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8代目フォルクスワーゲン ゴルフ8は、Cセグメントという激戦カテゴリーで世界が注目するほど完成度が高い。日本の輸入車ではトップレベルの販売台数だ。
マツダ3ファストバックも同じセグメントだ。個性的な外観デザインや、世界初のスカイアクティブX技術を採用。
日本の販売現場で頻繁に競合する、正統派コンパクトカーの2車種を徹底比較・評価した。

この記事の目次 CONTENTS
フォルクスワーゲン ゴルフ8の特徴
マツダ3ファストバックの特徴
1.燃費比較
2.価格比較
3.購入時の値引き術
4.デザイン比較
5.室内空間と使い勝手
6.安全装備の比較
7.走行性能の比較
8.リセールバリュー比較
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

フォルクスワーゲン ゴルフ8の特徴

フォルクスワーゲン ゴルフ8 フォルクスワーゲン ゴルフ8

フォルクスワーゲン ゴルフは、長い歴史をもつ。初代ゴルフは1974年に登場し、2021年6月のフルモデルチェンジで8代目となった。歴代のゴルフは、輸入車販売台数では数えきれないほどナンバー1の座に君臨してきた。日本人にとって最も親近感のある輸入車といえる。
プラットフォームは、ゴルフ7で初採用されたMQBを引き続き採用している。パワーユニットは刷新され、「eTSI」という48Vマイルドハイブリッドを搭載した。日本では1.0L直3ターボと1.5L直4ターボエンジンの2タイプが用意されている。燃費をアップさせながら、コストを抑えた仕様だ。

日本ではレギュラーガソリン仕様が主流なのに対して、ゴルフ8は従来通りハイオクガソリンを使うため、燃料費はやや高めになる。さらに、ストロングハイブリッドが多く走る日本では、マイルドハイブリッドシステムでは48Vとはいえ物足りなさを感じる。
また今回のフルモデルチェンジでは、ゴルフ7で用意されていた2.0Lディーゼルターボエンジンは、設定されていない。

マツダ3ファストバックの特徴

マツダ3ファストパック マツダ3ファストパック

マツダ3の前身は、Cセグメントのコンパクトカーであるアクセラだ。3代目アクセラが、4代目へフルモデルチェンジする2019年のタイミングで、欧州などで使われていたマツダ3へと車名を変更している。
マツダ3の大きな魅力のひとつが、エモーショナルなデザインだ。マツダ3は、マツダのデザインコンセプトである「魂動デザイン」をさらに進化させた。キャラクターラインを極力入れず、繊細な面の表現にこだわっている。
エンジンには世界初の技術である「SPCCI( Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を採用した。さらに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせたパワーユニット、2.0LのスカイアクティブXが用意されている。
加えて、マツダ3のパワーユニットには、1.8L直4ディーゼルターボ、1.5L直4ガソリン、2.0L直4ガソリンの計4タイプが揃った。

1.燃費比較

ゴルフ8の評価は 3.5
マツダ3ファストバックの評価は 3.5

優れた燃費値のeTSIだが…、ディーゼルの低燃費性能が魅力のマツダ3ファストバック

フォルクスワーゲン ゴルフ8の燃費は以下の通りだ。(すべてFF、WLTCモード)

1.0L eTSI 18.6km/L
1.5L eTSI 17.3km/L

マツダ3ファストバックの燃費は以下の通りだ。(すべてFF、WLTCモード)

1.5Lガソリン 16.6km/L
2.0Lガソリン 15.6km/L
1.8Lディーゼル 19.8km/L
2.0LスカイアクティブX 17.3km/L

フォルクスワーゲン ゴルフ8の燃費は、このクラストップレベルの数値となった。渾身のパワーユニット、eTSIの効用である。
eTSIは、48Vのマイルドハイブリッドシステムを使う。ストロングハイブリッドが普及している日本マーケットだと、技術や燃費値を含め、少々物足りなさを感じる。
実際、乗っていてもモーターアシスト感はあまりなく、基本的に従来のガソリン車とそれほど大きな差はない。むしろ、かなり積極的にコースティングすることにより、燃費をアップさせているように感じる。

