トヨタ クラウン2012年12月にデビューし14代目となるトヨタの高級セダ「クラウン」が マイナーチェンジし発売を開始した。




国内専用車が人気の高さを維持する理由の一つ


トヨタ クラウンは、衰退しているセダンマーケットの中でも人気の高さを維持しているモデル。その理由は、ほぼ国内専用車であるということが上げられる。クラウンの全幅は1,800㎜。この1,800㎜という全幅は、国内に多い立体駐車場の制限値。これをオーバーすると、車庫証明が取れなくなるなど、都市部に多い立体駐車場を使う顧客が物理的に購入できなくなる。それを避けるために、ライバルの多くが1,800㎜を超える全幅を持つ中、クラウンは全幅1,800㎜を死守しているのだ。こうした傾向は、一部の輸入車にもみられる。BMW3シリーズは、専用部品を起こし欧州では1,800㎜以上の全幅を1,800㎜に変更し、日本マーケットに対応している。

新たなパワーユニット追加


今回のマイナーチェンジでは、まず新たなパワーユニットが加わった。8AR-FTS型と呼ばれる待望のダウンサイジング2.0L直噴ターボエンジンが搭載された。このエンジンは、アスリート系のみに搭載されて、235ps&350Nmという出力を誇る。燃費は13.4㎞/Lとなり、同等の最大トルクを発生する3.5Lエンジンの9.6㎞/Lと比較するとかなりの低燃費になっている。今時、アイドリングストップ機能さえない2.5Lと3.5Lエンジンでは、あまりにも燃費が悪いため、燃費の良いガソリン車が望まれていた。その要求に応えたカタチにはなっているのだが、この2.0Lターボも残念ながらエコカー減税には対応していない。

燃料費はそれほどメリットを感じない

また、ハイオク仕様となっているため、燃費はアップしても燃料費という視点では、それほどメリットが感じられない中途半端なものとなっている。クラウンに搭載するのであれば、多少パワーを落としてでもレギュラーガソリン仕様にするべきだった。スズキの新型エスクードは、エンジンのチューニングを変更し欧州のハイオク仕様からレギュラーガソリン仕様に変更して輸入している。国内専用モデルとしているのなら、せめてこれくらいする必要がある。

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NXのパワーが微妙に違うのは静粛性に重視したため

トヨタ クラウンこの8AR-FTS型2.0Lターボエンジンは、SUVのレクサス NXに搭載されたもの。NXは238ps&350Nmで、その後に搭載されたISやRCでは245ps&350Nmとなっている。微妙にパワーが違うのは、エンジンや排気音、ノイズの問題でクラウンはより静粛性を重視したためとしている。まぁ、それもあるだろうが、やはりかなり高価なレクサスとクラウンが同じエンジンスペックでは、レクサスが高価な理由が無くなる。こうしたことも影響しているのだろう。2.0Lターボエンジンには、8速ATが組み合わされておりスムースさがさらに向上している。

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弱点は安全装備


もはや、完全に弱点となったのが自動ブレーキ関連の安全装備。なんと、このマイナーチェンジでも自動ブレーキ関連のトヨタ セーフティセンスP装着が見送られてしまった。トヨタは近い将来装備するとしているが、マイナーチェンジした後では、すぐにフルモデルチェンジのタイミングになってしまう。こうした自動ブレーキ関連の安全技術は、軽自動車にも装備されている。高級車のクラウンに用意されていないというのは、なんとも物足りない状況だ。

クラウン購入は安全装備が装着された頃がおすすめ!

今後、中古車マーケットでもこうした自動ブレーキの有無は価格に影響してくる可能性が高く、結果的にクラウンのリセールバリューにも影響するかもしれない。自らの安全や歩行者事故のリスクを軽減したいと思うのであれば、クラウンの購入はトヨタ セーフティセンスPが装備されてからがおすすめだ。

乗り心地性能と静粛性の高さで物足りなさを払拭


トヨタ クラウンこうしたパワーユニットや安全装備の物足りなさを払拭してくれているのが、乗り心地性能と静粛性の高さだ。マイナーチェンジで、ボディ接合部の剛性強化。構造用接着剤の採用に加え、スポット溶接の90ヵ所以上増し打ちした。生産ラインがやや伸びたほど進化させている。さらに、フロント・リヤサスペンションのチューニング最適化が施された。

