トヨタ プリウスPHVトヨタは、プリウスPHVをフルモデルチェンジし2017年2月15日より発売を開始。今回のフルモデルチェンジで、プリウスPHVは2代目となった。



  1. 目次
  2. 1 そもそもPHVって何?
  3. 2 プリウスPHVの走行性能
  4. 3 プリウスPHVの外装・内装
  5. 4 プリウスPHVの装備・技術
  6. 5 新型トヨタ プリウスPHVの選び方。お勧めは、充実装備のAグレード!?
  7. 6 新型プリウスPHVの価格

そもそもPHVって何?


PHVとは、プラグインハイブリッドの略。ハイブリッド車に比べ、PHVは容量のやや大きいバッテリーを搭載。このバッテリーに外部電源から充電できる機能をもつ。そして、その蓄えた電力で短距離はEV走行することができる機能をもつ。ここまでは、ゼロエミッション車なので、環境性能に優れる。

さらに、蓄電した電力を消費すると通常のハイブリッド車として走行できる。ガソリンを使って走行するので、充電環境が整っていない場所でも、心配なく走行が可能だ。もちろん、ハイブリッド車なのでC02の排出量も少なくて済む。EVの高い環境性能と、ハイブリッド車の優れた使い勝手を融合していることから、次世代環境車とも呼ばれている。

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プリウスPHVの走行性能


初代プリウスPHVは、2012年1月に発売が開始された。当時、ハイブリッド車のプリウスが大ヒットとなっていた。そのため、初代プリウスPHVもヒットすると見られていたが、想像以上に売れなかったのだ。

■先代プリウスPHVが、売れなかった理由その1:走行距離の短さ

その理由のひとつは、EV走行可能距離が短かったからだ。初代プリウスPHVは、4.4kWhという小さな容量のリチウムイオン電池を搭載。EV走行できる距離を26.4㎞とした。トヨタは、ほとんどの顧客の1日の走行距離が30㎞以下というマーケティングデータに基づき設定した。それと同等に、あまり大きな容量のリチウムイオン電池を搭載すると、価格が高くなり売れないという判断もあった。もちろん、リチウムイオン電池は大きく重いため、ハイブリッドモードになったときには、ただの重りになり燃費が悪化するというのも理由のひとつだ。

結果的に、トヨタはマーケットを甘く見た。メーカーの論理が先行し過ぎた。顧客は26.4㎞というEV走行可能距離は少なすぎて、ハイブリッド車と比べメリットが享受できないという判断だ。

■新型PHVはEV走行可能距離を68.2㎞へ大幅に伸長

トヨタ プリウスPHV新型プリウスPHVは、まず、こうした反省点を改善した。搭載されるリチウムイオン電池の容量を4.4kWhから倍の8.8kWhへ拡大。EV走行可能距離を68.2㎞と2.5倍以上に伸ばした。そして、欧州ではEV最高速度が低いということもあり、100㎞/hまでだったEV最高速度も135㎞/hまで引き上げた。

理由は後述するが、ハイブリッド燃費は37.2㎞/Lとなり、通常のハイブリッド車と同じレベルに引き上げた。しかし、例えば長距離ドライブなどでは、1回の充電で68.2㎞、EVで走れたとしても、それ以降は通常のハイブリッド車とそれほど変わらない燃費値になる。しかし、車両価格は100万円以上高価だ。あまりクルマを使わない人にとっては、PHVはあまりメリットが無い。近距離で毎日のようにクルマを使い、こまめに充電できる環境がないと、安い外部電力が使えるPHVを使うメリットがないのだ。使い方により、メリットとデメリットが共存するのがプリウスPHV。こうした部分は、先代モデルも同様で、使う人を選ぶことになる。

ただ、より多くの人にPHVのメリットを享受してもらうために、急速充電器に対応した。約20分で80%まで充電が可能。これにより、高速道路などでの急速充電器が使えるようになり、EVモードがより積極的に使えるようになった。また、PHV購入時には、受電設備の工事が必要だったが、一般的な住宅の100Vにも対応した。ただ、100Vだと約14時間でフル充電となる。100Vは充電設備の工事無しで使えるメリットがあるが、約2時間20分で満充電になる200Vと比べると使い勝手面では微妙だ。

