軽自動車編
安全な軽自動車選びのポイント
軽自動車は高価だと売れにくくなるため、予防安全装備は最低限とする傾向がある。特にロールーフ系の軽自動車がその傾向が強い。車線維持機能などの運転支援機能は、オプションの場合が多い。
一部の車種・グレードでは車線逸脱警報が装備されていないケースもあるので、しっかりとチェックしたい。
未だサイド&カーテンエアバッグの無い車種もあるので注意
軽自動車は、全幅が1,480mm以下と決められている。非常に狭い全幅で室内の広さを最大限確保した結果、ドライバーとドアの距離がとても近い。そのため、側面衝突では乗員に大きなダメージが加わりやすい。
そこで、保安基準に「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則」が加わった。このルールは「サイドポール」とも呼ばれる。電柱などの側面衝突時に対する乗員保護保安基準だ。
このルールにより、サイド&カーテンエアバッグ無しでは保安基準がクリアできなくなった。この新保安基準により、急速にサイド&カーテンエアバッグが標準装備化され、衝突安全性能が向上している。しかし、この基準は2018年6月15日以降に発売された新型車からが対象だ。そのため、それ以前に発売されたモデルには、未だサイド&カーテンエアバッグが装備されていないケースが見受けられる。購入時は必ずサイド&カーテンエアバッグの有無をチェックする必要がある。
新車軽自動車のほぼすべてが自動ブレーキ標準装備化
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の標準装備が義務化された。国内で販売される国産新型乗用車には2021年11月から、継続生産車は2025年12月から対象だ。こうした保安基準により、国内の軽自動車は、ごく一部の商用車を除き自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)が標準装備されている。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)はほぼ標準装備化されたとはいえ、保安基準に則った検知対象は歩行者と車両という最低限のレベルだ。
自動ブレーキは先進技術なので、進化は日進月歩。同じメーカー・安全装備名でも、開発時期や車種により検知対象や検知シーンによって性能差がある。軽自動車を選ぶ際に予防安全性能を重視するのであれば、自動ブレーキの検知対象や検知シーンの違いをしっかりと確認する必要がある。
安全な軽自動車トップ5
TOP.1
スズキスペーシア

3代目スペーシアは、2023年11月に登場した。背高の両側スライドドアをもつスーパーハイト系モデルであり、最も人気のあるカテゴリーに属する。
3代目から、自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)などを含む予防安全装備パッケージ「スズキセーフティサポート」が刷新された。
新開発された「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」は、広角単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた機能だ。これより、歩行者などを含む検知対象が大幅に拡大。車両や歩行者だけでなく、自転車や自動二輪も検知可能となった。
さらに広角カメラによって、交差点内で右左折時の対向歩行者や自転車、右折時の対向車も検知が可能に。自動ブレーキが作動し衝突被害軽減を図ることができるようになった。
スズキコネクトはオプション設定だ。スズキコネクトを装備すると、ヘルプネット(SOSコール)機能も装備可能になる。エアバッグが展開するような衝撃を検知すると、専門オペレーターへ通報。ドライバーの意識がないなどの状況に合わせ、警察・消防への要請をしてくれる。もしもの時に役立つ、お勧めの安全装備だ。
運転支援機能では、車線維持支援機能はグレードによって標準装備もしくは非装備となっている。全車速前走車追従式クルーズコントロール(高速道路などで車線を維持しながら、先行車に対して追従走行を行う機能)も含まれている。
車両の死角や見通しの悪い道などで便利な「全方位モニター」は、全車オプションだ。車両に取り付けられたカメラの映像を加工し、クルマを真上から見たような映像に変換し死角を無くすことができるため、小さな子どもに気付かずに衝突するリスクなどを軽減できる。さらに、見通しの悪い場所で人などが近づくと知らせてくれる「左右確認サポート機能」も前後に装備している。こちらもオプション設定だが、お勧めの予防安全装備だ。
スペーシアカスタムは、ヘッドアップディスプレイや全車速前走車追従式クルーズコントロールが一部グレードを除き標準装備化されており、装備がより充実している。スペーシアギアも、ほぼ同様だ。
こうした総合力の高さからナンバー1とした。
TOP.2
スズキワゴンRスマイル

