<基本部分を共有するクラウンより、約200万円高い価値はどこにあるのか?>
レクサスは、2代目GSをマイナーチェンジし発売を開始した。
初代レクサスGSは、2005年にデビューした。国内で発売されていたアリストの後継モデルとしてのイメージも強かった。
その後、GSは2012年にフルモデルチェンジし現在の2代目となっている。この2代目モデルから、レクサスのアイデンティティともえるスピンドルグリルが採用されている。2代目GSのボディサイズは、全長4,880×全幅1,840×1,455㎜。全幅は1,800㎜を超えやや大きいが、全長はクラウンの4,895㎜より10mm短い。ボディサイズ的には、一定の需要が見込まれるセダンということになる。
ところが、レクサスGSは初代がデビューした直後から売れていない。あまりの売れなさに、2代目GSは国内に投入する意味があるのかトヨタ内でも議論されたほどだという。レクサスも2代目から、2.5Lエンジンを搭載したモデルを追加。これも大きな勘違いで、まさに負のスパイラルに突入してしまった。モデル途中で、クラウンと同じ2.5Lハイブリッドが投入されたものの起爆剤とはならなかった。
根本的に、GSというクルマはアメリカ向けに作られている。ガソリンが安いアメリカ向けなので、未だアイドリングストップ機能も無く燃費の悪いガソリン車がラインアップに加わっている。まったく売れないモデルとはいえ、選択肢があるのはいいことではあるが、欧州のライバルはすでにダウンサイジングターボへ移行。基本部分を共有するクラウンも2.0Lターボもラインアップに加えている状況だ。
その上、GSは価格が高い。マイナーチェンジされたGSのエントリグレードであるGS250でも約522万円、最も高価なグレードとなるGS450h Fスポーツになると846万円にもなる。アメリカのように、クラウンの存在が無いのなら、それでも勝負になるのだろうが、日本にはクラウンがある。売れ筋グレードでもあり、クラウンと同じ2.5Lハイブリッドシステムを搭載するGS300hで643万円から。クラウン ハイブリッド アスリートが431万円からなので、ざっくり200万円もの差があるのだ。
GSとクラウンは、基本部分を共有する姉妹車みたいなものだ。同じメーカーで似たようなクルマの価格差が約200万円。レクサス自体は、一生懸命差別化を図っているようだがパワーユニットやプラットフォームなど大きな部分が同じなのでは差別化を図るのは難しい。とくに、クラウンは国内専用車ということもあり、徹底して国内での使い勝手やニーズを取り込んでいる。全幅1,800㎜というのも、都市部の顧客が多く使う立体駐車場の制限で、これに合わせたものになっている。
さらに、両車とも高級車で、購入する顧客は社会的地位が高くクレバーだ。それだけに、良いものにはお金を使うが、納得しないものは買わないだろう。GSに関しては、こうした高所得者層に約200万円も高い理由がシッカリと伝わっていないのだろう。
そうなると、200万円の価格差を納得させるには、デザインと質感くらいしかないというのが現状だ。今回のマイナーチェンジでは、フロントまわりのデザインが一新されている。今まで控えめなスピンドルグリルだったが、マイナーチェンジによりRXやNXなどと同じように、顔全体を占めるような大きなスペースとなった。かなり精悍さが増し、押し出し感のあるスタイルになった。欧州のライバルにも負けない迫力がある。大きなグリルで迫力を増し、さらに人気を高めたクラウン以上のものとなった。
インテリアは、オーナメントパネルに新開発のレーザーカット本杢や、伝統工芸の紋様を最新の生産技術と匠の手技によって再現した名栗(なぐり)調仕上げの本アルミを設定。また、室内の随所に金属調の加飾やサテンメッキを採用し、細部を効果的に際立たせるなど、クラウンを大幅に上回る高級セダンとしての質感と品格ある室内空間を実現した。
また、スポーティセダンを標榜するGSだけに走りの質も向上させている。構造用接着剤とレーザースクリューウェルディングの採用、スポット溶接の打点の追加により、大幅にボディ剛性を強化。さらに、ステアリング系パーツの剛性強化をベースに、サスペンションのチューニングを最適化。強化されたボディをより生かすセッティングに変更されたことにより、ダイレクトなステアリングフィールをさらに進化させながら、快適な乗り心地も両立し、スポーティセダンとしての価値を引き上げている。
パワーユニットは、新開発のV6 3.5Lエンジン(2GR-FKS)が搭載された。新世代の直噴機構D-4Sとアトキンソンサイクルを採用。燃費を従来の9.8㎞/Lから、10.8km/Lへわずかにアップ。しかし、今や輸入車のライバルはダウンサイジングターボへ移行しており、自然吸気の3.5L V6エンジンを探すことすら困難。新開発とはいえ、アイドリングストップ機能も未だ装備されておらず、もはや環境性能面ではV6 2.5Lエンジンも同様で旧世代のものだ。また、エコカー減税にも対応しておらず、顧客にもメリットを提示できていない。これでは、日本で売ることは難しい。
