トヨタヴィッツ

 

<エコカー減税免税対応。ライバルと同等の競争力を得たが、やや高価な価格設定>

トヨタヴィッツ3代目となるヴィッツは、2010年12月にフルモデルチェンジ。高い低燃費性能をもつモデルだったが、ハイブリッド車でサイズもほぼ同じとなるアクアが登場すると、イッキにその存在感を失う。また、アイドリングストップ機能がオプションで高価だったこともあり、急速に進む低燃費化の波に対応できずにいた。その間、ノートやフィット、デミオというガソリン車がドンドンとエコカー減税免税対応となり、免税ではなかったヴィッツは輝きを失った。

そんな状況を打破するため、トヨタ は、コンパクトカー のヴィッツ を大幅にマイナーチェンジし発売を開始した。

今回のマイナーチェンジでは、燃費レベルを上げてエコカー減税免税を奪取する狙いがある。ライバルのノートやフィットと同じ免税でなければ、顧客にメリットが提示できず戦えないというのも当然だ。

そこで投入されたのが、新1.3Lエンジン。トヨタがハイブリッド技術で得たノウハウを投入したエンジンだ。この新1.3Lエンジンの特徴は、ハイブリッド車に採用しているアトキンソンサイクルのほか、クールドEGR、VVT-iEなどを採用している。その結果、世界トップレベルの最大熱効率38%を達成している。

一般的にアトキンソンサイクル化がされると、低速トルクが細くなり、力が無くなる傾向にある。しかし、この1.3Lエンジンは低速トルクをあまり犠牲にすることなく、さらにライバルよりもトルクフルな走りを可能とした。

ヴィッツの1.3L車の燃費は25.0㎞/Lで、クラストップレベル。カタログ上は、フィットの26.0㎞/Lを超えていない。これもカラクリがあり、フィットも13Gのみ26.0㎞/Lで、13G・Fパッケージが24.6㎞/L、13G・Lパッケージ24.2㎞/Lと実質の売れ筋グレードになると、実はヴィッツを超えていないのだ。そのため、実質的にヴィッツが燃費ナンバー1だと思っていいだろう。

ヴィッツには、1.0Lエンジンもあるが、これは少々微妙。先にマイナーチェンジしたパッソ に搭載された1.0Lの新型低燃費エンジンが、ヴィッツにはまだ搭載されていないので、低燃費性能では厳しい状態。パッソが優先ということもあり、今後に期待したい部分だ。

また、1.5Lエンジンも燃焼改善を実施し、アイドリングストップ機能をパッケージオプション化。1.5Lエンジン車は、アイドリングストップ機能付きが21.2㎞/L、無しが19.6㎞/Lとなった。今時、アイドリングストップ機能は標準装備が当たり前の時代。ハイブリッドで低燃費をアピールしているのに、アイドリングストップ機能が無しのグレードを用意するなんて、なんとも情けない状態だ。

低燃費性能だけではないのも、大きなポイントだ。エクステリアデザインも大きく変貌を遂げた。フロントフェイスは、可愛いからカッコいいへとガラッと雰囲気を変えた。ネッツエンブレムを中心に、ヘッドランプへ向かうアッパーグリルモールのV字ラインと、開口を大きく取ったロアグリルの組み合わせスポーティな印象をよりアピールする。オプションのプロジェクター式LEDヘッドランプを装着すると、さらに精悍なフェイスになる。フロントはとくに、マイナーチェンジ前のモデルの面影をほとんど感じさせないくらいのビッグチェンジだ。

また、スポーティグレード「RS」には、迫力のある大開口メッシュロアグリルを採用。よりスポーティなルックスとなった。

トヨタヴィッツインパネまわりも変更されている。メーターのデザインが変更され、よりスポーティなタイプとなった。アイドリングストップ機能搭載車には、メーター右下にTFTマルチインフォメーションディスプレイが装備。多彩なエコドライブを支援するコンテンツが用意されている。

使い勝手面も助手席前に大容量のアッパーボックスを新設定。収納に合わせて可動トレイの位置を3段階に変更可能とし、様々な用途に対応。ノートのようにティッシュボックスが入るという大型のものではなく、収納にこだわったタイプだ。

グレード展開は、ベーシックな「F」、華やかさを表現した「Jewela」、上質感を追求した「U」、スポーティな「RS」と、従来型と同様に4グレード。さらに、カスタマイズモデルとして、RSをベースとしたRS G'sが用意されている。

安全面では、全車に横滑り防止装置(VSC)および緊急ブレーキシグナルを標準装備した。ただし、物足りないのは追突被害軽減自動ブレーキが無いこと。これだけの大幅マイナーチェンジでも装備されていない。低速域だけだが、ライバル車はいち早く装備している。ここでも、またトヨタの安全装備の遅れが目立つ格好だ。

見栄えだけでなく、走行性能向上に対しても積極的だ。ボディ剛性を高めるスポット溶接の増し打ちや、床下の補強材の大型化も施された。ボディは、走行性能を支える重要な部分。その強化されたボディに合うようショックアブソーバーも改良され、操縦安定性と乗り心地を両立。走りの質感を高める静粛性向上のため、吸・遮音材、制振材を追加し、車内へのノイズ侵入を低減している。マイナーチェンジ前のモデルと比べると、乗り心地や静粛性はひとクラス上のパフォーマンスを持つレベルへ進化。

実際に乗ると、マイナーチェンジ前のモデルとは、全く違うクルマのように感じる。すべてが、1ランク上がった印象。静粛性や乗り心地は、トップレベルになったと感じるほどだ。

価格は、売れ筋グレードになると思われるFグレードが1,450,145円。低燃費性能が大幅に上がったのは良いが、やや高めの価格設定。装備はシンプルで、スマートエントリーとイモビライザーがセットのオプションを選ぶと46,440円アップ。そうなると約150万円という価格になる。

ライバルのフィット 13G Fパッケージは、同様な装備がついて約140万円と約10万円の価格差となる。フィットの燃費は24.6㎞/Lとヴィッツにわずかに劣っているが、燃費差で価格差を超えることは難しい。さらに、フィットは約150万円の13G Lパッケージにすると、フルオートエアコンやLEDヘッドライトまで装備できる。

まさに、王者の価格付けという感じで、リーディングカンパニーが他のライバル車より、安い価格で出したら、他メーカーが潰れちゃうでしょ? と、言った感じ。まぁ、確かにその通りなのだが。

実際に商談する場合、新型ヴィッツとフィット、ノート この3台は必ず競合させることが基本。各社、それほど大きな差がないので、コストパフォーマンスは重要。ジックリ商談して値引きを引き出したい。

<ヴィッツ1NR-FKE(1.3L)車価格>

・F 2WD(FF) 1,450,145~U 4WD 1,806,545円