こうした改良により、クラウンの静粛性と乗り心地性能はビックリするくらい向上させている。走りを意識し引き締められた足回りをもつアスリート系でさえ、驚くくらい抜群の乗り心地を誇る。マイナーチェンジ前のモデルと比較すると、まるで違うクルマのように感じるほど進化の幅が大きい。静粛性も同様。ハイブリッド車並みとはいかないものの、エンジンの存在感を感じさせないくらい静かだ。ロードノイズもシッカリと抑え込まれている。この静粛性と乗り心地の良さは、乗った瞬間から実感でき良いクルマだなぁと素直に思えるほどだ。

自分だけの特別なクラウンが選べる


注目したいのは、自分だけの特別なクラウンを選べる「ジャパンカラーセレクションパッケージ」をアスリートシリーズにパッケージオプションとして設定されたことだ。12色を外板色と専用の内装色3色との組み合わせにより、自分らしい色を選ぶ歓びを提供している。まぁ、あくまで簡易式とはいえ、高級車を買う顧客の多くは、自分だけの仕様にこだわる傾向が強い。こうしたニーズに応えたオプションといえる。

ボディカラーの中には、良くも悪くもクラウンらしくない色が増えた。こうしたボディカラーは、従来のオヤジ車的なイメージからの脱却を狙っている。クラウンは、フルモデルチェンジ時にアグレッシブなグリルを採用。これは、高齢化が進むクラウン顧客の若返りを狙ったもの。しかし、実際には若い層も取れたものの、それ以上に高齢の顧客からも人気を得て、逆に顧客の年齢は上がってしまったそうだ。こうした傾向が続いている以上、しばらくの間はクラウンの若返り施策は続くだろう。

一押しは、アスリートハイブリッド車


クラウンは、国産セダンの中でも異例なくらい人気が高く、そのためリセールバリューも高い。とくに、短期間での乗り換えなら、より人気のあるアスリートがリセールバリューが高くおすすめだ。そして、パワーユニットの選択。まず、ガソリン車のV6 2.5Lと3.5Lは燃費も悪く、リセールバリューも今後期待できないためおすすめしない。一押しは、やはり高価だがアスリ―トハイブリッド車。燃費、走り、デザイン、リセールバリューとすべての面で高いパフォーマンスをもつ。エコカー減税も免税レベルだ。ガソリン車が条件というのであれば、クラウン並みの予算なら輸入車の高年式中古車などを狙った方が満足度は高い。

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トヨタ クラウン価格


マイナーチェンジ後のクラウンの価格は、ターボエンジン追加によりエントリグレードはアスリートTの3,880,000円となった。従来の2.5Lより約20万円ほど価格がアップしていることになる。ターボ車の追加により、2.5LのFR車は姿を消し4WD のみとなった。ロイヤルは、ターボ車の設定が無し。エントリグレードはFRの2.5L車ロイヤルで3,730,000円となっている。

アスリートシリーズ

●ターボ車
・アスリートT 3,880,000円
・アスリートS-T 4,500,000円
・アスリートG-T 5,330,000円
●2.5L車
・アスリートi-Four 4,007,000円
・アスリートS i-Four 4,627,000円
・アスリートG i-Four 5,467,000円
●3.5L車
・アスリートS 5,240,000円
・アスリートG 6,100,000円
・アスリート 4,310,000円
●ハイブリッド車
・アスリートS 4,950,000円
・アスリートG 5,770,000円
・アスリートFour 4,526,000円
・アスリートS Four 5,166,000円
・アスリートG Four 5,986,000円

ロイヤルシリーズ

●2.5L車
・ロイヤル 3,730,000円
・ロイヤルサルーン 4,340,000円
・ロイヤルサルーンG 5,140,000円
・ロイヤルi-Four 4,008,000円
・ロイヤルサルーンi-Four 4,618,000円
・ロイヤルサルーンG i-Four 5,377,000円
●ハイブリッド車
・ロイヤル 4,310,000円
・ロイヤルサルーン 4,940,000円
・ロイヤルサルーンG 5,690,000円
・ロイヤルFour 4,526,000円
・ロイヤルサルーンFour 5,156,000円
・ロイヤルサルーンG Four 5,906,000円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

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