この記事の目次 CONTENTS
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自動車免許取得者の7割がAT限定、少ないMT車という背景
MT車はどんなクルマが多い?
MT車の今後は?EV化の可能性はあるのか
クルマを操る楽しさを教えてくれるスポーツカー
3.7L! 豪快な加速がMTで楽しめる
STIスポーツなら、コーナーリングがさらに面白い!
数少ない価値あるSUVのMT車
MT初心者も安心なiMT搭載

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

クルマの操作を積極的に楽しみたい人に好まれるMT車。「MT車が気になるけどまずは中古車で試したい」という方に向けて、今回はスポーツカー系を中心におすすめの車を解説する。

自動車免許取得者の7割がAT限定、少ないMT車という背景

自動車免許証取得者の内、今や約7割がAT(オートマチック・トランスミッション)限定免許になっている。MT(マニュアル・トランスミッション)免許取得者は、仕事で必要など一部の人に限られてきているのが現状だ。
そんな免許証事情も相まって、国内で販売される乗用車のうち、MT車の比率は1%程度だという。

MT車はどんなクルマが多い?

国内で発売されているMT車の多くはスポーツカー系だ。自ら積極的にクルマを操りたいという想いが強い顧客のニーズを反映した結果だろう。
メーカーでいうと、マツダのSUVやコンパクトカーなどにMT車の設定が多い。それでもMT車の構成比は数%だという。

MT車の今後は?EV化の可能性はあるのか

今後MT車が流行る可能性があるのだろうか?
答えは限りなくNOに近い。それは世界が「カーボンニュートラル」に舵を切り、EV化を加速させているからだ。多くのEVは、コストの関係でミッションを持たない。厳密には減速ギヤがあるので1速固定式だからだ。

ただし、今後コストや電費、車重などの多くの課題がクリアされていけば、EVにもミッションが付く可能性もある。だが「あえてクラッチを装備し、わざわざ自らシフトチェンジする必要があるのか?」と問われると、メリットはないだろう。
以上の背景から、EVがMT化する可能性は限りなく低い。EVのMTが登場する可能性があるとしたら、メーカーが「MTのニーズが高まりビジネスになる」と判断した場合くらいだろう。

つまり、MT車を楽しめるのは今しかない!ということだ。
絶滅危惧種であるMT車を楽しめる時間は少ない。そこで今回は、おすすめ中古MT車をピックアップした。

クルマを操る楽しさを教えてくれるスポーツカー

マツダ ロードスター

マツダ ロードスター

ND系のマツダ ロードスターは、2015年にフルモデルチェンジし現在4代目となった。
歴代のロードスターは、走る楽しさを凝縮された、世界中で愛されているモデルである。
「2人乗り小型オープンスポーツカー」生産累計世界一のギネス世界記録を更新し続けており、2016年には生産累計100万台達成している。

4代目ロードスターには、電動ルーフをもつRFもある。だが今回おすすめするのはソフトトップモデルだ。MTの他にATの設定もある。

エンジン 1.5L直4ガソリンエンジン(のみ)
出力(デビュー時) 131ps&150Nm
燃費(JC08モード、MT) 17.2km/L(ハイオク仕様)

1.5Lガソリンエンジンの出力は、とくに目を見張るものはない。急勾配の登り坂では、少し力不足かもしれない。だが、MT車の場合、むしろ面白いのだ。
自らの判断でギヤを選択し、限られたパワーをフル活用して走る。クルマとの一体感がより強まり、自ら操っている満足感がある。スパスパと入るしっかりとしたショートストロークのシフトフィールも気持ちよい。

ロードスターは、ドライバーを育ててくれるクルマでもある。雑な運転でもそれなりに走るが、基本に忠実な走りをするとクルマがしっかりと応えてくれる。ドライバーの操作に対して、分かりやすくクルマから反応がある。ドライバーは日々、運転中のトライ&エラーを繰り返すことで自らの運転スキルをアップさせることができるのだ。「あまりに高性能で、クルマに乗せられている」タイプのスポーツカーではないからこそ、楽しい。

