• カムリ REVIEW 新旧比較レビュー

トヨタの基幹車種として歴史の長いカムリが2017年にフルモデルチェンジした。これまで、米国では販売台数No1のタイトルを獲得しているカムリだが、日本での売れ行きはイマイチだった。新型である10代目カムリは、33.4km/Lという圧倒的な低燃費で登場するなど、最新テクノロジーが満載。新型が登場した今、旧型カムリはかなりお買い得。そんなカムリの旧型と新型を比較してみた。

比較レビューのまとめ

  1. エモーショナルなデザインの10代目、コンサバな9代目
  2. 歩行者検知式自動ブレーキを含む先進予防安全装備が標準装備化された10代目カムリは、安全性能で9代目を大幅に凌駕
  3. TNGA採用で走りの質感も圧倒する10代目カムリ。9代目も遜色ない走行性能クラストップレベルの実力を誇る10代目カムリ。コストパフォーマンスに優れる9代目

トヨタ カムリ概要

10代目となるトヨタ カムリは、2017年7月に登場した。トヨタのセダンとしては、歴史ある車種だ。グローバルモデルとして高い人気を誇っており、米国では15年連続乗用車販売台数No.1を獲得。100カ国以上の国や地域で販売し、累計で1,800万台を超える人気モデルだ。まさに、トヨタの基幹モデルといえる。

カムリ新旧比較


米国で販売台数1位のカムリが日本で売れない理由


しかし、残念ながら日本ではあまり売れていない。その理由はいくつかあるが、まず北米をメインとしたモデルで、全幅が広いなど日本マーケットにマッチしたモデルではないこと。また、国内で日本マーケットのニーズを色濃く反映させた、ほぼ国内専用車で看板車種のクラウンがある。国産セダン=クラウンというイメージが圧倒的に強い。


10代目となったカムリは、従来通り北米色の強いクルマであることに変わりはない。しかし、基幹車種ということもあり、最新のテクノロジーが搭載されている。まず、このクラスでは初となるTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれるプラットフォーム(車台)が採用された。そして、熱効率を最大限まで引き上げ、2.5L車ながら33.4㎞/Lという低燃費を達成したハイブリッドシステムも搭載されている。走行性能と低燃費を両立しており、かなりレベルの高いセダンとなった。

カムリ新旧比較

燃費&使い勝手比較

9代目、10代目カムリとも、国内には2.5Lのハイブリッド車しか導入されていない。9代目カムリの燃費は23.4㎞/L、10代目の売れ筋グレードの燃費は28.4㎞/Lとなっている。多少見劣りするものの、今でも十分に高い水準にある燃費値だ。
ボディサイズは、両車ともワイドで1,800㎜を超える。9代目は1,825㎜なのに対して、10代目は1,840㎜とさらにワイドになっている。どちらも、狭い道ではやや扱いにくい。
特に、使い勝手面で注意したいのは最小回転半径だ。9代目は5.5mと標準的なのに対して、新型は5.7mとアルファードなどの大型ミニバン並み。さらに、18インチホイール装着車を選ぶと、もはやありえないような5.9mという最小回転半径になり、日本の狭い駐車場では、かなり扱いにくくなる。

カムリ新旧比較

コンセプト&エクステリア比較

カムリというクルマは、良くも悪くも歴代モデルが共通するデザインフィロソフィがない。欧州車などは、従来のデザインに対してリスペクトがあり、共通したデザインフィロソフィが脈々と受け継がれる傾向がある。しかし、カムリにはこうした考え方がなく、車名は同じでもまったく異なるデザインになる。とくに、9代目と10代目は、そうした傾向がかなり顕著に表れている。そのため、どちらのデザインが好みか、という選択になるだろう。

コンサバな9代目カムリ

9代目カムリは、とにかくコンサバなデザインだ。地味さの中に高級感をアピールするタイプで、飽きのこないデザインともいえる。Cd値は0.28と、当時のこのクラスのセダンとしては優れた空力性能をもつ。

エモーショナルな10代目カムリ

10代目カムリは、とにかくエモーショナルであることが重要視されたデザインだ。クーペのようなサイドビューにワイド&ローなフォルムなど、最新のトレンドを取り入れている。フロントフェイスのアンダーグリルには、アメリカンドレスアップの定番であるビレッドグリル風のデザインが採用されていて、かなりコッテリとした顔になった。

カムリ新旧比較

インテリア&装備比較

インテリアは、外観デザイン同様9代目は水平基調でシンプルなデザイン。対する10代目も水平基調のデザインだが、滑らかに流れるようなデザインが施された継ぎ目のないセンターコンソールの金属調加飾などがあり、なかなかラグジュアリーな空間に仕上げられている。

安全装備比較

10代目カムリ

10代目カムリには、歩行者検知式自動ブレーキ▶︎▶︎を含む先進予防安全装備「トヨタセーフティセンスP」が標準装備化された。これで、ようやく一定の高級車としての安全性能を手に入れたことになる。ただし、後側方の車両を検知し警告を発するブラインドスポットモニター▶︎▶︎や、後退時に接近する車両を検知し警告するリヤクロストラフィックアラート▶︎▶︎、前後に障害物がある場合、自動ブレーキで衝突を回避するインテリジェントクリアランスソナーなどの、肝心な安全装備はオプション設定と詰めの甘さが目立つ。もはや、コンパクトカーにも標準装備化されている安全装備なので、10代目カムリを選ぶ場合、こうした安全装備が装着されたモデルを選びたい。

