この記事の目次 CONTENTS
まさかのOEM車を別カウントとした、分かりにくいランキング
価格が大切? 電動化が進まない軽自動車
ベーシックな軽自動車。軽量ボディで低燃費化
マイルドハイブリッドシステムを搭載! 走りと低燃費を両立
アルトベースのオシャレな個性派モデル
良品廉価にこだわるダイハツのベーシックモデル
燃費、走行性能とバランスに優れたモデル
まとめ

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

国土交通省が燃費のよいクルマのランキングを発表した。2020年末時点で発売されている軽自動車が対象だ。燃費はもちろん、乗り心地や使い勝手など、上位の各軽自動車の特徴をまとめた。

まさかのOEM車を別カウントとした、分かりにくいランキング

まず、驚かされたのが、OEM車を別カウントしたランキング表だ。OEM車とは、自社で製造した製品を他社ブランドで販売することである。

燃費ランキング1位となったマツダ キャロルは、同じく1位のスズキ アルトのOEM車だ。キャロルは、アルトのスズキエンブレムなどを外し、マツダエンブレムに張り替えるなどしたモデルである。同じクルマなので、燃費が同じなのは当然だ。こうしたOEM車が、まるで別のクルマのようにランキングされているのでは、あまり意味がない。

また軽自動車は、ボディ形状が異なる3つのカテゴリーに分けられる。ロールーフ系、ハイト系、スーパーハイト系だ。これも同じ土俵でランキングされている。
ロールーフ系は全高が低く軽量という特徴がある。対するスーパーハイト系は、全高が非常に高く、車重は重く、空気抵抗も大きいので燃費は悪くなる。
こうした異なるカテゴリーのクルマを同等に評価すれば、スーパーハイト系モデルがランクインすることはないだろう。
しかも、マーケットの人気は、圧倒的にスーパーハイト系だ。より多くの人が買うモデルが、ランキングに入っていなければ注目度も下がるし、参考になる人も少ない。

価格が大切? 電動化が進まない軽自動車

軽自動車では、登録車のようなストロングハイブリッドを搭載したモデルがない。
ハイブリッド化すると価格が上がり、顧客に買ってもらえなくなる、というメーカーの判断があるからだ。
軽自動車には生活の足としての役割があり、廉価であることが重要とされてきた歴史がある。
だがスーパーハイト系であれば、200万円を超えるモデルも珍しくない。両側パワースライドドアやLEDヘッドライト、豪華な内装なども用意されている。

また、軽自動車はセカンドカーという歴史も長かったが、今やファーストカーになってきた。豪華装備もどんどん用意されている。日産はこの軽自動車マーケットに電気自動車も一気に投入する計画だ。

ただ、ほとんどのメーカーが価格の呪縛から解放されていない。スズキが唯一、マイルドハイブリッドシステムを一部の車種に搭載しているだけだ。マイルドハイブリッドシステムを搭載したスズキのモデルは、車重が重くなっても燃費がよく、軽量のロールーフ系を上回る燃費を出している。

国土交通省のランキングは下記の通り。

国土交通省のランキング

国土交通省 燃費ランキング

上記の表を、OEM車はOEM元のモデルと同じとして、ランキングし直した。

順位 メーカー 車種 燃費 OEMメーカー/車種
1位 スズキ アルト 25.8km/L マツダ/キャロル
2位 スズキ ワゴンR 25.2km/L マツダ/フレア
2位 スズキ アルトラパン 25.2km/L -
4位 ダイハツ ミライース 25.0km/L スバル/プレオプラス、トヨタ/ピクシスエポック
4位 スズキ ハスラー 25.0km/L マツダ/フレアクロスオーバー

ベーシックな軽自動車。軽量ボディで低燃費化

1位 スズキ アルト/ マツダ キャロル(OEM車) 25.8㎞/L

ALTO

スズキ アルト

キャロル_外観

マツダ キャロル(OEM車)

アルトとキャロルは、ロールーフ系の軽自動車に分類される。生活の足や営業車としてのニーズが強く、価格が重視されるカテゴリーだ。そのため、スズキもマイルドハイブリッドシステムは採用していない。ただ、一部グレードを除き減速エネルギー回生システムであるエネチャージを採用し燃費を向上させている。

アルトとキャロルの乗り心地は、低速域でもゴツゴツ感がある。これは、空気圧の高いエコタイヤと動きのシブいサスペンションが組み合わされているからだ。速度の高い領域は苦手分野である。
ただ、軽量化のメリットもあり、加速感は十分なもの。意外なほど力強く走る。
アルトとキャロルは、全体的に市街地中心で、まさに生活の足といったモデルだ。

マイルドハイブリッドシステムを搭載! 走りと低燃費を両立

2位 スズキ ワゴンR/マツダ フレア(OEM車) 25.2㎞/L

ワゴンR_外観

スズキ ワゴンR

フレア

マツダ フレア(OEM車)

