この記事の目次 CONTENTS
急速に進む、クルマの電動化。それでもガソリン・ディーゼル車を選びますか?
PHEVとは?
ハイブリッド車とPHEVの違いとは?
PHEVは燃料費も魅力。家で充電すれば、ガソリン車の半分以下もあり得る
1位:三菱アウトランダーPHEV
2位:トヨタ プリウスPHV
3位:BMW 330e

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

急速に進む、クルマの電動化。それでもガソリン・ディーゼル車を選びますか?

すでに何かと話題になっているが、欧州各国は、2030〜2040年までに内燃機関(ガソリン・ディーゼルなど)車の発売を禁止すると発表した。
地球温暖化対策の一環で、CO2の排出量を減らすためだ。
こうした政策により、クルマの電動化が急速に進むと予想される。

もちろん、いきなりEVへ移行する訳ではないだろう。
ハイブリッドやPHEVなど、内燃機関とモーターを組み合わせたモデルを経て、EVへ移行するとみられている。

急速に進む、クルマの電動化。
我々もこの流れに乗り、クルマ選びを変える必要がある。
これからクルマを買うのであれば、やはり未来を見据えたクルマを選びたいところだ。
先進の電動化技術が投入されたモデルは、従来のガソリン・ディーゼル車には無い、新鮮なドライブフィールや経済性などを兼ね備えている。
一度こうしたモデルに乗ると、旧態依然のガソリン・ディーゼル車では物足りなく感じるほどだ。

今回は、そんな未来を見据えたクルマとして注目されているPHEVの中から、おすすめのベスト3をピックアップする。

PHEVとは?

PHEVとは、ガソリン車とEVの中間にあるクルマ。
日本ではハイブリッド車が普及していることもあり、「使いやすい」と評判だ。
高価なリチウムイオンバッテリーやモーターを搭載することから、新車価格は高め。
しかし中古車になると、驚くほどお買い得になっている。
購入時のイニシャルコストも低く、PHEVなのでランニングコストも非常に低い。

充電する電気自動車

ハイブリッド車とPHEVの違いとは?

ハイブリッドは、Hybird Vehicleの頭文字を取ってHVと呼ぶ。
一方、PHEVはPlug-in Hybrid Electrical Vehicleの頭文字を取っている。
なお、トヨタは機能的には同じでもPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)と呼ぶ。

HVとPHEVの大きな違いは、外部電力を得ているか否かという点にある。
HVは、ガソリン車でほぼ捨てていた減速時のエネルギーを使い、発電用モーターを回して発電・蓄電する。
その電力を使って駆動用モーターで走行、もしくはエンジンのアシストを行うのだ。
HVは電気を使ってはいるものの、電力自体は元々ガソリンから生まれたエネルギーなのだ。

これに対して、PHEVは大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載している。
このバッテリーを家庭用のコンセント経由で充電。
PHEVはこの電力で、急加速が必要な場合など特別な時を除き、ほぼモーターのみで走行する。
そしてバッテリーの電力が無くなると、HVとなり、ガソリンを使って走行する。
PHEVは、車種や搭載するバッテリーの容量によってEV(電気自動車)走行する距離が異なるが、最近では30~100km程度の距離がEV走行可能だ。

PHEVは燃料費も魅力。家で充電すれば、ガソリン車の半分以下もあり得る

PHEVは外部から給電を受けるので、EV走行可能な距離内であればガソリンを一切使わない。
通勤や送迎、買い物など日々の短距離走行が中心であれば、脱・ガソリン生活ができる。
また、たまに遠出という時も、電力が無くなればHVとして走る。
しかもEVのように充電スポットを気にする必要もなく、従来通りガソリンスタンドが使える。
「EVは、まだ航続距離や充電環境が心配」という人にとって、PHEVは利便性を維持しながらCO2の排出量を減らせるクルマだ。

また、日常的に短距離の走行を繰り返す使い方がメインであれば、ランニングコスト面でも大幅なメリットがある。
PHEVにかかる電気代は、各家の電気契約により異なるが、ガソリン代の半分以下になることも珍しくない。
ただし、PHEVは家での充電が基本となるため、充電器の設置が必要だ。
充電器の設置は、家によって異なるが10万円位が相場だ。