安全装備面では、今まで軽自動車以下だった自動ブレーキ関連の安全装備レクサス セーフティシステム+が標準装備された。この自動ブレーキは、歩行者検知式。歩行者に対して約10〜80km/hの速度域で作動。例えば、歩行者との速度差が30km/hの場合は約30km/h減速、衝突回避または被害軽減を支援。交通死亡事故の大半が歩行者とクルマの衝突によるもの。こうした装備が標準装備されたことは、社会貢献的にも大きな意味をもち高く評価したい部分だ。また、対車両に関しては最高速度からでも減速できる。速度が高ければ高いほど、事故の被害は大きくなることを考えれば、30㎞/h以下程度に限定される低速域自動ブレーキとは性能が全く違う。クラウンが未だこうした自動ブレーキが装備されていないので、この部分は今のところGSがリードしている機能だ。
ただし、相変わらずレクサスの営業側は安全装備に対し腰が引けている。後側方の隣接する車線を走る車両に接触する危険がある場合、警報を発するブラインドスポットモニターは、一部グレードを除くオプション設定。サイドエアバッグも同様。500万円を超えるような高級車なのだから、今では当たり前になった安全装備くらい標準装備化してほしいものだ。欧州のライバル車に乗るユーザーからは「レクサスって、そんな装備までオプションなの?」と言われているくらいだ。自らプレミアム感を引き下げている感がある。
さて、レクサスGSの選び方。V6の2.5Lと3.5Lのガソリン車は、選択肢から外した方が無難。アイドリングストップ機能さえも装備されておらず、環境性能はもはや旧世代のもの。エコカー減税にも対応していないので、顧客メリットはない。リセールバリューも期待できない。 そうなると、レクサスGSは2.5Lのハイブリッド車 300hか、3.5Lのハイブリッド車である450hのどちらかということになる。燃費は300hが23.2㎞/Lか21.4㎞/L。450hが18.2㎞/L。300hでも十分な動力性能だが、基本的に燃費重視。450hは、低燃費ながら豪快な走りも楽しめる。今やクラウンには3.5Lハイブリッドが無くなったので、GS450hは差別化という意味や、高級車らしい余裕という意味ではお勧めだ。基本的に好みで選ぶといいが、この2台は価格差がすごい。300hは約615万円からなのに対し、450hは約743万円から。約128万円もの価格差が付く。この価格差をどう判断するかがポイントだ。
レクサスGSのグレード選びは、450hと300hとも標準車、Iパッケージ、バージョンL、Fスポーツの4タイプから選ぶことができる。標準車以外は本革シートになる。基本的な装備は、安全装備以外充実している。予算重視で、本革シートも必要ないのなら標準車でも十分。とにかく豪華さ重視というのならバージョンLという選択になる。バージョンLは、他のグレードではオプションの安全装備も標準装備化されている。ラグジュアリー感を堪能したいのならバージョンLだ。お勧めは、やはりFスポーツ。19インチタイヤや専用エアロやブレーキなど、スポーティさを際立たせる専用装備が満載。GSの精悍なイメージをより強調している。見た目だけでなく、j走りの質や装備もよいので満足度は高い。日本ではこうしたスポーティなエアロパーツを装備したモデルが人気だ。そのため、リセールバリューも高くなる傾向にある。GSも恐らくFスポーツのリセールバリューは高くなると予想できるので、次に乗り換えるときにも有利になるだろう。
■レクサスGS価格
・GS450h 7,428,000円/“version L”8,435,000円/“F SPORT” 8,463,000円/“I package” 7,824,000円
・GS350 2WD 6,430,000円/AWD 6,657,000円
・GS350 “version L”2WD 7,437,000円/ AWD 7,648,000円
・GS350 “F SPORT”2WD 7,465,000円/AWD 7,486,000円
・GS350 “I package”2WD 6,826,000円/AWD 7,053,000円
・GS300h 6,153,000円/“version L” 7,160,000円/“F SPORT” 6,982,000円/“I package” 6,549,000円
・GS250 5,517,000円/“version L”6,524,000円/“F SPORT” 6,346,000円/“I package” 5,913,000円