マツダロードスター

【マツダ ロードスター】楽しい楽しい楽しい。他に言葉が見あたらないロードスター by松下 宏

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世界中にも、そして自分自身にもクルマというモノはどんなモノなのかを教えてくれた初代ロードスター。その功績は自動車史にくっきりと刻まれるであろう。

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新型ロードスターに搭載されるエンジンはアテンザ用に開発されたMZR型をロードスター用に専用チューニングしたモノ。ロードスター史上初の2.0リッターエンジンは、伝統の楽しさをいっさいスポイルしていない。

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サルドタンといわれるブラウン系のカラーでまとめられたインテリア。ここに身をゆだねただけで、ロードスターが与えてくれる楽しさに心が躍ってしまう。

SPECIFICATIONS
車名:マツダロードスター
グレード:VS
型式:NC系
駆動方式:FR
全長:3995mm
全幅:1720mm
全高:1245mm
ホイールベース:2330mm
エンジン形式:直列4気筒DOHC
総排気量:1998cc
最高出力:170ps/6700rpm
最大トルク:19.3kg-m/5000rpm
トランスミッション:6速MT
サスペンション(F):
ダブルウイッシュボーン
サスペンション(R):
マルチリンク
価格:250万円(税込み)

クルマ自体のおもしろさを教えてくれた  初代NA型はそんな1台であった

平成元年にロードスターの初代モデルがデビューしたとき、飛びついてというほどではなかったが、割とすぐに注文して2年ちょっとの間、保有して乗っていた。そのときに感じたのは本当に走って楽しいクルマだなということだった。

絶対的な動力性能は大したことはなかったし、2人乗りのオープンボディゆえに極めて実用性が低いクルマだったりしたのだが、クルマを操る楽しさというのを本当に感じさせてくれたのがロードスターだった。

大したことのない動力性能も、ロードスターの性格からすれば逆に魅力につながる部分もあり、人とクルマとが一体になって走る楽しさにつながっていた。なまじパワフルなエンジンを搭載したクルマだったりしたら、そうそうアクセルを床まで踏み込むことはできないところだが、当時は1.6リッターだけだった非力なロードスターのエンジンだったら思う存分に踏み込める感じだった。

しかもFR駆動ならではの極めて素直な走りのフィールやダイレクト感のあるステアリングのフィールなど、いろいろな意味で運転していることを実感できるクルマだった。

大きくなっても楽しさは変わらない  しかし、楽しさは何倍もアップ! 

平成3年にロードスターを手放したときには、いつかまたこんなクルマに乗りたいなという気持ちを強く持ったものだった。

前置きが長くなってしまったが、新しいロードスターもそんな運転することの楽しさを教えてくれるクルマである。初代モデルから受け継ぐ“人馬一体”という基本コンセプトが、3代目ロードスターを本当に楽しいクルマに仕上げることにつながった。

排気量が2.0リッターになった3代目モデルでは、1.6リッター当時のように思い切りアクセルを踏み込むことはできなくなったが、必要以上にパワフルなエンジンを搭載するわけではないので、運転するドライバーの技量に応じて踏み込むことができる。

アクセルの踏み込みに応じて低い排気音が高まっていくのも初代モデルのロードスターと同じような印象で、全体に排気音は大きめだ。当時もそうだったが、深夜に住宅街に戻るようなときにはやや気が引ける感じにもなるので、走りの実感を損なわない程度に排気音は小さくしても良いように思う。

ステアリングはけっこうシャープな反応を示す感じで、操舵に応じてクルマが素直に向きを変えてくれる感じ。その敏感さが過ぎたためか、試乗車には直進走行時に油断をすると車線をはみ出しそうになるようなきらいもあったが、スポーティさはうまく表現されているように思えた。

大好物のカレーは最初に食べてしまうか?  お楽しみとして最後にするか? それと同じ

今度のロードスターにはもう一度乗りたいと思わせるだけの魅力が十分にあるが、私自身はもう一度ロードスターに乗るにはちょっと年を取りすぎたかも知れないし、あるいは逆にまだ10年ほど若すぎるのかも知れない。今すぐ乗りたいと思わせると同時に、リタイアした後にとっておきたいとも思わせるのが今度のロードスターである。

達人プロフィール: 松下 宏
職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...
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