この記事の目次 CONTENTS
BMW7シリーズとアウディA8
最新デバイスが豊富なアウディA8のインテリア
エンジンが豊富なBMW7シリーズ、独特なアウディA8
パワーはどちらも申し分ない
安全性能では新しいBMW7シリーズが有利
新車は1000万円越えなので納得できる買い物を

ライター紹介

CAR-TOPICS編集長

村田 創 氏

大学卒業後新車ディーラーにて5年勤務。その後、中古車のガリバーへ入社。車一筋20年以上のベテランが新車から中古車まで幅広く解説します。

BMW7シリーズとアウディA8

ドイツの高級車メーカーとして知られるBMW7シリーズ、そして国内で年々存在感を表しているアウディA8。どちらもFセグメントに属する各社のフラッグシップモデルであり、持てるすべてを詰め込んだ看板としての役割も大きい。各ブランドの底力が見えるこの2台を比較してみたい。

BMWの頂点に君臨する7シリーズ

BMWの頂点に君臨する7シリーズ

7シリーズは1977年に初代が誕生して以来、40年にわたって販売され続けているBMWの大型セダン。現行モデルは2015年から発売される第6世代で、BMWの頂点に君臨するモデルである。

ボディタイプはセダンのみだが、パワートレインはガソリン、ディーゼル、ハイブリッドの3種類をラインナップ。スポーティ仕様のMスポーツ、豪華仕様のエクセレンスといったグレードを用意している。

アウディ最上級モデルのA8

BMW  外観

アウディA8は、1994年にデビューしたアウディの最上級セダン。一見歴史が浅いと感じるかもしれないが、1988年に誕生したアウディV8の後続モデルであることを考えると、こちらも歴史は長い。

アウディのA4、A6などのモデルはセダンとアバント(ワゴン)の両方が用意されているのだが、このA8に関してはセダンのみの展開。パワートレインもガソリンのみで、グレードは3.0TFSI、4.0FTSI、4.0TFSI LWB3種類のシンプルな設定である。

最新デバイスが豊富なアウディA8のインテリア

ブランドの顔としての役割が大きいフラッグシップモデル。それだけにインテリアや装備も、そのブランドが持つ最高レベルのものが投入される。

そういう目で7シリーズのインテリアを見ると、BMWの空間デザイン力が大きく向上したことをしみじみと感じさせられる。いい意味でBMWとは思えない、高級感をたたえた空間に仕上がっているのだ。レザーシート、パーツ類などこだわった素材が使われているのはもちろん、間接照明による演出もなかなか巧み。それでいて、ドライバー重視の設計という、BMWの根幹は何一つ揺らいでいない。

ただ、さらにその上を行くのがアウディのA8。

最近日本でもアウディの人気が高いのはそのデザイン力の拠るところも大きいが、そんなアウディのデザインが惜しげもなく披露されているのがこのA8なのだ。インパネにふんだんに使われた液晶、存在感のある木目のオーナメントパネルなど豪華な素材を用いながら、まとまりのあるスタイルに仕上げている。長年にわたりデザインにこだわってきたアウディに、一日の長があるといっていいだろう。

アウディ A8 内装

ワイドで精悍なBMW7シリーズ、シンプルで革新的なアウディA8

そんなアウディデザインは、エクステリアにも生きている。隅々まで行きわたるクラフツマンシップによって、シンプルなデザインの中にも気品を備えた佇まいになっている。大きなボディだけにともすれば重たく見えてしまう大型セダンに、洗練されたスタイルをもたらしている辺りは流石はアウディである。

ただ、大きなボディをものともしないスポーティさという点ではBMWも負けていない。アウディが上品な機能美を中心にしたスタイルだとしたら、BMWは精悍で力強いエクステリアに仕上がっている。

フロントビューでは前へ突き進むような顔立ち、サイドビューでは曲線によって美しいシルエットを形成、リヤビューでは力強さが感じられる。強調されたシンボルのキドニーグリル、ショートオーバーハングなどの伝統を保持しながら、フロントヘッドランプやリヤコンビランプには先鋭的なLEDを採用するなど、伝統と先進性が見事にマッチしている。

エンジンが豊富なBMW7シリーズ、独特なアウディA8

フラッグシップモデルとして、ブランドの矜持が見えるもう一つのポイントは、クルマの心臓ともいわれるエンジンだろう。それぞれのエンジン展開は以下の通りだが、ダウンサイジングが叫ばれるこのご時世に合って、どちらも6リッターを超える排気量のエンジンを残しているのはフラッグシップモデルならでは。

BMW7シリーズ
・2.0リッター直列4気筒DOHCターボ
・3.0リッター直列6気筒DOHCターボ
・4.4リッターV型8気筒DOHCツインターボ
・6.6リッターV型12気筒DOHCツインターボ

