車のエンジンのハンチングはエンジン回転が不安定になることを指し、車に不具合が発生している合図です。ハンチングする原因や修理費用などについて現役の整備士がお答えします。
車のハンチングとはエンジン回転が不安定
車がハンチングするというのはアイドリング中にエンジンの回転数が不安定になり、上がったり下がったりする現象を指します。
基本的にはエンジン回転数そのものがラフな状態となるエンジン不調とは異なり、上下するエンジン回転そのものはスムーズに動いています。
ハンチングは常に症状が発生することもあれば、エンジンが温まると発生するケースもあります。
また、エンジン警告灯が点くこともあれば点かないこともあり、走行中に何かしらの不具合が発生することもあれば、走行時は支障のないケースもあります。
ハンチングする原因
ハンチングする原因は大きくは「スロットルボデーの故障や汚れの堆積」「ISCVの故障や汚れの堆積」「吸気系統のエア吸い」の3つのパターンに分けられます。
いずれもエンジンが吸う空気の量に関係している箇所です。それ以外にもエンジン不調と混同、もしくは少数派のパターンとして考えられる可能性のあるものを紹介します。
スロットルボデーの故障や汚れの堆積
スロットルボデーはアクセルの踏み加減によってバルブが開閉することで、エンジンが吸う空気の量を調節している部品です。
現在の車のスロットルボデーは電気信号によって作動しており、アイドリング中はわずかな隙間をつくることで、アイドリングに必要な少量の空気を吸うようになっています。
このスロットルボデーが故障すると安定したアイドリングを維持できずに、ハンチングする可能性があります。
また、走行距離が増えてスロットルボデーにカーボン汚れが堆積すると、本来吸いたい空気の量を吸えない→もっと空気の量が欲しいからスロットルバルブを開く→空気の量が多すぎるのでまた閉じる
という補正作動を繰り返すことでハンチングにつながります。
ISCVの故障や汚れの堆積
すこし古い車(2000年代初頭くらいまで)だと、スロットルボデーはアクセルペダルとワイヤーで直接つながっていました。
スロットルバルブが全閉しているアイドリング中に吸う空気は、スロットルバルブをバイパスする通路から吸入していました。
そして、この通路内を通過する空気の量を調整してアイドリングを適切な回転数で安定させる役割をしているのがISCVです。
(ISCV=アイドルスピードコントロールバルブ。異なる名称の場合もあり)
このISCVの故障や、通路内またはISCVにカーボン汚れが堆積すると、先ほどと同様に安定した空気の量を確保できなくなります。
結果的に、安定的なアイドリングをしようと吸入する空気の量を増やしたり減らしたりを繰り返すことでハンチングの症状につながります。
基本的には電動スロットルバルブを採用している現在の車にISCVはついていません。
吸気系統のエア吸い
スロットルボデーの下流側からエンジン内部の燃焼室までの間にはインレットマニホールドと呼ばれる、吸入空気を導入する配管があります。
この配管にはさまざまな補機部品や、インレットマニホールド内に発生する負圧を取り出すためのバキュームホースが取り付けてあります。
これらの部品に問題があったり劣化することで、スロットルボデーからしか空気を吸わないはずのインレットマニホールドが、本来吸わないはずの箇所から空気を吸ってしまいます。
これを「エア吸い」と呼びます。
吸入空気量は、スロットルボデー手前に取り付けられているエアフロセンサーで計測されています。(一部の車種やエンジンで別の方法で吸入空気量を計測しているものもある)
エア吸い状態だと、コンピューターが計測した空気の量よりも実際には多い空気を吸ってしまいます。この誤差の発生が原因で、ハンチングを起こすことがあります。
その他の原因
基本的にはここまで解説したことが原因であることが大半ですが、ハンチングの発生は他の理由も考えられます。
- エンジンコンピューターの不具合
- 燃料系統の不具合
他に点火系統の不具合等を挙げているケースもありますが、点火系統に不具合が発生すると正常な燃焼がおこなえずに失火するので、ハンチングというよりエンジン不調につながります。
燃料系統の不具合も直接的なものは、エンジン不調を伴うことが多いです。
車のハンチングは放置していても大丈夫?
車のハンチング状態は放置しないで、早めに修理をしましょう。
ハンチングの主な原因となる吸気系統のトラブルは、放置しているとエンストにつながるリスクがあります。予期しないタイミングでのエンストは危険も伴うばかりか、慣れないことにパニックになってしまうドライバーも少なくありません。
また、燃費の悪化や場合によっては別の不具合を誘発する可能性もあります。
車検に通らない可能性も考えられます。
ハンチングの修理費用の目安
車のエンジンのハンチングを修理する費用の目安は、部品の清掃で処置できるものなら3,000円~程度ですが、部品の交換が必須なケースもあります。
部品交換の場合も含めた修理費用の目安を表にまとめました。
不具合発生箇所 | 修理費用 | 部品交換費用 |
---|---|---|
スロットルボデー | 3,000円〜15,000円(清掃) | 30,000円〜150,000円 |
ISCV | 3,000円〜15,000円(清掃) | 10,000円〜30,000円 |
エア吸い | - | 5,000円〜30,000円 |
エンジンコンピューター | - | 50,000円〜 |
あくまでこれらの費用は一般的な相場であり、年式の古い車で部品の調達が困難等なケースはこの限りではありません。
特にエンジンコンピューターやスロットルボデーのような電装部品は、同じような見た目のものでも、メーカーや車種の違いで部品の価格に大きな違いがあります、
(つい先日、7年落ちの輸入車(高級車ではなく一般的な車)でスロットルボデーの部品代が新品で40万円ということがあり驚きました)
場合によってはリビルト品を検討するなど、修理に関しての見積もりは信頼のできる整備工場に相談することをおすすめします。
整備士のまとめ
車のエンジンのハンチングは、正しい排気ガスの計測ができないことから、車検に通らない可能性が高いです。放置していると他の不具合を誘発したり、エンストといったリスクも高まることから早めの修理が必須です。
ただし、部品の交換が必要になると数万円以上の出費が見込まれます。
場合によっては高額修理の可能性もあるので走行距離が多く、年式も古くなってきた車であれば、買い替えも検討してみるのもよいでしょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。