ブレーキ鳴きとは?原因と対策を整備士が解説

ブレーキ鳴きとは?原因と対策を整備士が解説

車のブレーキ鳴きはキーキーと高い音で響くため、かなり耳障りでご近所さんへ迷惑をかけていないかと心配になりますよね。整備士へのお客さまからのブレーキ鳴きの相談は日常茶飯事です。ブレーキ鳴きの原因には材料性質によって発生する異常がないものもあれば、点検や交換が必要なものもあります。この記事では、ブレーキ鳴きの原因や対策について、分かりやすく解説します。

ブレーキ鳴きとは?ディスクブレーキが主な発生箇所

ブレーキ鳴きは、一般的にブレーキを踏んだ時に「キー」という甲高い音が聞こえることを指します。
ブレーキ鳴きの発生は、さまざまな原因が考えられます。
また、正常な場合と異常な場合があるので、安心に走行するためにも、整備工場で正確に診断・点検をおこなう必要があります。
ちなみに、乗用車のブレーキは以下の2種類が主流です。

  • ディスクブレーキ…ローター・パッド・キャリパーで構成される。フロントにもリヤにも採用
  • ドラムブレーキ…ドラム、シュー、ホイールシリンダで構成される。主に軽自動車やコンパクトカーのリヤに採用

ブレーキ鳴きの発生箇所はディスクブレーキであることが多いです。 この記事では、ディスクブレーキでのブレーキ鳴きを前提として解説します。

ブレーキ鳴きが起こる原因と対策

ブレーキ鳴きが発生するシチュエーションから、その原因を解説します。

走りはじめの最初だけブレーキ鳴きが起こる

走りはじめだけブレーキ鳴きがするのは、いわゆる「冷えている」状態です。
これは異常ではありません。
冬場や、朝イチに発生することが多いです。
冷えているときはブレーキ鳴きの原因となる、ブレーキ作動時に起きるブレーキパッドとローターの接触により発生する微振動が、より発生しやすく伝わりやすいです。
この微振動は、ブレーキが使用により熱を持って柔らかくなることで、ある程度吸収して音の発生を抑えることができます。
よって、ブレーキが温まりきっていない走りはじめの最初だけブレーキ鳴きが発生します。

低速時にのみブレーキ鳴きが起こる

低速走行中の緩制動時(軽くブレーキに足を乗せる程度のブレーキング)は、先ほど述べた接触振動が発生しやすいです。
この場合、低速走行でもしっかりブレーキを踏めば音がしないことが、簡易的に原因を特定する判断基準となります。
これは、異常ではありません。

金属音がする

ブレーキ鳴きといえば「キー音」ですが、先ほどから解説しているパッドの微振動によって起きる音と、そうではない場合があります。
一部のブレーキパッドには、残量が少なくり交換の必要があることをドライバーに知らせるために、「ウェアインジケーター」と呼ばれる金属の突起となるものが取り付けられています。
パッド残量が低下し、ものによって前後しますが3.0mm以下になると、ウェアインジケーターがブレーキローターに接触するようになります。
これが、ブレーキ鳴きの金属音の原因です。

はじめのうちは、ブレーキ時のみに発生しますがそのまま放置して、パッド残量がさらに少なくなると、ブレーキを踏んでいなくても金属音がするようになります。
これも異常ではありませんが、早めの点検とブレーキパッドの交換が必要です。

雨の日にブレーキ鳴きが起こる

雨の日のブレーキ鳴きは水分の付着による錆の浮きや、低温によってブレーキ鳴きの原因となる微振動の吸収を効率的にできないことが、ブレーキ鳴きの原因となります。
これも異常な状態ではありません。

錆の浮きは、雨の日に走行した次の運転時により顕著にブレーキ鳴きとして表れます。
この場合、しばらく走行して錆が落ちればブレーキ鳴きは収まります。

【対策】ブレーキ鳴き止めスプレー、パッドグリスを塗る

煩わしいブレーキ鳴きの対策方法があります。
以下の2つの対策方法について、どういったものなのか解説します。

  • 鳴き止めスプレーの塗布
  • パッドグリスの塗布

鳴き止めスプレーについて

ブレーキの鳴き止めスプレーは、ブレーキパッド側面に塗布します。
ホイール形状によっては、ホイールの隙間から吹き付けることも可能です。
これにより、鳴きの原因となる振動を抑える効果があります。
スプレーを吹きすぎたり、多量にブレーキローターに付着させてしまうと、ブレーキ鳴きは止まっても、制動力が著しく低下するおそれがあり危険です。
あくまでパッド側面にスプレーが薄らと付着する程度の適量から試していくようにしましょう。