アウディA8
・3.0リッターV型8気筒DOHCスーパーチャージャー
・4.0リッターV型8気筒DOHCバイターボ
・6.3リッターW型12気筒DOHC

BMWのエンジンには、新開発の「ツインパワーターボエンジン」が搭載されている。これによりスポーティでダイナミックな走りを楽しむことができる。そのため、どのエンジンを選んでも燃費、加速、パワーなど、期待を裏切ることはないだろう。

アウディのエンジンは最近驚かされることが多いが、それはこのA8でも例外ではない。例えば、V型エンジンを横に並べたようなW型エンジンや電気式スーパーチャージャーのバイターボが搭載されている。他社とは違った試みがユニークで、力強い走りを楽しめる。

フラッグシップモデルも燃費を求められる時代に

燃費性能というと、以前は維持費を少しでも安くしたい人のためのチェックポイントという色が濃かった。ただ最近では、高級車でも「低燃費であるのが当たり前」というトレンドが色濃い。

そんな考え方はBMW7シリーズやアウディA8にも反映されており、7シリーズのガソリン車は、JC08モードでリッター7.6~12.2km。対するアウディA8の燃費は、同じくJC08モードで8.9~12.5km/Lとなかなかの低燃費。

特にBMWの7シリーズは、ディーゼルやプラグインハイブリッドも展開するなど、ラインナップが充実している。このディーゼルエンジンはBMWらしい走りもたのしめ、かつ環境にも優しいという優れもの。ディーゼルだからと敬遠せず、検討してみてほしい。

パワーはどちらも申し分ない

いくら環境性能が高くとも、それでパワーが犠牲になるのであれば元も子もない。大きなボディを走らせるためにもそれなりのパワーが必要だが、それについてはどちらも申し分ない。

例えば7シリーズの「740i」は最高出力326ps、最大トルク45.9kg・m、同じくA8の「3.0FTSI」は最高出力310ps、最大トルク44.9kg・mとかなりいい勝負をしている。

軽快な走りのBMW7シリーズ、静粛性のアウディA8

BMW  外観

そんなエンジンを積んだ7シリーズ。走らせてみると、大きなボディを感じさせない、跳ねるようなスタートとキレの良いハンドリングが楽しめる。カーボン素材を用いたボディは軽く、それでいてしなやかなので、路面の状態をしっかり伝えつつも、不快な振動はカットしてくれている。BMW初の前後エアサスペンションも、乗り心地の向上に一役買っている。

同じフラッグシップモデルでも、アウディは「快適さ」を重視した設計。滑らかな加速、そして素直なハンドリングで、すっと高速域に突入していく。車内はかなり静かで、ロードノイズはほとんど感じられない静寂性。運転する楽しさという点では今一つかもしれないが、車内で会話を楽しむ、あるいは後部座席で静かにリラックスしたい人にはピッタリの走りだ。

安全性能では新しいBMW7シリーズが有利

近年、めまぐるしい成長を遂げている安全性能。今までとは少し毛色が異なる技術力が試されるが、日進月歩の技術だけに、モデルチェンジのたびにその機能に驚くところも大きい。

7シリーズがモデルチェンジをした際には、半自動運転機能で大きな注目を集めた。クルマのあらゆる部分に取り付けたレーダーやカメラで、安全で快適なドライブをサポートしてくれている。例えばドライバーがクルマから降りた状態で自動で駐車できるなど、人がハンドルを手放す日も遠くはないのではと思わせてくれる。

それと比べると、アウディのA8はやや物足りない。夜間視界補助装置のナイトビジョンシステム、視認性の高いマトリックスLEDライトなどは用意されているものの、半自動で運転するような技術は含まれていない。

次々と新しい技術が生まれる領域だけに、2015年にモデルチェンジをむかえたBMW7シリーズの方が充実しているのは仕方ないだろう。アウディA8は2018年にモデルチェンジをするといわれており、自動運転の技術開発がどこまで進んでいるか注目されている。

BMWの頂点に君臨する7シリーズ

新車は1000万円越えなので納得できる買い物を

BMWの7シリーズとアウディのA8。どちらもブランドを象徴するフラッグシップモデルだけに、ブランドが持てる全てが詰め込まれている。しかしそれだけに、新車だとなかなか手が届かない価格設定なのもまた事実。1000万円を超えるスタート価格に、検討すらせずに諦めてしまう人も多い。

ただ、新車とはいわば「プレミア」が付いた状態。中古車、そして「新古車」とも呼ばれる未使用車を視野に入れると、リーズナブルに購入できるようになり、特に上位モデルほどその傾向は強い。

BMWの7シリーズは2015年にモデルチェンジをしているため、そろそろ現行モデルの中古車も増えてくるころ。高級車だけに状態も良いクルマが多いので、ディーラーに行く前の交渉材料もかねて、まずは中古車の価格や在庫を見てみるのも良いだろう。