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< 一部改良の摩訶不思議! 重くて大きいミニバンなのに、なぜ歩行者検知ができない自動ブレーキを装着?>
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トヨタ ノア&ヴォクシーは、2014年1月にフルモデルチェンジした。このモデルから、5ナンバーミニバン初となる本格的なハイブリッドシステムを搭載。そして、やや遅れてエスクァイアが2014年10月デビュー。この3台は、すべて基本的に同じクルマ。各モデルとも若干デザインや方向性を変え、トヨタの全チャネルでこの3姉妹のミニバンの内どれかが発売されている。一時期こうした派生車は、効率が悪いということから発売していなかったが、販売店の要望に屈し全チャネルで販売することとなった。つまり、販売店にとって売れて利益も高い車種であるということだ。
こうした3姉妹ミニバンが属する5ナンバーミニバンには、ホンダ ステップワゴンに日産セレナがあるが、3姉妹化したことで最近ではトヨタミニバン三姉妹が圧倒的な販売台数を誇る。2015年の販売台数は、ヴォクシーが約9.3万台、ノアが約5.4万台、エスクァイアが5.9万台を販売。3姉妹のトータルは20.6万台にもなる。対して、ステップワゴンは約5.4万台。セレナ は約6.2万台となっていて、完全にトヨタ勢の圧勝だ。本来なら、ステップワゴンが新型になったばかりなので、もう少し販売を伸ばしたいところだが、モデル末期のセレナにも負けている状況だ。
トヨタ ミニバン3姉妹が圧勝している理由は、徹底してマーケットインのクルマであるからだ。トヨタは、こうしたミニバンに求められる要素を徹底的に研究。マーケティングから得られた結果をクルマに織り込んでいる。クルマを物理的な考え方で見ると、背が高いクルマは不安定になり、操縦安定性が悪くなる。そのため、フロアを低くし全高を下げ低重心し、走行安定性を高める方向に舵を切る。しかし、トヨタミニバン3姉妹は、フロアを低くするものの全体に低重心化させるが、なるべく全高を低くしないという選択をする。これは、ミニバンはスペースや大きく見えることが重要というマーケットのニーズからだ。また、ノアまでアクの強い強面系に変化したのも、先代ノアが優しい顔つきだったためヴォクシーほど売れなかったという結果がでたからだ。つまり、大きく見えて強面系のデザインでないとミニバンは売れないということなのだ。
その他、インテリアもできるだけ豪華に見える、ハイブリッドで燃費をアップするなどの要素が取り入れられている。まさに、売れない理由が見つからないほどの徹底ぶり。ある意味、そこのトヨタ側の「ミニバンはこうあるべき」というこだわりは無い。こだわりが強すぎたステップワゴンは、フルモデルチェンジしたものの今ひとつ売れない状況が続いている。
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当然、王者トヨタミニバン3姉妹は、価格を抑えたお買い得な特別仕様車は投入してこなかった。その代りに、今後の売れ筋となるだろうエアロ仕様のハイブリッド車ヴォクシー「ZS」、ノア「Si」を追加設定してきた。フロント大型バンパー(メッキ加飾)やフロントフェンダーをはじめとした専用エアロパーツに加え、専用16インチ軽量・高剛性の鍛造アルミホイールを装備したモデルだ。
従来のノア&ヴォクシーのハイブリッド車には、こうしたエアロモデルの設定が無かった。間違いなく売れるはずのグレードが設定されていなかったのには訳があった。デビュー当時の話では、エアロモデルは車重が重くなり、トヨタ側が目標とした燃費値が出ないとのことだった。プリウスαをベースとした1.8Lのハイブリッドシステムでは、ミニバン級の車重では非効率ギリギリということだったのだ。そこで、エアロモデルにして車重が増えると、燃費は悪化。ガソリン車との差が少なくなれば、だれも高価なハイブリッド車など買わなくなる。こうした理由から、デビュー当時はエアロモデルの設定が無かったのだ。
