車のフェンダーはどこの部位?修理費用や車検条件について整備士が解説

車のフェンダーはどこの部位?修理費用や車検条件について整備士が解説

車のフェンダーとは、ボディの外装パネルの部位のひとつです。
車にはかならずフェンダーがあり、安全や車検の合否にも関わるような重要なパーツです。
この記事では現役の整備士が車のフェンダーの役割や、どういったことが車検に関係してくるのか?修理や交換の必要なケースとその時の費用について分かりやすく解説します。

フェンダーは車のどこの部位?

車のフェンダーは1台につき4箇所に分けられます。

  • 右フロントフェンダー
  • 左フロントフェンダー
  • 右リヤフェンダー
  • 左リヤフェンダー

基本的に左右で違いはないので前後に分けて解説します。
また、ここでは一般的な車におけるフェンダーについて解説しており、特殊な形状の車は除きます。(例:ケータハムのスーパーセブンなど)

フロントフェンダーについて

フロントフェンダーは、フロントタイヤの前後左右を覆っている外板パネル(ボディ)を指します。
フロントフェンダーパネルとして単一で部品構成されていることがほとんどです。
フェンダーの周囲には、フロントドアパネル・ボンネット・バンパー・ヘッドライトが隣接します。
金属製であることが多いですが、樹脂でできているものもあります。
最近ではSUVを中心に、無塗装樹脂素材のフェンダーアーチモールが備わっているものもあります。(リヤも同様です)

リヤフェンダーについて

リヤフェンダーは、リヤタイヤの前後左右を覆っている外板パネル(ボディ)です。
部品として単独構成のフロントフェンダーと異なり、リヤフェンダーは独立していません。
ボディパネルの一部として該当の箇所が「リヤフェンダー」と呼ばれています。樹脂でできていることもあるフロントフェンダーに対して、リヤフェンダーは金属製です。
リヤバンパーて・リヤゲート(トランク)・ドアパネル、車種によってはリヤサイドガラスが隣接しているパネルです。
ほとんどの車では、燃料の給油口やEV・PHEV車の充電ポートがリヤフェンダーに位置しています。

車のフェンダーの役割

泥がついたフェンダーの図

フェンダーは、車のタイヤ部分の泥除けを指す言葉です。元となった「fend」には「防ぐ、保護する」といった意味があります。

歩行者・障害物保護の役割

フェンダーには走行中のタイヤの回転から、万が一の場合に備えて歩行者や周囲の障害物を保護する役割があります。
フェンダーが無ければ、接触リスクと巻き込みリスクが高まり非常に危険です。
もしものときに歩行者に重大なケガを負わせてしまうばかりではなく、周囲の障害物に接触したり巻き込んでしまうと、対象物にダメージを与えてしまう可能性があります。
このように、フェンダーは安全に走るうえで重要な部品の一つです。

ボディへのダメージや汚れを防ぐ役割

周囲の障害物に接触したり巻き込んでしまったとき、車も深刻なダメージを受けてしまう可能性があります。フェンダーはこうしたリスクから車を守ります。
また、タイヤの回転は道路の汚れを常に巻き上げていることから、本来のフェンダー=泥除けの意味となる汚れや傷からボディを守っています。

フェンダーの加工について

フェンダーは場合によっては、法令に適合する範囲内で加工や社外品への交換などをおこなうことができます。
一般的にドレスアップ目的で加工されることが多いです。
サイズアップしたホイールに交換したときフェンダーに干渉しないように、またハミ出して車検不適合とならないための対策として加工されます。

オーバーフェンダーの取り付け

オーバーフェンダーは純正フェンダーの上に被せるように取り付けることで、フェンダーの幅を拡げるパーツです。フェンダー側に加工が必要な場合がほとんどです。

簡単に脱着可能な加工はNG

オーバーフェンダーを取り付けるとき、両面テープのみの取り付けなどで簡単に脱着できる構造は車検に通らない可能性が高いです。
厳密には車検場での検査員による判断となり、地域によってその基準にもある程度の差異があることから、同じ加工レベルでも車検に通るところと通らないところがあるので注意が必要です。
これはハミ出したタイヤ・ホイール対策でフェンダーモールを取り付ける場合も同様です。
取り付け方法の問題でNGと判断される場合には、ビス留めやボルト固定により簡単に脱着できない方法で、オーバーフェンダーやフェンダーモールを固定することが求められます。

社外品への交換

オーバーフェンダー化には、先ほど紹介した純正フェンダーに被せるタイプだけではなく、フェンダーそのものを交換してしまう方法も有効です。
ただし、この方法は独立した部品構成であるフロントフェンダーに限られます。

爪折りや爪切り

フェンダー下端のアーチ部分はフェンダーパネルの縁が内側に折り曲げられています。
この部分がタイヤと干渉する恐れのあるときにおこなうのが、爪折りや爪切りです。

【補足】フェンダーの爪折り、爪切りとは?