4代目ロードスターは、2015年にデビューしている。前期モデルの中古車価格は少し下がってきており、中古車としてのメリットも出てきている。
2015年式の中古車相場はやや広く160~240万円程度だ。新車価格が250~320万円なので、新車価格の約64~74%にまで安価になっている。
ただしスポーツカーだからか、車両の程度によって価格差が大きいようだ。160~190万円台位の価格帯だと、走行距離が7万km越えの車両が多い傾向にある。200万円台以上になると、3万km前後以下の車両が増える。グレードでは、上質感のあるレザーシートを標準装備したSレザーパッケージも選びやすくなる。

RSは最もスポーティなグレードだ。ビルシュタイン製サスペンションやレカロシートなどが装備されている。流通量が少なく探しにくいが230~240万円以上の予算が必要である。走りの質にこだわるのであれば、RSがおすすめだ。

3.7L! 豪快な加速がMTで楽しめる

日産フェアレディZ

フェアレディZ

Z34型6代目日産フェアレディZは、2008年に登場した。新型フェアレディZが公開されているが、型式は6代目と同じZ34型となる。
6代目フェアレディZは、2名乗車のスポーツカーだ。ボディタイプはクーペとオープンのロードスターの2タイプあるが、おすすめはクーペだ。

搭載エンジンは、3.7L V6エンジンのVQ37VHR型だ。MT車としては今や貴重な大排気量である。デビュー時の出力は、336ps&365Nmと非常にパワフルだ。しかも全長は4,250mm、ホイールベースは2,550mmと短く、運動性能は高い。まさに、走るために生まれてきたようなモデルだ。
これだけの大出力を誇るMTを操るにはそれなりのテクニックが必要だ。しかしその分、操る楽しさもある。ある意味、限れた出力を使い切るタイプのマツダ ロードスターとは、対極にあるモデルかもしれない。

おすすめは、ニスモ系が最も楽しい(年式により呼び名が異なる)。専用エアロにサスペンションなどを装備し、よりスポーティな走りに磨きをかけている。
2009年に投入されたバージョンニスモでは専用コンピュータを装備し、出力は355ps&374Nmを発揮した。パワーアップはもちろん、エンジンのフィーリングが良いのも魅力だ。レヴリミットである7,400回転までスムースにキッチリと回り気持ち良い。ただ、中古車流通量が非常に少ないモデルなので、じっくり探す必要がある。
2009年式だと中古車相場は120~270万円位だ。この年式だと、走行距離が10万km前後の車両がほとんどだ。5万km以下の走行距離のクルマを探すのは困難で、あっても300万円を越える。走行距離の少ない車両は諦めるしかない。10万km近い走行距離の車両で、無改造で点検記録簿があり定期的に点検を受けている車両を探すとよい。

6代目フェアレディZは高級車なのでAT比率が高い。MT車の流通量は少ないので、良質な車両を探すならじっくり時間をかける必要がある。
高年式の2018年式になると、レーシングストライプが入ったヘリテージエディションと呼ばれるグレードが多くなる。走行距離が5万km以下も多く程度がよい車両も多い。価格は350万円以上が多く、新車価格より少し安価な程度だ。

STIスポーツなら、コーナーリングがさらに面白い!

