フィアット500

<このキャラだからこそ許される微妙なマイナーチェンジ>

フィアット500フィアットは、個性派コンパクトカーのフィアット500をマイナーチェンジし発売を開始した。

フィアット500は、チンクエチェント(500)とも呼ばれ2008年に日本デビューした。先代が生産中止されてから、約30年の時を経て再びデビューしたことから、世界中で話題となる。日本では、先代500がアニメ「ルパン三世」の愛車として有名だった。そんなフィアット500は、すでにデビューから約8年が経過している。2011年には、世界的にも例をみない875㏄直列2気筒ターボのツインエアを投入された。ツインエアは、まるでオートバイのようなエンジンで、今時のクルマとは思えないほどの振動を伴うユニークなモデルだ。まさに、フィアット500でしか出せないほどともいえる荒々しさで、ユニークな500だからこそマーケットに受け入れられた。同時に、さらにフィアット500のユニークさを際立たせたともいえる。

フィアット500は、いつフルモデルチェンジか分からないが、一般的には完全にモデル末期といえる状況。しかし、未だ国内フィアットの販売台数を支えているモデル。この500を主力モデルとして、フィアットは2015年約6,000台を販売した。

フィアット500こうしたロングセラーモデルとなったのは、やはりフィアット500の突出したデザインによるものだろう。未だまったく古臭い印象は無い。それどころか、より愛着がわくデザインになっている。もちろん、それだけでは売れない。フィアット500は、短い期間内に季節感にあった特別仕様車など、こまめに日本マーケットに投入。色々な特別仕様車やボディカラー、仕様がありファンに話題を振りまいている。それはともかく、8年間まったくマイナーチェンジしなかったというのも、ある意味フィアット恐るべしだ。

今回のマイナーチェンジでは、外観とインテリアの変更が行われている。しかし、その変更内容は微小でオーナーでないと分からないほど。それほど、デビュー当時からのデザインにこだわりをもっている。

<外観デザインの変更点>
・ヘッドランプの形状をプロジェクタータイプに変更(Pop のみ、Lounge は変更なし)
・テールランプの形状を変更。ランプ中央部はボディ同色
・フロントバンパーの形状を変更。 フィアットロゴが施されたクロームモール下に横長のモールを追加、バンパー下部の形状を変更
・リアバンパーの形状を変更。これまでテールランプに組み込まれていたバックランプとリアフォグランプを、下部の モールに移設
・TwinAir Lounge のホイールをより高級感のあるデザインに変更

全体的に、それほど大きな違いも無い。すぐに分かるのは横長のモール程度といった印象。ヘッドライトもプロジェクタータイプに変更されたことにより、クリッとした可愛らしさが強調された。

スピーディな変化や変革が求められる時代において、これだけ変わらないというのもスゴイことだ。わずか1年未満で改良をするクルマなどとは対極の位置にある。変わることで深化するクルマもあれば、500のように変わらないことが一番の深化というクルマもある。

フィアット500<インテリアの変更点>

・ステアリングホイールのデザインが変更され、オーディオおよびハンズフリーのコントロール機能を追加
・ドリンクホルダーを改良。 ホルダーの内側にラバーサポートを装着することでドリンクの保持機能を改善
・グローブボックスを新たに装着
・シートをよりファショナブルなデザインに変更

インテリアの変更点は、デザインというより主に使い勝手面の向上といったところ。こちらも外観デザイン同様に、デビュー当時からのデザインを継承している。

同時にフィアット500の魅力のひとつボディカラーも変更された。これまで限定車のみに設定していたミント グリーンとカントリーポリタン イエローを新たに加え、ボサノバ ホワイト、パソドブレ レッド、アイス ホワイト、ブルー ヴォラーレの全6色となった。

フィアット500の価格は、1.2 Popが1,998,000円と変化はないが、その他の車種では若干価格がアップしている。

フィアット500の選び方。500はもはや、このデザインのみで買うクルマといえる。普通のクルマだと思ってはいけない。エンジンは、2タイプで1.2L直4エンジンのポップ、もしくは875㏄の直2ターボのツインエア、どちらかのエンジンを選択することになる。元気に気持ちよく走らせたいのならツインエアがお勧め。ただし、このエンジン年々深化しているとはいえ、国産やドイツ系コンパクトカーとは比べものにならないくらいの大きな振動と騒音を感じる。それを理解したうえで、こうした部分が魅力だと感じる人が買うクルマだ。

1.2Lは、ツインエアに比べると、多少一般の人にも勧められる。力強いほどのパワーは無いが、必要十分といった印象。ただし、こちらもミッションにクセがある。ツインエアと同じく、どちらもAT機能付きの5速シングルクラッチなのだ。国産車のCVTのようなスムースは一切ない。一定のギクシャク感や空走感は覚悟の上買う必要がある。輸入車初心者の人は、まずは試乗してから買うことをお勧めする。

装備面で、上級装備を望むのであれば、ツインエアのラウンジという選択肢しかない。それでも、国産車の上級グレード並みの装備とはいかない。エアコンひとつとっても、ラウンジだけがオートエアコンでその他はマニュアルエアコンだ。

豪華装備はそれほどではないが、安全装備は国産車以上のレベルにある。自動ブレーキこそ用意されていないが、サイドエアバッグにニーエアバッグ、ウインドウエアバッグなどは全車に標準装備されている。また、タイヤ空気圧モニターリングシステムも標準装備している。

価格面では、ツインエアのラウンジを選択すると2,592,000円とかなり高価になる。この価格になると、フォルクスワーゲン ポロのアップグレードパッケージ並み。自動ブレーキや全車速追従式クルーズコントロールなど、先進装備や乗り心地・静粛性など、ほぼ全方位でポロが勝る。よほどフィアット500が好き、というのでなければ、あまりお勧めできない価格と仕様だ。そうなると、500を楽しみたいのなら、シンプルな装備ながらコストパフォーマンスに優れる1.2ポップが最もお勧めなグレードといえるだろう。価格も1,998,000円だ。

ただ、国産コンパクトなどと比べると、フィアット500のリセールバリューは高い。2008年式の初期モデルでも、100万円前後で売られているほどだ。やや価格は高いが、リセールバリューまで考えるとコストパフォーマンスは高くなる。

今回マイナーチェンジしたフィアット500だが、マイナーチェンジ前のモデルが中古車マーケットで未使用車としてそこそこ出回っている。中古車はやや高いが、未使用車は買い得感のある価格が付けられている。デザインもあまり変わった感がないので、こうしたモデルを選んでみるのもいいだろう。

■フィアット500価格
・Fiat 500 1.2 Pop:1,998,000 円

・Fiat 500C 1.2 Pop:2,527,200 円

・Fiat 500 TwinAir Pop:2,289,600 円

・Fiat 500 TwinAir Lounge:2,592,000 円

・Fiat 500C TwinAir Lounge:2,797,200 円