欧州発の化石燃料使用車販売禁止政策。そして、急加速するEV(電気自動車)へのシフト。急激にEVへのシフトが進むという現状ではないものの、確実にクルマには電動化技術が積極的に取り入れられるのは確実。
現実的なのが外部電力とガソリンによって走るトヨタ プリウスPHVといったプラグインハイブリッド車だ。ガソリンを使うことで、EVのデメリットとなっている、航続距離不足を補うことができる。
対して、着実に進化しているのがEVである日産リーフ。2世代目となり、バッテリー容量を増やし航続距離を400㎞とした。社会インフラとしての充電設備もドンドンと整備され、高速道路上や都市部ではもう充電環境に困ることがない状態になってきている。
クルマが電動化への道を歩む過程で、重要な役割を担うことになるプリウスPHVとリーフ。今回はこの2台を比較した。
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トヨタ プリウスPHVの特徴
先代プリウスPHVは、残念ながらほとんど売れないモデルだった。その失敗理由は大きく分けて3つあった。1つ目はEV航続距離が26.4㎞と短かったこと。2つ目は車両価格が高価過ぎたこと。3つ目はハイブリッド車とのデザイン的な差別化がなかったことだ。
2代目となったプリウスPHVは、こうした売れなかった理由を価格以外完全払拭した。EV航続距離は、68.2㎞へと大幅に伸びた。デザインもハイブリッドのプリウスとはひと目で分かるほど明確に異なるデザインが採用された。
ハイブリッドシステムもプリウスPHV用になっており「デュアルモータードライブ」システムを搭載。「ワンウェイクラッチ」と呼ばれる機構をプラスし、モーターだけでなくジェネレーターもモーターとして動かすことができるようになった。モーターの力にジェネレーターからのトルクも上乗せされ、よりEVらしい力強い加速力を誇るようになった。
日産 リーフの特徴
日産リーフ累計販売台数は、30万台を超えており世界で最も売れているEVだ。この間、リチウムイオンバッテリーに関する火災事故などはゼロだという。EVの中には、火災事故を起こしているモデルもあるだけに、リーフの優れた安全性は高く評価できる。
2代目となったリーフは、初代リーフの24kWhと30kWhという容量のリチウムイオンバッテリーから、40kWhへと大幅に拡大した。これにより、航続距離は従来の30kWh車の280㎞から400㎞へと大幅に伸びた。航続距離の短さを払拭しつつある。
そして、2代目リーフから、同一車線内維持し追従走行できる運転支援機能プロパイロットも搭載。さらに、指1本の操作で駐車できるプロパイロットパーキングも用意され、より先進性の高いモデルとなった。また、e-Pedalと呼ばれる回生ブレーキを利用したブレーキシステムが導入され、アクセルペダルだけで発進から停止まで可能。アクセルとブレーキペダルの踏み換え回数が減り疲労軽減にも効果がある。
1燃費(電費)の比較
プリウスPHVはEVでの航続距離は68.2㎞。これだけ走れば、送迎や買い物などのチョイ乗りであれば、ほとんどガソリンを使わないで生活ができる。ハイブリッドでの走行でも燃費は37.2㎞/L。実燃費や実電費が7割程度と計算しても、ガソリン車では到底勝ち目は無い。優れた経済性を誇る。
また、プリウスPHVの一部グレードにはオプションで、大型ソーラーパネルを車両ルーフに搭載できる。このシステムは、量産車として世界初。駐車中に太陽光をEV走行用エネルギーに変える。1日最大6.1㎞走行分の電力が太陽光で発電できるので、近隣の買い物程度の電力なら太陽光パネルで補える。究極のエコカー的で魅力ある装備だ。ただ、オプション価格は約28万円とやや高価。
対するリーフの航続距離は400㎞となった。ただし実際の航続距離は、走行条件により大きく変化する。急な登り坂や高速走行では、電費が悪化する傾向がある。逆に市街地など、ストップ&ゴーが多い場所では優れた電費を記録する。今回、e-Pedalが装備されたことで、回生ブレーキの効率がアップ。乗り方にもよるが、街中だと8.0㎞/kWhを超えてくる。こうなると、実航続距離は320㎞程度。日常的な使い方であれば、毎日充電する必要もないくらいだ。
日産のHP内にあるランニングコストシュミレーターで計算すると、東京電力「夜トク8」契約の場合、午後11時~午前7時までの電気料金は1kWhあたり20.78円。1ヶ月1000㎞走行で実電費8.0㎞/kWhで計算すると、1ヶ月の電気代はわずか2,598円となった。これは、かなりリーズナブルだ。
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2価格の比較
両車のお勧めグレードの価格は以下の通り
- トヨタ プリウスPHV A
- 3,807,000円
- 日産リーフG
- 3,990,600円
次世代車ということもあり、車両価格は両車ともかなり高額。基本的には、補助金頼みの価格設定ともいえる。平成29年度の国の補助金はリーフが40万円、プリウスPHVが20万円だった(※平成30年1月末で終了。それ以降の登録車に関しては、現在検討中)。
さらに、エコカー減税も免税対応と、とにかく税制面では手厚いフォローがなされている。とくに、EVのリーフは補助金額が大きいため、プリウスPHV並みの価格になっている。とはいえ高額であることに変わりはないので、両車ともに、もう少し身近な価格になってほしいところだ。
購入時の値引き額は?
