ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

再生可能エネルギーのFIT終了に伴い、太陽光発電した電力の売電価格の低下が予測される。
今後は「太陽光発電した電力は蓄電し、家庭で使う」ようになるだろう。

そこでEV(電気自動車)は家庭用蓄電池としての役割も果たすようになる。
家庭用蓄電池として利用するのにおすすめなクルマ、日産 リーフと三菱 アウトランダーPHEVを紹介する。

FIT順次終了、「太陽光発電は自宅で使う」が主流に?

経済産業省が推進していた再生可能エネルギーのFIT(固定価格買取制度)が2019年以降、順次終了していく。
従来は、一般家庭などで太陽光発電した電力を比較的高額・固定価格で売電できていたが、これからは変動制になるため、大幅に安い価格で売電することになるだろう。
今まで売電により、それなりの利益を上げていた家庭も多かったが、今後は売電で利益を上げることが難しくなってくる。

そこで、これからの太陽光発電は売電ではなく、自宅で電気代を補填するような使い方に変化してくると言われている。
当り前だが、太陽光発電は晴れた日でないとできない。

さらに共稼ぎなどの家では、日中家には誰もいなくて電力をあまり使っていないというケースが多い。この状況だと、安い価格での売電に頼るしかない状況となる。
そこで、日中発電した電気は夜に使いたいという家庭が多いだろう。

家庭用蓄電池はEVより高価?

こうした状況を打開するために、注目されているのが家庭用蓄電池だ。

しかし、家庭用蓄電池の価格は非常に高価。
リチウムイオンを使う蓄電池だと、5kWhというわずかな容量でも約130万円という価格が設定されているものもある。
補助金が出るとはいえ、これだけ高価だとなかなか手がでないのは当然だろう。

そこで、注目されているのがEVだ。
62kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載する日産 リーフe+ Xグレードの価格は441.1万円。
単純にリーフを電池として考えて計算すると約7.1万円/kWhになる。5kWhなら、わずか35.5万円の計算だ。

EVを家庭用蓄電池として活用すれば、わざわざ超高額な家庭用蓄電池を買う理由が見つからない。

EVと家をつなぐV2H機器が必要

ただ、単純に家とEVをつなぐことはできず、V2H(Vehicle to Home)機器が必要になる。
安価なものでも40万円程度かかり、設置工事費も必要だ。それでも家庭用蓄電池を買うより安い。

このV2Hを使うと、自宅にいない昼間に太陽光発電でEVに充電、夜間はEVから給電を受け、昼間に溜めた電力を使えば電気代が節約できる。
また電力会社によりさまざまな深夜電力の割引プランがあるので、この時間を使いEVに充電。雨などで、太陽光発電ができないときにEVから給電して使えば、こちらも電力代の節約になる。

さらに、EVなのでクルマとしても使える。太陽光で発電した電力で走れば、電気代はかからない。
ガソリン車と比べると、大幅にランニングコストが下がる。

EV、PHEVは停電に強い

大容量の電力を溜めていられるEVは、災害時に電源としても使うことが可能だ。
62kWhの容量をもつリーフe+なら、停電状態で一般家庭約4日分の電力を供給できる。

ガソリンを使って発電ができる三菱 アウトランダーPHEVなどはV2H機器に接続ができ、ガソリンが満タンであれば、約10日間もの電力が供給可能だ。
こうなると、V2H機器と接続が可能なEVやPHEVは、これから非常に魅力的になる。

中古リーフは驚くほど安価! 家庭用蓄電池としてもコスパ優秀

そこで注目したいのが中古車だ。
EVやPHEVのリセールバリューは低く、中古車価格は非常に安い。V2H機器が高価なので、安価な中古車ならコストパフォーマンスも魅力となる。

もっとも選びやすいのが、日産 リーフだ。

リーフ

安価になってきているのは、初代リーフ。
ターゲットにしたいのは、2015年12月にマイナーチェンジに登場した30kWh車だ。

モデル後期に入り、リチウムイオンバッテリーの熟成も進んでいる。
しかも、30kWhとバッテリー容量も大きく、クルマとしても航続距離が長く使いやすい。

リーフの中古車価格は、2016~2017年式で100~140万円くらい。
デビュー時の新車価格は、ざっくり320~400万円。
わずか3年で新車価格の30%台までに落ちている。これはお買い得感がある。

40kWhの大容量電池を搭載した2代目リーフになると、少々高価になる。
2017~2018年式で200~250万円が相場だ。
金額的には高めだが、新車価格からの値落ち率は60%台まで落ちている。

予算に余裕があるのなら、2台目リーフの40kWh車もありだ。
航続距離は400㎞(JC08モード)もあるので実用性は十分だ。

62kWhの超大容量電池を搭載するリーフe+は、2019年1月に販売されたモデルなので、まだ高値が続いており、やや手が出しにくい。中古車の流通量も非常に少ない。
2019年式の相場は340~400万円といったところで、このモデルはあと2年くらい待った方がよいだろう。

SUV人気もあり、中古車価格がやや高めのアウトランダーPHEV

そして、リーフと比べると電池容量は少ないものの、ガソリンを使えるという実用面でメリットがあるのが三菱 アウトランダーPHEVだ。

アウトランダーPHEV

アウトランダーPHEVの中古車価格は、2014年式で150~200万円が相場といったところだ。
SUV人気ということもあり、リーフと比べるとやや高めの価格となっている。

EVと太陽光発電の相性は最高! 

自宅に太陽光発電がある人、もしくはこれから太陽光発電を取り付けたい人など、クルマを乗り換えるときには、EVという選択はいかがだろうか?

太陽光発電とEVの相性は抜群によい。CO2排出量を減らしながら、より経済的な生活が可能になる。
近未来のクルマと住宅の関係が、より具体的になってきた。