• トヨタ C-HR vs マツダ CX-5 徹底比較

トヨタ シエンタは2015、ホンダ フリードは2016年にフルモデルチェンジした。両車ともコンパクトミニバンというカテゴリーに属し、5ナンバーサイズのコンパクトなボディながら最大7人乗車を可能にした優れた室内設計が行われたモデル。さらに、どちらにもハイブリッド車が設定されており、すべての面で真向勝負といえるモデルだ。そんなフリードとシエンタを全8項目で徹底比較し、星の数で評価した。

ホンダ フリード、トヨタ シエンタともにパワーユニットは、1.5Lガソリンと1.5Lハイブリッドが用意されている。シートレイアウトも同じく、2+2+2の6人乗りと2+3+2の7人乗りを設定し、基本的にほとんど同じ方向性をもったモデル同士である。

フリードは、歩行者検知式の自動ブレーキを含んだ先進予防安全装備「ホンダセンシング」を標準装備化したモデルがあり、このクラスでは平均水準以上の安全性能をもつ。また、3列目を広大な荷室としてアウトドアや車中泊などで便利に使えるフリード+があり、顧客の多様性にも対応している。また、フリード ハイブリッドには4WDの設定がある。

ホンダ フリードの特徴

フリードは、歩行者検知式の自動ブレーキを含んだ先進予防安全装備「ホンダセンシング」を標準装備化したモデルがあり、このクラスでは平均水準以上の安全性能をもつ。また、3列目を広大な荷室としてアウトドアや車中泊などで便利に使えるフリード+があり、顧客の多様性にも対応している。また、フリード ハイブリッドには4WDの設定がある。

トヨタ シエンタの特徴

トヨタは、先進予防安全装備の装着に消極的である。歩行者を検知機能がある「トヨタセーフティセンスP」があるが、シエンタには、歩行者を検知できない自動ブレーキ「トヨタセーフティセンスC」しか用意されていない。さらに、それも全車オプションというかなり物足りない仕様だ。また、シエンタには派生車はなく、シエンタハイブリッドには4WDの設定がない。

1燃費の比較

  • フリード

    ホンダ フリードハイブリッドの燃費は、25.2~27.2㎞/L。売れ筋グレードのひとつ、ハイブリッドGホンダセンシングFF(前輪駆動)車は26.6㎞/Lだ。また、1.5Lガソリン車は、16.4~19.0㎞/Lで売れ筋グレードのGホンダセンシングFF(前輪駆動)車は19.0㎞/Lとなっている。

  • シエンタ

    トヨタ シエンタハイブリッドは、27.2㎞/L。1.5Lガソリン車は15.4~20.6㎞/Lとなっている。

売れ筋グレードで比較すると、シエンタハイブリッドの方がフリードに対して0.6㎞/L優れていることになる。ガソリン車も同様で、シエンタの売れ筋グレードの燃費は20.2km/Lなので、フリードより1.2㎞/L燃費が良いことになる。単純に燃費という視点で見るなら、ハイブリッド&ガソリン共にシエンタが勝る。これは、シエンタの方がやや車重が軽いこと。そして、フリードの方がハイブリッド&ガソリン共に、出力が大きい。出力が大きいほど、燃費は悪化傾向になるためだ。

2価格の比較

各車のおすすめグレードの価格は以下の通り。

  • フリード ハイブリッドG
    ホンダセンシング
    FF車7人乗り

    2,517,600円
  • シエンタ
    ハイブリッドG
    FF車7人乗り

    2,329,855円

ホンダ フリードの売れ筋グレードのひとつハイブリッドGホンダセンシングFF車7人乗りの価格は2,517,600円とかなり高価だ。トヨタ シエンタハイブリッドG FF車7人乗りは、2,329,855円となっている。フリードとシエンタを比較すると、随分シエンタの価格が安く見える。その差は20万円に近いくらいだ。ただ、若干装着されている装備が違う。まず、シエンタは今時のクルマとしては珍しく自動ブレーキなどの先進予防安全装備「トヨタ セーフティセンスC」が全車オプションで、これが54,000円。フリードにはLEDヘッドライトが標準装備化されているので、シエンタにLEDランプパッケージを付けると105,840円になる。こうなると、他の装備差はあるもののフリードとシエンタの価格差は同等程度といえるレベルになる。総じて両車とも高めの価格設定だ。約250万円という価格となると、ガソリン車となるが1クラス上の5ナンバーミニバンであるノア&ヴォクシーなどが手に入る価格帯だ。広さをより重視するなら、こうした選択肢もある。また、中古車ならノア&ヴォクシーハイブリッドも狙える予算なので、選択肢は豊富。ジックリと検討したい。

トヨタノアの中古車
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トヨタヴォクシーの中古車
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3内装デザイン比較

内装デザインは両車ともにデコラティブでカジュアルな印象が強く、高級感やスポーティさは感じさせない。質感は、ややプラスティック感が強いシエンタに対してフリードは木目調のパネルやスイッチ、メーターなどの上質感がある。250万円クラスの質感は確保している。

