日産 デイズ vs ダイハツ ムーヴ徹底比較

ハイト系ワゴンのデイズとムーヴを価格や安全装備、広さ、使い勝手などの項目で比較した。
安全装備や室内の広さ、視界の良さを重視するならデイズ、スポーティな走りを望むのならムーヴがおすすめだ。

この記事の目次 CONTENTS
トップレベルの実力をもつ2代目デイズと6代目ムーヴ
1.価格
2. 燃費
3.デザイン・外装
4.内装と使い勝手
5.走行性能
6.安全装備
7.リセールバリュー
8.購入時の値引き術
9.まとめ・総合評価

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

トップレベルの実力をもつ2代目デイズと6代目ムーヴ

日産 デイズとダイハツ ムーヴは、ハイト系ワゴンと呼ばれる軽自動車カテゴリーに属する。
現在、さらに背が高く両側スライドドアをもつスーパーハイト系ワゴンが、最も人気のあるカテゴリーになったが、少し前までハイト系ワゴンが軽自動車の中心にあった。
その結果、軽自動車のなかでもトップクラスの完成度を誇るクルマがほとんどだ。

デイズは、2019年3月にフルモデルチェンジし2代目となった。
日産と三菱の軽自動車における合弁会社NMKVから生まれており、2代目は主に日産が企画・開発を担当し、三菱が生産を担っている。そのため、三菱 eKワゴンとは姉妹車関係にある。

そして、ダイハツ ムーヴは2014年にフルモデルチェンジし6代目となった。ムーヴはダイハツの看板車でもある。
初代は1995年に登場しており、長い歴史をもったモデルだ。
そのため、ダイハツの最新技術を最初に投入されることが多い。

日産 デイズの特徴

初代は、開発を担当した三菱が燃費性能を追求しすぎた結果、燃費不正という問題を引き起こした。
2代目では、日産の開発となり燃費の追求よりも総合性能と先進技術で勝負に出ている。

歩行者検知式自動ブレーキとサイド&カーテンエアバッグは、全車標準装備化されている。
さらに、日産の運転支援技術でもある「プロパイロット」が軽自動車に初採用された。
この「プロパイロット」は、同一車線内を維持しながら先行車に全車速追従走行し、渋滞時の停止&再発進も簡単な操作で行うことができる。
少し前まで高級車の装備だったものが、あっという間に軽自動車でも当り前になったのだ。

また、燃費性能はクラストップとはならなかったが、一般道での使い勝手を重視し、エンジントルクを最大15%もアップした。街中で、より力強く走れるようになった。
2代目のデザインは、基準車の他に、他社のカスタム系に相当するハイウェイスターが用意されている。

ダイハツ ムーヴの特徴

6代目となるムーヴは、「次世代ベストスモール」を目指し、プラットフォーム(車台)を新開発し、基本性能を大幅に向上させている。
これは「軽の走りは頼りない」という顧客の声を真摯に受け止めたことによる。

こうした走りの質を向上させる基本骨格から見直された結果、クラストップレベルのものとなった。
操縦安定性や静粛性は1クラス以上上のレベルになっている。

また、予防安全装備も着実に進化した。
2017年のマイナーチェンジでは、歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備「スマートアシストⅢ」が用意されている。
ダイハツは、安価な価格であることを重視しており、マイルドハイブリッド機能などは採用していない。

1.価格

日産 デイズの評価は4点
ダイハツ ムーヴの評価は3.5点

安全装備が充実しているデイズがややお買い得

デイズの価格は、1,273,320円から、ムーヴは1,112,400円からとなっている。
エントリーグレードの価格を比較すると、随分ムーヴが安い設定になっている。
しかし、デイズには、エントリーグレードでも歩行者検知式自動ブレーキやサイド&カーテンエアバッグなども標準装備化されており、装備差があるためエントリーグレード同士で比較できない。

そこで、同等程度の売れ筋グレードを比較すると、デイズ ハイウェイスターXの価格は1,469,880円、ムーヴ カスタム Xリミテッド SAⅢの価格は、1,490,400円とほぼ互角だ。
しかし、デイズにサイド&カーテンエアバッグが標準装備されていることを考えると、ややお買い得感がある。

2. 燃費

日産 デイズの評価は4点
ダイハツ ムーヴの評価は4点

燃費値ではムーヴが勝つが、実燃費では同等レベル?