そんなPHEVの中古車の中で、おすすめとなるベスト3を選んでみた。

1位:三菱アウトランダーPHEV

世界でも稀なツインモーター4WDによる優れた走破性。電源車としての価値も

三菱アウトランダーPHEVのデビューは、2013年。
世界的にも、PHEVのパイオニア的存在だ。
しかもデビュー当時から、そのテクノロジーは圧倒的だった。
前後2つのモーターが装着された、ツインモーター4WDを採用。
異なる2つのモーターを前後で自在に制御することで、悪路であっても非常に安定し、モータードライブ車らしいパワフルでスムースな走りを誇る。

アウトランダーPHEV 外観

アウトランダーPHEV

また、モーターは瞬時に最大トルクを発揮する。
そのため、アクセル操作に対するレスポンスがよい。
こうした特性は、内燃機関車にはない。
新鮮で楽しい走りが楽しめる。

アウトランダーPHEVは、基本的にEV走行。
エンジンは発電に徹して、電力は大容量リチウムイオンバッテリーに供給される。
ただし、エンジン負荷が軽い高速走行などで、コンピューターが「エンジンで走行した方が効率がよい」と判断した場合、エンジン直結モードになる。

なお、アウトランダーPHEVの前期モデルは2.0Lガソリンエンジンを搭載しているが、モデル途中から2.4Lエンジンに変更され、よりパワフルになっている。

そして、アウトランダーPHEVの価値を高めているのが100V/1500W電源だ。
この電源があると、合計1500Wまでの家電製品が使用可能となる。
キャンプなどで家電が使える他、災害時の電源車としても価値がある。
停電時にはスマートフォンの充電だけでなく、炊飯器や電子レンジなどが使えるようになるのだ。
しかも、ガソリンさえ手に入れば、長期間電源車として活躍する。

さらに、少々高価だがV2H(Vehicle to Home)機器を買えば、安価な深夜電力を使って充電し、
昼間にクルマから家へ給電することも可能だ。
また、太陽光発電による電力を、一旦クルマのバッテリーに溜めて使用することも可能。

最新モデルのEV航続距離は65.0km(JC08モード)。
ハイブリッド燃費は18.6km/Lとなっている。
やや大きなボディながら、最小回転半径は5.3mとコンパクトカー並み。
扱いやすいのも、魅力のひとつだ。

年式を古くすれば、驚くほどリーズナブルな価格で購入可能!

アウトランダーPHEVは2013年デビューなので、年式が古いものを選べばかなりリーズナブルに先進技術を満載したPHEVが手に入る。
ただ、歩行者検知式自動ブレーキが装備されたのは、2017年の改良以降となるので注意が必要だ。

アウトランダーPHEV 外観

2014年式の中古車相場は、100~200万円程度。
ボリュームゾーンは、130~170万円くらいだ。
新車価格が340~440万円だったので、新車価格の40%程度にまで落ちてきている。
新車の軽自動車を買う予算で、先進のPHEVが買える。
グレードは、Gナビパッケージ、Gプレミアムパッケージなら装備が充実しているのでおすすめだ。
3年落ちの2017年式になると、まだ少し高価だが240~300万円程度が相場。
新車価格が370~480万円位なので、中古車だと60%程度にまで価格が落ちている。

2位:トヨタ プリウスPHV

バランスの取れた実用派

トヨタ プリウスPHVは、2017年に登場した。プリウスのPHEVとしては、2代目だ。
このプリウスPHVは、4代目プリウスと共通部分が多く、最新のGA-Cプラットフォーム(車台)が採用されている。
低重心化されたプラットフォームの恩恵により、エコカーでありながらなかなかスポーティな走りを披露する。

プリウスPHV 外観

プリウスPHV

HVのプリウスと異なるのは、外観デザインとパワーユニットだ。
フロントやリヤ周りは、ワイド感あふれる、迫力のあるデザインとして差別化している。
パワーユニットもほぼ同じように見えるが、プリウスPHEVは発電用モーターを駆動用モーターとして使える機能がプラスされている。
よりパワーが必要な場合、発電用モーターが始動する。
こうすることで力強い走りが可能となるだけでなく、よりEVで走行できる領域が増えている。

また、便利なのはオプション設定されている100V/1500Wアクセサリーコンセントを装着した車両。
1500Wまで外部に給電できるので、災害時などの停電時には家電製品が使用できる。
電源車として活躍するだろう。ぜひ積極的に選択したい。
こうした機能は、大容量バッテリーを搭載するHVやPHEVならではの機能。
もちろん、V2H対応だ。

