エンジンオイルが減る原因は?減りが早いときの対策を整備士が解説

エンジンオイルが減る原因は?減りが早いときの対策を整備士が解説

エンジンオイルは減るのが普通なのか?異常なのか?意外と知らないエンジンオイル事情ですが、基本的には適切なインターバルでエンジンオイル交換していれば、極端に減ってしまうことはありません。
では、エンジンオイルが減ってしまう原因は何なのか?対策はあるのか、どうするべきなのか?そんな疑問に現役の整備士が答えていきます。

エンジンオイルは消耗品。自然に減っていく

エンジンオイルは定期的な交換が必要で、車のオーナーにとってもっとも身近な消耗品のひとつです。

燃焼室内にオイルが入って燃焼する理由

エンジンが正常な状態でも、エンジンオイルは自然と減っていきます。
その理由は、エンジンオイルが燃焼室内に入り込んでガソリンと空気と共に燃焼して排出されるためです。
基本的には燃焼室内は密閉を保っていますが、100%完全密閉されているわけではありません。エンジンの使用の過程においてわずかずつですが、エンジンオイルが燃焼室内に入り込むことは自然なことで異常ではありません。
適切な交換インターバルでエンジンオイル交換をしていれば気に留まるようなオイルの減り方ではないので、基本的にはユーザー自身が気付くことはないでしょう。

※補足 クリーンディーゼルはオイルが増える⁉︎

クリーンディーゼルエンジンは排気システムに堆積した煤を、定期的に燃焼させて排出する必要があります。
このとき、排気温度を高温にするために燃料を多段噴射します。
その弊害として、燃料の一部が燃焼室の壁を伝って燃焼室外へと出ていきます。
その結果、燃焼室外でエンジンオイルと燃料が混ざることで、見た目上でのオイル油面が上昇してしまいます。
これが、クリーンディーゼルはオイルが増えるといわれている理由です。
正常な範囲内であれば、クリーンディーゼルはオイルが減るのではなく逆に増えていくので注意しましょう。

エンジンオイルの減りが早いときの原因

エンジンオイルの減りが早い原因は大きく3つあります。

  • オイル漏れ
  • オイル上がり
  • オイル下がり

これらの原因について解説します。

オイル漏れ

オイルが漏れていると当然ながらオイルが減ります。
最近の車は下廻りがアンダーカバー等で覆われているので、漏れていても地面に滴下しづらいために、漏れていることに気が付かないことが多いです。
漏れが考えられる箇所は非常に多岐に渡ります。
加えて、エンジンや車種によって修理にかかる時間も費用も大きく異なります。

オイル上がり

オイル上がりは燃焼室内に侵入したオイルが、混合気(空気+燃料)と一緒に燃焼することで、オイルを消費する現象のひとつです。
燃焼室内の気密を保っているピストンリングとシリンダーの壁面の隙間を通って、エンジンのクランクケース側からエンジンオイルが入ってきます。(上がってくる)
オイル上がりが発生する原因には、以下のようなものがあります。

  • ピストンリングの摩耗
  • ピストンリングの張力低下
  • ピストンリングの破損
  • ピストンリングの組み付け不良
  • シリンダー壁面の摩耗

これらはエンジンオイル交換を怠るといったメンテナンス不良に起因することもあれば、適切なエンジンオイルを使わないことで発生する可能性もあります。
また、単に走行距離が増えてエンジンの各部品の摩耗が進み、エンジンが寿命を迎えつつある目安となる場合もあります。

オイル下がり

オイル下がりもオイル上がりと同様に、燃焼室にオイルが侵入することでオイル消費する症状のことを言います。
燃焼室上部には、空気を吸入する弁となる吸気バルブと、排気ガスを排気する弁となる排気バルブがあります。
このバルブが摺動する軸部分には、オイルが燃焼室内に流入することを防ぐ目的で「バルブステム(バルブシール)」と呼ばれる部品が組み込まれています。
バルブステムが劣化してシール性能が低下すると、エンジン上部のオイルが燃焼室内に入ってきて、オイルを消費してしまいます。
これを、オイル下がりといいます。
オイル上がりと同様に、走行距離が多い場合にはエンジンの寿命の目安になります。