スズキ ワゴンRスマイルは2021年9月に発売された。ハイト系ワゴンに両側スライドドアを装備し利便選をアップしたモデルだ。発売当初は、ステレオカメラ方式の自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)「デュアルカメラブレーキサポート」を装備していた。
2024年12月の改良で自動ブレーキを「デュアルセンサーブレーキサポートII」へ変更した。広角単眼カメラ+ミリ波レーダー式にしたことで、自動ブレーキは歩行者と車両に加え、自転車や自動二輪も検知可能となった。さらに広角カメラにより、交差点内の右左折時の対向歩行者や自転車、右折時の対向車も検知。自動ブレーキが作動し衝突被害軽減を図ることができるようになっている。
オプションのスズキコネクトを選択すると、ヘルプネット(SOSコール)機能も装備可能となる。衝突などによりエアバッグが展開するような衝撃を検知すると、専門オペレーターへの通報。ドライバーの意識がないなど状況により、警察・消防への要請を可能とする機能だ。積極的に選択したいお勧めの安全装備といえる。
運転支援機能面では、車線維持支援機能はグレードにより標準装備もしくは非装備となっている。これには全車速前走車追従式クルーズコントロール(高速道路などで車線を維持しながら先行車に対して、追従走行を行う機能)が含まれている。
運転が苦手な人にお勧めなのが「全方位モニター」。車両の死角や見通しの悪い道などで活躍する、全車オプション設定の機能だ。
これは車両に取り付けられたカメラの映像を加工し、車両を真上から見たような映像に変換して死角を無くすことができる装備だ。車両周辺にいる小さな子どもに気付かずに衝突するリスクなどを軽減できる。
さらに、見通しの悪い場所で人などが近づいてくるとお知らせする「左右確認サポート機能」も前後に装備。オプション設定だが、衝突リスクを軽減できる安全装備だ。
ワゴンRスマイルは、スペーシアとほぼ同等の予防安全性能を誇っている。
両車の差は、ヘッドアップディスプレイだ。スペーシアカスタムでは標準装備されている(一部グレードを除く)が、ワゴンRスマイルは全グレードオプション設定であるためナンバー2とした。だが、その差はほとんど無いに等しい。
TOP.3
日産デイズ

日産デイズは、2019年にデビューしたハイト系ワゴン軽自動車。2023年9月にマイナーチェンジし、予防安全装備が大幅に進化している。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、マイナーチェンジ前は車両と歩行者だったが、マイナーチェンジ後には自転車も検知できるようになった。
さらにマイナーチェンジ後に、軽自動車として初の「後側方車両検知警報(BSW)」と「後退時車両検知警報(RCTA)」を標準装備したグレードを設定した。
後側方車両検知警報(BSW)とは、車線変更時に隣接する車線から接近する車両を検知。衝突リスクが高い場合は、警報を発する機能だ。後退時車両検知警報(RCTA)は、バックで出庫時に接近する車両を検知し、衝突リスクが高い場合警報を発してくれる。どちらの装備も使用頻度が高く、うっかり衝突リスクを減らしてくれる。
インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物検知機能付)は、バック時に車両周辺にいる人や障害物を検知できる機能だ。車両に取り付けられたカメラ映像を、車両を真上から見たような映像に変換し、車両周辺の小さな子どもや障害物にひと目で気付ける装備である。移動物も検知可能なため、近付いてくる歩行者なども分かり、衝突リスクを軽減してくれる。こうした機能は、初心者や運転が苦手な人にとって、とても頼りになる装備だ。
SOSコールも設定されている。エアバッグが展開するような衝突を検知すると専門オペレーターへ自動通報する機能だ。状況により、警察や消防にも通報してくれる。
デイズよりも、デイズ ハイウェイスターの方が、より安全装備が標準装備化され充実している傾向にある。
オプションの安全装備や運転支援機能が多いものの、車両周辺360°をカバーできる多彩な安全装備が用意されていることを評価して3位とした。
TOP.4
日産サクラ/三菱eKクロスEV

日産サクラと三菱eKクロスEVは、2022年5月にデビューした軽自動車ハイト系ワゴンBEV(バッテリー電気自動車)だ。この2台は、日産と三菱による共同開発車。そのため、外観や内装デザインこそ異なるものの、メカニズム面は共通化されている。
自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、車両と歩行者、自転車と、このクラスの標準的な検知対象となっている。デイズに用意されている「後側方車両検知警報(BSW)」と「後退時車両検知警報(RCTA)」の設定が無いのが惜しい点だ。
ただし、軽自動車ではユニークなプロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)が設定されている。この機能は、高速道路などで追従走行を行う全車速前走車追従式クルーズコントロール機能(プロパイロット)で走行している状態で、ドライバーが意識を失っているとシステムが判断した場合、徐々に減速し停止する。SOSコールによって専門オペレーターが状況を確認後、必要に応じて警察や消防への通報を行う機能だ。
走行条件があるものの、ドライバーを守るだけでなく車両の暴走を防ぎ二次被害を抑制するメリットもある。
SOSコールは、エアバッグが展開するような衝撃を検知した際も自動で専門オペレーターへ接続する。ドライバーが事故で意識を失っている場合でも、状況に合わせて専門オペレーターが警察や消防への通報を行ってくれるため、もしものときに頼りになる安全装備だ。
移動物検知機能付インテリジェントアラウンドビューモニターは、車体に設置されたカメラ映像を加工し、車両を俯瞰から見た映像に変換する機能だ。死角を無くしてくれるため、バック時に死角にいる小さな子どもなどと衝突するリスクを軽減してくれる。さらにモニターに映っていない範囲から人や自転車などの移動物が接近すると警報を発してくれるのでより安心だ。
衝突安全面でも、このクラスでは珍しくニーエアバッグも設定されている。
軽自動車ではユニークなプロパイロット緊急停止支援システム(SOSコール機能付)などが設定されていることなどを踏まえ、4位とした。
TOP.5
ホンダN-BOX

