フルモデルチェンジで、自動で車線変更が可能に! 自動運転化に向けた運転支援技術「ドライブパイロット」搭載


メルセデス・ベンツEクラスメルセデス・ベンツは、Eクラスをフルモデルチェンジし発売を開始した。Eクラスは、このモデルで5代目となる。

先代Eクラスは、2009年にデビューし2013年にマイナーチェンジを実施した。このマイナーチェンジは、外装の大幅変更だけでなく、レーダーセンサーやステレオマルチパーパスカメラを使い部分自動運転を実現した「レーダーセーフティ」を標準装備した。レーダーセーフティは、世界トップレベルの安全装備といえるもので、Eクラスはライバルを圧倒する安全性を手に入れた。

そして、新型Eクラスは、先代のレーダーセーフティをさらに進化させた新技術「ドライブパイロット」を搭載した。この技術は、自動運転化へ向けて、さらに1歩進んだ運転支援技術だ。まず、先行車との車間距離のみならず周囲の交通状況(車両、ガードレール等車線と平行に位置する物体)を常に監視。従来よりもステアリングアシストが作動する状況が大幅に拡大している。車線などが分かりにくかったり、表示されていない場合でも、自動で先行車に追従するようになった。高速道路上で渋滞追従では、完全停止後30秒以内であれば自動再発進が可能となっている。アクセルやスイッチなどの操作が必要なくなった。今までの機能でも十分だったが、ドライバーが自ら操作する部分が少し減ったことになり、ドライバーにかかる負担をさらに軽減してくれている。

アクティブレーンチェンジングアシストとは

そして、最も注目したい機能が「アクティブレーンチェンジングアシスト」だ。メルセデス・ベンツ初の技術となる。この機能は、まずドライバーがウインカーを2秒以上点滅させる。すると、システムが多くのセンサーを使い行き先の車線に車両がいないことを確認。その後、自動で車線変更してくれる。ただし、日本の混んだ交通環境では、なかなか使う機会がない。安全重視であることから、熟練ドライバーのようにスイスイと車線変更する訳ではなく、ある程度空いた道路環境でないと機能しない。もちろん、ドライバー自身が後方や前方の安全確認をする必要があるので、熟練ドライバーなら自ら操作したほうが早い。それでも、前後の車線確認はシステムがフォローしてくれるので、初心者や高齢者など、運転技術が未熟な場合や、夜間など視界が悪いときなどに起きやすい接触事故などを未然に防いでくれる効果があるので、ドライバーが安心してクルマに乗れるようになる。自動運転というより、こちらも運転支援技術だ。

メルセデス・ベンツEクラスまた、高速道路などをドライブパイロットを使用し走行。走行中にドライバーが、何らかの理由で気を失ってしまったなど、万が一の場合には、自動的に車線を維持しながら緩やかに減速・停止する「アクティブエマージェンシーストップアシスト」が世界で初めて搭載された。作動速度範囲は約80~180km/hで一般道での利用不可となっている。

自動ブレーキ関連の技術も機能強化が施されている。渋滞末尾で回避操作を行う空間的余裕がない危険な状況を検知し、通常よりはるかに早い段階でブレーキを自動で作動させる機能をメルセデスとして初めて搭載した。

衝突安全技術も進化しているのもメルセデス・ベンツらしいところ。PRE-SAFEインパルスサイドと呼ばれる技術は、フロントバンパー外側のレーダーセンサーが、側面衝突が不可避であることを検知すると、衝突側前席バックレストのサイドサポートに内蔵されたエアチャンバーが瞬時に膨張。乗員をドアから遠ざけることで、衝撃の軽減を図る。サイド&カーテンエアバッグなども連携することで、側面衝突に対してより高い安全性を確保する。この機能も世界初だ。

また、耳への被害軽減も行っている。こちらも世界初となる安全装備。PRE-SAFEサウンドとよばれるシステムは、不可避の衝突を検知すると、車両のスピーカーから鼓膜の振動を抑制する音を発生。鼓膜の振動を内耳に伝えるあぶみ骨筋の反射収縮反応を引き起こし、この収縮によって、衝撃音の内耳への伝達を軽減するというものだ。守れるものは、何でも守ろうという安全に対する高い意識を感じさせる。

メルセデス・ベンツEクラス新型Eクラスは、単に自動運転化へ向けた運転支援装備の充実だけでなく、さらなる高い安全性を重視している。まさに、世界トップレベルの安全性能をもったクルマと言っていい。

こうした自動運転化への技術や高い安全装備をもち、近未来のクルマとしたEクラスだが、パワーユニットはまったく未来感がない。新型Eクラスに搭載されるのは、2.0L直4ターボがE200系に搭載。184ps&300Nmを発生し、燃費は14.7㎞/Lだ。3.5L V6ターボエンジン車は、E400系に搭載され、333ps&480Nmを発揮する。燃費は、現在審査中。

そして、今後の主流となるのは新型2.0L直4クリーンディーゼルエンジンを搭載したE220d系だ。最高出力143kW(195PS)、最大トルク400N・m(40.8kg・m)を発生。燃費は審査中だ。

