車のバッテリーは代表的な消耗品のひとつですが、費用も高く急な出費ともなれば躊躇してしまいます。
事前にバッテリーの電圧が低下していることが分かれば、トラブルを予防したりバッテリーの交換に向けて準備ができのでは?と考える方もいるでしょう。
この記事では、電圧が低下したときの症状や対処法、またワンランク上のメンテナンス方法としてバッテリー電圧の測定方法などについて、現役の整備士が解説します。
- 車のバッテリー電圧の目安
- 車のバッテリー電圧の測定方法
- 車のバッテリー電圧が低下した時の症状
- 車のバッテリー電圧が低下した時の対処法
- 【NG】車のバッテリーを早期劣化させる使い方
- 車のバッテリーの寿命を延ばす方法
- 整備士のまとめ
車のバッテリー電圧の目安
自動車用バッテリーは、「12Vバッテリー」とも呼ばれます。
正常時のバッテリー電圧の目安はエンジン停止時では12.3V以上、エンジン回転時では13.5Vから14.5Vです。エンジン停止時にバッテリー電圧が12.3Vを下回っているようでしたらバッテリーが弱っている可能性があります。
バッテリー電圧の目安について以下のような表でまとめました。
エンジンの状態 | 正常時 | 放電(弱っている) 又は充電していない |
過充電(異常) |
---|---|---|---|
エンジン停止時 | 12.3V以上 | 10.5〜12.3V | - |
エンジン回転時 | 13.5〜14.5V | 13.0V以下 ※ | 16.0V以上 |
※充電制御付きの車両はこの限りではありません
バッテリー電圧値を見るうえでいくつか留意点があります。電圧値が低い場合でも問題が無い場合や、高すぎる場合は過充電が疑われるといったケースについて数値ごとに解説します。
12.3V以上あれば問題なし
公称では12Vバッテリーですが、実際には正常なバッテリーの電圧は12V以上あります。
エンジン停止時におよそ12.3V以上あれば十分に元気なバッテリーと判断できます。
正常時に12V以下の電圧もあり得る
年数が経過してくると、普通に使えているバッテリーでも点検時には12V以下となるケースも出てきます。
この場合、長めに走行してバッテリーに充電できれば電圧が復活するケースもあります。
しかし、バッテリーが劣化していると十分な復活もままなりません。
11V以下の電圧になると交換を検討
3年以上バッテリーを使用していて、なおかつバッテリー電圧が11V以下になっているようであれば、バッテリーの交換を検討するべきでしょう。
充電制御のある車の注意点
最近の車は充電制御付きの車が多いです。充電制御付きの車はエンジンに負担なく効率よく発電するために、たとえばエネルギーロスの少ない減速時に積極的な発電をおこない、充電の必要がない状況であれば発電していない…というような制御をおこないます。
この場合、従来の車であればアイドリング中に「13.5〜14.5V」程度ある電圧値が、12V台というケースがあります。
このバッテリー電圧値は、従来の車であれば発電不足でオルタネーターの不良などが疑われるような数値ですが、充電制御のある車であれば正常範囲内であるケースもあります。
過充電というケースもある
バッテリー電圧値が12.3V以上あれば問題なし…というわけではなく、あまりに高い電圧値であれば、オーバーチャージの可能性もあります。
オーバーチャージとは、オルタネーターの不具合により充電し過ぎてしまうことを指します。
16V以上あるようであれば、オーバーチャージが疑われます。
放置しているとバッテリーが破裂するリスクがあるので、早急に修理する必要があります。
車のバッテリー電圧の測定方法
車のバッテリー電圧を知るためには、いくつかの測定方法があります。
OBD2接続でレーダー探知機を使用する
OBD2とは、メーカー問わず装備されている車両自己診断機能です。
全世界統一の規格となっており、このOBD2にアダプターを挿して電源を取るタイプのレーダー探知機は、車両の情報も同時に取得することができます。
その中にバッテリー電圧値もモニタ項目としてあるので、この機能を利用してバッテリー電圧を測定して確認することができます。