パッドグリスについて

パッドグリスは、ブレーキキャリパーとパッドが接触する場所(パッドの裏面)に塗布します。
塗布することでブレーキ鳴きの原因となる共振(振動)を抑える役割があります。
分解整備を伴う可能性のある箇所なので、ユーザー自身が実施することはおすすめしません。
また、パッド裏面のシムの種類によっては、すでに鳴き止め加工がされており、パッドグリスの塗布を禁止しているものもあるので注意しましょう。

【補足】ブレーキ鳴きにはオーバーホールも有効

ブレーキ鳴きには、「ブレーキの機能に問題はないが材料性質で発生するもの」「パッド残量の低下のお知らせ機能」以外にも、以下のような原因が考えられることがあります。

  • 異物の噛み込み
  • ブレーキの引きずり
  • ブレーキパッド・ローターの素材・性質

このうち、ブレーキの引きずりはブレーキの機能に異常が発生している可能性が高いです。

  • スライドピンの固着・摺動不良
  • キャリパーピストンの固着・摺動不良

上記のような不具合が発生しているときは、正常に動作するよう、ブレーキ廻りのオーバーホールが必要です。 オーバーホールが不可能な場合は、該当箇所の部品交換での対応になります。 ブレーキの機能が正常になることで、ブレーキ鳴きが解消されることがあります。

ブレーキ鳴きのメンテナンスについて

ブレーキ鳴きを予防するためのメンテナンスとして、ユーザー自身が日頃できるものと、整備工場でプロの整備士に実施してもらうものと、それぞれ解説します。

日頃できるメンテナンスと頻度

日頃できる1番のメンテナンスは、定期的に車に乗ることです。これは錆発生の防止が目的です。 ブレーキは重要保安部品でもあるので、ユーザー自身がブレーキ廻りを触るようなメンテナンスは控えたほうが良いでしょう。

整備工場でするメンテナンスと頻度

整備工場でブレーキのメンテナンスをする頻度は、主にタイヤを外しておこなう法定点検時(1年ごと)です。
これは、車検または12ヶ月点検を指します。
法定点検では、ブレーキの分解・点検をおこなって不具合がないことを確認したうえで、必要箇所にグリスアップ等を実施します。
ただ、鳴き止め処置はあらかじめ伝えておかないと実施しないこともあるので、注意しましょう。

また点検の結果、ブレーキの残量低下でパッドの交換が必要な場合は、工賃込みで8,000円〜20,000円程度かかります。
ブレーキローターも摩耗している場合は、25,000円〜です。
ブレーキパッドの種類や整備性により、部品代・工賃は大きく異なります。

ブレーキ鳴きをそのままにするとどうなるの?

「まだ使えそうだし…」と安直に判断して放置せずに、早めに交換を実施しましょう。
パッド残量低下によるウェアインジケーターの接触によるブレーキ鳴きは、パッド交換の時期を迎えているサインです。
そのままにしておくと、最終的にはブレーキ部品の損傷にとどまらず、ブレーキが効かなくなります。
また、ブレーキの引きずりや作動不良の場合は、そのままにしておくと走行中のブレーキの異常な過熱や、ブレーキの効き不良につながる恐れがあります。
ブレーキ鳴きがする場合は、まずその原因が何なのかを整備工場で点検してもらい、異常かそうでないかの判断をしましょう。

ブレーキ鳴きについて整備士のまとめ

ブレーキ鳴きの原因が異常なものかそうでないかは、実際にプロの整備士が点検を実施しないと判断が難しいです。
車を安全に減速・停車させるブレーキはとても重要な部品です。
違和感があれば、すぐにでも整備工場で点検してもらうことも大切ですが、そうなる前に定期的な法定点検(メンテナンス)を受け、いつでも安心して安全に車を運行できるようにしておきましょう。

Supervised by 整備士 ヒロ

ヒロ 2級整備士

保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。