ゴルフ8の燃料は、ハイオクガソリンだ。燃費が良くても燃料費が少し高くなる。
燃費とは直接関係はないが、1.0LのeTSIは、排気量が1.0Lと小さいことから自動車税が25,500円と安価なのは魅力だ。
マツダ3ファストバックガソリン車の燃費は、とくに目を見張るような数値ではなく平均的である。
魅力的なのは燃費値が良好な1.8Lディーゼルだ。軽油を燃料として使うので、レギュラーガソリンより約20円/L程度、ハイオクガソリンより30円/L程度も安価で、ストロングハイブリッドに近い燃料費になる。それでいて力強さもあるので、ベストな選択といえるだろう。
微妙なのがスカイアクティブX だ。SPCCIと呼ばれる世界初最新のテクノロジーに加え、マイルドハイブリッドシステムも搭載したモデルである。2.0Lガソリン車に対して、1.7km/Lしか燃費がアップしていない。しかもハイオクガソリンを使用するため、2.0Lガソリン車と大差ない燃料費になってしまうのが難点である。

2.価格比較

ゴルフ8の評価は 3.0
マツダ3ファストバックの評価は 3.5

車両価格面では、マツダ3ファストバックの圧勝

フォルクスワーゲン ゴルフ8のエントリーグレードである1.0eTSIと同等レベルの最大トルクをもつのは、マツダ3ファストバックの2.0Lガソリン車だ。マツダ3はこのモデルをエントリーグレードと仮定する。

フォルクスワーゲン ゴルフ8とマツダ3ファストパックの価格は以下の通りだ。

エントリーグレード 最上級グレード
フォルクスワーゲン ゴルフ8 2,916,000円(Active Basic 1.0 eTSI) 3,755,000円(R-Line 1.5 eTSI)
マツダ3ファストバック 2,515,741円(20Sプロアクティブ) 3,451,963円(Xバーガンディ セレクション)

ゴルフ8とマツダ3のエントリーグレードの価格差は約40万円だ。ゴルフ8には48Vマイルドハイブリッドシステムを搭載しているので、高価になるのは納得だが、それでも約40万円の差は大きい。
装備類はそれぞれ微妙に異なる。エントリーグレードなら、マツダ3の20Sプロアクティブの方が若干よい。コストパフォーマンスは20Sプロアクティブが勝る。

最上級グレードのR-LineとXバーガンディセレクションの価格差は、約30万円だ。マツダ3ファストバックの方が安価となっている。しかも、Xバーガンディセレクションは、レザーシートやパワーシートなどの豪華装備もプラスされている。
価格面では、マツダ3ファストバックのコストパフォーマンスがゴルフ8を圧倒している。マツダ3の国内生産などのメリットが活きている。

3.購入時の値引き術

ゴルフ8の評価は 3.0
マツダ3ファストバックの評価は 3.0

在庫車の有無で値引き額が大きく変わる

フォルクスワーゲン ゴルフ8は、2021年8月現在はまだデビュー直後なので、値引きはゼロベースだ。

輸入車は一定の台数を定期的に船で2ヶ月以上かけて運んでくる。そのため、バックオーダーが無くなって、在庫車販売に切り替わってくると、大幅値引きのチャンスが到来する。輸入車は長期在庫を嫌い、大幅値引きしてでも売りたいと考えるからだ。こうした長期在庫車が、自分の望む仕様であれば「値引き次第で、すぐに買う」と伝え、大幅値引きを誘導したい。
在庫車も値引きが期待できる。ディーラー側からすれば、2ヶ月以上経ってから船で運ばれてくる車両より、今すぐ登録できノルマを達成できる車両なら値引きもOKと思うからだ。

しかし、ただ漫然と商談しても値引きは引き出せない。ゴルフ8の場合、やや高価な価格帯になるが、メルセデス・ベンツAクラス、BMW1シリーズがライバルとなる。こうした車両に加え、マツダ3ファストバックやトヨタ カローラスポーツハイブリッドなどの見積りを先に取り商談することが有効だ。