2代目日産デイズのエンジンは、計3タイプある。
基準車は660㏄の自然吸気エンジンのみで、燃費は29.4㎞/L(JC08モード)だ。

デイズのエンジン

ハイウェイスターには、自然吸気のマイルドハイブリッドとターボのマイルドハイブリッドが用意されている。
自然吸気のマイルドハイブリッドの燃費は29.8km/Lで、ターボのマイルドハイブリッドは25.2㎞/Lとなっている。

6代目ダイハツ ムーヴには、自然吸気とターボの2タイプが用意されている。
自然吸気エンジンの燃費は31.0㎞/Lで、ターボは27.4㎞/Lとなった。

ムーヴのエンジン

燃費値だけで見ると、マイルドハイブリッドを搭載するデイズよりもムーヴの燃費が優れていることが分かる。
初代デイズが三菱による燃費不正があったことから、少々厳しい基準での燃費測定になったようだ。

また、デイズとムーヴでは、最大トルクの発生回転数が異なる。
自然吸気エンジンでは、デイズが3600回転なのに対して、ムーヴは5200回転となっている。
デイズの方が、エンジンの回転数を上げず、より低回転域で力強い走りが可能なので、実燃費は比較的よい方向に作用するだろう。

3.デザイン・外装

日産 デイズの評価は4点
ダイハツ ムーヴの評価は4点

スッキリ、スポーティなデイズハイウェイスター

デイズには、女性を意識した少しカワイイ系デザインである基準車と、スポーティなルックスルのハイウェイスターが用意されている。
今までどのメーカーも、基準車のターゲットは女性であったことから、カワイイ系デザインでまとめていた。
しかし、最近では基準車にスポーティなデザインを採用するのがトレンドだ。

デイズの基準車も押し出し感のあるVモーショングリルを使用するなどし、存在感を高めている。
ハイウェイスターは、ライバル車のカスタム系とはひと味違うスタンスでデザインされている。

ライバル車のカスタム系は、とにかく大きな顔と押し出し感、そしてLEDを使ったギラギラ感を重視してきた。
それが売れるカスタム系の顔だったからだ。
しかし、ハイウェイスターは、大型のVモーショングリルやLEDを駆使しながらも意外なほどサッパリとしたスッキリ系フェイスとなった。
品のあるスポーティさが魅力だ。
ライバル車のカスタム系が好みという人には、少々物足りないかもしれない。

元祖ギラギラ迫力系のムーヴカスタム

ダイハツ ムーヴのデザインも、基準車は女性をターゲットにしながら、なかなかスポーティなデザインでまとめている。大きめのヘッドライトも迫力がある。

そして、ムーヴカスタムは元祖ギラギラ迫力系フェイスで、とにかく目立つことに重点が置かれているのが特徴だ。
押し出し感や迫力も十分で、LED系のパーツを積極的に使用している。
当時はまだ、軽自動車にあまりLEDが使われていなかったこともあり、注目度は高く、夜もひと目でムーヴカスタムと分かるギラギラ感で人気を得ていた。

4.内装と使い勝手

日産 デイズの評価は4点
ダイハツ ムーヴの評価は3.5点

デイズは9インチモニター採用で視認性◎

デイズは、フルモデルチェンジし新プラットフォーム(車台)が採用されたことにより、ホイールベースは先代比+65mmの2495mmとなった。

このホイールベースの長さはクラストップレベルで、室内スペースに直結し、後席ニールームは+70mm拡大した。
これにより、後席の広さもクラストップレベルの余裕ある広さを実現している。

また、センターコンソール上部に9インチモニターが採用された。

設置場所が高いことにより視線移動が少なくなり、安全運転にも寄与する。
また、モニターそのものも9インチという大型で視認性が高く、使い勝手もよい。

オートエアコン装着車のコントロールパネルは、先代同様にタッチ式だ。
高級感があるのだが、操作性という面では少々物足りない。
揺れる車内で的確に操作するのは難しく、ブライドタッチも用意ではないからだ。
結果的に、指先を注視するようになり前方監視を怠るリスクが高まる。

