日本にマッチしたクルマではないため、一時撤退したハイラックス


トヨタ ハイラックストヨタは、13年ぶりにピックアップトラックの「ハイラックス」をフルモデルチェンジ。ハイラックスは、これで8代目となった。




  1. 目次
  2. ■ 存在感を失うピックアップトラック

  3. ■ 13年ぶりの導入は、SUVブームに乗るため?

  4. ■ やはり、日本向けじゃない! まさかの最小回転半径6.4m

  5. ■ インテリアの質感も高く、高級な仕上がり

  6. ■ アイドリングストップ機能が無いため燃費は物足りない

  7. ■ 電子制御技術も加わり、圧倒的な悪路走破性能をもつ

  8. ■ トヨタ ハイラックスの選び方

  9. ■ 高めのリセールバリューが期待できる

  10. ■ トヨタ ハイラックス価格


存在感を失うピックアップトラック


8代目新型トヨタ ハイラックスが、一時期姿を消していたのには色々な訳がある。まず、日本の道路整備はよいので、ハイラックスのような本格的な4WD性能を必要とする場所が少ない。そして、重要な荷物を積むという点では、ハイラックスのダブルキャブで積載量500㎏と少なく物足りない。日本には、1トン程度の積載が可能で屋根があるハイエースのようなワンボックスの方が使い勝手がよく、ハイラックスのようなピックアップトラックは存在感を失っていた。

日本から撤退せざるを得ないハイラックス

また、ライフスタイルの表現として、こうしたピックアップトラックを趣味のクルマとして使うという顧客もいた。しかし、全長が5mを超え、車検は1年毎、高速道路の料金も高くなるなど、個人所有ではデメリットが大きい。また、色々な日本の法規に対応させるためには、多額のコストがかかるなどの理由もあり、ハイラックスは日本マーケットから撤退した。

13年ぶりの導入は、SUVブームに乗るため?


トヨタ ハイラックスただ、ハイラックスは1968年の発売開始以来、約180の国および地域で販売され、累計世界販売台数は約1,730万台と、発展途上国を中心に世界各国で売られている。そのため、ハイラックスはタイで生産されている。

タイは右ハンドルなので、日本マーケットに対応させやすいというメリットがある。フルモデルチェンジのタイミングで、最初から日本の法規に合致させ開発すれば、コストも抑えられる。そうなれば、日本へ輸入することも容易だ。

個性派にはピッタリの一台

しかも、世界中でSUVがブーム。既存のSUVは、悪路走破性ではなくセダンの延長線上にあり、ラグジュアリー感やスポーティさを求められている。ハイラックスのようなピックアップトラックとは、方向性が異なるが、既存のSUVでは物足りないと考える個性派にはピッタリな1台ともいえる。

また、三菱は過去に同じピックアップトラックであるトライトンを限定車とし、何度かタイから日本に導入している。トライトンは、台数の少ない限定車ということもあり、すぐに完売。つまり、たくさん売れるクラスではないが、一定の販売台数が見込めるという成果がでている。SUVブームに上手く乗ることができれば、一定の販売台数が見込めるということもあり、13年ぶりの導入になったのだろう。

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やはり、日本向けじゃない! まさかの最小回転半径6.4m


トヨタ ハイラックス新型ハイラックスの外観デザインは、「タフ&エモーショナル」をコンセプトに、迫力と躍動感を表現。車両後方が荷台という部分を除けば、今時のSUVっぽい洗練されたフロントフェイスが印象的だ。

ハイラックスのボディサイズは、とにかく大きい。全長5,335×全幅1,855×全高1,800㎜となっている。さすがに、これだけ長い全長になると、ショッピングモールやコンビニの駐車場などの駐車枠から少々はみ出してしまうだろう。

さらに、これだけ大きいうえに、最小回転半径が6.4m! 駐車場で駐車しにくいだけでなく、狭い路地では曲がれないというレベルに達している。実用面では、かなり制約を受けることは確実で、実際に乗るには使いにくいことを覚悟する必要がある。

インテリアの質感も高く、高級な仕上がり


トヨタ ハイラックス日本仕様のハイラックスは、かなり上級仕様となっている。インテリアの質感も高い。

日本仕様は、シンプルな設定だ。ダブルキャブの4WD車のみが導入された。後席は、グレードにより6:4分割もしくは一体式のチップアップシートが装備。荷室は、最大積載量500㎏となっている。

