歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「トヨタ セーフティセンスP」を標準装備化


トヨタ プリウストヨタは、人気ハイブリッドカーのプリウスに特別仕様車 S“Safety Plus”を設定し発売を開始した。

プリウスの歴史


プリウスは、2015年12月にデビュー。先代プリウスとは全く異なる個性的なデザインとなって登場した。プリウスの誇る燃費は、世界トップレベルの40.8㎞/Lとなった。しかし、この燃費値を誇るグレードは、ほとんど売れない一部の特殊なグレード。確かに40.8㎞/Lという燃費値は驚異的だが、一般的な売れ筋グレードでは、大きく燃費値は下がり37.2㎞/Lとなっている。まぁ、この37.2㎞/Lと言う燃費値も非常に優れたもの。宣伝用に使うためなのか、わざわざ40.0㎞/L台に乗せるために、燃費スペシャルな専用グレードを開発しなくてもいいようにも思えるくらいだ。

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先代プリウスが大ヒットモデルとなったことから、新型プリウスも当然のように大ヒットモデルとなった。2016年1~6月の販売台数は約14万台。車種別の販売台数ランキングでは、堂々の1位。2位のアクアが約9万台なので、その差は圧倒的だ。

売れている要因は、優れた燃費値。さらに、より個性的なデザインとなったことや、トヨタの新プラットフォームTNGA(トヨタ ニュー グローバル アーキテクチャー)の採用による運動性能が大幅に向上。さらに、歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備「トヨタ セーフティセンスP」が用意されたことなどがあげられる。つまり、クルマの重要な要素である燃費・デザイン・安全性が非常に高いレベルにまとめられているのだ。ただし、価格という要素はあまり高く評価できるレベルには無く、先代よりも高価になり、もはや高級車の領域に入っている。プリウスは、その高い人気から発売からしばらく長い納期待ちが続いていたが、最近はようやく落ち着いてきたようで、一般的な納期になってきた。

トヨタプリウスそんなプリウスに新設定された特別仕様車がS“Safety Plus”。この特別仕様車は、「S」グレードをベースに、歩行者検知機能付衝突回避支援型プリクラッシュセーフティ、全車速追従機能付のレーダークルーズコントロールをはじめ4つの先進安全機能をセットにした衝突回避支援パッケージ「トヨタ セーフティセンスP」や、インテリジェントクリアランスソナー、シンプルインテリジェントパーキングアシスト、カラーヘッドアップディスプレイ、LEDフロントフォグランプ、などを安全装備を充実させている。さらに、ナビレディセットも装備している。

特別仕様車S“Safety Plus”の価格は2,693,520円。ベースのSグレードに比べると、約21万円高価な価格設定となっている。プラスされた装備で、オプション価格が分かるものは、トヨタ セーフティセンスPが86,400円、LEDフロントフォグランプが21,600円、ナビレディセットが32,400円なので、これで約14万円分だ。その他の装備が約7万円で装備できるということになる。ややお買い得といえる価格設定といえるだろう。この特別仕様車の装備は、上級グレードの「A」に近い仕様になっているのも特徴。Aグレードに、オプションのナビレディセットを加えると約281万円。特別仕様車との価格差は約12万円だ。

プリウスは、先代プリウスに比べやや高価になった。そのため、それなりに装備の充実したAグレードを選ぼうとすると約281万円の高額車になる。ナビなどのオプションが加われば、300万円オーバーという高級車だ。それでは、高価過ぎるということで、1グレード上のAにかなり近い装備としながら、価格は約12万円安いという価格設定にし、買い得感があるようにみせているのが今回の特別仕様車ということになる。

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トヨタプリウスただし、AとSでは決定的な違いがある。Aには高価で高性能なリチウムイオンバッテリーが使われているのに対して、Sは従来のニッケルバッテリーとなっている。細かい部分で差はあるのだが、実際の走りでは大差がない印象。さらに、燃費も同じ37.2㎞/Lなので、とくにこだわりのない顧客にとっては安い方が良いということになる。

また歩行者検知式自動ブレーキ関連の安全装備トヨタセーフティセンスPへのニーズが、想像以上に高かったのだろう。プリウスのSグレードには、トヨタ セーフティセンスPがオプション設定となっていて、非常に物足りない安全性能となっていたからだ。日産はすでに全車標準装備化を進めているのに、トヨタはナゼ? と、なるのは当然だろう。それも、プリウスくらい高額な車種になれば、標準装備化は当たり前ともいえる。数十万円もするような高額な装備であるならともかく、わずか86,400円のオプションだ。トヨタは、安全に関して「交通死亡事故ゼロを目指す」としているが、そうした思想とはまったく逆の設定となっているのが残念だ。ましてや、トヨタは世界トップレベルの販売台数を誇るメーカーだ。本気になって全車標準装備化すれば、コストダウンはどのメーカーよりも早くできるはずだ。

欧州の予防安全アセスメントであるEURO NCAPでは、もはや歩行者検知式の自動ブレーキが標準装備化されていないと好成績が期待できない仕組みになりつつある。いずれ欧州では、プリウスも標準装備化されると予想できる。それなのに、母国である日本でいつまでもオプション設定というのでは、安全に関しての意識が低いとしか思えない状況だ。もちろん、こうした状況なのはトヨタだけではない。

つまり、プリウスは安全性能が大きく異なる2タイプのクルマが売られていることになる。顧客側も、単に安いからといってSグレード系を買うのは避けた方がよい。一度歩行者との衝突事故を起こしてしまえば、トヨタセーフティセンスPのオプション価格86,400円でさえ安いと思えるだろう。また、反応も鈍くなり、視野が狭くなっている高齢者ならなおさらだ。買うならこの特別仕様車S“Safety Plus”より上のグレードか、Sグレード
系でもオプションでトヨタセーフティセンスPを必ず選択したい。そうした視点からみると、高い安全性能と利便性を兼ね備えた特別仕様車S“Safety Plus”は、バランスの取れたお勧めグレードといえる。

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価格


2WD 2,693,520円
E-Four(電気式四輪駆動) 2,887,920円

執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。