車高調とは?調整方法や寿命を整備士が解説

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車高調は、車のアフターパーツとして販売されているものです。
車にこだわる人がよく口にしているのを聞いたことがあるけど、「どんなものなのだろう?」「自分も交換した方が良いのか?」そんな車高調のことを実はよく分かっていないという方に向けて、現役整備士がその必要性や特徴も含めて解説します。

車高調とは?

高調は一言で表すと「車の車高を上げたり下げたりするもの」で、正確には「車高調整式サスペンション」と言います。
車高変更のみならず、スポーツ走行のために交換するなど、目的は人によって異なります。
車高調は、細かく種類が分かれているのでそれぞれ解説します。

車高調の役割

車高調の主な目的は車高を下げることです。(ローダウン)
近年はSUV人気の高まりもあり、車高を上げるために使うユーザーも以前よりかなり増えました(リフトアップ)
また、詳しくは後述しますが、車高調の中には減衰力というダンパーの持つ力を好みに変更できるものあり、乗り心地の改善や乗り味を変えるために、車高調を取り付けるユーザーもいます。

車高調の種類

車高調には大きく分けて以下の3つ種類があります。

  • 車高の調整の仕方
  • 減衰力調整の有無と段数
  • ショックアブソーバーの構造

それぞれのグループの中でさらに幾つか種類が分かれているので、順に紹介します。

車高調整機能は以下の3通りです。

分類 特徴
全長式 高価な車高調に採用されていることが多い。
車高を変えてもショックアブソーバーのストローク量が変化しないのが最大のメリット。ショックアブソーバーの減衰性能が車高に左右されないので、車高を変えても乗り心地が変化しない。
ネジ調整式 車高を変えるとショックアブソーバーのストローク量が変わり、スプリングに加わる力も変わる。よって、車高によって乗り心地が変わってしまう。安価なので購入がしやすいことと、ショックアブソーバーのストローク量が多く取れる設計であることがメリット。
Cリング式 もっとも安価な車高調で、あまり出回っていない。自由に調整できるわけではない。Cリングの位置を、切り欠きに合わせて変更することで数段の車高変更ができる。ネジ調整式と同じで、車高の変化でショックのストローク量もスプリングに加わる力も変化する。
パッと見はノーマルサスペンションに近い見た目をしている。

続いて、減衰についてです。
サスペンションは路面の凸凹に応じて、伸び縮みします。
ショックアブソーバーと呼ばれる部品は、この伸縮による車体の上下方向の揺れを抑える役割があります。(減衰性能)

分類 特徴
減衰調整式 ショックアブソーバーの減衰力を調整する機能がついた車高調です。調整できる段数はさまざまで、3〜5段階のシンプルなものから、30段、50段以上…とかなり細かく調整できるものまであります。
段数が多くなるほど調整できる範囲が広いということではなく、調整できる範囲の中で細かく刻むことができるか、そうでないかの違いです。
減衰固定式 ショックアブソーバーの減衰力の変更ができないシンプルなもので、コストを抑えることができます。
純正のサスペンションも基本的には、減衰力は変更できません。

続いて、ショックアブソーバーの構造で、以下の二通りがあります。

分類 特徴
単筒式 放熱性に優れたシンプルかつチューニングしやすい構造。スポーツタイプのものに採用され、サーキットなどで性能を発揮する。
複筒式 乗り心地に優れる。純正ノーマルのショックアブソーバーは一般的に複筒式。コスト面に優れているが、スポーツ走行には向かず、一般道での使用に向いている。

このように車高調の中にも、用途に応じて様々なタイプがあり、それぞれの組み合わせにより安価なものから高価なものまであります。

車高調はどんな人におすすめ?

車高調は以下のような意図がある人におすすめです。

    • ・サーキットを走る人(スポーツ走行を楽しみたい)

安定した足廻りになりスポーツ走行しやすくなる。減衰調整・車高の変更などを通してタイムアップを狙いたい。

    • ・ローダウンやリフトアップしたい人

見た目を変えたい。ローダウン/リフトアップスプリングのみだと、変化量が物足りない。

    • ・乗り心地を変えたい人

純正のサスペンションが柔らかすぎる、硬すぎる。走行距離が増えて、サスペンションのリフレッシュの時期がきたので、これを機に車高調を考えている。

車高調を付けない方が良い場合は明確な意図がない時

車高調は純正のサスペンションに比べて、耐久性が劣る場合が多いです。
車高調はあくまで社外部品であり、必要に応じてメンテナンスの必要があります。
車高変化を楽しみたい、スポーツ走行したいといった明確な意図がなく、純正のサスペンションの代わりに…と、軽い気持ちであれば、車高調は付けない方が良いです。

車高調の調整方法

車高調の車高の調整方法は、すでに紹介した3つのタイプによって異なります。
また、全長式とネジ式の調整時には付属の専用レンチが必要です。

全長式の調整方法

車高を下げる方法(詳しく見る際はここをクリック)
  • 1.ブラケット(ショックアブソーバーの筒)を固定しているロックシート(下側)を、反時計方向に回して緩める。
  • 2.スプリングの直下にあるスプリングシート及びロックシート(上側にある2枚重なってるもの)を一緒に時計方向に回す。すると、ショックアブソーバー本体が回転して全長が短くなることで車高が下げる。
  • 3.調整後、ロックシートを時計方向に回して規定トルクで締める。

