ちになる。

グランツアラーは2種類のガソリンエンジンモデルと1種類のディーゼルエンジンモデルが存在する。こちらは安価な割に燃費が程々に良い。また、安定性と操舵性のバランスが良く、安心感とドライビングの楽しさを両立している。

「走る楽しさ」を求めるならグランツアラー

BMW 外観

幅広いファミリー層にBMWのミニバンを愛用してもらいたいという思いがあってか、BMWはグランツアラーとアクティブツアラーのみ前輪駆動方式を採用し、より安定性のある走りを実現した。

しかしながら、グランツアラーは一定の操舵性もある。大きすぎないボディが7人乗りのクルマと思えないスムーズな走りを手伝ってくれることもあり、運転好きなドライバーにはヴェルファイアよりグランツアラーの方が大きな魅力を感じるだろう。

グランツアラーの安全性はオプションで確保

大事な家族の命を乗せて走るという点で、ファミリー層がクルマ選びにおいてよく気にする安全性。グランツアラーは標準装備である程度の安全性能を備えている。しかし、来年1月に登場するヴェルファイアは全モデルでトヨタ自慢のセーフティセンスを標準装備する。

正直なところ、グランツアラーの安全性能はトヨタのセーフティセンスに比べると劣ってしまう。しかしながら、オプションで追加すればグランツアラーもヴェルファイアと同等の安全性能が得られるので、大きな心配は必要ないだろう。

安全性能もグレードごとに異なるヴェルファイア

ヴェルファイア 外観

セーフティセンスを搭載しているという点でヴェルファイアの安心感は大きいが、実は安全性能に関する装備もヴェルファイアはグレードごとにかなり異なる。上位モデルでなければブラインドスポットモニターもオプション装備となってしまうのは残念な点である。

ヴェルファイアはオプションで追加できる装備も多いが、オプション追加に従って価格も大きく跳ね上がってしまうので、注意が必要だ。

両者とも、まずは中古でも検討を

ヴェルファイアは2015年のモデルチェンジを経て走行面などについても変化があったが、上位モデルに力を注いでいることもあり、グレードごとの差がかなり大きく感じられる。新型の上位モデルはかなり販売価格も高いので、中古での購入を検討してもらいたい。

7人乗りのクルマとしては、グランツアラーは課題が残る。しかし、こちらは価格を抑えながら走行性も維持しており、日本においては使い勝手も良い。こちらも近々改良型が登場するという情報があるので、両者とも、ぜひ中古で見積もりをとってみてもらいたい。