マツダ3ファストバックは、2019年にデビューしているので、本来なら値引きも拡大しているタイミングだ。しかし、マツダは値引き抑制戦略を取っているため、ご挨拶程度の値引きしか出てこない。
国産車の場合、国内に工場をもつため、在庫販売というより受注生産に近い形態になっている。そのため、在庫車は少ないのだが、受注キャンセルなど特殊な事情により、在庫が発生する場合がある。こうした車両は、大幅値引きが可能だ。営業マンが「すぐにでも、登録できる」などという場合は、在庫車の場合が多いので「値引き額が多ければ、すぐに買う。値引き額が少なければ、買わない」などと商談するのもよい。
ただ、2021年8月現在、半導体不足の影響で、メーカーも思う通りに生産できない状態だ。こうした商談方法は、通常の生産状態に戻ってからになる。

大幅値引きを引き出すには、ライバル車と競合させることが重要だ。マツダ3ファストバックは、国産車だとトヨタ カローラスポーツ、スバル インプレッサがライバル車である。輸入車であればフォルクスワーゲン ゴルフ8、ルノー メガーヌ、プジョー308なども加えるとよいだろう。

4.デザイン比較

ゴルフ8の評価は 4.0
マツダ3ファストバックの評価は 4.5

空気抵抗にこだわったゴルフ8。日本の美意識を意識したマツダ3ファストバック

golf 8の外観 golf 8の外観

フォルクスワーゲン ゴルフ8のプラットフォームは、先代ゴルフ7と同じMQBを使っている。そのため、全体的なシルエットはゴルフ7とそれほど変わらない。
歴代ゴルフのデザインは、良くも悪くもエモーショナルな印象がない。これは、あえてエモーショナルさを消し去って、徹底的にゴルフらしさを追求した結果だ。その象徴ともいえるのが、太く矢を放つ瞬間の弓のようなデザインをもつCピラーである。初代ゴルフのデザインアイコンを今も継承し続けている。

多くの場合、フルモデルチェンジすると、先代モデルとは全く違うデザインになる。しかし歴代ゴルフは過去のモデルへの敬意を忘れてはいない。歴代ゴルフデザインの美点だ。
だからこそ、歴代ゴルフすべてが、ひと目でゴルフと分かるデザインになっている。そのデザインの精緻さやクリーンさは群を抜く。

golf 8のフロントフェイス golf 8のフロントフェイス

ゴルフ8は、ゴルフ伝統のデザイン手法で生まれた。特徴的なのが、前方に向けてグッと下がったデザインが採用された薄い顔だ。現在のトレンドは、グリルを大きく迫力を出すデザインだ。それでも、かなり細くなってはいるものの水平基調のグリルデザインで、ゴルフらしさを表現している。

golf 8のリヤエンド golf 8のリヤエンド

こうしたデザインになったのは、空気抵抗を下げるためだ。前面投影面積は 2.21㎡ になり、空気抵抗係数(Cd値)は0.3から0.275へと低減されている。もちろん、その他の部分でもCd値が最適化された。空気抵抗の低減は、燃費値を上げる効果もある。さすが、ゴルフというべきか、デザインにも理由がある。

golf 8のインパネ golf 8のインパネ

インテリアは、伝統の水平基調デザインを継承した。シンプルで質実剛健感あるデザインで、安心感がある。

golf 8のメーター golf 8のメーター

ゴルフ8の操作系はガラッと変化した。新たなデジタルコックピットとインフォテインメントシステムが投入されている。ライト、フロントウィンドウ、リアウィンドウヒーターなどは、インストルメントパネル右側のデジタルパネルで操作する。このスイッチ部が小さく押しにくいのが難点だ。さらに、エアコンなどもセンターコンソール上部にあるモニターで操作するため、これもブラインドタッチできず使いにくい。
従来ゴルフの操作系は、ブラインドタッチも違和感なくでき、スイッチ類の大きさや節度感も良好だったので、少々残念なポイントと言える。