スバルBRZ

二代目スバルBRZ

初代スバルBRZは、2012~2021年まで発売された。トヨタとの共同開発から生まれたFRスポーツカーである。2021年にフルモデルチェンジし2代目が登場した。

初代BRZに搭載されているエンジンは、FA20型水平対向4気筒2.0Lエンジンだ。ハイオクガソリン仕様で、出力はデビュー時200ps&205Nm(6MT)だった。自然吸気エンジンなので、あり余るほどのパワーではない。だが軽量FR(後輪駆動)らしい軽快感のある走りが魅力だ。

共同開発車であるトヨタ86と基本的に同じクルマだが、走行性能面で微妙に味が異なる。初期の86は、とにかくドリフトを意識した仕様で、容易にリヤタイヤが滑り出す。BRZはより自然な乗りやすさを重視した。86より、リヤタイヤの滑り出しも遅くコントロール性が高い。好みや走り方にもよるが、より多くのドライバーに合うのはBRZだろう。

BRZには、6速MTの他に6速ATも用意されている。ATもダイレクト感のあるシフトフィールでスポーティな走りが可能だ。だが高い人気を誇るのは、6速MTである。
同じグレードでも6速MTと6速ATでは車重が異なる。主にミッションの重量によるもので、6速MTの方が軽量だ。カーブでの軽快感は6速MTが上回る。
シフトフィールも良好だ。ショートストローク化されているため、手首のスナップでシフトアップ、シフトダウンが可能だ。

おすすめグレードは、最上級グレードであるSTIスポーツだ。2016年のマイナーチェンジ後である2017年に新規投入された。専用エアロパーツやサスペンション、ボディ補強、レザーシートなどが装備され、質の高い走行性能と上質な内装を得た。
STIスポーツは、コーナーリングマシン的だ。グリグリと良く曲がり、操縦安定性も高く乗りやすい。最もBRZらしさを体現したグレードだ。

スバルBRZの中古車相場は、初期の2013年式で130~190万円程度だ。新車価格が約250~290万円だったので、新車価格の約52~76%位にまで落ちてきている。さすがは人気スポーツカー、低年式でも中古車価格はかなり高値を維持している。
スポーツカーらしく、6速MTの人気が高い。低価格帯では6速AT車の比率が高めだ。走行距離が5万km以下の車両で6速MTとなると、170万円以上の予算が必要になる。

モデル後期である2019年式車の中古車相場は、約260~310万円だ。走行距離も少なく程度のよい車両が多い。ただ、中古車流通量が少なく、自分好みのグレードや色が選びにくい。
おすすめのSTIスポーツは、270~320万円程度と少し高価な傾向がある。新車価格が約350万円だったので、高価格帯の車両は新車に近い。

280万円台までなら初代BRZでもよいが、それ以上の価格帯の車両なら、多少納期に時間がかかっても2代目BRZを新車で購入したほうがよいだろう。

数少ない価値あるSUVのMT車

マツダCX-3

国内メーカーの多くは、ほぼすべての車種でMTの設定が無い(一部のスポーツカーを除く)。
しかし、マツダだけはMTファンのために、多くの車種にMTの設定があるのだ。

今回おすすめするのは、人気SUVのマツダCX-3である。
CX-3は、新型車として2015年に登場した。マツダ車らしく、背の高いSUVながら走りも楽しいモデルに仕上がった。MTを駆使すれば、さらにキビキビした走りが楽しめる。
2018年の改良で、2.0LガソリンのFF(前輪駆動)車にMT車が設定されたが、すぐに姿を消した。

CX-3で長くMTの設定があるのは、ディーゼルターボ車のみだ。

前期 1.5Lディーゼル 105ps&270Nm
後期 1.8Lディーゼル 116ps&270Nm

1.8Lディーゼルの方が排気量が大きいため、全域でパワフルな印象だ。

CX-3の6速MTは、適度なストロークをもつ。ロードスターのように手首のスナップでギヤチェンジできるタイプではないが、しっかりとしたフィールで吸い込まれるようにシフトできる。

ウイークポイントは、1.5Lディーゼルの特性だ。絶対的な排気量が小さいため、1,000回転前後までエンジン回転数が落ちると、アクセルレスポンスが悪くなる。これは、ターボによる過給が行われていないためだ。
ATは、アクセルオフ時でもエンジン回転数が1,500前後以下にならないように制御している。そのため再びアクセルを踏めばすぐに過給が始まり、何事も無いように走り出す。
MTの操作には、ちょっとした慣れが必要だ。ストップ&ゴーが多いときは、シフトチェンジがやや多くなる。
1.8Lディーゼルは、300㏄排気量が多い分、レスポンスの悪さはあまり感じなくなった。