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さて、ハイブリッドのヴォクシー「ZS」、ノア「Si」の価格は3,229,200円。今までのトップグレードに対して、約12万円高となった。エアロパーツは装備されたが、クルーズコントロール、リヤオートエアコン、快適温熱シートは、従来のV、Gグレードに対し、外されている装備があるので購入時は注意が必要だ。こうした装備を省いてまで価格を下げたいのにも訳がある。アルファード&ヴェルファイアのハイブリッド車は、価格を高く設定し過ぎ思っていたほど売れていないからだ。
今回の改良では、摩訶不思議な改良も施されている。トヨタの自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスCがガソリン車の一部を除き全車に標準装備された。今まで遅れていた自動ブレーキ関連の安全装備を、ほぼ標準装備化したことは評価できる。ただし、装備されたのがコンパクトカーなど、軽く安価な価格帯の自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスCであるということだ。
トヨタミニバン3姉妹の車重は、アクアなどのコンパクトカーに比べると、ザックリ500kgも重い。当たり前だが、同じ速度でもより重いクルマが衝突するほど衝撃は大きくなる。歩行者にとっても同じで、同じ速度なら大きく重いクルマほど、歩行者に対するダメージも大きい。それも、トヨタ ミニバン3姉妹より軽いプリウスが歩行者検知式自動ブレーキであるトヨタ セーフティセンスPが装備されているのに、トヨタ ミニバン3姉妹には歩行者検知式自動ブレーキではないトヨタ セーフティセンスCが装備されてしまったのだ。
ライバル車に目を移すと、ステップワゴンやセレナも歩行者検知式自動ブレーキが装備されているのに・・・。
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つまり、ノア&ヴォクシーは日本専用車なので日本のJNCAP高得点が期待できる。日本専用車なのでEURO NCAPのように厳しい条件での評価をされ公表されることはない。現状のやや緩いJNCAPの評価さえ良ければよいという判断があったのでは? と、疑ってしまうほどだ。また、こうした自動ブレーキが装備されていなくてもトヨタ ミニバン3姉妹は売れに売れた。顧客は安全装備など気にしていない、というマーケティング数値でもあったのかもしれない。スバルは逆に、歩行者検知式自動ブレーキであるアイサイトの標準装備するグレードを増やす傾向にある。どちらの会社も「交通死亡ゼロを目指す」としているから不思議だ。
さて、エスクァイアには特別仕様車「Black-Tailored(ブラック テーラード)」が加わった。「Gi」グレードをベースに、ブラックを基調とした内外装デザインを採用。ダークメッキを施したフロントグリルやフロントフォグランプベゼルに加え、スモークメッキを施したボンネットフードモールやリヤガーニッシュを特別装備した。エスクァイアは、ノア&ヴォクシーより高級感をアピールしてきたモデル。その高級感をより鮮明にし差別化した格好だ。
インテリアは、ルーフやピラーガーニッシュをブラックとした。助手席オーナメントやドアトリムオーナメントにアクセントとしてピンキッシュゴールドを施したほか、専用のシート表皮(合成皮革)を採用するなど、インテリアも高級感をアピールする。また、LEDフロントフォグランプの採用や、リヤオートエアコンを全車に標準装備。外板色に特別設定色アイスチタニウムマイカメタリックを含む全5色を設定した。
このブラック テーラードの価格は、ハイブリッド車で3,295,963円。ベースのGiグレードに対して、約4万円高となった。プラス装備に対して、ややお買い得な仕様となっている。
■トヨタ ノア&ヴォクシー、エスクァイア価格
・ヴォクシーZS 3,229,200円
・ノアSi 3,229,200円
・エスクァイア特別仕様車Gi“Black-Tailored”2WD 7人乗り 2,955,273円 8人乗り 2,924,837円
・エスクァイア特別仕様車Gi“Black-Tailored”ハイブリッド 2WD 7人乗り 3,295,963円
ノアのカタログ情報
- 現行モデル
- 令和4年1月(2022年1月)〜現在
- 新車時価格
- 267.0万円〜389.0万円
ノアの在庫が現在282件あります
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