ワゴンRとフレアは、ハイト系ワゴンと呼ばれるカテゴリーに属するモデルだ。ワゴンRは、このハイト系ワゴンというカテゴリーのパイオニアとして一世を風靡したモデルでもある。現在では、スペーシアやN-BOXなどのスーパーハイト系が最も人気が高い。

ハイト系ワゴンは、価格や燃費、走行性能、使い勝手など総合力が求められるカテゴリーである。スズキはワゴンRとフレアにマイルドハイブリッドを搭載し、低燃費化した。マイルドハイブリッドなので、わずかな時間だけだが、モーターによるクリープ走行も可能だ。この機能を上手く使えば、実燃費も向上する。

ワゴンRとフレアの乗り心地は、低速域で空気圧の高いエコタイヤなので、ややゴツゴツ感がある。速度が少し高くなると、ゴツゴツ感もあまり気にならなくなる。モーターがエンジンをアシストするため、アクセルを踏んだ瞬間のレスポンスは良好だ。
スズキの軽量化技術もあり、力強さもありつつ、軽快な走りを可能にした。

アルトベースのオシャレな個性派モデル

2位 スズキ アルトラパン 25.2㎞/L

ALTO Lapin

アルトラパンは、アルトをベースとして開発されたロールーフ系モデルだ。
アルトは、日常の足としてシンプルにまとめられている。しかし、「アルトではあまりにシンプル過ぎる」「ロールーフ系の価格も魅力だが、パーソナルでオシャレなクルマが欲しい」と望む女性をターゲットにしたのがアルトラパンだ。

アルトラパンの外観は、愛着あるデザインだ。大きく丸いヘッドライトや、角を丸くしたスクエアなボディが組み合わさっている。インテリアも明るいベージュをベースとしたカラーを採用し、オシャレで広々とした空間に仕上げている。
基本的なメカニズムは、アルトと同じだ。低燃費化するために、減速エネルギー回生システムであるエネチャージを採用している。
実用重視のアルトと比べると、若干、アルトラパンの乗り心地は良好だ。ただ、カーブなどはアルトより不得意だ。女性向けということもあり、かなり穏やかなハンドリングになっている。

良品廉価にこだわるダイハツのベーシックモデル

4位 ダイハツ ミライース/スバル プレオプラス(OEM車)/トヨタ ピクシスエポック(OEM車) 25.0㎞/L

ミライース

ダイハツ ミライース

PLEO PLUS

スバル プレオプラス(OEM車)

PIXIS EPOCH

トヨタ ピクシスエポック(OEM車)

ミライースをベースとしたモデルは、ロールーフ系の軽自動車だ。基本的にアルトと同じで、街中中心で実用を重視したモデルになる。
ミライースなどを開発したダイハツは、良品廉価を掲げている。そのため、高価になりがちなマイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルは用意されていない。

ミライース系にも、減速エネルギーを使ったエコ発電制御が採用されている。アルトは通常バッテリーの他に専用のリチウムイオンバッテリーをもつが、ミライースにはこうしたバッテリーはない。ミライースは、シンプルな構成とすることで、コストを低減した。
ミライース系は、ボディに樹脂パーツを採用するなどアルトと同等レベルに軽量化されている。そのため、加速性能などのレベルは十分だ。
ただ、高回転型エンジンのため、元気よく走ろうとするとエンジンの回転が高くなり、室内はやや賑やかになる。

乗り心地は、高い空気圧のエコタイヤを装着しているため、ゴツゴツした乗り味になる。乗り心地が良いとは言えないが、不快になるほどではない。アルトと同様、街中用であるため、高速道路などは苦手分野だ。

燃費、走行性能とバランスに優れたモデル

4位 スズキ ハスラー/マツダ フレアクロスオーバー(OEM車) 25.0㎞/L

HUSTLER

スズキ ハスラー

フレアクロスオーバー

マツダ フレアクロスオーバー(OEM車)

ハスラーとフレアクロスオーバーは、ワゴンRの基本骨格やパワーユニットを使ったハイト系ワゴンのSUVモデルだ。実用性重視のモデルとは異なり、遊び心にあふれている。

ベースはワゴンRだが、なかなか本格的なSUVに仕上がっている。
最低地上高は180mmを確保。4WDモデルには、片輪が空転したときに空転したいタイヤに駆動力を増やすグリップコントロールなどが装備され、悪路走破性も高いレベルにある。
また、防汚タイプのラゲッジや豊富なシートアレンジなど、使い勝手にも優れている。

パワーユニットは、マイルドハイブリッドのみの設定だ。軽量ボディの恩恵で、走行性能は十分である。ただ、お勧めはターボモデルだ。高速走行でも楽々走れ、自然吸気エンジンより静粛性も高い。乗り心地も良好で、ロングドライブでも安心だ。全体的に完成度の高いモデルとなっている。

まとめ

燃費のいい軽自動車は、市街地用モデルや軽量化に成功したモデルが多かった。軽自動車は低価格であることが求められる傾向が強いため、ハイブリット化や電気自動車化は遅れ気味だった。ただ、これから日産が電気自動車を投入予定など、情勢は変わるかもしれない。引き続き注目したいカテゴリーだ。