マツダ3ファストパックの外観 マツダ3ファストパックの外観

マツダ3ファストバックのデザインは、マツダのデザインコンセプトである「魂動デザイン」をさらに進化させた。マツダ3ファストバックには、日本の美意識に基づく「引き算の美学」が用いられ、クルマのフォルムから不要な要素を削ぎ落していった。その結果、強烈なキャラクターラインが無い滑らかなボディ面が生まれている。このボディ面は、光の加減で繊細な表情を見せ、豊かな生命感を表現している。

マツダ3ファストパックのフロントフェイス マツダ3ファストパックのフロントフェイス
マツダ3ファストパックのリヤエンド マツダ3ファストパックのリヤエンド

こうした珍しいデザイン手法が使われたことにより、マツダ3ファストバックは非常に個性的なフォルムをもつハッチバックとなった。多くのクルマが走る街中で、その存在感は抜群で、思わず目で追ってしまうほどだ。

マツダ3ファストパックのインパネ マツダ3ファストパックのインパネ

インテリアデザインも同様のコンセプトとなっている。水平基調でワイドさをアピールしながら、メーター上部から滑らかに流れるようなラインは、そのままドアサイドへ回り込む。全体的にシットリした落ち着いた空間にまとめられた。

マツダ3ファストパックのメーター マツダ3ファストパックのメーター

ダッシュボード上に設置されたモニターは、視線移動が少ないため安全面では評価できる。しかし、モニターそのものが小さく、少々視認性が物足りない。
モニター操作はセンターコンソールにあるダイヤルで行う。ゴルフ8のようなタッチパネル式ではない。そのため、走行中でも視線移動が少なく使いやすい。その他、エアコンなどの操作系もダイヤル式だ。マツダ3ファストバックのこうした操作系の扱いやすさは、ゴルフ8を上回る。

5.室内空間と使い勝手

ゴルフ8の評価は 4.0
マツダ3ファストバックの評価は 3.0

デザインと実用性を両立したゴルフ8

フォルクスワーゲン ゴルフ8と、マツダ3ファストバックのボディサイズ/ホイールベース/荷室容量は以下の通りだ。

全長×全幅×全高 ホイールベース 荷室容量
ゴルフ8 4,295mm×1,790mm×1,475mm 2,620mm 380L
マツダ3 4,460mm×1,795mm×1,440mm 2,725mm 334L
golf 8の運転席 golf 8の運転席
golf 8の後席 golf 8の後席

ゴルフ8はマツダ3ファストバックに対して、全長がやや短く、全高がやや高く、ホイールベースがやや短い。
一般的に、全長とホイールベースが長い車種(マツダ3ファストバック)の室内の方が広くなる。ところが、ゴルフ8のパッケージングは、非常に秀逸だ。フロントシート側では、ほぼ互角の居住空間だが、後席はゴルフ8の方が広い。

マツダ3ファストパックの運転席 マツダ3ファストパックの運転席
マツダ3ファストパックの後席 マツダ3ファストパックの後席

マツダ3ファストバックの頭上スペースは、圧迫感がある。荷室容量もマツダ3ファストバックのほうがやや小さい。

マツダ3ファストパックの後席 マツダ3ファストパックの後席
マツダ3ファストパックの荷室 マツダ3ファストパックの荷室

後席や荷室を頻繁に使うなど、実用性を重視するのであれば、ゴルフ8が便利だ。マツダ3ファストバックは、デザイン重視といえる。

6.安全装備の比較

ゴルフ8の評価は 4.0
マツダ3ファストバックの評価は 4.0

それぞれ、一長一短な安全装備

フォルクスワーゲン ゴルフ8の安全装備や運転支援機能などは、先代ゴルフ7から大幅に進化している。重要な歩行者検知式自動ブレーキは、歩行者と自転車に対応した。
その他の主な標準装備は以下の通りだ。