フリード 運転席

シエンタ 運転席

内装デザイン特徴

  • フリードの内装デザイン特徴

    フリードのインパネデザインは、左右に広がり感を持たせた水平基調のデザインが採用されている。メーターはダッシュボード上部に設置。視線移動を最小限に抑えながら、必要な情報を手にできるものだ。

  • シエンタの内装デザイン特徴

    シエンタも基本的に水平基調のデザインが採用されているが、助手席部分には柔らかな曲線が加えられ個性をアピールする。シエンタもダッシュボード上部にメーターを設置している。

4室内空間と使い勝手

両車とも2列目シートにキャプテンシートとなる6人乗り仕様がある。中央にスペースができるため、前後シートでの移動は容易にできる。ただし、2列目がベンチシートになる7人乗りは、2-3列目を倒すと中央に隙間の無いフラットな空間ができるので、使い方次第では7人乗りの方が便利に使えるケースもある。使い方によって6人乗りか7人乗りを選ぶといいだろう。室内空間の広さという面では、2列目、3列目共にフリードがやや広いといった印象だ。

フリード 後席

シエンタ 後席

  • フリード

    フリードには、16インチホイールの設定は無く15インチのみ。最小回転半径は、シエンタと同じ5.2mだ。荷室の使い勝手面では、開口部の地上高が低いフリードがやや有利といったところ。両車とも容易に自転車を積載できるスペースを確保。

  • シエンタ

    シエンタの使い勝手面では、かなり注意しておきたいのがオプションの16インチアルミホールだ。この16インチホイールを選択してしまうと、最小回転半径が5.2mから5.8mへと拡大される。5.8mという数値は、大型ミニバンであるアルファード&ヴェルファイア並み。こうなると、コンパクトカーなのに狭いところが苦手なクルマになる。とくに、狭い駐車場を使う人は、1度でクルマが入らなくなり何度も切り返す必要が出てくる。これでは、コンパクトミニバンを買うメリットが無くなってしまう。

フリード 前席

シエンタ 前席

フリード 後席

シエンタ 後席

フリード 荷室

シエンタ 荷室

5外装デザイン

フリードのボディサイズは、全長4,265×全幅1,695×全高1,710㎜。シエンタは、全長4,235×全幅1,695×全高1,675㎜。ボディサイズを比較するとフリードが全長で30㎜、全高で35㎜高い。シャープな面と線でデザインされたフリードに対し、シエンタは複雑で柔らかい曲線と色で魅せるデザイン。絶対的なサイズという面では、フリードが大きいのだが、全体的に塊感が強いため、遠目に見るとシエンタの方が大きく見えるくらいだ。

フリード 外装

シエンタ 外装

フリード 外装

シエンタ 外装

  • フリード

    フリードのデザインは、ひと目でホンダ車と分かるデザイン。シャープなボディサイドのキャラクターラインや細く鋭い眼光のヘッドライトなど、コンパクトミニバンながらスポーティなデザインにまとめられている。

  • シエンタ

    シエンタは、歌舞伎の隈取りのような独特のデザインが施されているのが特徴。好き嫌いが分かれるデザインと言われているが、マーケットでは好意的に受け止められている。コンパクトミニバンだから成立するユニークで少し可愛らしいデザインと言える。

6安全装備の比較

フリードとシエンタを比べる上でポイントとなるのは、歩行者検知式自動ブレーキの有無だ。

  • フリード

    フリードには、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備である「ホンダ センシング」が用意され、半数程度のグレードに標準装備化されている。ホンダセンシングが全車標準装備化されていない点は、非常に残念な点だ。ホンダは、安全思想として「Safety for Everyone」というキャッチフレーズを掲げているが、残念ながら安全思想とはかけ離れる設定になっている。フリードの初期受注では、約82%がホンダ センシングを装着している状態なので、早急な標準装備化が望まれる。

  • シエンタ

    フリード以上に問題なのがシエンタだ。シエンタは、まず歩行者検知式自動ブレーキが用意されていない先進予防安全装備「トヨタ セーフティセンスC」が全車にオプション装備となっているという悲惨な状況。もはや、軽自動車であるワゴンRなどにも歩行者検知式自動ブレーキであるデュアルセンサーブレーキサポートが用意されている時代だ。ひとクラス上のプリウスには、歩行者検知式自動ブレーキとなる「トヨタ セーフティセンスP」が用意されており、車種によって安全性能に大きな差別化が施されている。つまり、プリウスでは避けることができた歩行者との衝突事故でも、シエンタでは人身事故になるということになる。

クルマは、使い方を誤ると人を殺すことになる凶器となる。誰もが交通事故の加害者や被害者になりたくはない。現在の技術では、歩行者検知式自動ブレーキを装備することは容易。凶器となる商品を売る自動車メーカーは、積極的に歩行者検知式自動ブレーキを標準装備化し交通事故死を無くすための社会貢献をする必要がある。消費者側としては、まず歩行者検知式自動ブレーキが装備されたクルマを積極的に選びたい。また、衝突時のエアバッグ関連では、フリードはサイド&エアバッグが一部グレードに標準装備、もしくはオプション。約半分のグレードで装備できないという物足りない状況。シエンタは、全車にオプションだが、全グレードに装備が可能だ。