プリウスPHVやリーフは、補助金額が大きいためか値引きは渋い。何も言わないままで商談すれば、せいぜい10万円程度以下の値引きで終了してしまうだろう。
そこでライバルと競合させて値引きを引き出すことを目指したい。幸いプリウスPHVとリーフは価格帯も同じ程度なので、この2台を競合させることで、値引きを引き出すことはできるだろう。両社ともたくさん売れるクルマではないので、気長な交渉が必要になる。
商談のコツは、ライバルが本命であるように見せかけること。プリウスPHVが本命なら、リーフのプロパイロットや2,000円/月で指定の急速充電器が使い放題になる使いホーダイプランが気になっているように振舞ってほしい。営業マンが「本命のリーフからプリウスPHVにひっくり返せるかも?」と期待を持たせることが重要だ。リーフの商談では、このパターンと逆になる。プリウスPHVは、ガソリンでも走れるという利便性が気になっていると伝えよう。
あまり値引きが引き出せない場合、中古車という選択肢も考えてみるといいだろう。プリウスPHVは1年落ちの2017年式が270万円代から手に入り買い得感が出ている。またリーフについても、まだ現行モデルの在庫は少ないが、先代はかなり値下がりしているため、2代目も少し待てば安く購入できる可能性は高い。先代リーフの30kWhなら、なんと2016年式で140万円台くらいから手に入るという激安さが魅力だ。
「先代の売れなかった理由を徹底改善!」トヨタ プリウスPHV購入ガイド
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3内装デザイン比較
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プリウス PHV 運転席 -
リーフ 運転席
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プリウス PHV メーター -
リーフ メーター
プリウスPHVの外観デザインは、通常のプリウスとは大きく異なる。しかし、インパネデザインは基本的にプリウスと同じ。ただし差別化のためセンターコンソールに11.6インチの縦置き大型ディスプレイが設定されており、これだけで先進感があり、プリウスとは全く違うクルマのように見えるから不思議だ。
対するリーフ。先代に当たる初代リーフは、上下2段に分けたメーター類をもった個性的なデザインだった。2代目リーフは、オーソドックスなデザインに変更され、全体的にスポーティな雰囲気にまとめられている。コストダウンを強く意識したのか、先進感も無ければ質感も低く、初代リーフからの流用と思われるパーツ類も目につく。ナビモニターも小さく、一世代前のクルマのようだ。
プリウスPHVのデザインと質感が優れているというよりは、リーフのデザインと質感がやや低い印象が強い。
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4室内空間と使い勝手
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プリウス PHV 前席 -
リーフ 前席
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プリウス PHV 後席 -
リーフ 後席
プリウスPHVの定員は4名と割り切った仕様。これは、プリウスブランドの最上級グレードらしく、ラグジュアリー感を出すためのもの。実際、前席はもちろん、2人乗りにした後席もスペースは充分ある。しかしリヤゲートが傾斜しているため頭上のスペースは狭い。また後列を2人乗りにしてしまったため、フレキシブルに使いたいという人にはマイナスポイントになってしまうのも事実だ。
また、プリウスPHVには11.6インチのディスプレイが設置されている。このディスプレイは、タッチパネル式となっている。タッチパネルというと聞こえがいいが、操作性は微妙。揺れる車内で的確にタッチパネルを操作するのは難しい。さらに、設置位置が手前で低い。運転中に視線移動が大きくなる傾向があり、安全面では少々微妙だ。
対するリーフの室内空間は、このクラスでは十分なレベル。後席は前席よりやや高めの位置に設置されているため、後席からの視界も良好だ。ラゲッジスペースも下方向に掘り下げられているため容量そのものは大きい。ただ、リヤシートを倒すと段差ができる。何を積むかによって使い勝手の評価は若干変わる。
リーフのナビ画面は、今時のクルマとしてはやや小さく見にくい。設置場所もセンターコンソール中間で手前に設置されているため、運転中の視線移動も大きい。ナビ画面が小さいこともあり、操作性も物足りない。
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プリウス PHV 荷室 -
リーフ 荷室
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5外装デザイン
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プリウス PHV 外装 -
リーフ 外装
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プリウス PHV 外装 -
リーフ 外装
