
エンジンを駆動するのに必要不可欠なタイミングベルト。
定期的な交換が必要な部品で、なおかつ整備には費用も時間も掛かる部品のひとつです。
今回はタイミングベルトの役割や交換にかかる費用、タイミングベルトとあわせて交換するべき部品について現役の整備士がわかりやすく解説します。
- タイミングベルトとは
- タイミングベルトの役割と仕組み
- タイミングベルトを交換しないとどうなる?
- タイミングベルトの交換にかかる費用の目安
- タイミングベルトとあわせて交換した方がいい部品
- 整備士のまとめ
タイミングベルトとは
タイミングベルトはエンジン部品の一部です。2000年代に入ってからはタイミングチェーンに置き換わることで、徐々にその姿を消していきました。
国産の乗用車では、いま現在新車販売されている車でタイミングベルトの車はありません。
一方で輸入車は今でもタイミングベルトを採用している車も見受けられます。
タイミングベルトは消耗品なので定期的な交換が必要です。
タイミングベルトの役割と仕組み
タイミングベルトの交換が必要と分かっていても、その役割や仕組みまで理解している方は少ないでしょう。
わかりやすく簡単に説明します。
タイミングベルトの持つ役割
タイミングベルトはエンジンが動くために必要な部品同士の回転タイミングを、ズレないようあわせる役割があります。(この次にくわしく解説します)
また、タイミングベルトを採用している車はウォーターポンプも同じく、タイミングベルトにより駆動しているケースがほとんどです。
ウォーターポンプは、エンジン冷却水を循環させるためのポンプの役割を持っている、非常に重要な部品です。
また、クランクシャフトと並行してカウンタシャフトと呼ばれる部品が取り付けてある車があります。
その中には、カウンタシャフトもタイミングベルトで駆動しているものがあります。
カウンタシャフトは不快なエンジン振動を打ち消す役割のある部品です。
タイミングベルトの仕組み
エンジンは、シリンダーという筒の中をピストンが上下に運動することでエネルギーを生み出しています。
シリンダー上部には空気(混合気)を吸うバルブと、燃焼後の排気ガスが出ていくバルブが付いています。
そしてバルブはカムシャフトと呼ばれる部品の回転運動で駆動され、ピストンはクランクシャフトと呼ばれる回転する部品の軸に取り付けられ、上下運動します。
このカムシャフトとクランクシャフトの先端にはプーリー(歯車)が装着されています。
このプーリーの歯車に噛み合うかたちでタイミングベルトが取り付けられており、常に同じタイミングでそれぞれの部品が回転するようになっています。
タイミングベルトを交換しないとどうなる?
タイミングベルトはゴム部品なので、徐々に劣化が進む消耗品です。
交換を怠ると以下のような不具合の生じる恐れがあります。
- タイミングベルトの歯飛びが発生してタイミングがズレる(山飛び、コマずれとも言います
- タイミングベルトが切れる
- エンジンチェックランプが点灯する
- エンジン不調や加速不良が発生する
主な不具合について詳しく説明します。
タイミングベルトの歯飛び
タイミングベルトは凹凸の山がプーリーに噛み合っています。
ベルトが劣化して山の部分が欠けたり摩耗したりすることでプーリーの山を越えてしまうことがあります。するとタイミングがズレてしまいます。
ひと山ズレただけでもエンジンチェックランプの点灯やエンジン不調、加速不良、排ガスが臭くなる等の発生が考えられます。
数コマズレてしまうと、最悪の場合はピストンと吸気/排気バルブが干渉してエンジンが損傷する恐れがあります。
タイミングベルトが切れる
タイミングベルトが切れるとエンジンを駆動することができないので、エンジンが止まってしまい車が動かなくなります。
また、ピストンと吸気/排気バルブが干渉してエンジンが損傷する可能性が非常に高いです。
タイミングベルトの交換にかかる費用の目安
タイミングベルトの交換費用は5万円前後〜15万円ほどが目安です。タイミングベルトの交換は一般的に高額なメンテナンスのひとつと言えます。
費用の内訳は部品代と工賃に分けられます。
(国産乗用車の場合)
- 工賃の目安…25,000円〜70,000円
- 部品代の目安は…15,000円〜80,000円
タイミングベルトの交換は、車種やエンジンによって必要な部品点数や整備にかかる時間(工賃)が大きく異なります。場合によってはエンジンを車から脱着しておこなうような車種もあります。
正確な費用を把握する場合は、整備工場で見積もりを取ることをおすすめします。
タイミングベルトとあわせて交換した方がいい部品
タイミングベルトを交換する際、一般的に最低限の交換部品とされているものは以下のとおりです。
- タイミングベルト
- タイミングベルトテンショナー
- タイミングベルトアイドラプーリー(無い車もある)
あわせて交換することの多い部品、または車種によっては交換の必要がある部品は以下のとおりです。
- ウォーターポンプ
- ヘッドカバーガスケット(タペットカバーパッキンなど呼称が複数あり)
- クランクシャフトオイルシール
- カムシャフトオイルシール
- 補機類ベルト
- 補機類ベルトのテンショナー・プーリ
- スパークプラグ
- エンジン冷却水(LLC)
タイミングベルト交換と合わせてこれらの部品を交換おすすめする理由として、「タイミングベルトと交換インターバルが重なる」、「タイミングベルト交換時にあわせて取り外すので、再使用不可であったり、同時に交換した方が工賃節約になるので推奨されたりする」、「タイミングベルト交換後に不具合が発生した場合、部品の脱着が被る部分があり、同時にしておかないともったいない」といったことがあげられます。