3代目ホンダN-BOXは、ホンダの予防安全装備パッケージ「ホンダセンシング」を全車に標準装備している。自動ブレーキの検知対象は、車両に歩行者、自転車と、このクラスの平均レベルだ。
運転支援システムでもある全車速追従式クルーズコントロールや車線維持機能は、他の軽自動車ではオプションとなっているケースが多い。しかし、N-BOXではどのグレードでも標準装備化されていて、安全面や運転支援機能はグレードによる大きな差が無いのが特徴だ。
ホンダセンシングは多機能だ。歩行者との衝突回避を支援する歩行者事故低減ステアリングなども含まれている。
ただし、日産デイズに用意されている「後側方車両検知警報(BSW)」や「後退時車両検知警報(RCTA)」といった機能は設定されていない。
オプションだが、ホンダコネクトの「ホンダトータルケアプレミアム」に入会すると、エアバッグ展開した場合など専門オペレーターに自動でつながり、状況によって警察や消防へ通報なども行ってくれる。このサービスは、他社のSOSコールやヘルプネットと同様の機能だ。
N-BOXは、すべてのグレードで安心して乗れることを評価して5位とした。
まとめ
スズキ スペーシアが広角単眼カメラとミリ波レーダーを組み合わせた「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」を採用したことにより、一気にクラストップレベルの予防安全性能を手に入れている。自動ブレーキ(衝突被害軽減ブレーキ)の検知対象は、他のモデルが車両と歩行者、自転車なのに対して、スペーシアは自動二輪も検知可能だ。さらに、右左折時の歩行者と自転車、右折時の対向車両も検知できるため、より幅広い事故シーンに対応できる。
こうした装備を早々にワゴンRスマイルにも搭載した点も、高評価ポイントだ。いずれ、多くのモデルに「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」が搭載されると考えられるので、より安全な軽自動車が増えていくことになるだろう。
だが、スペーシアも万全とは言えない。日産デイズのように、後側方車両接近警報や後退時車両接近警報など、車線変更やバックでの出庫など頻繁に行うときの衝突リスクを軽減する装備が用意されていないのは、やや物足りない部分だ。
安全面を考慮して軽自動車を選ぶ際は、SOSコールやヘルプネットといったコネクティッド技術を使った安全装備は少々高価になるが、もしもの時にとても役立つ機能なので積極的に選びたい。
このように、軽自動車の予防安全装備は、どのメーカーも一長一短がある。自分にとってどんな機能が重要なのかを理解した上で選ぶことをお勧めする。
安全装備比較表
- ◯…全車標準装備
- △…一部標準装備または一部オプション
- ×…標準装備なし
スズキスペーシア | スズキワゴンRスマイル | 日産デイズ | 日産サクラ/三菱eKクロスEV | ホンダN-BOX |
衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)検知対象 | ||||
---|---|---|---|---|
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車、自動二輪車 |
車両、歩行者、自転車 |
車両、歩行者、自転車 |
車両、歩行者、自転車 |
踏み間違い衝突防止アシスト | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
サイドエアバック | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
カーテンエアバッグ | ||||
◯ |
◯ |
◯ *ニーエアバッグ(一部グレード、装備無し) |
◯ *ニーエアバッグ(一部グレード、オプションまたは装備無し) |
◯ |
車線逸脱警報 | ||||
◯ |
◯ |
◯ *車線維持支援機能付き |
◯ |
◯ |
車線維持支援 | ||||
◯ *一部グレード装備無し |
◯ *一部グレード装備無し |
◯ *一部グレード装備無し |
◯ *一部グレードオプション |
◯ |
後側方車両検知警報 | ||||
× |
× |
〇 *一部グレード装備無し |
× |
× |
後退時後方車両接近警報 | ||||
× |
× |
〇 *一部グレード装備無し |
× |
× |
オートマチックハイビーム | ||||
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
◯ |
ドライバー異常時警報システム | ||||
× |
× |
× |
◯ (一部グレードオプション) |
× |
SOSコール(ヘルプネットなど) | ||||
△ |
△ |
◯ *一部グレードオプション、または装備無し |
◯ (一部グレードオプション) |
△ |
JNCAP | ||||
★★★★☆ (2023年) |
★★★★☆ (2022年) |
★★★★★ (2020年) |
★★★★★ (2022年) |
★★★★★ (2023年) |
※安全装備の詳細は各車メーカー公式サイトをご確認ください。