エンジンオイルの減りが早いときの対策

エンジンオイルの減りが早い症状は、すでにどこかが異常な状態であることがほとんどです。
現場ではエンジンオイル交換をきちんとしてこなかった末路として、オイル消費が多くなった上にエンジンノイズ(カラカラ・カタカタ音)が大きくなり
「どうにかならないか?」という相談を受けることが少なくないですが、基本的にはこうなってしまってからでは手遅れです。

対策の最善は修理をすること

エンジンオイルの減りが早くなってしまったことの対策としては、減っている原因を特定して修理することが最善です。
しかし、オイル上がりやオイル下がりは、エンジン本体を分解(オーバーホール)する必要があり、高額な修理費用が発生します。
オーバーホールは作業に時間も要するので工賃が高額です。
それならばいっそのこと、エンジンの載せ替えを提案されることもあるでしょうが、いずれにせよ高額な修理費用となることに違いはないので覚悟が必要です。

添加剤を使用して対策する

高額な出費を負担するのはきつい、またはそこまでして直すほどでもないがどうにかしたい…そのように考えるひともいるでしょう。
そのときは一度、添加剤を試してみるのもよいかもしれません。

例:ワコーズ EPS エンジンパワーシールド

オイル消費やオイル漏れを改善するのに効果がある添加剤が、さまざまなメーカーから販売されています。
確実にオイルの減りが止まるわけではありませんが、症状によっては大きな効果が得られる場合もあるので、試してみる価値はあるでしょう。

粘度が硬めのエンジンオイルを使ってみる

いまの自動車業界で主流の粘度の柔らかいオイルではなく、粘度の硬いオイルを使ってエンジンオイル交換をすることで、オイル消費がマシになって、オイルの減りが改善される例があります。
物理的に柔らかいオイルより硬いオイルの方が隙間から漏れ出にくいことを利用した対策です。
ただし、オイルの選択には専門の知識も必要で硬ければ良いものではありません。
この方法を試す場合には、整備工場に相談してみることをおすすめします。

減りが早いからとエンジンオイルの継ぎ足しはNG

「減った分は足せばOK」「減ることを見越して多めに入れておけばOK」
エンジンオイルをこのように考えているひともいるでしょう。
しかし、エンジンを健康に保つためには以下の2点が非常に重要です。

  • 規定量範囲内でエンジンオイルを入れる
  • エンジンオイルは定期的に交換する

多めにオイルを入れることで警告灯が点いたり、ブローバイガスにオイルが混じりやすくなって、吸気管内にオイルが回るなどの弊害やリスクがあります。
また、古く劣化したオイルを十分に排出しないままにオイルを継ぎ足すだけでは、エンジンオイルは常に劣化した状態となるので、エンジンにとって良くない状態が続きます。(一部、オイルの自然減少に対してのメンテナンスとして継ぎ足しを推奨するエンジン、車種が存在しますがここでは除きます)
車のメンテナンスの大前提として、エンジンオイルは定期的に交換するものです。
また、減っていれば足せば良いという単純な問題ではなく、さらなる弊害を生む可能性もある以上、素人判断で安易にオイルの継ぎ足しをしないようにしましょう。

整備士のまとめ

基本的にエンジンオイルが自然と減る状況のほとんどが、過走行によってエンジンが寿命を迎えつつあるか、メンテナンス不良によりエンジン部品が早期劣化しているかのいずれかに起因します。
本格的な修理は高額になるパターンがほとんどですので、お金を出してまで直してこの先も乗り続けるのか?という部分が、今後のカーライフをどうするかの判断のボーダーラインとなります。
年式も古くなり、走行距離も15万km〜と増えてきているのであれば、他の部分のメンテナンスにも更にお金が掛かってくることが想像されるので、車の乗り換えを検討してみても良いかもしれません。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。