プリウスPHVの外装・内装について

トヨタ プリウスPHV


■売れなかった理由その2は、プリウスとの違いのなさ

先代プリウスPHVが売れなかった理由はまだある。デビュー当時は、プリウスとの価格差が100万円近くあったのに、プリウスと差別化できていなかったことだ。外観や内装など、ほとんど同じだった。これでは、購入マインドも下がってしまう。

■新型PHV、プリウスとの差別化のために、専用デザインや技術を投入

そうした反省点から、新型プリウスPHVでは、外観デザインをプリウスと大きく異なるものとして差別化している。ヘッドランプには、薄く小型にデザインした4眼のLEDプロジェクターを採用。このLEDプロジェクターの上下高を低くし、シャープで睨みの効いた精悍なフェイスデザインとしている。プリウスとは、まったく異なる顔となった。

リヤビューも同様に、異なるデザインが施された。その上、リヤウインドウには、空気の流れをイメージし、2つの膨らみを持たせた波状断面のダブルバブルバックドアウインドウを採用した。リヤオーバーハングをプリウスに対し80mm延長し、より伸びやかなサイドシルエットとしている。このバックドアは、トヨタ初となるカーボンファイバーのCFRP(炭素繊維強化樹脂)製。大幅な軽量化も施された。軽量なアルミ製に比べても、さらに約40%も軽量化されている。プリウスには無い専用の技術だ。この軽量化は、大きく重いリチウムイオン電池を装備しているので、ハイブリッドモードになると電池はただの重りになる。軽量化により、ハイブリッドモードでも燃費を悪化させないようにしているのだ。

インテリアも大きく変更された。目を引くのが、センターコンソールに設置された大型11.6インチ縦型タッチディスプレイだ。アメリカのEVであるテスラによく似たタッチディスプレイとなっている。こうしたタッチパネル式は、流行ということもあるのだが、容易に導入してしまうのがトヨタらしい。タッチディスプレイは、操作が難しく安全面であまり好ましくないからだ。タッチディスプレイは、走行中の揺れる車内で的確に操作しにくい。シッカリと操作できないから、ついつい指先を注視して前方から視線が外れる時間が長くなる。さらに、ドライバーの視線がセンターコンソールに大きく移動するため、安全面ではデメリットの方が多い。視線移動を少なくするためには、モニターはダッシュボード上部でなるべく奥に置いた方が好ましい。操作は手元のダイヤルなどで操作するか、ボイスコマンドにようる操作が望まれる。ドイツ車にこうした設定が多いのは、安全性を重視した結果だ。単に流行に合わすのでは安易すぎる。トヨタは、本気で安全性を考え、独自の安全思想の上にデザインや装備を検討してほしい。

また、新型プリウスPHVは、かなり割り切っていて後席シートは2席となり、計4人乗りのクルマとなっている。よりラグジュアリー感を出しているのだが、日本マーケットは大は小を兼ねるという考えが強いため、多人数乗車のモデルが好まれる。そのあたりが、どう判断されるかにも注目だ。

プリウスPHVの装備・技術


安全装備面では、プリウスで一部オプションとなっていた歩行者検知式自動ブレーキを含む安全装備「トヨタ セーフティセンスP」がプリウスPHVでは標準装備された。これは、高く評価したい。

■歩行者検知式自動ブレーキを標準装備化したものの、レスオプションを用意するなど「安全への本気度が低い」

しかし、なんとSグレードにはレスオプションを設定するなど、相変わらず安全装備の軽視傾向にある。それでも、サイドエアバックやカーテンエアバッグを標準装備化したのは、評価できるポイントだ。

また、A、Aプレミアムグレードには、ブラインドスポットモニター〈BSM〉、インテリジェントクリアランスソナー(巻き込み警報機能付)、シンプルインテリジェントパーキングアシストなど、安全面や利便性の高い装備が標準装備される。ただ、こした装備は、400万円クラスのクルマであれば、標準装備が当たり前ともいるもの。全車標準装備化が望ましい。

