アイドリング時にエンジンがガタガタと震え、不安定になっている場合、車になんらかの不具合が発生してる可能性が高いです。
最悪の場合、エンストしてしまうこともあるので早期の修理が必要ですが、不具合原因は多岐にわたります。
「アイドリングが不安定」といったアイドリング不調の原因や何かできることはあるのか?といった疑問に現役整備士がお答えします。
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アイドリングが不安定な時の症状
アイドリングが不安定なときは、エンジンが正常な燃焼を行えていないときです。
「良い混合気(空気と燃料)、良い点火(ディーゼルであれば着火)、良い圧縮」この3つが揃って初めて正常な燃焼ができるので、これらが十分でない原因を探っていけば、アイドリングが不安定になった理由を見つけることができます。
アイドリングが不安定なときの症状としては、以下のようなものがあります。
- アイドリング回転がふらつく
- エンジンがガタガタと震えている
- 車体振動が大きい
- ステアリングが振動する
- エンジンの吹け上がりが悪い
- アイドリングを維持できずにエンスト
- エンジンが掛かりにくい
- エンジン警告灯が点灯
- 加速不良の不具合も同時に発生
実はドライバー自身、エンジンが不調になっていることには直接的に気付いていなくて、アイドリングが不安定なことによる振動の発生には違和感を感じているということもあります。
車のアイドリングが不安定になる原因
アイドリングが不安定になる原因は、消耗品の劣化や部品の故障が考えられます。とくに最近の車では「スロットルバルブにカーボン堆積」、「スパークプラグの摩耗や、イグニッションコイルの故障といった点火系トラブル」といった2つのパターンが原因の多くを占めています。
アイドリングが不安定になる原因はたくさんあるので、詳しく解説します。
消耗品の劣化が原因
車のメンテナンスを怠っていることが原因でアイドリング不調になることがあるので、まずは消耗品の状態を確認します。
スパークプラグの摩耗
スパークプラグはガソリンエンジンを搭載している車であれば、ガソリンに点火するために必ずついている部品です。(ディーゼルエンジンにはありません)
先端が摩耗するにしたがって良好な火花を飛ばせなくなるので、定期交換の必要な部品です。
スパークプラグの種類とエンジンにもよりますが、早いものだと1.5万km〜2万kmで交換時期を迎えるものもあります。
劣化したまま使っていると良好な火花を飛ばせずに失火してしまい、エンジンの燃焼が不安定となり、アイドリングの不安定さにつながります。
【関連記事】スパークプラグとは?交換時期や費用について整備士が解説
エアエレメントの過大な汚れ・詰まり
エンジンが吸う空気をきれいにするフィルターの役割を持つのがエアエレメントです。エアエレメントは使用過程で空気中のチリやゴミが堆積していくため、定期的な交換が必要です。交換しないままだと目詰まりしてしまい、エンジンが十分な空気を吸えなくなり、エンジンの燃焼が不安定になります。
※エアエレメントにはエアクリーナー、エアフィルターといった別の呼び方もありますがいずれも同一です。
スロットルバルブにカーボン堆積
エンジンが吸う空気の量を調整しているのが、スロットルバルブです。
最近のエンジンは、内部構造的にもスロットルバルブにカーボンが付着し堆積しやすくなっています。カーボンとは簡単にいうと煤(すす)のことです。
定期的な清掃を怠っていると、走行距離が増えるにしたがって付着するカーボンが増えていきます。
付着したカーボンが開いているスロットルバルブの隙間を狭めてしまうので、エンジンが本来求めている空気の量を吸うことができずに、アイドリングが不安定になります。
部品の故障
アイドリングが不安定になる原因として、次に考えるのは部品の故障です。
エンジン警告灯が点灯している場合には、診断によってすぐ答えが分かることもあります。
インジェクターの故障
インジェクターは、エンジンの燃焼室にガソリン、または軽油を供給する部品です。
インジェクターが故障すると、適切な量のガソリンや軽油を供給できずに不安定な燃焼の要因となり、アイドリングが不安定になります。
燃料ポンプの故障
燃料ポンプはガソリンタンクのガソリンをインジェクターに送るためのポンプです。
燃料ポンプが故障すると、必要な量のガソリンを供給できなくなるのでアイドリングが不安定になります。
最近の車は直噴エンジンというタイプのエンジンが多く、この場合「高圧ポンプ」がエンジンルームに、「低圧ポンプ」が従来のものと同様にガソリンタンク内にあります。
また、ディーゼルエンジンの場合はタンク内にポンプは無く、エンジンに燃料噴射ポンプがあるものが一般的です。
イグニッションコイルの故障
イグニッションコイルはスパークプラグに高電圧を印加しています。
イグニッションコイルが故障すると、必要十分な高電圧をスパークプラグに印加できず、結果的にスパークプラグの火花が弱くなります。