  • レーンチェンジングアシスト(後側方から接近する車両を検知する。車両に気付かず車線変更を使用した時に、注意を発し、自動でステアリング操作を補正する。車線変更時の衝突リスクが軽減される。)
  • リヤトラフィックアラート(バック時に後方から接近する車両があり、衝突のリスクがある場合、注意を発すると共に自動ブレーキが作動する。)
  • トラベルアシスト(車線を維持しながら先行車に追従する。渋滞時などで、とくに疲労軽減が期待できる。)
  • 緊急時停車支援システム(主に高速道路上で、ドライバーが意識を失っているなど、運転できない状態だとシステムが判断すると、ハザードやホーンで周囲に注意喚起しながら同一車線上に停車し、他車を巻き込むような事故リスクを軽減する。)

ゴルフ8は、多くの安全装備がエントリーグレードから標準装備化されているのも好印象だ。ただし、前進・後退時衝突被害軽減ブレーキであるパークディスタンスコントロールは、エントリーグレードに装備不可である。その他は、オプションまたは標準装備だ。これくらいの装備は、標準装備化してほしい。

マツダ3ファストバックの予防安全装備も高いレベルにある。歩行者検知式自動ブレーキは、昼夜の歩行者と昼間の自転車に対応し、ゴルフ8とは、若干機能差がある。
ま後側方車両接近警報は警報のみで、ゴルフ8のようなステアリング制御はない。同様に、後退時車両接近警報もブレーキ制御はない。ただし、AT車誤発進抑制制御などは、全車標準装備されている。

マツダ3ファストバックの方が、より多くのグレードに予防安全装備が標準装備化されている。この部分は、高く評価したい。しかし、機能面ではゴルフ8に若干物足りない装備もある。
逆にゴルフ8は、エントリーグレードの予防安全装備は、やや物足りなさを感じる。ただ、ゴルフ8の最上級グレードであれば、十分満足できるレベルだ。グレード次第で、安全装備が変わる。

7.走行性能の比較

ゴルフ8の評価は 4.0
マツダ3ファストバックの評価は 3.5

ハンドリングや乗り心地は、ゴルフ8が優勢

フォルクスワーゲン ゴルフ8のエンジンと出力は以下の通りだ。

パワーユニット 出力
1.0L eTSI 110ps&200Nm
1.5L eTSI 150ps&250Nm

マツダ3ファストバックのエンジンと出力は以下の通りだ。

パワーユニット 出力
1.5Lガソリン 111ps&146Nm
2.0Lガソリン 156ps&199Nm
1.8Lディーゼル 130ps&270Nm
2.0LスカイアクティブX 190ps&240Nm
golf 8のエンジンルーム golf 8のエンジンルーム

ゴルフ8の1.0Lは、ストップ&ゴーの多い市街地や急勾配の坂道などで、少しストレスを感じた。発進時や急な登り坂で、アクセルオフからオンにしたときのアクセルレスポンスが少し悪い。絶対的な排気量が小さいことや、最大トルク発生回転数が2,000回転とやや高めだからだ。ターボの過給されていない領域では、反応がやや鈍い。車重が1,310kgあるゴルフ8には、モーターも少々小さいようで、レスポンスを改善するほどの力強さは感じなかった。
ストップ&ゴーが少ない郊外路や平坦もしくは緩勾配の坂道などでは、レスポンスの悪さはそれほど気にならなかった。

やや物足りなさを感じた1.0Lに対して、1.5Lは不満ない仕上がりだ。250Nmという最大トルクは非常に力強く、高速道路などでも余裕のある走りを見せる。1.0Lより低いエンジン回転数で、この最大トルクを発生するため、かなり速く感じる。
エンジン負荷が低い場合、4気筒エンジンのうち2気筒分を休止し低燃費化させるアクティブシリンダーマネージメントを装備。クルージング時などで、2気筒から4気筒、4気筒から2気筒といった切り替えが、非常に自然で洗練されている。いつ切り替わったのか分からないほどだ。
乗り心地は、Rラインを除き、路面追従性がよい快適な乗り心地を披露した。従来の少し硬めのドイツ車的乗り心地をイメージすると、驚くほどしなやかだ。
1.0Lと1.5Lでは、リヤサスペンションが異なる。1.0Lはトレーリングアームだが、1.5Lは4リンクとなる。そのため、とくに荒れた路面などでは、1.0Lより1.5Lの方が快適だ。

