ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員会は、2021-2022日本カー・オブ・ザ・イヤーとして「日産ノート、オーラ」を選出した。
選定対象は2020 年 11 月 1 日から 2021 年 10 月 31 日までに日本国内で発表された全 29 台の乗用車だ。自動車評論家、ジャーナリスト、有識者からなる 60 名の選考委員によって選考された。

他の部門での受賞は以下の通り

  • インポート・カー・オブ・ザ・イヤー「フォルクスワーゲン ゴルフ」
  • デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー「BMW4シリーズ」
  • テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー「三菱アウトランダーPHEV」
  • パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー「シボレー コルベット」
カーオブザイヤー車一覧

2021-2022年 日本カー・オブ・ザ・イヤー車両

「日産ノート・オーラ」受賞理由は?

21年ー22年 カーオブザイヤー ノート

日産ノート、オーラの受賞理由は、大きく分けて3つある。まず、1つ目はハイブリッドシステムであるe-POWERの大幅な進化だ。先代ノートのe-POWERシステムを一新。静粛性や力強さなどが、先代e-POWERとは比べ物にならないほど向上した。燃費値では、トヨタ ヤリスなどに及ばないものの、まるでEVなのか? と、思わせるくらいのレベルに達している。
そして、2つ目は新開発されたプラットフォーム(車台)だ。この新プラットフォームは、CMF-Bと呼ばれるもので、日産・三菱・ルノーのアライアンスにより新開発された。これにより、ノートとオーラの走行性能は飛躍的に向上。クラストップレベルの乗り心地と操縦安定性を得ている。
また、後輪側に大出力モーターを設置した4WDは、悪路走破性だけでなく走りの楽しさも重視。ノートとオーラはFF(前輪駆動)だが、すこしFR(後輪駆動)車的な走りを披露。気持ちよい走りができる4WDに仕上がった。
3つ目は、顧客ニーズの多様化への対応だ。に合わせ基準車となるノートの他、プレミアムを追求したオーラ、走行性能を磨き上げたオーラNISMO、流行りのSUVテイストをプラスしアクティブさをプラスしたノート AUTECH CROSSOVERと4つの個性が設定された。顧客は、より自分好みのモデルが選べる選択肢の豊富さが魅力だ。

日産は、2011-2012日本カー・オブ・ザ・イヤーで「初代リーフ」が受賞して以来、10年振りの受賞となった。この10年間、新車が国内に投入されない年があるなど非常に厳しい時期もあった。その間、数少ない新型車も10ベストまでは入るものの日本カー・オブ・ザ・イヤーには手が届かなかった。こうした過去を振り返ると、ノート、オーラシリーズは、ここ10年間で最も優れた完成度を誇る日産車ともいえるだろう。

【2位~4位】超激戦となった日本カー・オブ・ザ・イヤー

カーオブザイヤー 日産ノートオーラ

2021年-2022年 日本ベスト・カーオブ・ザ・イヤー受賞「日産 ノート」

21-22年 カーオブザイヤー2位~4位

2位~4位 カーオブザイヤーの車

今回の賞争いは、近年稀にみる大激戦だった。日産ノート・オーラの得点は335点。残念ながら2位となったトヨタ GR86とスバル BRZは264点。3位のホンダ ヴェゼル227点。4位の三菱アウトランダーPHEVは206点となった。
日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、選考委員の持ち点が合計25点とされ、最も優れたモデルに10点。残り15点は、他の4台のモデルに振り分けられる。選考委員が60人なので、最高得点は600点となる。

順位 車名 得点
1位 日産 ノート・オーラ 335点
2位 トヨタ GR86 264点
2位 スバル BRZ 264点
3位 ホンダ ヴェゼル 227点
4位 三菱 アウトランダーPHEV 206点

これだけ得点がばらけた理由は、良い車が多かったためだ。そのため、選考委員の評価も沸分かれた。とくに、典型的だったのが、2位のGR86とBRZ。最高得点である10点を獲得した選考委員数は14名。なんと、ノート・オーラと同じだったのだ。
しかし、カーボンニュートラルやCO2削減が叫ばれる中、純ガソリン車で一般的にあまり人気が無いスポーツカーを評価しなかった選考委員も多かった。GR86とBRZに0点を入れた選考委員は15人にもなった。ノート・オーラは5人。この差が、明暗を分けた。

安定の受賞!?インポート・カー・オブ・ザ・イヤーは「フォルクスワーゲン ゴルフ」

21-22年 カーオブザイヤーゴルフ

インポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞「フォルクスワーゲン ゴルフ」

インポート・カー・オブ・ザ・イヤーは「フォルクスワーゲン ゴルフ」が受賞した。ゴルフ8とも呼ばれる8代目ゴルフは、プラットフォーム(車台)こそ先代モデルからキャリーオーバーしているものの、イッキにデジタル化が進められた。車内の操作系は、タッチパネル化が進み、全体的にスッキリとしフルデジタルメーターになった。先進感や視認性も大幅に向上された。
また、搭載されたパワーユニットは、全グレード48Vマイルドハイブリッドになり低燃費化が図られている。
相変わらず非常に完成度の高いモデルで、世界中の自動車メーカーがベンチマークとするだけのことがある。
先代の7代目ゴルフは、輸入車初となる日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した。8代目ゴルフも日本カー・オブ・ザ・イヤーを狙ったものの、得点は伸び悩んだ。ただ、エントリー時点ですでにゴルフを超えるような輸入車が見当たらなかったような状態であった。インポート・カー・オブ・ザ・イヤーは確実視されており、順当に受賞した印象が強い。