タイミングベルトとあわせて交換したほうがいい主な部品について、どの程度の予算追加を考えておけば良いかをお伝えします。
ただしエンジンの違い、使用する部品のメーカー(純正品か社外品か)の違い、また部品によってはエンジンが違えば交換の手間や難易度が異なります。それに応じて実際の費用も大きく異なってくる点をご了承ください。
ウォーターポンプ
タイミングベルトを採用している車の多くが、タイミングベルトを取り外ししないとウォーターポンプを交換できません。
非常に重要な部品であり、タイミングベルトを取り外す作業をして初めてその不具合が確認できるケースも多いです。(プーリー軸の劣化や冷却水漏れ・滲みなど)
そのため、タイミングベルトの交換とセットで交換するのが基本です。
整備工場側もほとんどの場合で同時交換を推奨するはずです。
タイミングベルトとあわせてウォーターポンプを交換する場合は5,000円〜20,000円程度、予算が増えることを考慮しましょう。
ヘッドカバーガスケット類
タイミングベルトの交換にあたり、ヘッドカバーの脱着が必須のエンジンがあります。
ヘッドカバーはエンジンのシリンダヘッド上部にあるカバーで、中はエンジンオイルで潤滑されているため、オイルが漏れ出さないように取り付け面にはガスケットが用いられています。
また、エンジンによっては他にも脱着を伴うエンジン部品があるケースがあります。
それぞれに応じて、ガスケットやシール類の交換が必要となります。2,000円〜7,000円程度の予算が追加されることを考慮しましょう。
カム/クランクのオイルシール
カムシャフトとクランクシャフトは、オイルで循環されているエンジン本体の内部にあり、その先端に取り付けられているプーリーは壁を隔ててエンジン本体の外側に位置する構造がほとんどです。(一部を除く)
カムシャフトとクランクシャフトの先端が壁から突出している場所から、内部を循環するエンジンオイルが漏れ出さないために重要な役割をしているのが「カムのオイルシール」「クランクのオイルシール」です。
このオイルシール交換はそれぞれのプーリーの脱着が必須なので、当然タイミングベルトの脱着も伴います。
よって、オイル漏れが発生していない場合にも、タイミングベルト交換と同時に交換をおすすめされることがあります。
タイミングベルトあわせてオイルシールを交換する場合は3,000円〜8,000円程度の予算の追加を考慮しておきましょう。
補機ベルト類
補機ベルトはエンジンの補機類を駆動するためのベルトで、タイミングベルトの外側のエンジンルームの見える位置で駆動しているベルトです。
補機類とは以下のようなものを指します。
- エアコンコンプレッサー
- オルタネーター
- パワステポンプ
- (ウォーターポンプ)
タイミングベルトの脱着の際に、同じく脱着の必要のあるのが補機ベルトで、一般的な乗用車では1〜3本使用されています。
タイミングベルトと同じくゴム製で劣化するため、定期的に交換が必要な消耗品です。
点検の結果、交換が必要な状態であればタイミングベルトの交換と同時に交換することで工賃の節約にもつながります。
同時に交換する場合は5,000円〜15,000円程度、予算に余裕を持っておきましょう。
また、補機ベルトの張力の調整は手動で行うタイプと、オートテンショナーを使用して自動調整されるタイプがあります。
また、中にはベルトレイアウトをガイドするための「アイドラプーリー」のあるエンジンもあります。
これらはエンジンの駆動中に常に回転している部品で、定期交換が指定されている部品ではありませんが、劣化している場合には交換が推奨されます。
テンショナーやアイドラプーリーも含める場合にはベルト代も含めて20,000円〜35,000円程度の予算の追加を考慮しておきましょう。
スパークプラグ
エンジンの種類によって、また作業性の向上の観点からタイミングベルトの交換に際してスパークプラグを脱着するケースがあります。
スパークプラグも消耗品なので、交換タイミングが合えばタイミングベルトの交換と合わせて交換することで、工賃を節約できることがあります。
同時に交換する際は、エンジンの気筒数や使用するスパークプラグの種類によって大きく異なりますが2,000円〜18,000円程度の予算追加を考慮しましょう。
エンジン冷却水(LLC)
ウォーターポンプを交換する場合、エンジン冷却水を抜く必要があるので、合わせてエンジン冷却水を交換するケースがあります。
最近の車はどのメーカーもエンジン冷却水がかなり長寿命化されているので再利用できることも多いですが、メーカーごとに指定された交換時期を迎えている場合には交換が推奨されます。
エンジン冷却水もあわせて交換する場合は4,000円〜15,000円程度の予算追加を考慮しましょう。
整備士のまとめ
タイミングベルトの交換は高額なメンテナンスですが、タイヤやブレーキと異なり交換時期を迎えたときに交換しないと車検に通らない・ただちに安全走行できないといったことがないので、後回しにされがちです。
タイミングベルトを交換するときには、車の状態に応じて合わせて交換した方がよい部品があります。
追加になると費用はプラスになりますが、タイミングベルトの交換と重複する作業であれば、工賃の節約にもなります。
さまざまなトラブルを事前に予防するためにも、これら推奨交換部品も合わせて早めに交換することをおすすめします。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。