車のコンピューターが測定している数値なので正確な電圧値だと言えます。
アクセサリーソケットに電圧計を装着する
アクセサリーソケット(シガーソケット)に装着する電圧計がカー用品店等で販売されています。これを装着すれば、電圧の測定が可能です。
車種によってはアクセサリソケットに至るまで多少の電圧降下があって、実際のバッテリー電圧より低い数値を表示することもあります。
しかし、ほぼ正確な数値となっているので、電圧の測定という目的で使う分には問題ありません。
運転中も含めて手軽に現在の電圧値の確認ができます。
サーキットテスターで計測する
サーキットテスターのテスターリードをバッテリー端子に当てて、直接電圧を測定する方法があります。
車が停車中にしか測定はできませんが、直接測定するのでもっとも正確な電圧が把握できます。
サーキットテスターはカー用品店やホームセンターでも購入可能です。(安いものだと2〜3,000円程度)
車のバッテリー電圧が低下した時の症状
車のバッテリー電圧が低下した際の症状例として、わかりやすいものでは「エンジンの掛かりが悪い」、「パワーウィンドウの動きが遅い」などがあげられます。
バッテリーの電圧低下が単にバッテリーの劣化によるものではなく、オルタネーターの不良による場合は早急な修理が必要です。
主なバッテリー電圧の低下時の症状について詳しく解説します。
エンジンの掛かりが悪い
エンジンの始動時は、もっとも電気を使用します。
そのため、バッテリー電圧低下時にはいつもよりエンジンが掛かりにくい、スターターの作動音が重い・鈍い・遅い…といったような症状となります。
パワーウィンドウの動きが遅い
バッテリー電圧が低いとパワーウィンドウの動きが遅くなることがあります。
電圧が低くなるとパワーウィンドウモーターの力が弱くなるためです。
特に開けるときより閉めるときの方が顕著に症状が出やすいです。
しかし、パワーウィンドウの動作が遅くなる症状は窓枠のゴムの硬化や劣化によっても発生するので、混同しないよう注意が必要です。
ドラレコの駐車監視モードがすぐに停止する
ドラレコに駐車監視モードを設定してる場合、国産メーカーであればそのほとんどで駐車監視モード中のバッテリー上がりを予防するために、下限電圧を設定できます。
停車中の駐車監視モードが、途中で停止していたり起動しない場合は原因のひとつとして、バッテリー電圧が低下していることが考えられます。
アイドリングストップの頻度が減る、しなくなる
エンジンを始動するとき、車はバッテリーの電気をたくさん使います。
バッテリーが弱って電圧が低くなっているとき、バッテリーの充電量がしきい値以上に回復するまでは、車の制御としてアイドリングストップを禁止します。
また、アイドリングストップ作動条件を満たしていても、バッテリー電圧が低く弱っているとすぐにしきい値以下になるので、アイドリングストップの頻度が減ります。
【補足】充電不良による電圧低下の場合
バッテリー電圧の低下が、単にバッテリーの劣化ではなく発電機(オルタネーター)の不良によって正常な充電ができていない場合には、さまざまな症状が発生します。
- キーレスが反応しない
- ヘッドライトが暗くなる、点灯しない
- ナビが起動しない・チラつく
- メーターが暗くなる・チラつく・起動しない
- メーター内に赤いバッテリーマークの警告灯が点灯する
- メーター内にさまざまな警告灯やエラーメッセージが点灯する
- ハンドルが重たくなる(電動パワステの場合)
オルタネーターの発電不良が考えられる場合には、早急な修理が必要です。
整備工場の入庫に際しては、自走が危険な場合もあるので、レッカーサービスを利用することをおすすめします。(例:途中で車が止まってしまい再始動ができなくなる…など)
車のバッテリー電圧が低下した時の対処法
車に異常がないというのが前提条件のもと、車のバッテリー電圧が低下したときの対処法として、以下のような方法があります。
- 長距離ドライブをする(しばらくアイドリングさせる)
- バッテリーを充電する
- バッテリーを交換する
長距離ドライブをする(しばらくアイドリングさせる)
バッテリーの充電はエンジンが始動している時に行われます。