9代目カムリ

9代目カムリは、初期モデルからサイド&カーテンエアバッグとニーエアバッグ▶︎▶︎を含む先進予防安全装備「トヨタセーフティセンスP」が標準装備化された。これで、ようやく一定の高級車としての安全性能を手に入れたことになる。ただし、後側方の車両を検知し警告を発するブラインドスポットモニター▶︎▶︎が標準装備化されている。しかし、追突被害軽減ブレーキなどは2014年のマイナーチェンジ以降からオプションで設定されている。より安全性を重視するなら、プリクラッシュセーフティシステムが搭載されたモデルが良い。前走車追従式のレーダークルーズコントロールやブラインドスポットモニターなどもセットで装備されている。

走行性能&メカニズム比較


TNGAと新ハイブリッドシステムにより、優れた動的質感をもつ10代目カムリ

TNGAによる低重心化された新プラットフォーム(車台)により、10代目カムリの運動性能は飛躍的に向上した。また、リヤサスペンションがダブルウィッシュボーン式にグレードアップされていることもあり、なかなか快適で気持ちの良い走りを披露する。動的質感は、圧倒的に10代目が優れる。また、新ハイブリッドシステムとなったことで、33.4㎞/Lという低燃費を実現している。ただ、この燃費を達成しているのはエントリーグレードのみ。売れ筋グレードは28.4㎞/Lとなっている。
9代目のハイブリッドシステムは、ややアクセル操作に対してダイレクト感に欠けていたが、新型ハイブリッドシステムは大幅に改善されていて、気持ちの良い走りをアシストしている。

走りは新型には負けるが、燃費は未だトップレベルの9代目


9代目カムリの走りは、さすがに10代目と比べると分が悪い。だが、一般的なFF車としはよくできているだけに、走りの質感は古いといった印象はそれほどない。意外としっかりとした走りが魅力で静粛性も高い。ハイブリッドシステムも旧型になったとはいえ、燃費性能は23.4㎞/Lと未だトップレベルだ。

おすすめは新型カムリ?
それとも旧型カムリ?

性能で選ぶなら10代目。コストパフォーマンスなら9代目

デザインが気に入っていて、予算がたっぷりあり、とにかくパフォーマンス重視というのなら間違いなく10代目カムリを選ぶといい。燃費や走行性能など、満足度は非常に高い。ただし、18インチホイール装着車は最小回転半径が5.9mとなるため、狭い道路や駐車場には近付かないということが前提になる。

9代目カムリは、良いクルマなのだが、人気が今ひとつだったこともあり、中古車価格はリーズナブル。2012年式だと140~180万円前後で手に入れることができる。新車価格の半額くらいの価格だ。多くのグレードがGパッケージ以上なので、装備面でも十分といったところ。プリクラッシュセーフティシステムが用意されたマイナーチェンジ後の2014年式くらいになると、価格は200~230万円といったところ。
しばらくすれば、下取りに入った旧型カムリが多く流通して価格がもう少し下がる可能性が高いので、買い得感はもう少し出てくるだろう。燃費性能も十分なので、コストパフォーマンスを重視するのであれば9代目という選択もありだ。

カムリの値引き術

10代目カムリは、新型車だが従来のモデルがそれほど売れたモデルではないので、意外とガードは甘いようだ。当たり前だが、カムリが本命であることがすぐにわかる状態での商談では大幅値引きは期待できない。そこで、必ずライバル車と競合させることが重要だ。10代目カムリの価格帯は、約350~420万円。同じ価格帯の国産ライバル車は、ほとんど見当たらない。少なくともホンダ アコードハイブリッドとは競合させたい。

競合させる輸入車と商談の進め方


フォルクスワーゲン パサートや場合によっては、メルセデス・ベンツCクラスBMW3シリーズなどの中古車と競合させてみるのもいいだろう。カムリは本命ではないという姿勢を崩さないこと。カムリとアコードハイブリッドは、北米でもライバル車。先にアコードハイブリッドの見積もりを取っておくことが重要。2.0Lということもあり、量販グレードの燃費はアコードハイブリッドの方が上回っていることなどをアピールしながら、長期戦に持ち込むといいだろう。価格次第では、カムリという選択肢があるということも、さり気なくアピールすることも忘れてはいけない。また、購入時期も重要。値引きが拡大する時期は、2~3月、6~7月、9月となる

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下取り車は、買取り店で査定すること

そして、値引きと共に重要なのが下取り車の処理だ。下取り車がトヨタ車なら、トヨタ側もかなり気合の入った下取り価格が提示される可能性が高い。ただし、トヨタ車以外では、それほど期待しないほうがよい。他社の下取り車は、自社の中古車店で販売することがあまりできないため、高価買取が難しくなるからだ。
トヨタ車であったとしても、きちんと相場を理解しておかないと、営業マンの術中にはまる。下取り車の価格を安くし、値引き額をアップしたように見せるなど、技は多彩だ。

営業マンの術中にはまらないようにするためには、必ず買取り店で査定しておきたい。買取り店は、そもそも下取り価格より高く買い取れなかったら存在価値がない。つまり、買取店の価格が相場▶︎▶︎の目安となる。ここでの価格をひとつの目安として、商談すれば営業マンの術中にはまるリスクも低くなるはずだ。下取り車は最終的に、一番高価なところで売ればいい。

新旧カムリ 比較ギャラリー

クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。
日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員