度々、話題になる日本の自動車税が高いという問題。とくに最近は2022年下期に走行距離税の導入検討が話題になりました。今回は日本の自動車税が高いとされる理由や税制の問題点について解説します。
「日本の自動車税は世界一高い」
※出典:JAF 2023年度税制改正に関する要望書[2022年10月] P.8
走行距離税の導入検討が話題になった2022年秋。日本自動車工業会の豊田章男会長は以下のように発言しました。
私どもは「この複雑な税体系を、もう少し簡素化してください」だとか、「世界一高い自動車税を軽減してください」とずっと申し上げてきました。
「自動車ユーザー、バイクユーザー、軽自動車ユーザーも国民ですよ」ということを申し上げております。
この「世界一高い」という自動車税に関しては、JAF(日本自動車連盟)も毎年軽減の要望書を出し続けています。JAFは、日本の消費税を除く車体課税の負担が極めて過重であると主張。冒頭のグラフが示すように、車体取得後13年間にかかる課税額を他国と比較した場合、日本はアメリカに比べて約31倍もの額となっています。
クルマの税金は年間いくらかかるのか
そもそも自動車関連の税金にはどんな種類があり、私たちは年間どれくらいの税金を払っているのでしょうか。
自動車関係の税金は段階ごとに7種類
クルマに支払う税金は、取得・保有・使用に分けて以下の7種類があります。
取得 |
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保有 |
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使用 |
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購入段階では環境性能割と、車両価格にかかる消費税があります。保有でかかるのは毎年支払う自動車税と、主に車検時に支払う重量税の2種類です。
自動車ユーザーに認知されにくいのが、ガソリン代に含まれる税金。大まかに分けるだけでも、ガソリン代には上記のように3種類の税金が含まれています。
購入後3年間の税金を試算
クルマを購入してからの3年間、クルマの税金がいくらかかるのかを試算してみました。
・《A車》車両価格180万円、ガソリン車、燃費20㎞/L、排気量1,490㏄、車重1,000㎏
・《B車》車両価格300万円、ガソリン車、燃費15㎞/L、排気量1,980㏄、車重1,640㎏
・環境性能割は「新車時価格×0.9」で大よその課税標準基準額を試算
・一年間の走行距離は1万キロと仮定
・ガソリン税+石油ガス税は53.8円/Lで計算
項目 | A車 (車両価格180万円) |
B車 (車両価格300万円) |
---|---|---|
環境性能割 | 48,600円 | ¥81,000 |
消費税 | 180,000円 | ¥300,000 |
自動車税(3年分) | 91,500円 | ¥108,000 |
自動車重量税(3年分) | 36,900円 | ¥49,200 |
ガソリン税 +石油ガス税(3年分) |
84,900円 | ¥113,259 |
燃料代の消費税(3年分) | 23,319円 | ¥31,107 |
合計(3年間) | 465,219円 | ¥682,566 |
クルマの購入額や環境性能によっても税額は異なりますが、今回の試算例では3年間で46~68万円もの税金がかかっていました。
なお購入時は環境性能割や消費税による税負担が大きいです。これらを除いた場合、年間の税額は大よそ10万円前後です。しかし実際には税金に加えて自賠責保険料や車検時の手続き費用といった法定費用もあります。「車は生活必需品」という人が多い日本において、これだけの税負担はやはり高いでしょう。
日本が抱える自動車税制3つの問題点
日本の自動車税は高いだけでなく、次の3つの問題点を抱えています。
- 問題点①類似した税金がある
- 問題点②二重課税になっている
- 問題点③長く大切に使っても重課される
問題点①類似した税金がある
先に触れた通り、自動車ユーザーはクルマの取得・保有・使用の段階に分けて7種類もの税金を課されています。
取得時 |
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保有時 |
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使用時 |
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このうち保有段階の自動車税と重量税は、それぞれ排気量と車重を基準に課税額が決まります。しかし大きなエンジンを積むほど排気量が増え、車重も増えるのは当たり前のこと。結局は「車体が大きくなるほど課税額が膨らむ」傾向があります。
また環境負荷を考慮した税金も、取得時の環境性能割、排気量に応じて支払う自動車税、さらに一定年数を経過したクルマに重課される自動車税・重量税と混在している状態です。
問題点②二重課税になっている
「日本の自動車税は二重課税である」とよく批判されます。特に批判の声が大きいのはガソリン代の二重課税。先述の通り、ガソリン代はガソリンの本体価格にガソリン税/軽油引取税と石油税が上乗せされています。さらに、これらの合計額に消費税がかかっているのです。税金に消費税がかかっているのは明らかな二重課税といえます。
③長く大切に乗っても重課される
日本では新車登録から13年を経過したガソリン車に自動車税が重課されます(ディーゼル車は11年)。また重量税も13年経過で重課され、18年を超えればさらに課税額が増えます。
近年、日本ではクルマの平均使用年数が長くなっており、令和3年度調べでは13.87年(※)でした。この要因の一つには、物価高でユーザーがクルマを乗り換えにくいこともあるでしょう。しかし日本はこうした「生活必需品のクルマ」「長く大切に乗っているクルマ」に重課を強いています。
※出典:一般法人自動車検査登録情報協会
そもそも日本は、「旧車は環境負荷が大きい」という理由でこの重課制度を採用していますが、環境性能は車種ごとにさまざま。海外諸国のように、経過年数でなくCO2の排出量を基準にした方が、まだ平等性を保てるでしょう。
今後はさらなる負担増か
このように、日本の自動車税は高いだけでなく、諸々の問題を抱えています。そんな中、2022年12月、政府は「自動車税制の見直しを2026年度に行う」という方針を示しました。エコカーの普及で減少した自動車関連の税収を回復させるためです。
自動車関連税の種類を減らして一つひとつの課税額を高くするのか、それとも自動車税制がさらに複雑化するのか、現状では分かりません。しかし政府の「自動車関連の税収増加」という目的を考えれば、今後自動車ユーザーの税負担がさらに増加するのは明白です。