約90度開くドアの使い勝手が抜群のムーヴ

ダイハツ ムーヴのホイールベースは2455mmとなっている。
デイズと比べるとやや短いのだが、室内スペースは十分といった印象で、それほど狭さは感じない。

また、ナビなどのモニターもセンターコンソール上部に設置されており見やすい。
ただ、デイズが9インチなのに対して、ムーヴは8インチとなる。

ムーヴのエアコン操作パネルは、オーソドックスなダイヤル式だ。ダイヤルも大きく、ブラインドタッチでも用意にコントロールできて使いやすい。
また、ムーヴのフロントドアとリヤドアは約90°開くため、乗り降りや大きな荷物の出し入れも容易だ。

5.走行性能

日産 デイズの評価は4点
ダイハツ ムーヴの評価は4.5点

デイズは快適性重視

デイズハイウェイスターに搭載されているのは、660㏄の自然吸気マイルドハイブリッドとターボのマイルドハイブリッドだ。
自然吸気エンジンは52ps&60Nmを発揮、ターボは64ps&100Nmとなっている。
両エンジン共に、最大トルクの発生回転数がムーヴより低いため、なかなかパワフルな印象だ。街中でも走りやすい。
とくに、ターボ車は力強いだけでなく直進安定性も高い。
高速道路でも余裕で高い速度域を維持しながらクルージングできる。

プロパイロットを使えば、疲労軽減にもつながりロングツーリングも苦にならない。
ターボ車は、静粛性も高かった。
また、快適性重視のサスペンションセッティングになっているため、ひとクラス上の乗り心地で、なかなか快適だ。
ただし、ハイウェイスターのターボ車で走りを楽しみたいという人には、少々物足りないかもしれない。

気持ちの良い走りが堪能できるムーヴ

ムーヴは、走行性能のレベルを上がるために、基本骨格から見直されている。
その走りはなかなか秀逸で、基準車でも少々硬いと感じる乗り心地だ。
タイヤのゴツゴツ感もしっかりと感じるものの、ステアリング操作に忠実に反応する。
カーブでのクルマの傾きも適度に抑えられており、気持ちよく走ることが可能だ。

ムーヴのエンジンは2タイプあり、自然吸気エンジンは52ps&60Nm、ターボ車は64ps&92Nmだ。
低速トルクをやや細く感じる部分があり、自然吸気エンジンはアクセルを踏み込みがちになる。
ターボ車には、RSと呼ばれるスポーティグレードがあり、これが格別な走りを見せる。
このグレードのみ専用のスポーティサスペンションが装備され、より操縦安定性を重視している。
さらに、15インチアルミホイールも装備し、キビキビしたハンドリングと高い旋回スピードを誇る。

6.安全装備

日産 デイズの評価は4.5点
ダイハツ ムーヴの評価は3.5点

デイズはサイド&カーテンエアバッグを標準装備化

デイズは最新モデルということもあり、充実した安全装備になっている。
全車標準装備化されているのは、歩行者検知式自動ブレーキ、車線逸脱防止支援、踏み間違い衝突防止アシスト、サイド&カーテンエアバッグなどで、どのグレードを買っても安心できる安全性能を備えている。

さらに、運転支援機能が欲しいのであれば、同一車線内を維持しながら、全車速で前走車に追従するプロパイロットも用意されている。
高速道路でのクルージングや渋滞時の疲労軽減に効果があり、結果的に安全運転に貢献できる機能だ。

また、軽自動車初となるSOSコールがオプション設定されている。
SOSコールは、専用ボタンを押すとオペレーターに自動で交信ができ、事故時などでは警察への連絡や救急車の手配などを行ってくれる。
さらに、エアバッグなどが開くような事故でドライバーの意識が無い場合は、事故の衝撃などを自動で判別し、救急車やドクターヘリの手配まで行ってくれる。
一部の高級車に装備されていたサービスだったが、ついに軽自動車にまで用意された。
ただし、費用は少々高めとなる。

自動ブレーキが標準装備化されていないムーヴ

ムーヴの設計は少し古いため、安全装備面では少々物足りない部分がある。
まず、歩行者検知式自動ブレーキや誤発進抑制制御などがセットになった「スマートアシストⅢ」が、一部グレードに標準装備化されていないのだ。

ホンダや日産は標準装備化を進めているが、ダイハツとスズキは安価であることが安全より重要として、標準装備化が遅れている。

また、サイド&カーテンエアバッグが標準装備化されていないし、一部グレードにのみオプション装着が可能となっている。

7.リセールバリュー

日産 デイズの評価は3.5点
ダイハツ ムーヴの評価は3点

ムーヴにはマイナス要因となる未使用車が多い

ハイト系ワゴンの軽自動車は、中古車でも人気が高く、リセールバリューも高めで推移している。
売却時は、ディーラー下取りだけでなく買取店も使い、より高値で買取ってくれるところで売却するといいだろう。

