ライター紹介

2級整備士

ヒロ 現役整備士 氏

国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。 整備士ヒロのtwitter

今ではどんな車にも当たり前に装備されているパワーステアリング。車の部品のひとつである以上、故障や不具合発生のリスクがあります。
この記事では、パワステにはどのような故障があり、その時の症状はどんなものなのか?修理費用の目安などについて解説します。

パワステ(パワーステアリング)が故障するとハンドルが重くなる

パワステは、人の力だけでは重くて回せないハンドルを、少ない力で簡単に回せるようにアシストする機構です。
パワステが壊れると、操作が困難なほどにかなりハンドルが重くなります。

ハンドルが重くなった時の対処法

重くなった原因が一時的なものであれば、何度かエンジンを掛け直すると復旧することもあります。
しかし、あまり期待はできないでしょう。
パワステが機能しなければ、力のある大人の男性であってもスムーズにハンドルを操作することは困難かつ危険です。

停車時より車が動いている方が、ハンドル操作に使う力は少なく済みます。
すぐに停車できる安全な速度で、できる限り安全な場所に車を移動させて、ただちに停車させます。
その後、整備工場に連絡をして指示に従いましょう。

その他、パワステ故障による症状

パワステが重くなる以外にも、パワステ故障による症状は以下のようなことがあります。

  • 左右でハンドル操作をする時に必要な力が異なる
  • ハンドルが勝手に回転する
  • 電動式・電動油圧式パワステの場合、警告灯が点灯する

いずれの場合も、走行するうえで危険を伴う可能性があるので、ハンドルが重くなったときと同様に、ただちに安全な場所に車を停車させます。

パワステの故障はそのままでいいの?交換の必要性について

パワステの故障をそのままにしておくことは非常に危険です。

パワステが安全面で必要な理由

パワステはハンドル操作をアシストするものです。
数十年前は、乗用車でもパワステのない車(重ステ)が一般的だった時代がありました。
しかし、その頃と違って今は車も大きく、重くなりました。
車体が大きくなるのに伴って車を支えるタイヤも大きく太くなっています。
重ステが一般的な時と比べて、ハンドルを操作してタイヤを切るには、より大きな力が必要となります。

そのため、パワステによるアシストが安全・安心な走行のために必要不可欠です。
パワステがなければ、簡単にハンドルを操作することは不可能といっても過言ではありません。

よくある質問:パワステ故障のままで車検は通るの?

回答:パワステが故障していると、正常な状態で車を運行できないので、車検は通りません。
また、電動式や電動油圧式の場合で警告灯が点灯している場合は、操作に違和感がなくても車検には通りません。
パワステに故障が発生している場合は、修理が必須だと理解しておきましょう。

パワステの種類について

パワステには、大きく以下の3種類に分けられます。

  • 電動式
  • 油圧式
  • 電動油圧式

電動式の概要と故障例

電動式は、その名のとおり電気(モーター)の力でハンドルアシストをおこないます。
ハンドルからタイヤまでは、シャフトやギヤなど複数の部品で接続されており、アシストする箇所にはいくつかパターンがあります。
電動式のなかでは主に以下の3つの種類に分けられます。

電動式の種類 概要
ピニオンアシスト ピニオンギヤをアシスト。操舵感が良く、幅広い車種に対応する。車外にある。
ラックアシスト ステアリングラックをアシスト。主に大型車で採用され、車外にある
コラムアシスト ステアリングコラム内部でアシスト。主に小型車に採用され、車内にある。

近年の乗用車は多くがこの電動式を採用しています。
電動式は、さまざまなセンサー類がついています。
これらが不具合を起こすことで、正しいアシストを行えなくなることもあります。
ハンドルが勝手に回転したり、左右でアシスト力が違うパワステの不具合は、電動式で発生します。

油圧式の概要と故障例

油圧式は油圧ポンプが、エンジンの補機類としてついています。(補足:パワステポンプと呼ばれます)。
パワステベルトやドライブベルトと呼ばれるベルトを使い、エンジンのクランクプーリーの回転を動力として、パワステポンプが駆動されます。
ポンプで発生した油圧(オイルの圧力)を使って、ハンドル操作をアシストします。
オイルを使っているので、ポンプ〜パワステホース〜ステアリングギヤ&ラック間のいずれかで、オイル漏れが発生するリスクがあります。

オイル漏れを放置していると、パワステポンプが焼き付くなどして、ポンプの交換が必要になったり、漏れたオイルが他の部品(主にゴム部品など)に付着して、劣化を早める原因になります。また、油路内でエアが噛むことでアシスト力が不安定になることもあります。
また、パワステポンプ本体の不良はアシスト不足や、異音の発生の不具合につながります。

電動油圧式の概要と故障例

電動油圧式は、パワステポンプの代わりに電動ポンプを使って油圧を発生させて、油圧によりアシストをおこないます。

  • 常にポンプが作動しないので燃費の向上
  • 電動化による緻密な制御ができる
  • 油圧式ならでは自然な操作フィールを活かす

上記のように、油圧式のパワステが持つデメリットを電動とすることで解消しています。
ドライバーが実感する不具合例としては、電動式、油圧式ならではのものもあります。

パワステの修理費用の目安

パワステの修理は高額となることが多いです。
理由は、パワステポンプや電動式のモーターといった部品代が高額であるからです。
また、パワステに関連する部品は、奥まったところにあることも少なくないです。そのため、交換に際してほかに取り外す部品点数が多く、作業に時間がかかり、工賃が高めの傾向があります。

工賃は数千円から数万円とピンキリです。
パワステ修理時の主な交換部品の価格の目安は以下のとおりです。

交換部品 価格目安
ガスケット(油圧式のオイル漏れ修理) 数百円
(パワステ)油圧式ポンプ 10,000円〜50,000円
電動式のモーター 50,000円〜200,000円

とくに電動式パワステの修理は高額になることが多く、工賃を含めると10万円前後が最低ラインで20万円を超えることもあります。
電動式は、モーターとコントロールユニット(パワステのコンピューター)が一体になっているものもあり、その場合はより高額となる傾向です。

パワステ修理に関する整備士のまとめ

パワステは、搭載されているタイプによって不具合が変わってきたり、装備されているものが違うことにより、修理する部品や金額にはさまざまなパターンがあります。
また、修理せずに放置することは非常に危険かつ、多くの場合で車検に通りません。
新車から年数が経過した車で、15万円〜20万円を超えるような修理金額が発生する場合は、乗り換えを検討するのも良いかもしれませんね。