プリウスPHVは、プリウスとは明確に異なるデザイン。ワイド感と精悍さを兼ね備えたデザインは、エコカーというよりスポーツカー的でもある。リヤオーバーハングをプリウスより80mmも伸ばしたことも手伝い、プリウスより伸びやかなサイドシルエットに仕上がっている。バックドアは、トヨタ初となるカーボンファイバーのCFRP(炭素繊維強化樹脂)製。アルミ製に比べても、さらに約40%も軽量だ。独特の機能美ももっている。
かなりユニークなデザインだった初代リーフ。2代目リーフは、万人受けするスポーティなデザインが採用された。フロントフェイスは、日産のデザインアイコンでもある力強いVモーショングリルを装備。EVらしさの表現として、Vモーショングリルの内側には、「氷結」をモチーフにしたクリアブルーの3Dメッシュパターンが配された。しかし部品点数が少ないというEVのデザインの自由度を考えると、もっと斬新なデザインに挑戦してほしいという気持ちもする。
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プリウス PHV 充電口 -
リーフ 充電口
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6安全装備の比較
プリウスPHVの予防安全装備は物足りない。とても、300万円を大幅に超える価格帯のクルマとは思えないレベルだ。SとEグレードは、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備「トヨタセーフティセンスP」がオプション設定。軽自動車でも、歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備が標準装備される時代なのに、先進性の高いプリウスPHVがこうした仕様では、企業の安全に対する姿勢そのものに対して疑問が出てくる。
さらに、SとEグレードには後側方から接近してくるクルマを検知し警報を発するブラインドスポットモニターや、踏み間違い時サポートブレーキであるインテリジェントクリアランスソナーは、なんとオプションでも選択できない。サイド&カーテンエアバッグ類は、全車標準装備化されているので、一定のレベルに達している。グレード選びは、AかAプレミアムがお勧めだ。
対するリーフの安全装備は、歩行者検知式自動ブレーキであるインテリジェントエマージェンシーブレーキや車線逸脱警報は、全車標準装備化されている。サイド&カーテンエアバッグも標準装備されているので、最低限の先進予防安全装備は標準装備されている。
しかし、その他の安全装備である踏み間違い防止アシスト、後側方車両検知警報、車線逸脱防止支援システムなどは、Sグレードだとオプションで選ぶことすらできない。日産のウリでもあるプロパイロットも装備できない。Xグレードでようやくオプション選択できるようになるので、リーフはXグレードか最上級グレードのGから選びたい。
「航続距離400㎞へ! もう、ガソリン車は必要なし!?」日産リーフ購入ガイド
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7走行性能比較
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プリウス PHV エンジン -
リーフ エンジン
プリウスPHVは、駆動用のモーターだけでなくジェネレーターもモーターとして動かす新技術「デュアルモータードライブ」システムが採用されている。先代プリウスPHVに比べると、よりEV(電気自動車)的な走りができる。また、TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)に基づいて開発されたプラットフォームを採用したことで、重心もかなり下がった。その結果、従来のモデルより、カーブでの安定感は大幅に向上。モーターによる優れたアクセルレスポンスもあり、走って楽しいモデルとなった。
リーフは、プリウスPHVより大幅に重く大きいリチウムイオンバッテリーを床下に配置している。このリチウムイオンバッテリーがリーフの低重心化に大きく貢献。プリウスPHV以上に低重心化されている。さらに、リチウムイオンバッテリーを保護するために、カバー類はかなり高い剛性をもつ。そうしたこともあり、リーフのボディ剛性はかなり高い。スポーツカー以上の低重心感と高いボディ剛性の恩恵を受け、カーブでの安定感は抜群。想像以上に速いスピードでカーブを抜けていく。
この2台を比較してみると、プリウスPHVも随分走りが良くなったが、リーフにはかなわないといった印象。リーフには回生ブレーキを自在にコントロールし、発進から停止までアクセル操作ひとつで走れるe-Pedalが用意されている。アクセルとブレーキの踏み換え操作が激減するので、ドライバーの疲労も大幅に低減されるのも評価したい。
ただし、リーフはサスペンションが柔らかめの設定。乗り心地重視のため、それなりにカーブで大きく傾き、今ひとつ低重心さを生かし切れていない感じも残る。初代リーフには、車高を下げよりスポーティなサスペンションセッティングにしたリーフニスモがあった。このモデルは、まさに異次元のハンドリングマシンといったところで、ガンガン走りたくなるクルマに仕上がっていた。それを考えると、2代目のリーフニスモに期待したい。
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8リセールバリュー
