この記事の目次 CONTENTS
電気がないと、生死にかかわることも
ハイブリッド車やPHEVは停電時に役に立つ?
停電に特に強いV2HとPHEV
給電できるクルマの選び方

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

災害等で停電が発生した時、給電できる車両があればとても便利だ。
しかし、ハイブリッド車、PHEV、V2Hなど電力が供給できるクルマにもさまざまな種類ある。
この記事では、停電時に活躍するのはどんなクルマなのか、その選び方を紹介していく。

電気がないと、生死にかかわることも

地震や台風など、近年、災害が続く日本。
そんな中で、必ずといっていいほど話題になるのが「停電」だ。
電力によって社会活動が成り立っていることもあり、停電が発生すれば日常生活はとても不便になり、時には生死にまでかかわることもある。

例えば災害時に情報を収集したくても、停電中であればスマートフォンやラジオ、テレビなどが使えない。
さらに、夜は真っ暗闇の中で過ごすしかなく、不安な気持ちになるだけでなく犯罪面も心配だ。また真夏であれば、エアコンが使えなくなり、熱中症で命を落とす危険もある。

日常並みとはいかないまでも、ちょっとした家電製品くらいは稼働させられる電力が欲しい。

ハイブリッド車やPHEVは停電時に役に立つ?

そんなもしもの時、日常的に使っているクルマの中で役に立つモデルがある。
トヨタ系のハイブリッド車やPHEV、三菱アウトランダーPHEVなどだ。
これらのモデルには、100V 1,500Wの給電用コンセントを備えている車両がある。

1,500Wあれば、災害時には非常に役に立つ。
10W程度のスマートフォンなら、一度に何台も充電可能だ。
また100Vで1,500W内であれば、エアコンや冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、TV、パソコン、照明などあらゆる電気製品も使用可能だ。
複数タップの長い延長コードさえ備えておけば、容易にクルマから電力を取り出すことができる。

ハイブリッド車やPHEVは、いわば「走る電源車」。
エンジンで発電しバッテリーに電力を供給する機能があるため、いざとなればクルマ以外の用途として使えるのだ。
しかもガソリンが満タン状態であれば、非常に大量のガソリンを積んでいる。
これも魅力といえる。
ガソリンなどの燃料をこれだけの量、一般家庭で安全に備蓄するのは現実的に不可能だ。
家庭用発電機も悪くはないが、燃料の保管や補給でやや難がある。

停電に特に強いV2HとPHEV

また停電時に、さらに活躍が期待されるのがEVやPHEVだ。
これらのクルマは、大容量のリチウムイオンバッテリーを搭載している。
例えば、日産リーフe+には62kWhもの大容量リチウムイオンバッテリーが搭載されている。
V2H「Vehicle to Home」と呼ばれる専用の機器が必要だが、満充電状態なら一般家庭の4日分もの電力が供給できる。
太陽光パネルがある家ならば、昼間はリーフに充電が可能だ。

日産リーフ

ただEVは電力が無くなれば、ただの鉄の塊になる。
家の周辺が停電ならば、急速充電できる所もないだろう。

そう考えると、現実的なのがPHEVだ。
アウトランダーPHEVの電池容量は13.8kWh。
リーフe+と比較すると容量は20%程度しかないが、一般家庭1日分程度は供給できる電力はある。

三菱アウトランダーPHEV

三菱 アウトランダーPHEV

アウトランダーPHEVのメリットは、発電できるエンジンをもっていることだ。
こちらもV2H機器が必要だが、ガソリンとバッテリーが満充電であれば、一般家庭の約10日分もの電力を供給できるという。
また、ガソリンは停電時に比較的容易に手に入りやすいため、安定して電力が供給できる。

給電できるクルマの選び方

このように、ハイブリッド車は停電時には緊急用の電源として使える。
また、PHEVやEVはV2H機器があれば本格的な電源車として使えるのだ。
これからクルマを購入するのであれば、単に燃費だけという視点ではなく、災害時に役に立つという視点があってもいい。
ただ、どんなクルマにでも100V 15,00Wのコンセントが付いている訳ではないので選択時には注意が必要だ。

まず、ハイブリッド車について見てみよう。
トヨタ系のハイブリッド車やPHEVは、ほとんどが100V 15,00Wの機能を持っている。
一部標準装備のグレードもあるがほぼオプション設定だ。
一方、ホンダや日産などのハイブリッド車には、100V 1,500Wの機能はほとんどないと思っていたほうがよく、ほんの一部の車種にオプション設定されている程度だ。
そのため、新車購入時には100V 1,500Wのオプションを選択する必要がある。
三菱アウトランダーPHEVは、全車標準装備だ。

中古車を検討する場合、欲しい車種に100V 1,500Wコンセントが装着されている車両を探すことから始まる。
現行の50系プリウスであれば、最上級グレードのAプレミアムなら標準装備されている。

トヨタ プリウスPHV

トヨタ プリウスPHV

しかし一部の車種では、上級グレードに標準装備されているなど装備はまちまちだ。
ただ、あまり人気の高いオプションではなかったので、装着車両はかなり少ない。
中古車の購入時には、こうした装備が装着されているかしっかりと確認する必要がある。
100V 1,500Wコンセントが付いているからといって、中古車価格はアップしていることは少ないので、装備されている車両はむしろお買い得と考えるべきだろう。