BYD ATTO 3新型EV試乗記-世界が驚愕する衝撃のコストパフォーマンス

BYD ATTO3

新型EVが続々発表される昨今、2023年は中国メーカーのBYDが日本での発売を開始し、注目を集めている。今回はBYDの第一弾発売となるATTO 3の試乗を通して感じた性能について解説する。

BYDはEV販売台数世界一となった中国発メーカー

BYDは、中国の自動車メーカーだ。BEVやPHEVなどの販売では、中国で9年連続1位を遂げており、70を超える国で販売している。2023年には満を持して日本にも進出した。

BYDのルーツは、BEVの基幹部品でもあるバッテリーにある。

BYDは1995年にバッテリーメーカーとして創業し、2003年に自動車産業に参入した。現在のEV販売台数は、テスラを抜き世界トップとなっているほどで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの自動車メーカーだ。

そんなBYDが、2023年1月31日に新型BEV(バッテリー電気自動車)であるATTO3の発売を開始した。

ATTO3はCセグメントのBEV

BYD ATTO3 全体

BYDの日本参入にあたり、第1弾のBEVとして投入したモデルがATTO3(アットスリー)である。ボディサイズは、全長4,455mm×全幅1,875mm×全高1,615mmだ。全幅がかなりワイドだが、CセグメントのコンパクトSUVに属する。全高が少し低いため、意外と小さく見える。

ボディサイズが近いのは、ボルボXC40リチャージ(全長4,440×全幅1,875×全高1,650mm)だ。

BYD ATTO3 フロント

BYD ATTO3のデザインはスタイリッシュ系で、あまりSUV感はない。全幅が広いため、塊感のあるどっしりとしたシルエットだ。ボディサイドのキャラクターラインもなかなか複雑な造形で、スポーティな印象を与えている。

BYD ATTO3 バック

リヤコンビネーションランプは、流行りの横一文字タイプだ。ATTO3は、とくに奇をてらったデザインではないので、誰にも好まれるタイプといえるだろう。

ATTO3の内装は、ありそうで無かった回転式ディスプレイが搭載

BYD ATTO3 運転席

オーソドックスな外観デザインに対し、インテリアデザインはかなりユニークだ。

モチーフとしたのは「スポーツジム」。このコンセプトには、円筒状のドアハンドルや、ダンベルのようなデザインのエアコン吹き出し口など、今まで見たことのないデザインが用いられていて新鮮だ。

BYD ATTO3 後席シート

全体的にカジュアル系な空間にまとめられている。ラグジュアリー系のインテリアを好む人には向かないデザインだが、斬新で若々しくアクティブなデザインを好む人にピッタリなデザインといえるだろう。

BYD ATTO3 インパネデザイン

BYD ATTO3 ディスプレイ1

流行りのタッチスクリーンは外せない。センターコンソール上装備した12.8インチディスプレイには、今までありそうで無かった回転式機能が採用されている。これがなかなか便利なのだ。

BYD ATTO3 ディスプレイ2

BYD ATTO3 ディスプレイ3

ヘディングアップでナビを使うとき、ディスプレイを縦にすると自車の進行方向が広く使え、より多くの地図情報が分かる。横だと、進行方向のスペースが狭く地図情報が少ない。使用する画面により縦横使いやすい方を選択できるのも利点だ。

 

すべての機能をタッチスクリーンに集約していない点も高評価出来る。個性的な形状をしたシフトレバー付近には、物理的なスイッチ系が残されている。使用頻度の高い機能系スイッチは、タッチパネルより使いやすいからだ。

 

あえて言うのなら、BMWのようにダイヤル式の操作系も欲しかった。右ハンドル車だと、左手でタッチスクリーンを操作することになる。多くの人にとって利き手ではない手では、動いている車内での操作が難しい。ダイヤル式で操作できれば、指先に視線を注視する必要もない。安全面でも大きなメリットになるからだ。

インテリアの質感は従来のイメージを払しょくするATTO3

高く評価したいのは、インテリアの質感だ。

BYD ATTO3の価格は4,400,000円と、かなりリーズナブル。中国製で安価と聞くと、なぜか「安かろう悪かろう」というイメージが頭をよぎる。

これは、ATTO3には当てはまらない。インテリアの質感は、同じ400万円台の国産BEVと比べると、圧倒的にATTO3が優れている。装備も機能も同様だ。

 

