スバル インプレッサ S204

ポルシェとフェラーリと同じ、性能優先のクルマ!

スバル インプレッサ S204

 インプレッサWRXのSTIバージョン自体、世界トップクラスの「尖ったクルマ」である。
 なにしろロールバーやシートベルトなどの安全装備を付け、サスペンション交換するくらいでWRCに出場できるくらいのポテンシャルを持つ。
 しかし「究極のスポーツカーか?」と聞かれれば「少し物足りない部分もありますね」という答えになります。
 スバルが独自に定めた社内基準を満たすとスポーツモデルとしちゃ排気音は静かすぎるし、ブレーキだって利きより寿命を重視しなければらない。
 シート形状も「乗り降りのし易さ」まで考慮しなければならず。メーカーのカタログモデルって、法規以外の様々な制約を受けているのだ。
 じゃ「スバルのSTIバージョン」でなく純粋なSTI製ならどうか?
 こらもう車検が取れる範囲であれば自由なクルマが作れる。ブレーキの寿命だって気にしなくてOK。ポルシェやフェラーリのような性能最優先のクルマだと思えばいい。

専用のタービンやマフラーを装備

スバル インプレッサ S204

 具体的に『S204』の特徴を紹介しよう。
 まずエンジン。ピストンなど可動パーツのバランス取りし、専用のタービンとチタン製のマフラー、専用のコンピューターを組み合わせている。これ、競技車両に限りなく近いモデファイのメニュー。
 足回りも同じく通常のSTIバージョンより数ランク高価なダンパーを使い、入念にセッティング(ウワサによればWRCドライバーの新井選手が仕上げたらしい)。
 ブレーキパッドは寿命や”鳴き”より利きを最優先した素材を採用したそうな。

スバル インプレッサ S204

 インテリアを見ると1脚50万円以上しそうなレカロと共同開発したシートが奢られるなど(S203用は55万5千円で販売された)、なかなかの質感。
 内容のグレードアップに対し、エクステリアは地味か? BBSの18インチ鍛造ホイールと小型のリアウイングを除けば、STIバージョンと見分けられない。
 STIによれば「外観は大人しい方が大人っぽいですから」。

アイドリングしているだけで楽しいって?

スバル インプレッサ S204

 前置きはこのあたりにして試乗と行こう!
クラッチミートして走り出した途端、
「なんじゃこりゃあああぁぁぁ!」
気持ちいい、といしか表現できない!
 2千回転からアクセル全開にすると、5千回転くらいまでグループNのラリー車のようなターボ特有の「トルク出ている太い音」を出しつつグイグイ加速。そこから上の回転域は、高回転型レーシングエンジンの如く軽快な音を響かせレッドゾーンへ飛び込む! 意味もなくシフトアップやシフトダウンをしたくなるほどだ。意外なことにアクセル全開でなくても気持ちよい。
 いや、信号待ちでアイドリングしてるだけで楽しいです。

絶妙なテイストのパフォーマンスダンパー

スバル インプレッサ S204

 ハンドリングだって文句なし! 
『S203』と、新しい『S204』の大きな違いは足回りにある。ダンパーやバネの見直しだけでなく『パフォーマンスダンパー』(ヤマハ製)なる新兵器を採用してるのだ。
 これ、ストラットタワーバーの横棒の途中に高性能ダンパーを組み込んだ、と理解して頂ければいい。コーナーで横からのGを受けたりすると微妙に車体は振動しており、そいつをダンパーで抑えようという作戦。理論的に正しいと思う。試乗してみると、ステアリングインフォメーション(ハンドルを通して伝わる路面感覚)がクッキリした感じ。

S204は大吟醸!?

スバル インプレッサ S204

 S203を吟醸酒だとすれば、S204は大吟醸みたい。そう遠くない将来、STIから普通のインプレッサ用として(パーツ等が)発売される可能性もあるそうな。インプレッサ用だけでなくレガシィ用など欲しいです。
 その他、高性能パッドを採用したブレーキや、ピレリの18インチタイヤも素晴らしい仕上がり。これで価格は480万9千円。標準車より130万円前後高い。けれど内容を考えればお買い得とさえ思う。レカロのシートとチタンのマフラーだけで130万円分の価値あり。他は18インチのBBSを含め全てサービスみたいなものです。

達人プロフィール: 国沢光宏
職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。