デイズでより高いリセールバリューが期待できるのは、人気の中心となるハイウェイスター系だ。
リーフの色が異なるツートンカラーや9インチナビ、プロパイロットが装備されていれば、さらにプラス査定になる。

ムーヴのなかでより高いリセールバリューが期待できるのは、カスタム系だ。
カスタム系では、よりスタイリッシュでスポーティな仕様になっているRS系が高値傾向にある。
純正ナビ装着車やブラック系のボディカラーなら、さらに高いリセールバリューになるだろう。

ただし、ムーヴには若干マイナス要因がある。それが、未使用車の多さだ。
未使用車とは、メーカーやディーラーの都合により自社名で届出した車両だ。
届出しただけなので、ほとんど新車コンディションなのだが、中古車扱いになる。
そのため、未使用車は新車価格より大幅に低い価格で売られる。

すると、高年式車は中古車価格を下げるしかなくなり、リセールバリューも下がるのだ。
このような背景もあり、ムーヴの場合、新車から3年以内での売却だと、リセールバリューが少し低めになるだろう。

今のクルマを高く売る方法は?軽自動車は売り時が大切

軽自動車の場合、とくに重要なのが売却時期だ。
一番ホットな時期が1~3月で、1年のうち一番の繁忙期でもある。
この時期は、オークション会場も活気にあふれ、多くの中古車店が繁忙期に店頭に並べる商品を仕入れるため、中古車相場は上がる傾向にある。
さらに、新年度に向けて、新卒や新サラリーマンの需要が高まり、軽自動車がとても売れる時期でもあるのだ。
このタイミングに合わせれば、さらに高値で買取ってもらえる可能性が高くなる。

8.購入時の値引き術

日産 デイズの評価は3点
ダイハツ ムーヴの評価は4.5点

ムーヴは未使用車狙いがおすすめ

2019年に同じクラスのライバル車、ホンダ N-WGNが登場した。
デイズは2019年3月にデビューした新型車だが、ライバル車の出現と増税前の駆け込み需要が重なると、少しでも販売台数を伸ばしたいと考え、若干の値引きが行われる可能性が高い。
当然、その流れは10月の増税後も続くだろう。
ただ、何もしなければ、現状のように値引きは限りなくゼロに近い。
フルモデルチェンジしたN-WGNやムーヴ、ワゴンRなどの見積りを取り競争させることが重要だ。

ムーヴはすでにデビューから随分経過しており、他の車と競合させただけで一定の値引き額が期待できる。

また、ムーヴを購入するであれば、外せないのが未使用車だ。
ダイハツはムーヴの未使用車を大量に市場へ送り出している。
自分好みのグレードや色、装備を装着した車両が見つかれば、価格面で大きなメリットになる。
さらに、異なる中古車店で未使用車同士を競合させるのも有効だ。値引きが加われば、お買い得感は大幅にアップする。

9.まとめ・総合評価

日産 デイズの合計評価は31点/40点
ダイハツ ムーヴの合計評価は30.5点/40点

安全重視ならデイズ、かっこよさ重視ならムーヴ

デイズとムーヴの評価は、買い手のニーズによって変わる。

まず、安全性能という点では、デイズがおすすめだ。
歩行者検知式自動ブレーキとサイド&カーテンエアバッグなどがすべてのグレードに標準装備されているので安心して乗れる。
プロパイロットのような運転支援が欲しいときもデイズを選択すると良い。
また、9インチのモニターの見やすさや後席の広さ、室内の質感などもわずかながらムーヴを上回る。デイズは設計が新しい分、全体的にやや有利な印象だ。

もちろん、ムーヴにもよいところはある。
カスタムのフェイスデザインは、ハイウェイスターと比べると迫力がある。
さらに、夜になるとLEDが存在感を増すため、とにかく目立ちたいというであればムーヴカスタムが魅力的だ。
また、スポーティな走りが好きというのであれば、ムーヴがよい。
ややかための乗り心地となるが、キビキビ感はデイズを上回る。とくに、カスタムのRS系は、その傾向が強い。