長期に渡って高値を維持しているガソリン価格。ここでは最新情報を踏まえた今後の見通しを解説します。
今後のガソリン価格の見通しは?
2023年10月以降、全国のレギュラーガソリン価格は175円/L前後で推移しています。そして今後も、しばらくは同じような価格を維持する可能性があります。このように考えられる理由は以下の通りです。
- 原油価格の下落を見込めない
- 円高への大幅転換を見込めない
- ガソリン補助金は継続の見込み
詳しい理由は記事の後半でご紹介しています。
ガソリン価格の現状と推移
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「燃料油価格激変緩和補助金」(2024年4月2日時点)
冒頭でご紹介したように、現在全国のガソリン価格は平均で概ね175円/Lを維持しています(上図下方の数値)。ガソリン補助金の支給によって、この金額を維持している状態です。
ガソリン補助金の支給は2023年9月に終了予定でした。しかしガソリン価格の高騰が収まらず2023年末まで、その後さらに2024年4月末まで延長となっています。
都道府県ごとのガソリン価格
都道府県別に見ると、ガソリン価格に地域差があることが分かります。全国平均より10円近く価格が抑えられている地域がある一方、約10円価格が高くなっている地域もあります。
順位 | ガソリン価格が 高い都道府県 |
ガソリン価格が 安い都道府県 |
---|---|---|
1位 | 長崎県(185円/L) | 徳島県(167.2円/L) |
2位 | 長野県(184.4円/L) | 宮城県(168.8円/L) |
3位 | 大分県(182.3円/L) | 青森県(168.9円/L) |
4位 | 山形県(182.2円/L) | 岩手県(169.7円/L) |
5位 | 鹿児島県(181.8円/L) | 岡山県(169.8円/L) |
※出典:経済産業省資源エネルギー庁「石油製品価格調査」(2024年3月4日時点)
ガソリン価格を左右する要素
ガソリン価格の上昇・下落を左右する要素としては、主に以下の3つが挙げられます。
- 原油価格
- 為替レート(円高・円安)
- 税金
原油価格
原油価格は需要・供給バランスで変動します。
例えば2020年は、新型コロナウイルスの世界的流行により経済活動が停滞。これにより石油の需要が大幅に縮小し、ガソリン価格も120円台まで下がりました。しかし、その後は経済活動の再開や世界第3位の石油産油国であるロシアのウクライナ侵攻によりバランスが変化。ガソリン価格が大幅に高騰しました。
為替レート(円高・円安)
原油の供給をほぼ100パーセント輸入に頼っている日本では、為替レートもガソリン価格に影響します。
例えば原油価格が1バレル(約159L)=80ドルの場合、「1ドル=100円」と「1ドル=140円」では1バレルあたり3,200円の価格差が生じます。原油1Lあたりに直せば約20円の差です。このように円高ではガソリン価格が下がり、円安では上がります。
税金
私たちが支払っているガソリン代の3~4割は、税金で構成されています。ガソリン代に含まれている税金は以下の通りです。
- ガソリン税(53.8円/L)
- 石油石炭税(2.04円/L)
- 温暖化対策税(0.76円/L)
- 消費税(全体の10%)
ガソリンに関する税金は長年変わっていませんが、税負担が軽くなれば当然ながらガソリン価格も安くなります。またガソリン税の中に25.1円分の「当分の間税率」が継続して上乗せされていることや、ガソリン税等に消費税をかける「二重課税状態」といった問題点もあり、JAFからも長年にわたり税制改正の要望・提言がなされています。
道路整備の財源確保のため1974年に適用された税率。元々のガソリン税は28.7円だが、ここに「当分の間税率」として25.1円が上乗せされた。2010年にはガソリン価格に応じて上乗せ分を差し引く「トリガー条項」が設定されたが、東日本大震災の復興費確保のため、2011年4月に同条項は凍結された。
【関連記事】高すぎる!おかしい!日本の自動車税3つの問題点と今後の見通し
ガソリン価格の高止まりが予測される理由
冒頭でご紹介したように、今後もガソリン価格は175円/L前後を推移する可能性があります。少なくとも、大幅な下落は見込めないでしょう。以下でその理由を解説します。
理由①原油価格の下落を見込めない
原油価格に関しては、中国の経済成長の鈍化などにより下落の見方もありました。しかし石油輸出国機構(OPEC)プラスの一部加盟国は、今月末までを予定していた原油の追加減産を「6月まで延長する」と発表。原油価格の下落を防ぐ狙いと考えられます。
中東情勢の緊迫状態も続いており、今後数ヶ月で原油価格が急落するとは考えにくいです。
理由②大幅な円高転換を見込めない
為替レートに関しては、「2024年は円高に転じる」という見方も多くありました。しかし2024年2月中旬以降、ドル円の為替レートは1ドル=約150円とドル高・円安が続いています。 これほどの円安が今後も続く可能性は低いですが、専門家の間でも「緩やかに円高へ転換」との見方が強いようです。
理由③ガソリン補助金が継続見込み
現状として、ガソリン価格は補助金により175円程度に抑えられている状態です。
ガソリン補助金の期限は2024年4月末までとなっていますが、現在政府は5月以降も補助金を継続する方針で検討を行っているようです。現状のガソリン価格は既に高いながらも、補助金が継続されれば現状以上の価格高騰を抑えられるでしょう。
ガソリン補助金については、以下の記事で詳しくご紹介しています。
【関連記事】ガソリン補助金はいつまで続く?2024年5月以降も継続か
トリガー条項凍結解除の可能性は?
ガソリン補助金の継続とともに取り沙汰されているのが、「トリガー条項」の凍結解除です。
そもそもトリガー条項とは
ガソリンにおけるトリガー条項とは、ガソリン価格が一定水準を超えた場合に「当分の間税率(25.1円分)」を免除する仕組みです。基本的なルールは以下の通りです。
・ガソリンの平均小売価格が160円/Lを3ヶ月連続で超えた場合、ガソリン税率を28.7円/Lに引き下げる
・トリガー条項発動後、ガソリンの平均小売価格が3ヶ月連続で130円/Lを下回った場合はガソリン税率を53.8円/Lに戻す
この条項は2010年の税制改正で導入されました。しかし翌2011年3月に東日本大震災が発生。復興財源確保のため、同年4月に特例法で条項が凍結されました。
政府は凍結解除より補助金維持か
2024年3月6日に発表された最新のガソリン補助金の支給額は21.7円/L。これに対してトリガー条項発動で引き下げられる税率は25.1円/Lで、消費者にとってはトリガー条項の凍結解除の方が有益な可能性が高いです。
しかし、政府は凍結解除に慎重です。解除には震災特例法の改正が必要で、法改正には時間がかかります。さらに一度トリガー条項を発動すれば、大幅な税収減が見込まれるからです。
車の買い替えでは低燃費車の検討を
今後も高値が続くと見込まれるガソリン価格。そのため車の買い替え時は燃費性能の良い車種選びをお勧めします。
以下の記事で最新の燃費ランキングをご紹介しています。車の買い替えを検討している場合はぜひ参考にしてください。