■世界初のソーラー充電システムも! よりEVらしさを追求した新技術も投入


トヨタ プリウスPHVプリウスに対しての差別化は、PHVシステムにも及んだ。よりEVらしさを出すために、新技術であるデュアルモータードライブシステムが搭載された。従来のモーターに加え、ジェネレータ(発電機)をモーターとして使い、さらに力強いEV走行を可能とした。これが、なかなか好印象で、EVらしい力強さが強調されており、プリウスとはまったく違うクルマという走行フィーリングとなっている。

そして、量産車世界初となるソーラー充電システムが採用された。ルーフに貼られたソーラーパネルで発電し、駆動用のリチウムイオン電池に充電を開始するというもの。トヨタの計算では、最大6.1㎞/日、平均2.9㎞/日走れる電力をソーラーパネルが供給してくれる。屋内の駐車場であれば、ほとんど発電はできないなど駐車場環境に左右されるものの、これは画期的な技術だ。天気の良い日などは、走行中でも発電しているので、EV走行可能距離やハイブリッド燃費にもプラスの影響を与えてくれる新技術だ。

さらに、未来のクルマのあり方も提示。このソーラー充電システムが、より効率や性能を上げていけば、ソーラーパネルで発電し電気で走るEVが登場することになり、よりクリーンなモビリティに進化するだけに、今後期待のシステムだ。

しかし、このソーラー充電システムは、なぜかSグレード系にしか装備できない設定になっている。オプション価格も280,800 円とやや高価だ。こうした高価なオプションは、上級グレードを選ぶ顧客層が選択するケースが多い。なぜ、安価なエントリグレードに高価なオプション設定をしたのかは謎。オプションで選んでくれるな、的な設定ともいえる。

本来ならば、こうした先進性の高い装備は、上級グレードに標準装備化してコストを下げるという方向で考えべき。そうしないと、誰も選択してくれず、いつまで経っても高価なオプションのままで、普及が進まないということになりかねないからだ。

新型トヨタ プリウスPHVの選び方。おすすめは、充実装備のAグレード!?

トヨタ プリウスPHV新型トヨタ プリウスPHVの選び方。新型プリウスPHVは、それほど売れるクルマではないのに、グレードが多い。Aプレミアム、A、Aレザーパッケージ、S、Sナビパッケージと5グレードに分けられている。まず、外したいのがSグレード系。ブラインドスポットモニター〈BSM〉、インテリジェントクリアランスソナー(巻き込み警報機能付)、シンプルインテリジェントパーキングアシストといった安全装備関連をオプションでも装備することができないからだ。他のグレードは、標準装備化されている。400万円に近いクルマなので、これくらいの安全装備は標準装備化されていないと、ちょっと恥ずかしいといった仕様だ。

そうなると、選ぶことができるグレードはAプレミアム、A、Aレザーパッケージの3つ。レザーパッケージは、Aに対してシートが本革となる。Aプレミアムは、本革シートが装備され、Aに対してアクセサリーコンセント(AC100V・1500W、コンセント2/ヴィークルパワーコネクター付)、オートワイパー、カラーヘッドアップディスプレイなどが大きな違い。新型プリウスPHVは、外部への給電が可能でアウトドアレジャーや災害時の電源車としての役割を持つ。エンジンが作動する「HV給電モード」で、最大1,500Wの出力でガソリン満タン状態から2日程度の電力を供給可能だ。この機能は、あった方がいいのでアクセサリーコンセント(AC100V・1500W、コンセント2/ヴィークルパワーコネクター付)は、オプション(75,600 円)選択したい。こうなると、本革シートが必要というのでなければ、Aグレードがお勧めとなる。Aグレードに、75,600円のアクセサリーコンセント(AC100V・1500W、コンセント2/ヴィークルパワーコネクター付)を選択すれば、十分な仕様となる。AレザーパッケージとAプレミアムは、本革シートなどにこだわる人向けのグレードだ。

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トヨタ プリウスPHV価格


・S 3,261,600円/“ナビパッケージ” 3,666,600円
・A 3,807,000円/“レザーパッケージ” 4,066,200円
・Aプレミアム  4,222,800円

執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。