高いレベルの安全性能

ピックアップトラックということもあり、安全装備に関してはあまり期待していなかったが、ハイラックスの安全性能はなかなか高いレベルにある。歩行者検知式自動ブレーキ車線逸脱警報ドライブスタートコントロールがZグレードに標準装備化。また、サイド&カーテン、ニーエアバッグは全車に標準装備化されている。

アイドリングストップ機能が無いため燃費は物足りない


トヨタ ハイラックスハイラックスに搭載されたエンジンは、2.4Lディーゼルエンジン「2GD-FTV」型のみ。可変ノズル式ターボチャージャーや空冷式インタークーラー、コモンレール式燃料噴射システムなどの採用により、150ps&400Nmを発揮する。

日本の排ガス規制をパスしただけあり、DPR(排出ガス浄化装置)や尿素SCRシステムなど高価なシステムが採用されている。ここまでやりながら、なんとアイドリングストップ機能は用意されていない。CO2の排出量減は、環境保護のため世界的に求められている。せめて、アイドリングストップ機能くらいは装備してから日本に導入すべきだ。アイドリングストップ機能が無いため、燃費は11.8㎞/Lに止まっている。

電子制御技術も加わり、圧倒的な悪路走破性能をもつ4WD機能


トヨタ ハイラックスハイラックスは、全車4WDのみの設定となっている。この4WDシステムは、ダイヤル操作で駆動方式を選択できるパートタイム4WDだ。やや古臭い感じが残るが、ダイヤル式トランスファー切替スイッチが用意されており、H2、H4、L4の3つから選択できる。

不整地や滑りやす路面で快適性と走破性を両立

H2は、市街地や高速道路などで、静粛性や燃費性能に優れた2輪駆動。H4は、不整地や滑りやすい路面で快適性と走破性を両立する4WD。L4は、滑りやすい悪路など低速時となる。

4WDの機能を生かしているのが、伝統のリジッド式リヤサスペンション。さらに、この4WDに電子制御技術も加わった。ヒルスタートアシストコントロールやアクティブトラクションコントロール、ダウンヒルアシストコントロールなどが装備され、ハイラックスは様々な路面状況に応じて駆動力を制御することが可能となっている。

ハイラックスの悪路走破性能は圧巻。人が歩くのも容易ではないような場所でも、ハイラックスなら何事もなかったように走行することが可能だ。日本では無用の長物に近いハイパフォーマンスぶりだ。実際にこうした使い方をしなくても、いざとなればこの圧倒的な走破性能を使えるということが、ハイラックスを買う理由にもなっている。

トヨタ ハイラックスの選び方


トヨタ ハイラックスハイラックスは、エンジンは2.4Lディーゼルのみで駆動方式も4WDのみ。ボディは、ダブルキャブのみとなっている。選択肢が無いので、あとはグレード選びだけになる。

グレードは2タイプでXとZが設定された。エントリーグレードのハイラックXの価格は3,267,000円。ハイラックZの価格は3,742,200円となっおり、グレード間の価格差は約48万円だ。

このXとZの違いは明確で、安価なXは豪華装備を排したビジネス用。対してZは、豪華装備や安全装備を装着した個人のレジャーでも使える仕様となっている。

トヨタ ハイラックス仕事で使うといのであれば、Xで十分っといったところ。個人で使う場合は、他の選択肢がないのでZ一択ということになる。Zの場合は、歩行者検知式自動ブレーキやエアバッグ類も標準装備化されているので、安心して乗れる仕様になっている。また、LEDヘッドライトやオートエアコンも標準装備。オプションもナビくらいしか設定がない。Zの4WDの機能は、さらに高性能になっており、Xに比べアクティブトラクションコントロール、ダウンヒルアシストコントロール(DAC)制御、リヤデフロックが追加されている。

高めのリセールバリューが期待できる


13年ぶりの登場ということもあり、ハイラックスのリセールバリューは予想しにくい。限定で導入され、流通量が少ない三菱トライトンは高値維持。こうした傾向から、ハイラックスも同様に高めのリセールバリューが期待できる。ただ、トライトンのように限定ではないので、トライトン並みのリセールバリューを維持できるは微妙なところだ。SUVのリセールバリューも全般的に高めなので、ハイラックスもリセールバリューが一般的なクルマのように低くなるとは考えにくい。短期間での乗り換えても、あまり損をしないモデルといえるだろう。

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トヨタ ハイラックス価格


トヨタ ハイラックスの価格は以下の通り。

・ハイラックスX 3,267,000円
・ハイラックスZ 3,742,200円

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◇執筆者プロフィール◇
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。

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