マツダCX-3の中古車価格は、前期の2015年式ディーゼルMTのXD系で、110~160万円程度だ。MTの流通量は非常に少なく、探すのが大変である。グレードにもよるが、走行距離が7万km以下だと予算は140万円以上になりそうだ。
おすすめグレードは、レザーシートを使った上質な内装のLパッケージになる。

クルマとしての完成度が一気にアップしたのは2018年の大幅改良後モデルだ。
ディーゼルエンジンは1.8Lに変更され、車両安定化技術Gベクタリングコントロールも装備された。予算に余裕があるのなら、この大幅改良後モデルがよい。

MT車の中古車は極めて少なく、価格はかなりバラつきがある。中間グレードのプロアクティブで、200万円前後だろう。新車より少し安価な程度だ。
これだけ高価なら、さらに年式を新しくするか、新車という選択も良い。

MT初心者も安心なiMT搭載

トヨタ カローラスポーツ

カローラスポーツ フロント画像

トヨタ カローラスポーツは、2018年に登場したスポーティ5ドアハッチバックだ。欧州などでは、ボリュームの大きいCセグメントに属するモデルである。フォルクスワーゲン ゴルフなど、数多くの高性能モデルが激戦を繰り広げている。
こうした背景により、カローラスポーツも走りにかなりこだわった。プラットフォーム(車台)には、軽量・低重心である最新のGA-Cを採用している。Cセグメントのコンパクトカーでは、リヤサスペンションにトーションビーム式を採用するモデルも少なくない。だがカローラスポーツはより高性能なダブルウィッシュボーン式を使うことで、上質な乗り心地と高い操縦安定性を実現した。

特に、オプションのAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)搭載車の走りは絶妙だ。走行状況によりショックアブソーバーの減衰力を自動制御してくれる。さらに5段階の減衰力を選択することもできる。スポーツS+モードにすると、なかなか締まったサスペンションとなり、より楽しい走りをアシストしてくれるのだ。通常の乗り心地もAVS非装着車より質が高い。

そんなカローラスポーツの1.2Lターボモデルに用意されたのがiMT(インテリジェントマニュアルトランスミッション)と呼ばれる6速MTだ。
MT車の運転テクニックで差が出るのが、発進時のクラッチ操作(エンストリスク)とシフトダウン時のエンジン回転数の合わせ方である。iMTは初心者が苦手とする操作をエンジン制御などでアシストしてくれる。
発進時はクラッチ操作をチェックし、エンジントルクを最適に制御することでエンストしにくいようにアシストする。スポーツモードを選択している場合、シフトダウン時にエンジンの回転数を合わせ、スムースさをアシストしてくれる。
MT初心者にとって、iMTの制御は力強い味方になるだろう。「MTに乗ってみたいけど、ちゃんと運転できるだろうか?」と、少しでも不安に思っているならば、iMT搭載車を選ぶとよい。まずは、iMTでMT車に慣れてみるというのもありだ。

カローラスポーツiMT装備車の新車価格は、デビュー時で210~240万円程度と比較的安価な設定だ。だが中古車の場合、新車の納期長期化の影響で高値を維持している。加えて、iMT車の中古車流通量は極端に少ないのが難点だ。
2019年式の中古車相場は、おおよそ180~200万円だ。最上級グレードのG Zが多く流通し、180~200万円の予算で十分に狙える。

しかし、中古車価格は高値を維持している。新車価格より40~60万円位安価という微妙な価格だ。予算に余裕があるのであれば、新車という選択がおすすめだ。中古車は、もう少し安価になってからが狙い目かもしれない。
また、カローラスポーツのMT車はそう簡単に売れる車両ではないと予想できる。しっかり値引き交渉してみるとよいだろう。