スライドドアは、ミニバンやコンパクトカー、軽自動車まで様々な車で幅広く採用されている装備です。日常の使用で酷使されるスライドドアには、経年劣化や故障がつきものです。
この記事ではスライドドアが開かない不具合について、その原因や修理費用について整備士が解説します。
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スライドドアが開かない原因
スライドドアが開かない原因には、いくつかのパターンがあります。
それぞれ紹介します。
ドアロック・モーターの故障
スライドドアが開かない原因の多くが、ドアロックやモーターの故障に起因します。
また、パワー(電動)スライドドアがこれに当てはまります。
モーターには、スライドドアそのものをスライドさせるためのモーターと、ドアロックをリリースするためのロックリリースモーターがあります。
- スライドドアモーター
スライドドアモーターが故障するとスライドドアが電動で開閉できなくなります。手動であれば開閉できます。
- ロックリリースモーター
ロックリリースモーターが故障すると電動でロックの解除ができなくなります。手動であれば開閉できます。
- ドアロック
ドアロックの役割は施錠・解錠を行うことです。ドアロックの不具合によっては、開けることができなくなります。
スライドドアが開かない要因である部品故障は部品内部の機械的な故障がほとんどです。また、部品も非分解部品がほとんどです。
そのため、不具合発生時には不具合部品本体の交換が必要になります。
車体フレーム、スライドドアレールのゆがみ
稀なパターンですが、事故車をそのまま放置していたり、正しく事故修理ができていない場合に、車体フレームやスライドドアのレールにゆがみが発生していることが考えられます。
症状の重症度によって、開閉ができないものもあれば開閉途中で止まってしまうものもあります。
手動で開閉可能で、電動では開閉できないこともあります。
ワイヤーが切れている
スライドドアの開閉には、様々な部品が使われていますが、その一部にワイヤーが使用されています。
このワイヤーが切れると、スライドドアの開閉ができなくなります。
故障次第では、手動でなんとか閉めることができることもありますが、どうしようもできなくなる可能性もあるので、おかしいと思ったら操作を控えて、早急な修理が必要です。
見落としがちな要因
長期間スライドドアを使用していないと、ドアがゴムパッキンに張りついてしまって、開けられないことがあります。
何度か操作していると開いたり、手動で操作すれば普段より力が必要ですが開けることができます。
また、大量のゴミや苔、落ち葉などが原因でスライドドアレールに目詰まりを起こすことで、開閉途中にスライドドアが止まってしまうことがあります。
洗車のときなどに注意して見ておきましょう。
ほかに意外と見落としがちなものとして、以下の2点があります。
- パワースライドドアのスイッチがoffになっていて手動操作しかできない
- チャイルドロックが掛かっていて、室内側からは手動も電動も開操作を受け付けないが、車外からは問題なく使用可能
チャイルドロックは多くの車でドアの側面についています。症状に該当する場合は、一度チェックしてみてください。
また、パワースライドドアのスイッチがONになっているのに、電動作動しない場合はスイッチの不良が考えられます。
ワイヤー切れの修理費用
ワイヤーの交換は、部品代も工賃も高額になることが多いです。車種によっても大きく異なりますが、片側で3〜10万円程度の修理費用が必要になってきます。
また、ワイヤーが切れる頃には車の年式が古くなってきていることも多く、ほかの不具合予防のためにも、ついでにモーター類の交換を推奨されることもあります。
スライドドアの故障の症状例
スライドドアの故障は決まった壊れ方をするのではなく、様々な症状事例があります。
スライドドアが途中で止まる
スライドドアが途中で止まる場合は、以下のような原因が考えられます。
- ローラーの摩耗
- レールにゴミなどが堆積
- レールや車体のひずみ
- ドアの作動部分に異物が干渉
- ワイヤーに異常がある
オートでの開閉動作の途中で、開閉を正常に行えないと車側が判断して、作動を止めてしまうパターンです。
- 給油口のフタが開いている
安全のためスライドドアが開かない、または物理的にストッパーが働いて、途中で止まるようになっています。
スライドドアが閉まりきらない
スライドドアが最後のロックするところまで閉まりきらずに、半ドアのようになってしまう場合は、以下のような原因が考えられます。
- ドアロックに異常がある
- ドアロックモーターに異常がある
- ワイヤーに異常がある
- ドアハンドルに異常がある
ボタンを押してもスライドドアが反応しない
車内のパワースライドドアスイッチを操作してもスライドドアが反応しないときは、以下の原因が考えられます。
- パワースライドドアスイッチがOFFになっている
- パワースライドドアスイッチに異常がある
- ドアロックモーターに異常がある
- ドアロックに異常がある
- スライドドアがゴムパッキンに張り付いている
なかには車の故障や異常でない場合もあるので、まずは冷静にスイッチのON/OFFの状態と、ドアとパッキンの張り付き具合を確認してみましょう。
スライドドアの故障は車検に通る?
スライドドアが故障していて開閉ができなくても、車検には問題なく通ります。
これは、車検の検査項目に、スライドドアの性能・機能を問う項目がないためです。
整備士のまとめ
多くの車で採用されているパワースライドドアはとても便利ですが、負担も大きいがゆえに故障もつきものです。
複雑な機能なので、修理の金額も安くはありません。
故障しないための自衛策は特にはありませんが、スライドドアのレール部分等の摺動箇所は、汚れが堆積しないように注意しておきましょう。
また、ローラー部分など給油が必要な箇所は、点検時などに定期的に給油しておくことで、全く何もしないよりは効果的です。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。