トヨタは、コンパクトカーのアクアを一部改良。そして、特別仕様車S“Style Black” を設定し発売を開始した。一部改良では、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備トヨタセーフティセンスをようやく投入。もはや、歩行者検知式自動ブレーキは標準装備化が当然の時代だというのに、アクアは未だ中間グレード以下はオプション設定という状況になっている。

※自動運転の機能を過信せず、責任を持って安全運転を心がけましょう。

この記事の目次 CONTENTS
アクアに歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化
2度のマイナーチェンジで熟成を重ねるアクア
時代遅れになっていた安全装備
今回の一部改良で安全性能はマシになったが
アクア特別仕様車「S“Style Black”」はお買い得
トヨタ アクア価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

アクアに歩行者検知式自動ブレーキが標準装備化

トヨタはBセグメントのコンパクトカーであるアクアを一部改良し発売を開始した。一部改良では、従来の歩行者検知ができない自動ブレーキから歩行者検知ができる「トヨタ セーフティセンス」を一部グレードにのみ標準装備化した。

同時に、Sグレードをベースにブラックを基調とした内装で「トヨタセーフティセンス」や「インテリジェントクリアランスソナー」などを装備した特別仕様車S“Style Black”を設定した。

2度のマイナーチェンジで熟成を重ねるアクア

トヨタ アクアは、2012年末に登場。爆発的なプリウス人気の波に乗り、アクアもいっきに人気モデルとなる。アクアとプリウスは、この後、現在までどちらかが年度の登録車新車販売台数ナンバー1を守り続けているほど高い人気を維持している。

アクアの高い人気は、トヨタの卓越したハイブリッド技術により世界トップレベルの低燃費を実現したことが大きな理由のひとつ。最新モデルの燃費は、38.0㎞/L。ただしこの燃費は燃費訴求グレードのもので、ほとんどのグレードは34.4㎞/Lになっている。

乗り心地や空力特性の向上など進化を続けるアクア

2014年12月に初のマイナーチェンジ。SUVテイストをプラスしたXアーバンの追加。乗り心地や空力特性の向上などが図られた。

そして、2017年6月に2度目のマイナーチェンジを行った。外観デザインを大幅に変更。SUVテイストをプラスしたXアーバンは、クロスオーバーとグレード名を変更した。また、ボディ剛性をアップするなどし、走行性能も高めている。

時代遅れになっていた安全装備

すでにモデル末期に入っている人気モデルのアクアにも死角があった。それは、先進予防安全装備だ。

アクアは、2014年11月の改良で自動ブレーキを含む先進予防安全装備であるトヨタセーフティセンスCを用意。しかし自動ブレーキは軽自動車でも当たり前になっていた装備で、非常に遅れて用意された。

さらに、トヨタセーフティセンスCは、歩行者検知ができないタイプだ。すでに、歩行者検知式自動ブレーキが一般的になりつつある状況下で、トヨタの安全装備に関する遅れがより際立った。しかも全車に標準装備されるのではなく、上級グレードに標準装備されるだけで、他のグレードではオプションという状況だった。

2017年にはコンパクトカー1位から陥落

時代遅れの安全装備となったアクアに対して、ライバル車は歩行者検知式自動ブレーキを標準装備化する。さらに、2016年11月にシリーズハイブリッドを搭載したノートe-POWERが登場。ノートe-POWERの登場で、圧倒的な人気を誇っていたアクアに暗雲が立ち込めた。

2017年度では、今まで守り続けていた軽自動車を除くコンパクトカーナンバー1の座をノートに奪われてしまったのだ。主にノートのe-POWER技術に対する人気が高かったことが理由だが、アクアには歩行者検知式自動ブレーキが用意されていないというのも販売が落ち込んできた要因のひとつだ。

今回の一部改良で安全性能はマシになったが

そこで、アクアは劣っていた安全性能を少なくとも同じBセグメントのコンパクトカーと同等レベルにするために、ようやく歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備である「トヨタセーフティセンス」を一部グレードにのみ標準装備した。

トヨタは、今までこうした先進予防安全装備をトヨタセーフティセンスCとトヨタセーフティセンスPと2つ用意していた。トヨタセーフティセンスCは、歩行者が検知できないタイプで、トヨタセーフティセンスPは歩行者検知機能付きだ。少し前にマイナーチェンジしたアルファード&ヴェルファイアから、先進予防安全装備をトヨタセーフティセンスと1本化して呼ぶようになっている。

先進予防安全装備の充実が今後の課題

アルファード&ヴェルファイアに装備されたトヨタセーフティセンスとアクアに装備されたトヨタセーフティセンスは、呼び名は同じなのだが性能が異なる。

トヨタは相変わらず安全装備に対する姿勢が消極的だ。アルファード&ヴェルファイアのトヨタセーフティセンスは、夜間の歩行者が認識できる高性能タイプなのだが、アクアに装着されたトヨタセーフティセンスでは夜間の歩行者は認識できないのだ。相変わらず安全装備でも、顧客に格差を付けている。

しかも、駐車場などにおけるアクセルペダル踏み間違い時の衝突被害軽減に寄与する先進安全装備のひとつ「インテリジェントクリアランスソナー」を新規に用意したのは評価できるのだが、これだけ遅れて登場しておきながらオプション設定という状況だ。また、サイド&カーテンエアバッグも全車オプションのままだ。

ライバル車であるマツダ デミオでは、歩行者検知式自動ブレーキやサイド&カーテンエアバッグ、誤発進抑制制御、後側方車両接近警報、後退時車両接近警報などが全車に標準装備され、どのグレードでも高い安全性能を誇る。

アクア特別仕様車「S“Style Black”」はお買い得

そんな安全装備に消極的なアクアにおいて、唯一の救いが特別仕様車S“Style Black”だ。このグレードには、トヨタセーフティセンスとインテリジェントクリアランスソナー、スマートエントリーパッケージを標準装備化。特別装備として、メッキのドアハンドル、バックドアガーニッシュなどを装備した。

このアクア特別仕様車S“Style Black”の価格は、1,979,640円となった。ベースのSグレードに対して、約9.3万円高となっている。充実した安全装備のわりに、やや買い得感のある価格設定となった。

アクア特別仕様車S“Style Black”にオプションのサイド&カーテンエアバッグ43,200円を装備すれば、一定レベルの安全性能をもつクルマになる。

トヨタ アクア価格

・L 1,785,240円
・S 1,886,760
・G 2,052,000円/“ソフトレザーセレクション” 2,079,000円
・Crossover 2,052,000円
・特別仕様車S“Style Black” 1,979,640円