圧勝! デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー「BMW4シリーズ」

21年ー22年 カーオブザイヤー BMW4シリーズ

デザイン・カー・オブ・ザ・イヤー受賞「BMW4シリーズ」

日本カー・オブ・ザ・イヤーとインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを除く、その他の賞は最大10点を3台までに配分し決定される。
デザイン・カー・オブ・ザ・イヤーは、その名の通り、内外装に優れたモデルが選ばれる。今回、受賞したのは「BMW4シリーズ」となった。得点は、251点と圧勝。3桁以上の得点を獲得したのは4シリーズのみという結果だった。

4シリーズの評価ポイントは、縦型のキドニーグリル。キドニーグリルといえば、BMWデザインを象徴するアイテム。それだけに、縦型にするというチャレンジと、見事に調和したデザイン力が評価された。
また、国産車ではまったく用意されなくなった、4ドア、クーペ、カブリオレとボディバリエーションも豊富。売れるのはSUVばかりとなったが、こうした優雅なモデルを造り続けることもBMWの魅力だろう。

僅差でミライを1歩リードし受賞! テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー「三菱アウトランダーPHEV」

21年ー22年 カーオブザイヤー アウトランダーPHEV

テクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤー受賞「三菱アウトランダーPHEV」

激戦を制してテクノロジー・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したのが「三菱アウトランダーPHEV」だ。
この戦いもかなり熾烈を極めた。最高得点は600点。アウトランダーPHEVが獲得した得点は298点。惜しくも2位となったトヨタ ミライは216点。となった。この2台で総得点の約90%もの得点を得たことになる。共通点は、どちらも次世代環境車でありながら、走る楽しさも凝縮したモデルであることだ。
アウトランダーPHEVは、基本的に初代アウトランダーPHEVと同じツインモーター4WDを踏襲する。しかし、前後のモーターは大幅に強化された。フロントモーターは、60kWから85kWへ。リヤモーターは、70kWから100kWとなった。後輪側にかなりパワフルなモーターを設置することで、ドリフト走行も可能な電動車に仕上げている。

さらに、4WD制御も凄い。三菱独自の4WD制御S-AWC(Super All Wheel Control)も深化。前輪左右のトルク配分コントロールに加え、後輪左右のトルク配分もコントロールできるようになった。より緻密な制御となり、悪路から舗装路までより安定した走行が可能。ドライブモードは、先代の5モードから7モードに増えた。
トヨタ ミライも初代ミライと同様、水素を使い、その電力で走るFCVだ。排出量されるのは水のみという究極のエコカーだ。パワーユニットは、駆動方式がFF(前輪駆動)からFR(後輪駆動)へ先代から変更された。プラットフォームは、レクサスLSと同じGA-Lを使い走行性能を高めた。
さらに、高速道路上では、ほぼ自動運転に近い運転支援システム「アドバンスドドライブ」が搭載されている。条件を満たせば、前方監視が条件だがドライバーはハンズオフで走行可能だ。車線変更も自動で行われる。また、このアドバンスドドライブは、購入後もシステムのアップデートも可能だ。

GR86&BRZとの激戦を勝ち抜いた! パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーは「シボレー コルベット」

21年ー22年 カーオブザイヤー コルベット

パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤー受賞「シボレー コルベット」

パフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーも激戦だった。シボレー コルベットのライバルとなったのは、トヨタGR&スバルBRZだ。日米スポーツカー対決となった。
こちらも最高得点は600点の内、コルベットは293点を獲得。対してGR86&BRZは211点と、この2台に割って入るモデルは無かった。
シボレーブランドとしては、初の受賞となったコルベット。評価ポイントは、大きく2つ。1つ目は、スポーツカーらしい優れた走行性能だ。コルベット史上初となるミッドシップ化という大胆なチャレンジにより、502psというパワフルなエンジンと切れ味鋭いハンドリングを実現した。
2つ目は、価格。ヨーロッパの3000万円級のスーパーカーにも劣らない性能ながら、アフォーダブルな価格設定も高評価された。
GR86&BRZは、日本カー・オブ・ザ・イヤーと同じくパフォーマンス・カー・オブ・ザ・イヤーでも2位となった。評価は非常に高いものの、本賞とパフォーマンスで得点が分散したようで残念な結果となっている。

性能面が高評価! K CARオブ・ザ・イヤー「ホンダN-ONE」

21年ー22年 カーオブザイヤー N-ONE

K CARオブ・ザ・イヤー受賞「ホンダN-ONE」

K CARオブ・ザ・イヤーは、「ホンダN-ONE」が受賞した。販売台数では、スズキ ワゴンRスマイルが大幅に勝るが、結果はN-ONEの圧勝となった。
N-ONEの受賞理由は、デザインにこだわり外板パネルは先代と同じとしながら、中身を刷新した攻めの開発姿勢にある。性能面では、登録車を凌駕する動的質感が評価された。
また、自然吸気エンジンの優れた静粛性や動力性能の高さも支持された。
そのうえで、少々マニアックなクルマ好きニーズを満たすために、軽自動車で初めて、FFターボ車に6速MTを設定したことも高評価ポイントとなっている。