フェンダーの爪折り

爪折りはその名の通り、パネルの縁の折り曲げてある部分をさらに内側に折り込むことを指します。折り込んだ分、タイヤの干渉に対して逃げを作ります。
爪折りのための専用工具も存在します。
塗装が剥がれてしまうリスクもあるので、加工には正しい知識と技術が必要です。
また、樹脂製のフェンダーは素材の特徴から爪折りができません。
加えて、最近の車は新車の生産技術や加工技術の向上から、金属製のフェンダーであっても爪折りができない、推奨されないケースが多くなっています。

フェンダーの爪切り

爪折りで対応できない場合に考慮する加工方法が爪切りです。その名の通り、フェンダーの縁を切ってしまうことを指します。
潔い方法ですが、切った跡の部分から錆びたり雨水がパネル内部に侵入しないように、シーリング(コーキング)する必要があります。

車検に通るフェンダーの条件

フェンダーからのタイヤのはみだしのイメージ図

フェンダーとタイヤ・ホイールは車検の合否に関わる密接な関係があります。
また、フェンダーの交換や加工時には車幅にも注意を払う必要があります。

タイヤ・ホイールのハミ出しの測定範囲

車検の合否は、フェンダーからタイヤ及びホイールがハミ出していないかが関係してきます。
ハミ出しを測定する範囲は以下のように定められています。

  1. ホイールの中心からフェンダーアーチに対して垂直に線を引く
  2. 1.の垂直線を基準にホイール上半分側フロント30°、リヤ50°の範囲内でハミ出しを測定する

フェンダーからのホイールのハミ出しはNG

上記でお伝えした測定範囲内において、ホイールのハミ出しは一切NGで車検に通りません。
簡易的な測定方法として、タコ糸などに重りをつけてフェンダーラインから垂らした糸がホイールに接触しないか確認します。

タイヤのハミ出しは条件付きでOK

2017年の法改正で、タイヤのハミ出しに関しての保安基準が緩和され、ハミ出しが10mm未満であれば車検に合格できるようになりました。
ホイールに関しては変わらずハミ出しNGなので、実際にはタイヤのリムガードやサイドウォールの膨らみ分であればハミ出しが許容されるということです。

フェンダー交換や加工時の全幅変更の注意点

車検証には当該車両の全幅が記載されていますが、オーバーフェンダーを取り付けたり社外品フェンダーへの交換、フェンダーの加工に伴って車幅が変わってしまったときは、その変化量に注意を払う必要があります。
これは、全幅20mm以上の変化があったときには構造変更の手続きを行わなければいけないためです。
車幅はフェンダー部分がもっとも車両の外側となるケースがほとんどです。
基本的には車は左右対称なので、構造変更をしない場合、片側につき車幅の変化量は10mm未満でなければいけません。

事故によるフェンダーの変形に注意

改造を伴わない場合でも注意しないといけないのは、事故により変形したフェンダーを修理せずに放置することです。
変形したことでタイヤ・ホイールがハミ出したり、全幅が変わってしまっている可能性があるためです。
わたし自身も、実際にこのケースに該当する車の車検に伴いフェンダーを修理したことがあります。

車のフェンダーの修理、交換費用の目安

車のフェンダー部分の修理や、交換に必要な費用の目安を以下の表にまとめました。
実際の修理費用は車種や程度によって大きく異なるので、整備工場・板金塗装工場で実際に見積もりを取ってもらうことをおすすめします。

フェンダー修理の種類 フロントフェンダー リヤフェンダー
塗装修理 3万円〜10万円 3.5万円〜10万円
板金・塗装修理 4.5万円〜13万円 8万円〜25万円
フェンダー交換(部品単品) 8万円〜15万円 不可
簡易板金・塗装 3万円〜8万円 3万円〜8万円
フェンダーアーチモールの交換 1万円〜5万円 1万円〜5万円

最近ではSUVを中心に、樹脂製の無塗装素材のフェンダーアーチモールを装着した車が増えています。この部分のみの交換は比較的安いです。
リヤフェンダーは部品として独立しておらず、板金修理の際は車内の内装を脱着してのアクセスが必要なケースもあるので、フロントフェンダーと比較して修理が高額となる傾向にあります。
また、フロントフェンダーの交換にはフロントバンパーやヘッドライトの脱着と、場合によってはドアの脱着も伴います。
修理の際は、これらの脱着の有無により費用は大きく異なります。

【補足】フェンダーの修理・交換は自分でできる?

フェンダーの修理や交換を自分でおこなうことは難しいです。
金属製フェンダーの凹みであれば、板金修理用の吸盤を使用して凹みを引っ張り出せることもあります。
パネルの裏からハンマー等で叩き出す方法もありますが、綺麗に修理することは難しいです。
フェンダーの修理や交換で、自分でできることとしては以下のような修理です。

  • 傷や塗装の欠けをタッチアップペンで目立たなくする
  • フェンダーアーチモールを交換する

これ以上の修理はプロに依頼することをおすすめします。

整備士のまとめ

車のフェンダーの持つ役割は大切で、知らぬうちにタイヤのハミ出しなどで法令違反をしている可能性があります。
また修理や交換、加工には大掛かりとなるケースもあり、特にリヤフェンダーはボディパネルの一部なので、フロントと比較して各作業におけるリスクや費用が高くなる傾向にあります。

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Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。