そのため、長距離ドライブをすることでバッテリーの充電状態が回復します。
最低でもエンジンを切らずに1時間程度走るのがよいでしょう。
走行するのが難しい場合には、30分〜1時間程度アイドリング状態を維持するのでも構いません。
アイドリングしておく際は、ヘッドライトは消灯させエアコンもオフにして、なるべく電気負荷を減らしている方が充電には効果的です。
バッテリーを充電する
車用の充電器を使用して直接バッテリーを充電することで、低下した電圧を回復させることができます。
一般ユーザーでも使える充電器も販売されており、車に乗らない間に充電しておくことができます。
また、整備工場に依頼してバッテリーを充電してもらうことも可能です。
費用は無料〜数千円程度です。
バッテリーの充電は最低でも数時間必要なので、点検入庫などと合わせて充電の依頼をするのがおすすめです。
バッテリーを交換する
車のバッテリーは消耗品です。バッテリー電圧の低下が、バッテリーの劣化に伴うものであれば交換するのがベストです。
交換時期の目安については後述します。
【NG】車のバッテリーを早期劣化させる使い方
バッテリーの電圧低下を招き、早期劣化させてしまう使い方をまとめました。
これらを避け、できるだけバッテリーの寿命を延ばすことができればベストです。
チョイ乗りが多い
チョイ乗りが多いと、バッテリー消費量>バッテリー充電量…となって電圧が下がりがちになるので注意が必要です。
エンジンを掛けずにACCやIG-ONのまま、オーディオ(ナビ)を使用やヘッドライトを点灯させる
エンジンを掛けずにACCやIG-ONのまま、各電装品を使用するとバッテリーに蓄えられた電気は消費する一方なので、可能な限り避けてください。
場合によってはバッテリー上がりの原因にもなります。
適切な容量、種類のバッテリーを装着していない
交換するバッテリーの種類には注意が必要です。
最低でも純正(新車装着)バッテリーの容量以上のものを選びましょう。(※バッテリーのサイズは同じものを選びます。例:D23、B24など)
また、アイドリングストップ車にはアイドリングストップ対応バッテリーを必ず使用します。
これらを怠るとバッテリーの早期劣化、電圧低下につながります。
ドラレコの駐車監視モードを使い続ける
ドラレコを駐車中も常時撮影モードにしていたり、バッテリー保護のための電圧値の設定をONにしていない場合、バッテリーの電力が消耗する一方です。
バッテリーの早期劣化・電圧低下のみならず、バッテリー上がりの原因にもなるので注意が必要です。
車のバッテリーの寿命を延ばす方法
バッテリーの寿命を延ばす方法は、バッテリーに極端な負担をかけずに適度な充電状態を保つことです。
基本的に普通に車を使用するうえで過剰に意識する必要はありませんが、以下のような方法がバッテリーの寿命を延ばすためには有効です。
- チョイ乗りを避ける
- 乗る頻度が極端に少ない場合、家庭用のカーバッテリー充電器を使う(乗る頻度:月に1〜2回など)
- ドラレコの駐車監視モードを使うときは、バッテリーの電圧低下を防ぐための保護機能を活用する
バッテリーの交換時期の目安
バッテリーの寿命は、バッテリーの性能や使用環境の違いで異なりますが、おおよその交換時期の目安は以下のとおりです。
- 一般的な車…3年前後〜
- ハイブリッド車…4〜5年
多くの整備工場には、カーバッテリーの健康状態を計測する専用のテスターがあるので、その計測結果を元に交換時期を検討しましょう。
整備士のまとめ
車のバッテリー電圧の目安について解説してきましたが、バッテリーの健康状態を正確に把握するためには、電圧だけでは不十分です。
わたし自身も実際に、電圧は正常だがバッテリー液の比重が低いセルがあるため、バッテリーの交換が必要になったというパターンを何度も経験してきました。
しかし、ユーザー自身が普段からバッテリーの電圧を把握しておくことで、不具合の予兆に早めに気付けたり、交換時期の目安とすることができます。
興味のある方はぜひ、今回の情報を活用しながら日々のカーライフを送っていただけたらと思います。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。