今回のラインアップは、かなり排気量のダウンサイジングが進んでいる。E400の1グレードを除き、すべてが4気筒エンジンとなった。メルセデス・ベンツの顧客の中には、排気量の大きさこそがオーナーのステータスと考える人が多かった。もはや、そうした考えは古いことを輸入元となるメルセデス・ベンツ・ジャパンがアピールしているようにも感じる。まぁ、大排気量のガソリン車ということなら、AMGモデルを買ってくださいということになるのだろう。

このように、パワーユニットは相変わらず化石由来の燃料を使うことがメインとなっている。自動運転化や高度な安全装備に比べ、パワーユニットだけが大きく取り残されている感が残る。そろそろ、電動化されたモデルのラインアップ拡充や、化石由来の燃料に頼らないパワーユニットに期待したいところだ。

Eクラスのデザイン


さて、新型Eクラスの外観は、マイナーチェンジ後の先代モデルとフロントフェイスはとくに区別がつかないくらいだ。よく見ると違うのだが、並べてみなくては分からないくらいだ。ホイールベースは、65㎜伸びた。その効果で、新型の方が伸びやかでスタイリッシュになった感じがある。リヤビューは、旧型とは違うデザイン。しかし、SクラスやCクラスと共通するリヤコンビネーションランプを装備したおかげで、遠目から見るとSなのかEなのか、それともCなのか分かりにくい。

メルセデス・ベンツEクラスインテリアデザインは、旧型と比べると大きく変更されている。セグメント初となる2つの高精細12.3インチワイドディスプレイを設定された。この2つのディスプレイを一枚のガラスカバーで融合したコックピットディスプレイは、空中に浮かんでいるように見え、インテリアデザインの水平方向の流れを強調する中心要素となっている。とても大きいディスプレイなので、視認性は抜群。

また、水平基調だった旧型に対して、翼を広げたような優雅さがあるインパネまわりのデザインとなった。より広く感じるデザイン。そして、ラグジュアリー感あふれる高品質なマテリアルが組み合わされ、非常に高級感あふれるインテリア空間になった。

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新型メルセデス・ベンツEクラスの価格は6,750,000円から。新型Eクラスは、優れた安全装備や先進装備は全車標準装備。この進化した部分を含めれば、実質値下げと言ってもいい。先代Eクラスより買い得感は高い。Eクラスを買うすべての顧客に平等の安全装備とした点は、非常に高く評価したいポイントだ。こうした部分が、メルセデス・ベンツは安全というイメージをより浸透させている。結果的に、メルセデス・ベンツは高くても価値があると顧客に判断される。しかし、国産メーカーの多くは優れた安全装備があってもオプション化する傾向が強い。交通事故死を減らすことをほとんどの自動車メーカーが企業理念として掲げているものの、実際の商品は「お金をたくさん出した人だけが安全」というクルマをリリースする。見事なまでに本音と建前を使い分けている。こうした部分を高所得者は頭がいいので、軽く見抜いている。自らプレミアムブランドと言っていても、やっぱり日本車はメルセデス・ベンツと比べると・・・。と、なるのは当然だろう。

もちろん、メルセデス・ベンツも世界中で同じ仕様ではない。ドイツ本国では、日本仕様ほど標準装備化されていない。本国でオプション装備されているものでさえ日本仕様では標準装備されているのは、日本の輸入元であるメルセデス・ベンツ・ジャパンの英断だ。クルマは使い方を間違うと、人を殺すことがある商品だ。そうした商品を売っている自動車メーカーは、自らの商品で事故を減らすような技術を積極的に採用する社会的な責任がある。本国内のメルセデス・ベンツすべてがこうした設定にはなっていないが、すべてのグレードに最高の安全装備を標準装備化したことは、メルセデス・ベンツ・ジャパンの安全思想は非常に高いレベルにあることを意味する。こうした設定を続け、より幅の広い車種に広げていくことで、最終的に日本におけるメルセデス・ベンツの安全イメージをより強固にしていくことができる。

リセールバリューを考慮するならクリーンディーゼルを選ぼう

クリーンディーゼル車の人気が高まっていることから、リセールバリューが高くなることが予想される。クリーンディーゼル車は、ガソリン車に対して23万円高い設定となっているが、エコカー減税が免税。さらに、ランニングコスト面では、ハイオク仕様のガソリン車に対して燃費が良いだけでなく、軽油は30円/L前後安い。距離を走る人ほど、購入時の価格差はドンドンと縮まりお得になっていく。恐らく数年で元は取れるレベルだろう。これで、リセールバリューも今後差が出てくれば、ディーゼル車はさらにお買い得になるだろう。

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メルセデス・ベンツEクラス価格


・E 200 アバンギャルド ¥6,750,000
・E 200 4MATIC アバンギャルド ¥6,980,000
・E 220 d アバンギャルド ¥6,980,000
・E 200 アバンギャルド スポーツ ¥7,270,000
・E 220 d アバンギャルド スポーツ ¥7,500,000
・E 250 アバンギャルド スポーツ ¥7,560,000
・E 400 4MATIC エクスクルーシブ ¥9,880,000

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。