7走行性能比較

フリード エンジン

シエンタ エンジン

フリードハイブリッドのシステム出力は137psなのに対して、シエンタは100psなので、力強さという点ではフリードハイブリッドが勝る。また、ガソリン車もフリードが131ps&155Nmなのに対して、シエンタは109ps&136Nmとフリードが勝る。実際に試乗すると、ハイブリッドとガソリンともに、シエンタは燃費重視といった印象が強い。
乗り心地は、どちらもタイヤのゴツゴツ感がある。空気圧の高い低燃費タイヤの影響が大きい。それでも、ややシエンタの方が、やや乗り心地が良い傾向にある。
ただ、クルマのキャラクターがやや違っており、フリードはエンジンもパワフルでサスペンションもやや硬めなので、元気よく走れる。走っていて楽しいと感じるのは、フリードだ。ただ、フリードも速度域が低いと問題ないのだが、ある程度速度が上がるとカーブではやや傾きが大きくなる。大きく傾いても、リヤサスペンションがしっかりしているので不安はないのだが、もう少しクルマの傾きを抑えることができれば、さらに気持ちのよい走りが期待できそうだ。シエンタは、元気よく走ろうという気持ちにはならないタイプのクルマだ。

8リセールバリュー比較

リセールバリューとは、新車で購入した車が3年後にどの位の価値が残っているかを指標化したもので、リセール(再び売る)時の価値(バリュー)を残価率で示す。
例)新型シビック・タイプRのリセールバリュー新車価格が2,835,000円の3年後の買取価格予測は167万円~192万円で、リセールバリューは59%~68%となる。

  • フリード52~58%
  • シエンタ50~56%

中古車大手のガリバー調べによると、フリードの3年後のリセールバリューは52~58%。シエンタは、50~56%となった。人気モデルながら、両車ともリセールバリューは平均的な数値に止まっている。今のところ、ハイブリッドでもガソリンでもリセールバリューに大きな差は無いようだが、世の中は完全にハイブリッドブームだ。今後、低燃費志向は、さらに加速することを考えると、ハイブリッド車のリセールバリューが高くなるとも予想できる。そう考えると、ハイブリッド車を中心に購入を考えた方がいいだろう。
同様に安全性に対する考え方も重要になってくる。歩行者検知式自動ブレーキが装備されていないグレードに関しては、リセールバリューが低くなる可能性もある。また、コンパクトミニバンなので、両側パワースライドドアの有無もリセールバリューに影響してくるだろう。

リセールバリューが高い
(値下がりしにくい)車の
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9値引き術

値引きは、フリード&シエンタともにある程度期待できる。真向勝負している両車なので、必ず競合させて商談にのぞみたい。2017年1-3月の販売台数は、両車とも僅差で熾烈な争いとなっている。両車を競合させれば、それだけで一定の値引きが引き出せるだろう。場合によっては、ひとクラス上のロールーフミニバンである日産ラフェスタハイウェイスターなども加えてみるのもいいだろう。繁忙期である6-7月、9月、2-3月が狙い目だ。
シエンタは、トヨタの全チャネルで販売されている。これは、買い手に有利。トヨタ店とトヨペット店、カローラ店にネッツ店と、異なるチャネル同士で競合させるのもいいだろう。

フリードの新車
値引き術


シエンタの新車
値引き術


下取り処理は慎重に

そして、重要なのが下取り車の処理。トヨタは、不人気車種でも自社の下取り車には比較的高値を付ける傾向が高い。トヨタの不人気車種だとディーラーが強い傾向になるかもしれない。とはいえ、まず何も考えずに下取りに出すと、頑張って値引きを引き出した分が帳消しになる可能性もある。必ず買取店に行き、下取り車の正しい価格を知っておくことが重要。買取店の場合、人気車やすぐに次の顧客が見つかりそうなクルマの場合、かなり高値で買い取ることもあるからだ。とくに、多くの顧客を持つ多店舗展開をしている買取店は、顧客も多く流通の情報も多いので高値が期待できる。最終的に一番高値のところで売却すればいいだけのことなので、買取店に行く手間を惜しんではいけない。まずは今のクルマの買取相場を確認してみると良いだろう。

まとめ・総合評価

コンパクトミニバンは、小さいボディの中に多人数乗車を可能にした日本車ならではの高密度パッケージがウリ。日本の狭い道でも使いやすいので、とても便利なジャンルである。フリードもシエンタも、どちらも完成度は素晴らしく、甲乙つけ難い。ただ、おすすめするのはフリードだ。決定的な理由がシエンタには、歩行者検知式自動ブレーキがないことだ。子供を乗せることが多く、平日はママが運転するケースも多いだろう。家族をもしものときから守ることや、歩行者を傷つけてしまうリスクは最大限避けたい。色々なリスクを避けられる機能があることは、ファミリーカーにとって重要なポイント。そのためにはより高い安全装備のモデルが良い。フリードには、ホンダ センシングとサイド&カーテンエアバッグを装備したモデルがおすすめだ。

クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。
日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員


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