日本人のナショナリズムで、「高額商品の中国製は・・・」とマイナスに考えてしまう点を取り除いてしまえば、国内のBEVはATTO3に席巻されてしまうのでは? と危機感を強く抱いた。

ATTO3 の航続距離、実電費は優秀な数値

BYD ATTO3 エンジンルーム

BEVで気になるのはBYD ATTO3の航続距離だ。ATTO3には、容量58.56kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されている。駆動方式は前輪駆動のみの設定で、航続距離は485km、搭載されるモーターの出力は204ps&310Nmと十分なスペックと言える。

 

驚きなのは、電費性能だ。1kWhあたりの電費は、約8.3km/kWhとなる。

ライバル車であるボルボXC40リチャージシングルモーター(出力:231ps&330Nm)のカタログ電費は、約7.3km/kWhだ。XC40は、よりパワフルなモーターを使っているため電費は悪化傾向になるのだが、それでもATTO3の電費は優秀な数値だ。

 

ATTO3の試乗時には、約150km走行し、実電費は約8.1km/kWhと良好だ。ATTO3と同等レベルの電池容量である60kWh相当の電池を搭載した国産BEVでは、実電費は7.0km/kWhを超えることが無かった。比較に用いたモデルがBEVとしてやや古くなっているとはいえ、ATTO3の実電費はかなり優秀といえる。

快適な走行性能だが、やや味気の無いATTO3

ATTO3に乗り、アクセルをゆっくりと踏み込むと、スルスルと何の違和感もなく走り出す。204ps&310Nmの出力で、車重は1,750kgなので、それほど速くはないが十分な加速力と言える。BEVらしく、アクセルレスポンスは抜群で運転していて気持ちがよい。ただ、加速時にキーンというインバーターの音がやや耳障りだった。

 

回生ブレーキは、なかなか自然な設定だ。停止寸前のギクシャク感もない。走行モードはエコ、ノーマル、スポーツと3段階設定されている。多少、アクセルレスポンスに変化を感じるものの、大きな差はない。

 

ATTO3はソフトな乗り味でなかなか快適だ。高速道路でもしっかりと路面の凹凸を吸収し、不快感はなかった。

快適性を実現した理由のひとつが、タイヤサイズを235/50 R18に抑えたことだ。SUVはルックスを良くするために、大径タイヤを履く傾向が強い。CセグメントのSUVでも19インチを履くことがほとんどだ。

しかし、ATTO3では、50扁平の18インチとしたことで、タイヤが上手く路面からの衝撃を緩和する。しっとりとした乗り味になっていた。

 

スポーティなルックスながら、ハンドリングはゆったり系と言える。ステアリング操作に対して俊敏に動くというタイプではないが、素直に反応する。床下に大きく重いリチウムイオン電池を搭載しているため、車体はかなり低重心化されている。カーブでも安定感ある走りも魅力だ。

 

BYD ATTO3の走行性能は、なかなか高いレベルにある。だが、至って平凡。とくに、大きな不満点があるわけではない。だが、突出して良いと思わせる部分も無い。これがBYDだ! と感じられる走りの味が欲しいと感じた。

 

走行性能にこだわらないユーザーにとっては、味が無くても問題無い。運転しやすければ、それでいい。ATTO3に味を求めるのは、ないものねだりなのだろうか。少々、モヤモヤする試乗だったが、もしATTO3らしい味がついたら、まさに欧州・日本のBEVにとって脅威になるのは確実だ。

BYD ATTO 3 価格・スペック

価格

44,000,000円

ボディサイズ

全長4,455mm×全幅1,875mm×全高1,615mm

ホイールベース

2,720mm

車両重量

1,750kg

定員

5名

駆動方式

前輪駆動(FWD)

蓄電池種類

リチウムイオン電池

バッテリー容量

58.56kWh

モーター最大出力

150kW(204ps)/5,000-8,000rpm

モーター最大トルク

310Nm(31.6㎏-m)/0-4,620rpm

一充電走行距離

485km

サスペンション

前:マクファーソンストラット/後:マルチリンク

タイヤサイズ

235/50R18

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員