また同様におすすめの装備が、ソーラー充電システムだ。
駐車中でも太陽光で発電して、バッテリーに蓄電する。
走れる距離はわずかだが、実燃費・実電費を伸ばすことができるアイテムだ。

高年式でもお買い得感ある価格

プリウスPHVのデビュー時の新車価格は、約330~420万円。
2017年式の相場は、210~260万円といったところだ。
わずか3年落ちで、価格は40%近くも落ちている。
新車で買った人はたまったものではないが、中古車として買うのであれば非常にお買い得感のある価格だ。

プリウスPHV

グレードは、Sナビパッケージ以上であれば、十分な内容の装備になる。
パワーシートやレザーシートなどの豪華装備が欲しいとなると、Aプレミアムナビパッケージがおすすめだ。
また、中古車流通量は少ないのだが、スポーティな外観や走行性能を求めるのなら、Sナビパッケージ・GRスポーツも良い。

3位:BMW 330e

もはや、エコカーというよりスポーツカー

今回紹介するのは、現行のG30型の3シリーズ330eではなく、先代となるF30型の330eだ。
このF30型の330eは、2016年に日本へ導入された。

3シリーズ 外観

3シリーズ

パワーユニットは、2.0L直4ターボ+モーターの組み合わせで、エンジンとミッションの間にモーターが入る、シンプルなものとなっている。
システム出力は252ps、システム最大トルクは420Nmとかなりパワフルだ。
420Nmというと、自然吸気4.2Lガソリンエンジン級。

EV航続距離はやや短く、36.8km/L。
シンプルなパワーユニットということもあり、燃費は17.7km/L(JC08モード)となっていて、ハイブリッド車としてはあまり優れた数値ではない。

PHEVとしては、そこそこといったエコ値となっているF30型330eだが、本領を発揮するのは走行性能だ。
かなり、新鮮で爽快な走りを披露する。
もはや、BMWはエコのためのモーターというよりは、ターボようなパワフルさのために使っている印象だ。
まず、アクセルをグッと踏み込むと、モーターのトルクによってグンとクルマを押し出す。
そして少し遅れて、ターボエンジンのパワーが上乗せされる。
その加速感、アクセルレスポンスの良さは絶品。
右足の操作に遅れなくクルマが反応し、とても気持ちよい。
一般的なガソリン車では得られないモータードライブ車ならではの走り味は、こうしたクルマに乗ったことの無い人にとって、とても新鮮に感じるだろう。

これは、ターボエンジン特有の悪癖であるターボラグを、上手くモーターが解消していることが主な要因だ。
ターボエンジンは、アクセルを踏んで過給が始まり、パワーが出るまで無反応になることがある。
この反応の悪さが、ターボエンジンのデメリットだ。
一方、モーターはアクセルを踏んだ瞬間、電気の力で最大トルクをアウトプットする。
このモーターの超絶レスポンスが、ターボラグを分かりにくくしているため、アクセル操作に対する反応の良さが際立つのだ。
この走りの良さは、スポーツ系PHEV最大の魅力といっていい。

通常時の短距離走行は、CO2を排出しないエコカー。
しかしアクセルをグッと踏み込めば、とにかくパワフルでレスポンス抜群のスポーツカーに大変身する。
F30型330eは、エコとスポーツを見事に使い分けているPHEVだ。

コスパ抜群!予算が許せば無理してでも手に入れたい1台

F30型330eのデビュー時価格は、約550~600万円。
売れ筋の330eMスポーツは599万円だ。
3年落ちとなる2017年式の中古車相場は、220~300万円位。
この中古車価格は、新車価格に対して40~50%にまで落ちている。
先代モデルになったとはいえ、ここまで価格が落ちるモデルはかなり稀だ。
とくに、輸入車のPHEVはこうした傾向が強い。

これだけ価格が落ちると、非常にコストパフォーマンスが高い。
しかも、プレミアムブランドであるBMWで、先進技術を搭載したPHEVなのだから選択しない理由がないほどだ。

3シリーズ

PHEVというと、「エコカーで走りはつまらない」と思い込んでいる人が多い。
しかしBMWのPHEVには、それは当てはまらない。
むしろガソリン車より走りは楽しく、新鮮なドライブフィールが楽しめる。