ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMWの中でもお値段が高めの兄弟SAV

BMWのクルマはドライバーをワクワクさせるような操舵性、元気な走りが大きな魅力であるが、その良さは大きめのSAV(Sport Activity Vehicle、BMWは自社のSUVを他社のものと差別化してこう呼んでいる)になるとより深く感じられる。

少々値段も高いX3とX5だが、よりコストパフォーマンスが高いのはどちらか。比較してみたい。

X5人気を受けて誕生した弟分、X3

X3_外観_正面

X3は2004年に登場したSAVで、昨年フルモデルチェンジを経て3代目となった。元々はX5が人気になったことから続けて開発されたクルマであり、まさにX5の弟分といえる。

大きさとしてはミッドサイズに近いコンパクトSUVだが、小さすぎることもなく、かといって大きすぎるということもなく、実用性が高い。

●サイズ:全長4,720mm×全幅1,890mm×全高1,675mm
●燃費:13.5km/L(ベースモデルX3 xDrive20iの場合)
●新車価格:639万円~

BMW自慢のプレミアムSAV、X5

BMW X5 外観

X5は北米でのSUVブームをきっかけに2000年に登場し、2013年のフルモデルチェンジで3代目となっている。SAVの中では歴史の長さも大きさも一番の兄貴分だ。

販売価格は900万円台からとかなりお高いものの、たくましさだけでなく、高級感も味わえるプレミアムSAVに仕上がっている。

●サイズ:全長4,910mm×全幅1,940mm×全高1,760mm
●燃費:14.0km/L(ベースモデルX5 xDrive35d SE、ディーゼルエンジンモデルの場合)
      10.0km/L(X5 xDrive 35i、ガソリンエンジンモデルの場合)
●新車価格:920万円~

見た目は同じだが、車内に違いがある

近年、BMWのSAVシリーズはあまりエクステリアに大きな違いがなくなっている。X3とX5もほとんどエクステリアに違いはなく、X5に特別な高級感が溢れているとは言い難い。

インテリアについても両者は似ており、どちらも無駄のない、すっきりとした空間が広がっている。ただし、X5は素材そのものがグレードアップされており、フロントシートにシートヒーターを標準装備するなど、プレミアムSAVとしての差別化が行われている。

また、X5の場合は乗車定員も5人乗りと7人乗りで選択できる。7人乗りの場合は3列目が追加され、リアシートに狭さが出てしまうが、大人数で乗車する頻度が多い人には嬉しいオプションである。

使い勝手を考えるなら圧倒的にX3が便利

7人乗りSUVがあるモデル

プレミアムSAVとして魅力のあるX5だが、日本での使い勝手を考えれば難しい点も多い。

日本の駐車スペースは長さ5,000mm×幅2,500mmが基準となっていることが多いが、この時点でX5の全長はギリギリである。また、日本の平均的な道幅は3,700mmと言われ、クルマ同士のすれ違いを考えれば車幅は1,800mm以下が望ましい。

X3でも少々車幅が広めであるが、まだ生活に大きな支障はない。都心部になるほど駐車スペースや道幅が少なくなる上、立体駐車場では車高に関しても制限が出てくるので、X5は日本向きでないだろう。

ベースモデルでも直列6気筒を楽しめるX5

SUVに期待したいのがアグレッシブで勢いのある走りだろう。

エンジンを比較すると、X3は全モデルに直列4気筒エンジンを採用している。これに対してX5はベースモデルでも直列6気筒エンジンを搭載しており、さらにV型8気筒エンジンを搭載した上位モデルも用意されている。

大きさがある分だけ加速力を感じにくいX5だが、その大きさからは考えられない機敏な動きとクルマと一体化したような操舵性が魅力となっている。ライバルと比較してもアグレッシブな走りが目立つクルマの一つで、力強く前進していく。

X3も軽快な走りと操舵性を楽しめるが、X5とパワーを比べてしまうとその差は歴然としている。

パワーユニットを考えても日本にフィットしやすいX3

X3_外観_後ろ

パワーユニットの選択肢の豊富さは、X5が勝っている。X5は2種類のガソリンエンジン、1種類のディーゼルエンジン、さらに1種類のプラグインハイブリッドから成っている。

一方、X3はディーゼルエンジンとガソリンエンジン1種類ずつのみであり、どちらも同じエンジンを採用している。

しかし、X5の場合はベースモデルがディーゼルエンジンを採用しており、ガソリンエンジン車が主流の日本においてはディーゼルエンジンモデルが不安だという人もいるだろう。上位モデルを選べば当然価格も高くなるので、X5はあくまで外国車に乗り慣れている人におすすめしたい。

とにかくお金がかかるX5

X5の購入を考えている人は、初期投資だけでなく維持費についてもしっかりお金がかかることをよく考えなければいけない。

まず、購入時点で新車を購入する場合、最低でも車両本体が920万円する。さらに、X5は良い意味でもX3よりかなりオプション装備が豊富に存在する。プレミアムSAVならではの魅力的な装備が多いので、ついあれもこれもと手が出やすい。

維持費については、車検などの費用はもちろんのこと、給油代もかなりかかる。ガソリンエンジンモデルで燃費を比較しても、X5はX3より3割増し程度のガソリン代がかかると見込む必要がある。国産車で低燃費のクルマが増える中、10.0km/L前後の燃費は痛手だ。

安全性能はX3でも十分安心できる

X3_インパネ

X3とX5の安全装備は多少違いがある。例えば、X3は「ドライビング・アシスト」が標準装備されているが、X5はさらに上級のシステム「ドライビング・アシスト・プラス」を標準装備しており、自動走行機能が装備されている。

しかし、X3でも安全性能は十分安心できるだろう。「ドライビング・アシスト」には車線逸脱警告システムなど事故を未然に防ぐための機能が備えられており、自動走行機能が欲しい場合はオプションで装備することもできる。安全性能の差でX5を選ぶ必要はない。

安くお得に買いたいならなら中古でも検討を

X3とX5の差はX1とX3に比べると大きい。X5に乗るのは金銭的にも環境的にもそれなりに勇気がいる選択となるが、引き換えにパワー溢れる走りが得られる。しかし、使い勝手を考えればX3を選ぶ方が妥当だろう。

どちらにしても、決して安い買い物ではない。X3でも600万円台と新車価格がお高いので、ぜひ中古での購入も検討してもらいたい。X3についてはフルモデルチェンジを経たばかりで、今ならば3代目と大きく劣らない2代目の相場価格が下がっている。

X5についても、維持費が高い分だけ初期投資となる購入費を抑えられる中古がおすすめだ。オプションでも価格が吊り上がっていくことを考えれば、中古で良い条件の一台が見つかるかもしれない。