最もゴルフらしかったのが、Rラインだ。やや硬めのサスペンションで、専用のスポーツサスペンションが装備されている。やや硬めの乗り心地は、市街地では微妙な面もあった。しかし、高速道路やワインディングロードでは、抜群の走行安定性とキレのあるハンドリングを味わえる。走る楽しさを重視するのであれば、Rラインがベストだ。
ゴルフ8は、静粛性も高い。この部分では、マツダ3ファストバックを上回る。

マツダ3ファストパックのエンジンルーム マツダ3ファストパックのエンジンルーム

マツダ3ファストバックで、ゴルフ8と同等の動力性能なのは、2.0Lガソリン、1.8Lディーゼル、2.0LスカイアクティブXだ。
1.5Lガソリンは街中向けなので、力強さには欠けるが、フロントが軽く軽快感がある。2.0Lガソリンの最大トルクは、ゴルフ8の1.0Lと同等だ。全体的なバランスがよいが、ややエンジン音が賑やかである。高回転まで回したときに、パンチのある加速をするマツダ3ファストバックに対して、ゴルフ8は低回転のトルクで速度を上げていくタイプだ。

最もマツダ3ファストバックに合ったエンジンは、1.8Lディーゼルである。最大トルクは270Nmとゴルフ8の1.5Lより強大だ。しかも、1,600回転という低回転で最大トルクを発生するので、軽くアクセルを踏んでいるだけでも、グイグイと加速する。さすがに、高回転域でのパンチ力は、ゴルフ8の1.5Lが勝るが、ディーゼルなので燃費の良さは抜群だ。軽油は、高価なハイオクガソリンを使用するゴルフ8の1.5Lと比べると大きな燃料費差になる。

ゴルフ8と比べると、最もパワフルなのが2.0LスカイアクティブXだ。世界初のSPCCI技術を採用している。高回転域でのパワフルさは、2.0LスカイアクティブXが勝る。しかし、低速域のトルクでは、ゴルフ8のほうが力強い。街中や高速クルージングでは、ゴルフ8の1.5Lが扱いやすい。

マツダ3ファストバックのハンドリングは、非常に軽快でよく曲がる。ダラっと流して走っている状態でも、車両安定制御のGVC+(Gベクタリングコントロールプラス)により、スムースにカーブを抜けることができる。運転が上手くなったような感覚があった。こうした機能はゴルフ8にはないので、マツダ3ファストバックの美点でもある。

高速域での直進安定性では、若干ゴルフ8が上回る。ガッチリと安定して真っ直ぐ走るので、高速道路では頼りになる。
カーブでは、フロントタイヤの接地感やステアリングホイールに伝わるフィーリングはゴルフ8が勝る。クルマとの一体感もある。
マツダ3ファストバックもなかなか優秀だ。リヤサスペンションは、トーションビームを使うがリヤの接地感も高い。このクラスでは、実力派といえるレベルにある。
荒れた路面はマツダ3ファストバックは苦手としている。リヤサスペンションがややゴツゴツとした突き上げを感じる。乗り心地面も、ゴルフ8が上回る。

8.リセールバリュー比較

ゴルフ8の評価は 3.0
マツダ3ファストバックの評価は 3.5

若干リセールバリューが高くなりそうなマツダ3ファストバック

Cセグメントコンパクトカーは、そこまで人気があるカテゴリーではないため、平均的なリセールバリューとなっている。先代モデルとなるフォルクスワーゲン ゴルフ7の中古車価格は順調に下がっていて、買い得感が出ている。
ゴルフ7の中古車相場は、2019年式という高年式でも200~280万円程度だ。新車価格は、約259~391万円なので、60~110万円くらい安価になっている。
人気のハイラインテックエディションの新車価格は、約353万円。このモデルの中古車は、220~250万円位となっている。新車価格に対して、約2年落ちで100~130万円も安い。
これくらい順調に値落ちが進んでいれば、なかなか買い得感がある。むしろ、新車ではなく中古車の高年式を選んだ方がコストパフォーマンスがよいともいえる。初めての輸入中古車としては、ピッタリなモデルだ。こうした傾向は、ゴルフ8も同様だろう。