プリウスPHVは、平均的な値落ちをしている。ただ、人気の無かった先代プリウスPHVに絞ってみると、中古車としての価格はかなり安い。売れなかったモデルなので、中古車を探すのが困難なのだが、2014年式という比較的高年式のモデルで130万円くらいからと、驚きの相場になっている。今のところ現行の新型プリウスPHVのリセールバリューは、平均的な数値を維持しているものの、今後激安になる可能性を秘めているだけに、しばらく様子を見てみるのもいいだろう。
対するリーフは、まだデビュー直後ということもあり2代目の中古車の流通は非常に少ない。そのため、2代目リーフのリセールバリューはしばらく待ち状態となる。しかし先代リーフのリセールバリューは激安。もはや、新車より中古車の方が圧倒的にお得だ。2016年式という高年式のSグレード30kWh車で、すでに130万円台から購入できるようになっている。売却する側はかなりショックな数値になるものの、中古車を買う側にとっては朗報といえよう。スーパーハイト系の新車軽自動車を買うような予算で、先進技術の塊であるEVに乗れる。電気代はガソリンに比べ大幅に安いのでランニングコストも少なくなるので、かなりお得なクルマといえる。
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9今のクルマを高く売る方法
新車の値引き交渉には積極的なのに下取り車の処理はディーラーにお任せ―そんな人が意外と多い。新車値引きも重要だが、下取り車の処理も非常に重要だ。下取り車の価格を低く設定し利益を上げようとしたり、新車値引きを大きくし下取り車で利益を出そうとするなど、ディーラーが利益をコントロールする時に使われやすいからだ。
そんな術中にはまらないためにも、買取店で査定を受け、愛車の買取相場を予めチェックしておくと良いだろう。その上で、買取店とディーラー、高く買い取ってくれる方に売れば良い。買取店は、ディーラーの下取りよりも高く買い取らなければ、利用してもらえず、ビジネスとして成り立たない。そのため一般に、買取店の方がディーラーよりも高く買い取ってくれる傾向がある。
まとめ・総合評価
プリウスPHVは、EVで68.2㎞も走行でき、急速充電器も使える。いざというときにはガソリンでも走れ、日常的な使い方であればEVとしても使えるので、非常に実用的なクルマだ。これからの時代は、PHVモデルが主役になると思えるほどだ。ただ、EVらしいスムースで力強いトルク感や低重心のハンドリングなど、EVとしてのパフォーマンスは当然リーフには及ばない。
対するリーフは、弱点だとされていた航続距離の短さを克服し、航続距離を400㎞にまで伸ばした。2時間以上1回も休みを取らずにロングツーリングするという人には合わないが、のんびりロングツーリング程度なら継ぎ足し充電で十分に対応できる航続距離を手に入れている。充電設備がないようなへき地など、特殊な環境下でなければ充電環境にもそれほど困らない状態になっている。
とにかく、何不自由なく使いたいというのであればプリウスPHVがお勧めだ。逆に、充電や航続距離など、多少不便であってもEVに乗って独特の走りを楽しみたい、優れた経済性が欲しいというのであれば、リーフがお勧めになる。リーフを選ぶ場合、どこかで割り切りが必要だ。
- トヨタ プリウスPHV価格
- A3,807,000円
EV走行距離68.2km - A Utility Plus3,829,680円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - A レザーパッケージ4,222,800円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - A プレミアム4,222,800円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - S3,261,600円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - S ナビパッケージ3,730,320円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - S Safety Plus3,325,320円
EV走行距離68.2km HV燃費37.2km/L - S GR SPORT”3,711,960円 走行距離燃費記載なし
- S ナビパッケージ・GR SPORT4,116,960円 走行距離燃費記載なし
- 日産 リーフ価格
- S3,150,360円
- X3,513,240円
- G3,990,600円
- 航続可能距離(JC08モード)400km カタログ電費(計算値) 10.0km/kWh
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トヨタ プリウス PHV
中古車情報
中古車買取相場
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253.9万円※
※過去約6ヶ月間の弊社査定実績の中での最高額。
平成29年式 トヨタプリウスPHV Aプレミアム(シルバー 走行距離1万km走行) 2017年9月査定。
新車値引き術
カタログ情報
- ■新車時価格(税込):
- 326.1万円〜422.2万円
日産 リーフ
中古車情報
中古車買取相場
新車値引き術
カタログ情報
- ■新車時価格(税込):
- 315.0万円〜399.0万円