良い点火ができずにアイドリングが不安定となります。
【関連記事】イグニッションコイルとは?故障症状や寿命、交換時期を整備士が解説
スロットルボデーの故障
スロットルボデーが故障すると、適切な量の空気を吸うことができないので、アイドリングが不安定になります。
エア吸いによる混合気の希薄
エア吸いとは、エンジンが吸う空気の量を測定しているセンサーより下流側で、なんらかの原因により別箇所から空気を吸ってしまう現象のことです。
エア吸いは、コンピューターが測定した空気の量とエンジンの吸う空気の量に誤差が発生するのでアイドリングが不安定になります。
エア吸いの原因には以下のようなものがあります。
- パージバルブの閉じ不良・開固着
- エアホースやバキュームホースの破れ・抜け
- EGRバルブの閉じ不良・開固着
- インマニガスケットの劣化
補機類の故障によるエンジン不過大
エンジンの駆動力で、エアコンコンプレッサーやオルタネーター、パワステポンプ(油圧式の場合)といった補機類を作動させている車種の場合、補機類の故障によってエンジンの負荷が過大となってアイドリングが不安定になることがあります。
燃料の入れ間違い
ガソリンエンジンの車に軽油を誤って給油したり、逆にディーゼルエンジンにガソリンを給油してしまうと、アイドリングの不安定やパワー不足の後にエンストに至ります。
最悪の場合はエンジンが壊れてしまうこともあります。
エンジンの圧縮不良・寿命
エンジンの寿命を迎えた場合や、圧縮不良が発生している場合、燃焼室内で失火が発生してアイドリングが不安定になることがあります。
アイドリングが不安定な車の修理費用の目安
アイドリングが不安定になっている車の修理費用は、数千円程度で修理が完了するものから数十万円、ときにはエンジンそのものの載せ替えが必要となるような高額修理になる場合もあります。
希少なケースは除いていますが、以下の表に直接的な原因のものはおおむね記載しています。
診断・修理にかかる時間も、すぐに対応できるものから、診断だけでも日数を要するものまで多岐にわたります。
修理の内容 | 修理費用 |
---|---|
スパークプラグの交換(気筒数分) | 1万円前後〜 |
エアエレメントの交換 | 5,000円前後〜 |
スロットルバルブの清掃&アイドリング学習 | 5,000円前後〜 (もしくは法定点検費用に含む) |
スロットルボデーの交換 | 3万円〜 |
インジェクターの交換(1箇所あたり) | 2万円〜 |
燃料ポンプの交換 | 5万円〜 |
イグニッションコイルの交換(1箇所あたり) | 1万円〜 |
エア吸いの修理 | 数千円〜数万円 (原因によって大きく異なる) |
エアコンコンプレッサーやオルタネーター パワステポンプ等の補機類の交換 |
8万円〜 |
燃料の抜き替え及び修理 | 2万円〜数十万円 |
エンジン載せ替え(中古エンジン) | 15万円〜(※車種・エンジンによって大きく異なる) |
これらはあくまで目安の費用なので、「車種・使用部品・整備工場・修理にかかる時間」によって、金額が大きく前後する可能性があることをご了承ください。
また、イグニッションコイルやインジェクターは、一部を除いてエンジンの気筒数分あるのが一般的です。
不具合が発生している箇所が一箇所でも、走行距離が多かったり低年式の車の場合は、予防整備の観点からほかの箇所もまとめての交換を推奨されることもあります。
アイドリングが不安定にならないためのメンテナンス
アイドリングが不安定にならないためにできる日々のメンテナンスを紹介します。
特別なことは何もありません。
消耗品の交換を中心に、当たり前のメンテナンスを当たり前のようにしておけば問題ありません。
- エンジンオイル交換
→一般的な車は5,000km前後を目安に交換 - 消耗品の定期的な交換
→エアエレメント…3〜4万kmごと
→スパークプラグ…[ノーマルタイプ&片側イリジウム・白金タイプ]1〜2万km、[両側イリジウムタイプ]5〜10万km - スロットルバルブのカーボン除去・清掃
→状況に応じて。アイドリング学習も必要
スロットルバルブの清掃は、車検のタイミングなどがベストです。
車種ごとの専門知識のあるディーラーや、スキルの高い整備工場であれば、こちらから依頼しなくてもメンテナンスをしてくれることもあります。
一方で格安車検や知識の乏しい整備工場の場合、不具合が出ていない限りはスルーされることも多いので注意しましょう。
整備士のまとめ
アイドリングが不安定になる原因はさまざまです。
修理はプロの整備士に依頼するのが確実です。エンストなどのさらに重度な不具合に繋がる前に、早めに修理依頼をするようにしましょう。
また、アイドリングが不安定になるトラブルは走行距離の増えた車に多く見られます。
低年式かつ過走行で修理費用が高額になる場合(例:10万円以上)には、これを機に乗り換えを検討したほうがよいかもしれません。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。