マツダ3ファストバックのリセールバリューも、ゴルフ7と同様、順調に中古車価格が下がってきている。
マツダ3ファストバックの2019年式の中古車相場は、190~270万円とかなり幅が広い。新車価格が約218~369万円なので約30~100万円安くなっている。1.5Lの値落ちが非常に少ないこともあり、かなり価格幅が広い。
値落ちが大きいのは、世界初のSPCCI技術を搭載する2.0LスカイアクティブXだ。新車価格は、約320~369万円だ。2年落ちとなる2019年式で、250~280万円位にまで落ちている。新車価格に対して、70~90万円ほど安価だ。
人気の1.8Lディーゼルになると、新車価格は約274~322万円である。中古車相場は、230~270万円ほどだ。新車価格に対して40~50万円程度安くなっている。ディーゼル車の中古車価格が高めだと、リセールバリューも高いということになる。マツダ3ファストバックで、リセールバリューを重視するのであれば、1.8Lディーゼル車がおすすめだ。

ゴルフ8は、まだ出たばかりの新型車なので、リセールバリューが今後どうなるかは分からない。ただ、ゴルフ7と同様な傾向になると仮定すると、リセールバリュー面では、マツダ3ファストバックが若干上回る可能性が高い。

9.まとめ・総合評価

どちらも、10年後がイメージできない

EUは、2035年にガソリン車などの新車販売を禁止する方針を打ち出し、世界中の自動車メーカーが驚愕した。この方針が発表されたことで、より急速に自動車の電動化が進むと予想されている。このまま実施されるなら、あと14年の猶予しかない。
そうした電動化への流れを考えると、フォルクスワーゲン ゴルフ8とマツダ3ファストバック両車ともに、マイルドハイブリッドシステムを搭載したモデルを用意しているものの、電動化へのアプローチが少々物足りない。せめて、ストロングハイブリッドやPHEVなどのアプローチが欲しい。

こうした部分を抜いても、今現在のクルマとしての評価は、なかなか難しい。
デザインに関しては、歴史を重んじで質実剛健にまとめたゴルフ8に対して、マツダ3ファストバックは、日本的なエモーショナルなデザインを重視した。両車の目指す方向性が大きく異なっている。どちらのデザインも素晴らしく、人によって評価は異なる。
ただ、ゴルフ8はデザインにも機能性を持たせ、居住性や荷室の広さで上回っている。マツダ3ファストバックのほうが少しボディサイズが大きいにも拘らず、である。

走行性能では、ゴルフ8が勝る。乗り心地や静粛性、ハンドリングなどが優秀だ。1.0LeTSIのドライバビリティが少々物足りなさを感じる点が残念ではある。
しかし、車両価格面では、マツダ3ファストバックのコストパフォーマンスが圧倒する。

ゴルフ8は、誰にでもおすすめでき、多くの人が満足してもらえる総合力が魅力だ。
マツダ3ファストバックは、デザインや世界初のSPCCI技術を搭載した2.0LスカイアクティブXなど、少々尖った部分に共感できる人向けといえるだろう。

ゴルフ8 マツダ3ファストパック
総合得点(40点満点) 28.5点 28.5点
1.燃費 3.5点 3.5点
2.価格 3.0点 3.5点
3.購入時の値引きしやすさ 3.0点 3.0点
4.デザイン 4.0点 4.5点
5.室内空間と使い勝手 4.0点 3.0点
6.安全装備 4.0点 4.0点
7.走行性能 4.0点 3.5点
8.リセールバリュー 3.0点 3.5点