車高を上げる方法
下げる方法と同じ手順で行うが②の項目で、スプリングシート及びロックシートを反時計方向に回すことで、全長が長くなり車高が上がる。

ネジ式の調整方法

ネジ式には、全長式にあるブラケット固定のロックシートはありません。
スプリングシートとそれをロックするロックシートのみのシンプルな構造です。

車高を調整する方法(詳しく見る際はここをクリック)
  • 1.ロックシートを反時計方向に回してスプリングシートのロックを解除する。
  • 2.スプリングシートを反時計方向に回して、スプリングに遊びを持たせる方向にすると車高が下がる。
  • 3.スプリングシートを時計方向に回して、スプリングに力がかかる方向に回すと車高が上がる。
  • 4.調整後、ロックシートを時計方向に回してスプリングシートをロックする。

Cリング式の調整方法

ショックアブソーバーにCリングを入れる溝が刻まれているので、入れる場所によって車高が変わります。
車高調整の原理はネジ式と同じで、Cリングの位置が変わることでスプリングロアシートの位置が変化し、車高もそれに応じて変更することができます。

車高の調整方法(詳しく見る際はここをクリック)
  • 1.必要に応じて車高調を車両から取り外す、もしくはスプリングコンプレッサーを使用してスプリングを縮める。
  • 2.(車両から車高調を取り外し、サスペンションを分解する場合、スプリングコンプレッサーでスプリングを縮ませて、アッパーマウント一式を取り外す)
  • 3.スプリングとCリングに乗っかっているスプリングシートを取り外す。車上でやる場合は、邪魔にならないようこの2つを上に避ける。
  • 4.Cリングは文字通りCの形をしたリングが挿入されているので、スナップリングプライヤー等の工具を使って、Cリングをショックアブソーバーから取り外す。
  • 5.Cリングの位置を変更する。Cリングの位置を下にすると車高が下がり、上にすると車高が上がる。
  • 6.元通りに復元して終了

車高調の寿命について

車高調(サスペンション)は使用に応じて劣化します。
例えば、ショックアブソーバーのオイル漏れやヘタりがもっとも分かりやすい劣化です。
車高調はどれくらいで寿命を迎えるのでしょうか。

車高調のだいたいの寿命

車高調の寿命は3〜5年または3万kmくらいを目安に考えます。
しかし、「モノによる、使い方による」というのが正直なところです。
安価なものでは街乗りのみでも、1万km程度でダメになるものもあります。
日々、車に乗っているうちに徐々に性能が劣化するので、ドライバー本人が寿命に気付きづらいのも本音です。
よって、車検に適合しない不具合や劣化がない限り、実際は目安の寿命時期をオーバーしても使い続けている人がほとんどです。
ちなみに、車高調で有名なメーカー「TEIN」の公式サイトには、劣化した車高調のオーバーホール時期に関しては以下のように案内されています。(※オーバーホールとはリフレッシュして新品同様の状態にメンテナンスすること)

街乗りですと2~3年(走行距離3~4万km程度)、スポーツ走行をされる方ですと1年位が目安となります。

引用元:TEIN更新QAサイト

車高調に起こりうる不調と要因

車高調を装着することで発生する不調を紹介します。
社外品を装着することによるリスクやデメリットも理解しておきましょう。

    • ・異音(ガタガタ、ゴトゴト、ギシギシ、ミシミシ等)

例)純正だとゴム製品が使われている所が、金属製品に変更されることがある。音が出たり、いわゆる「足廻りが硬くなる」ことでボディのきしみ音に繋がったりする。異常・正常の判断が難しい場合も多い。

    • ・乗り心地悪化

純正品は万人が満足のいく乗り心地や耐久性を優先しています。そのため、比較すると車高調は様々な要因により乗り心地が悪化することが多いです。新品の場合は異常でないことがほとんどです。車高調装着後、ショックアブソーバーやブッシュ類、スプリング等の経年劣化により乗り心地は悪化する場合があります。

    • ・ショックアブソーバーの抜け・オイル漏れ

基本的に経年劣化により発生します。オイル漏れは車検に不適合になる症状です。また、これらは乗り心地の悪化にもつながります。

    • ・調整シートの固着

車高調は路面に近いところについている部品なので、巻き上げた小石がネジ山に噛み込んだり、錆の発生によって、車高調整シートが固着したりスムーズに回らなくなる症例が珍しくありません。装着後に車高の変更をすることがあるなら、マメな清掃や、防錆処理、潤滑剤の塗布による対策が必須です。

車高調がついていると車検は通るの?

車高調そのものが車検に不適合になることはありません。
車高調を取り付けた結果、車高の最低地上高が足りないといった車検不適合となる問題が発生した時には車検に通らなくなります。
また、車高を下げた結果、最低地上高はクリアしていても灯火装置や反射板の高さがNGとなる事例もあります。
心配な場合は、整備工場で事前に確認してもらうようにしましょう。


以下の記事は軽トラを購入された人の体験談です。こちらの人はリフトアップに加えタイヤのインチアップを行ったため、業者にお願いして構造変更検査を受けています。
アウトドア目的でインチアップを検討の人は参考にしてみてください。

車高調についての整備士まとめ

車高調は、単に車高を下げるだけのものではなく目的に応じて、非常にバラエティに富んだラインナップがあります。
また、純正のサスペンションと比較するとメンテナンス性はシビアと言えます。
メリットだけでなく、デメリットもある程度理解し、明確な目的を持っている人におすすめのパーツです。
また、保安基準に抵触しないような使い方をしないと、法令的に整備工場に入庫できないことにもなりかねないので注意しましょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。